日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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51 巻, 6 号
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  • 腹部臓器のCT, MRI
    河野 通雄, 土師 守, 廣田 省三, 佐古 正雄
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1127-1139
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 韮澤 融司, 伊藤 泰雄, 薩摩林 恭子
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1140-1143
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    外科用組織接着剤n-ブチルシアノアクリレート(ヒストアクリル®)を2ヵ月から11歳(平均3歳3ヵ月)の小児鼡径ヘルニア手術229例の創閉鎖に使用しその有用性につき検討した.
    手術はPotts法を行った.ヘルニア嚢の高位結紮後,外腹斜筋腱膜,浅腹筋膜を各1針ずつ縫合閉鎖し,摂子にて皮膚縁を正確に密着させた後,組織接着剤を直接皮膚に塗布した.手術後6日目の外来受診日に用手的に接着剤を除去し創の状態を観察した.接着剤を2回以上塗布していた初期の5例に接着剤の早期剥離を生じたが,1回塗りに変更してからは全例良好な創傷治癒を認めた.
    本接着剤はメッシュなどを必要とせず直接皮膚への塗布が可能で,針跡が残らず小児鼡径ヘルニアのように創に緊張がかからない部位での創閉鎖に有用と思われた.
  • 手縫い吻合と器械吻合の比較検討
    幕内 幹男, 生田目 公夫, 池田 忠明, 中野 浩, 高 用茂, 広瀬 忠次, 浜井 直人, 佐々木 栄一, 大久保 雅彦, 鈴木 快輔, ...
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1144-1150
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    最近5年間に施行した胃全摘術101例中44例に,器械吻合器を用いた再建術を行い,同時期の手縫いによる再建術と,手術内容,術後合併症などを中心に比較検討した.
    器械群は2個のEEAを用いたρ-Roux-Y法,及びRoux-Yを標準再建とし,さらに,断端の巾着縫合にpurse string instrument (PSI),閉鎖にTA55を使用することによって再建時間は短縮された.
    成績は,器械群が縫合不全大1例,小1例,計2例(4.5%),狭窄3例(6.8%)で,一方手縫い群では縫合不全大2例,小3例,計5例(8.8%),狭窄0例と,縫合不全は手縫い群に,吻合部狭窄は器械群に多かった.また,術後入院期間は,平均32.7日:39.4日と器械群に短い傾向がみられた.手術内容は器械群,手縫い群,それぞれR3リンパ節郭清36%:21%,膵脾合併切除66%:42%,開胸25%:1.8%と,明らかに器械群に拡大手術が多く行われていた.
  • 田代 和則, 古川 正人, 中田 俊則, 草野 敏臣, 渡部 誠一郎, 永尾 修二, Akihiko KEKEHASHI, Hayato T ...
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1151-1155
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    1971年より1987年までの17年間に当院外科に入院し外科的処置を受けた6歳以下の小児頸部疾患22例につき臨床的検討を行うとともに,アンケートによる予後調査(消息判明17例)を行った.症例の内訳は,リンパ管腫,非特異性リンパ節炎各4例,正中頸嚢胞(瘻)3例,結核性リンパ節炎,類皮嚢胞,化膿性リンパ節炎,Histiocytosis X各2例,気管支嚢胞,軟骨母斑,側頸嚢胞各1例であった.術前正診率は45%であった.消息判明例中,再発例はリンパ管腫不完全切除例,類皮嚢胞,Histiocytosis X各1例の計3例で,死亡はその中のHistiocytosis Xの1例であった.患児の父母により創が目立つとされたのは4例(25%)で,うち2例は巨大なリンパ管腫でその1例は再手術を受けており,他の2例は形成外科的にみて手術に問題があると考えられた.術後の気管狭窄例はなく,小児頸部手術は横切開で行う限り,6歳以下であっても差支えないと考えられる.
  • 君野 孝二, 内山 貴堯, 山岡 憲夫, 赤嶺 晋治, 松尾 聡
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1156-1162
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    当科で施行した上大静脈再建症例は8例で,原疾患は原発性肺癌5例,乳癌・子宮癌の縦隔リンパ節転移各1例,浸潤型胸腺腫1例である.上大静脈症候群を示した症例は5例で,他の3例は手術時に上大静脈への浸潤を認めた.主病巣切除と上大静脈再建を共に行った症例は原発性肺癌2例,乳癌の縦隔リンパ節転移1例,浸潤型胸腺腫1例で,他の4例は上大静脈症候群に対してバイパス術のみの姑息手術であった。術前より上大静脈症候群を呈した5例中4例は術後速やかに症状の改善を得たが,1例は血栓を形成し術死となった.主病巣全切除が可能であった症例の予後は最長2年9ヵ月の生存が得られた.バイパス術のみの場合予後は期待できないが,上大静脈症候群に対するqualityof lifeの改善は得ることができ,また主病巣の切除が可能な症例では予後も期待できると考えられた.
  • 大藪 久則, 松田 昌三, 栗栖 茂, 橘 史朗, 八田 健, 喜多 泰文, 隠岐 公二, 柴田 正樹, 中村 勝隆, 西尾 渉, 梅木 雅 ...
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1163-1169
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    高齢化の著しい淡路島に位置する当院外科においては,最近11年間の胃癌手術症例760例中70歳代は31.4%, 80歳以上は5.5%と高齢者が多くみられた.術前合併症を有する割合は70歳未満12.1%, 70歳代65.3%, 80歳以上71.4%と高齢者ほど高く,70歳未満と70歳以上の間に有意差がみられた.一方,術後合併症は70歳未満19.8%, 70歳代20.9%,80歳以上50.0%と80歳未満と80歳以上の間に有意差がみられた.
    また,80歳以上の高齢者では80歳未満の症例に比し,入院死亡率でみた手術成績は不良であり,術後在院日数も有意に長期であった.さらに,高齢進行胃癌に対し手術適応を拡げ,積極的方針で臨んだ最近3年間の手術成績は,70歳代は以前に比しむしろ良好となったが,80歳以上は明らかに不良に終わっていた.このような成績から,胃癌手術においては80歳以上を高齢者とすべきと考えられた.
  • 上田 博, 磨伊 正義, 荻野 知己
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1170-1174
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    39歳以下を若年者として扱い,若年者胃癌症例を臨床病理学的に検討した.若年者胃癌は全切除胃癌827例中76例(9.2%)を占め,男女比は1:1であった.33例が早期癌で,すべて陥凹型であった.43例の進行癌では4型が15例と多かった.若年者の5生率は60.2%で,40歳以上の59.3%と同一であった.88.2%に治癒切除が行われ,その5生率は71.6%であったが,治癒切除例中13例に再発がみられた.死亡は22例であり,21例の深達度はps(+)を示し,その死因は19例が腹膜播種であった.
  • 佃 信博, 沢井 清司, 清木 孝祐, 谷口 弘毅, 萩原 明於, 山根 哲郎, 山口 俊晴, 小島 治, 高橋 俊雄
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1175-1180
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去13年間に当科で切除した胃原発性悪性リンパ腫10例のうち早期例4例を進行例6例と比較検討した.同時期に切除した胃悪性腫瘍は653例であり,これに対する胃悪性リンパ腫の頻度は1.5%であった.早期例は女性に多くまた平均年齢も56.4歳で進行例の63.4歳に比べて若い傾向にあった.占居部位はA, M領域に多く,2領域以上を占める割合が進行例で83.3%であったのに対し早期例では25%と早期例で限局する傾向が認められた.肉眼型に関して早期例では表層拡大型が4例中3例を占めたのに対し,進行例では巨大雛襞型が半数を占めた.組織学的にはfollicular typeが早期例では半数を占めたのに対し進行例では1例も認められなかった.さらに早期例といえどもリンパ節転移のある症例を半数に認め,さらにこれらは2群リンパ節にとどまっていることより,早期胃悪性リンパ腫においてもR2の郭清が必要であると考えられた.
  • 寺島 信也, 木暮 道彦, 矢内 康一, 斎藤 拓朗, 菅野 隆三, 大石 明雄, 今野 修, 遠藤 幸男, 寺西 寧, 薄場 彰, 井上 ...
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1181-1185
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    自験特発性十二指腸瘻11症例を対象とし,診断と外科治療を中心に検討した.内訳は胆嚢十二指腸瘻9例,結腸十二指腸瘻2例であった.術前診断しえたのは11例中7例(64%)で,腹部単純X-Pでのpneumobilia,消化管造影が有用であった.施行例は少ないものの直接胆道造影も高率に診断可能であった.
    手術は原疾患に対する処置と瘻孔切除とを基本とした.9例では瘻孔切除後十二指腸は直接縫合したが,8例でTチューブの胆道減圧処置を加え縫合不全もなく良好な成績を得た.術前状態の不良な胆石イレウス3例中2例に対しては小腸切開・胆石摘出のみを施行し瘻孔は放置とした.
    以上より,瘻孔切除後はなんらかの胆道減圧処置を加えることが重要であると思われた.また胆石イレウスで遺残結石が認められない際は必ずしも手術侵襲の大きな瘻孔切除術は必要ないものと思われた.
  • 渋谷 均, 西尾 昭彦, 西田 陸夫, 藤沢 泰憲, 北川 真吾, 鈴木 一弘, 秦 史壮
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1186-1190
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去14年間に経験した大腸癌197例のうち,70歳以上を高齢者群とし,70歳未満を対照群として,両者の比較検討を行った.高齢者群は61例(31%)で男女比は1.14であった.占居部位では右側,横行結腸の比率が39.4%と高齢者群で右側から横行結腸に発生率が高い傾向であった.肉眼分類,組織型,進行度分類では差はみられなかった.切除率は88.3%(治癒切除率61.7%),対照群では92.6%(治癒切除率66.2%)で対照群の方がやや高い比率であった.治癒切除例の5年生存率は69.1%,対照群では72.4%であり,ほぼ同様の傾向であった.また術後合併症では高齢者群15.8%,対照群11.5%であり差はみられなかった.これらのことより高齢者群においても手術が可能であれば,積極的に取り組むことが必要と思われた.
  • 特に肝切除例について
    石橋 敏光, 安田 是和, 落合 聖二, 中田 雅敏, 秋元 明彦, 岡田 創, 近藤 恵, 服部 照夫, 柏井 昭良, 金澤 暁太郎
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1191-1199
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1976年から1989年3月までの過去13年間に当科で経験した消化管平滑筋肉腫切除例22例を集計し,肝転移例に対する肝切除術の予後に及ぼす影響について検討した.
    全症例の累積5年生存率は77.1%で,根治手術例では80.3%であった.また,死亡例4例中2例は肝転移による肝不全にて死亡した.転移形式としては肝転移が7例と最も多く,全症例の31.8%,転移再発例の87.5%を占め,その内3例に肝切除術を行った.肝転移発現からの生存期間では,肝切除例3例と非肝切除例4例との間に明らかな差はみられなかったが,肝切除例では保存的療法のみでは得難い長期生存例が経験された.一方,肝切除例全例に残存肝の再発を認め,肝切除術により根治を期待することの難しさが示唆された.
    平滑筋肉腫の肝転移例に対しては,長期生存を期待して肝切除術を行い,さらに残存肝再発に備えた付加的治療と共に再発の早期発見と集学的治療が必要であると考えられた.
  • 白方 秀二, 丹生 智史, 奥村 悟, 相馬 彰, 神吉 豊, 伊東 正文, 河合 隆寛, 西山 勝彦, 和田 行雄, 大賀 興一, 岡 隆 ...
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1200-1204
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去20年間に教室で治療した一次性下肢静脈瘤に起因する難治性下腿潰瘍30例(男14例,女16例)の手術成績に検討を加えた.
    静脈瘤を認めてより来院までの期間は平均男9.8年,女10年,また潰瘍発生より手術迄の期間は男14.6ヵ月,女5.5ヵ月であった.潰瘍の数は単発23例,多発7例であった.20mm未満の小さな潰瘍は大伏在静脈のstrippingと静脈瘤切除のみで完治出来た.30mm以上の大きなものはstrippingと潰瘍周囲静脈結紮に加え,部分的に筋膜上あるいは筋膜下穿通枝結紮を行い良好な肉芽形成を待って,二期的に中間層植皮を行った.潰瘍30例中9例に植皮を必要としたが,すべて生着し再発はみていない.手術より潰瘍治癒に要した期間は最短2週間から最高7ヵ月,平均2.3ヵ月であり,手術により潰瘍治癒期間を有意に短縮できた.
  • 堀口 実, 斎藤 光
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1205-1210
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Graft-versus-host disease (GVHD)は骨髄移植時の重篤な合併症とされているが,輸血後のGVHDの報告は少ない.われわれは2例においては輸血後のGVHDを経験したので報告した.1例は胆道癌術後,肝動脈瘤破裂により大量輸血を余儀なくされ,その後皮膚症状にてGVHDを発症し,Grade Iにて自然治癒した.他1例は胃癌症例でReduction surgeryを行い,Immunotherapyを行っていた.散発的な輸血投与を行っていてGVHDを発症し,Grade IVとなり死亡した.この2例はいずれも免疫不全状態は明らかでないにもかかわらず輸血によって生じたものと考えられた.この解釈として,HLA-typingの類似性が認められれば発症すると考えられている.以上,消化器外科領域において興味あるGVHDを生じた2例を報告した.
  • 佐々木 文章, 沢田 浩美, 秦 温信, 阿部 毅, 田村 元, 浜田 弘巳, 萩原 良治, 内野 純一
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1211-1216
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    上皮小体機能亢進症と甲状腺癌を合併した,67歳女性の1治験例について報告した.本例は術前の鑑別診断が困難であった.
    上皮小体機能亢進症に甲状腺癌が合併することはまれではない.この時合併する甲状腺癌は潜在癌ないし微小癌が圧倒的に多い.自験例のように,比較的大きな進行した甲状腺癌を合併することはまれである.上皮小体機能亢進症の治療にあたっては甲状腺の検索が必要であり,偶然に見つかったような甲状腺癌に対しては葉切でよいと思われる.しかし自験例のような進行した甲状腺癌を合併しているときには,甲状腺亜全摘と頸部リンパ節郭清以上の手術が必要であろう.
  • 川口 吉洋, 金沢 匡司, 中山 浩一, 浦住 幸治郎, 竹内 真一, 阿部 力哉
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1217-1221
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は,72歳女性.呼吸困難で耳鼻科通院加療中左甲状腺腫を指摘され当科入院した.腫瘍増大が急速で呼吸困難が強くなり気管切開を施行した.この時に腫瘍の一部も試験切除し病理学的に検索した.H.E.染色では未分化癌と考えられたが,免疫組織学的な検索を行った結果平滑筋肉腫と診断された.本症例は手術することなく死亡の転帰をとった.甲状腺の平滑筋肉腫は,未分化癌-特に紡錘細胞型との鑑別は困難であり,免疫組織染色による検索を早急に行って診断を決めることが必要である.
  • 山田 勲, 石田 常博, 小川 徹男, 横江 隆夫, 青柳 秀忠, 栗原 照昌, 前村 道生, 川井 忠和, 泉雄 勝
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1222-1226
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺の腺脂肪腫(adenolipoma)は稀な良性腫瘍である.教室ではこれまでに3例の乳腺adenolipomaを経験したので,症例報告とともに本邦報告例に付き文献的考察を加えて報告する.症例1は57歳,女性で,右乳房に13×12cmの柔らかい限局性腫瘤を触知した.マンモグラフィーでは境界明瞭,淡明な腫瘤陰影を認め,内部にやや濃い斑状陰影を認めた.超音波像では辺縁整で,内部エコーは低~等輝度の中に高輝度のところが混在していた.摘出腫瘤は繊維性被膜を有し,14×13×3.5cm (390g)であり,脂肪組織の中に灰白色乳腺組織が島状散在性にみられ,adenolipomaの診断であった.症例2は,2.0×1.2×1.0cm,症例3は4.5×2.5×1.3cmの腫瘤であった.本邦の報告例は今回の3例を含めて13例があるにすぎない.本症の臨床病理学的特徴や組織発生についての考察を加えた.
  • 落合 登志哉, 上田 泰章, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 土屋 邦之, 川合 寛治
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1227-1231
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳癌は,遺伝的要因の関与が示唆される癌のひとつである.当科では最近4代にわたり乳癌の認められた1家系に発生した異時性両側乳癌の1例を経験したので報告する.
    症例は,59歳,女性で14年前に左の乳房C領域に癌が発生.T2aN1aM0, stage IIの診断で拡大乳房切断術および卵巣摘出術が施行されている.
    1986年に今度は右の乳房C領域に癌が発見され,T1aN0M0, stage Iの診断でAuchinciossの手術が施行された.組織は第1癌,第2癌ともにSolid-tubular adenocarcinomaであった.この患者の家族歴を調査したところ,祖母,母親,娘ふたりにも乳癌を認め,さらに母親も異時性両側乳癌であった.また父親は直腸癌で他界しており,この患者の癌発生には,遺伝的要因が強く関与しているものと思われた.当初より両側乳癌,重複癌のhigh risk症例としてfollow upし,早期に対側の乳癌を発見し得たと思われる.
  • 増田 昌彦, 福田 康彦, 浅原 利正, 八幡 浩, 杉野 圭三, 土肥 雪彦
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1232-1237
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    高血圧を主症状とし,腎動脈分岐部を含む範囲の大動脈狭窄性疾患,middle aorticsyndromeの1症例に対し,胸部大動脈-腹部大動脈バイパス及び,右腎動脈-右総腸骨動脈バイパスを施行した.上肢血圧は術前の170mmHgから140mmHgへと低下し,良好な結果を得た.本症は我が国では独立した疾患単位としてはとらえられておらず,異型大動脈縮窄症として,大動脈炎症候群の一亜型に分類されることが多い.しかし欧米では,大動脈中部領域の狭窄という解剖学的特異性に起因する特異的臨床症状を持つことから,病因を超えた症候群,middle aortic syndromeという概念が一般的になりつつある,狭窄部位が大動脈の主要分岐部を含んでいることが多い本症の外科的治療の見地から見た場合にも,血行再建の方針を決定し,ひいては一般的な治療方法を確立していくうえでこうした概念でとらえることは非常に合理的と考えられる.
  • 山本 重孝, 板倉 丈夫, 藤田 宗行, 弓場 健義
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1238-1242
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    魚骨による食道穿孔に対して,来院直後の内視鏡検査により魚骨除去を行い,保存的治療により治癒せしめた症例を経験した.症例は46歳の男性で,鯛料理を食べた直後より心窩部激痛が出現し増強してきたため来院した.激しい上腹部痛および炎症所見より消化管穿孔を疑ったが,腹部X線像などでは穿孔所見が見られなかったため内視鏡検査を施行した.門歯より38cmの食道壁に魚骨の両端が穿刺固定されているのを認め,これを生検鉗子にて把持し除去した.魚骨除去直後から心窩部の激痛は全く消失した.穿刺を生検鉗子にて把持し除去した.魚骨除去直後から心窩部の激痛は全く消失した.穿刺療法により改善,治癒せしめることができた.魚骨による食道穿孔の報告例は少ないが,療法により改善,治癒せしめることができた.魚骨による食道穿孔の報告例は少ないが,内視鏡検査が極めて有効な1例であると考えられた.
  • 佐井 昇, 小沢 勝男, 入山 正, 服部 良信, 中村 肇, 松山 孝昭, 平野 美紀, 杉村 修一郎
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1243-1247
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    48歳,女性.昭和63年9月18日交通事故受傷し,第3胸椎後方脱臼骨折,左多発助骨骨折にて当院整形外科入院.下肢麻痺なく経過観察となったが,9月25日,原因不明の呼吸困難となり気管切開,人工呼吸管理となった.9月26日,左血胸を疑い,胸腔ドレーンを挿入したところ膿性であり,食道造影を行った.第3胸椎骨折部に一致した食道破裂を認め,当科転科後両側に胸腔ドレーン挿入した.胸部CT像では縦隔洞炎は,軽快傾向で,10月12日食道造影では,瘻孔と骨折部との交通はあるものの,瘻孔は縮小傾向であり,ドレナージは有効と考えられた.しかし,10月21日頃より,40度の発熱あり,肺炎を起点としDIC, MOFとなり84日目に死亡した.胸椎骨折を伴った外傷性食道破裂の報告例はないが,ドレナージでは不十分で,根本的な外科治療が必要ではなかったか
  • 松井 芳文, 唐司 則之, 神津 照雄, 小野田 昌一, 磯野 可一, 堀江 弘
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1248-1254
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    顆粒細胞腫は,1926年Abrikosoffにより報告された腫瘍で,特に舌,皮膚に好発するとされており,消化管,特に食道の発生例はまれである.組織発生については,当初筋肉細胞由来とされていたが,現在では,比較的良性のSchwann細胞由来であると考えられている.本邦では,1987年までに61例の記載がみられるに過ぎない.症例は46歳男性.内視鏡にて胃潰瘍精査中,下部食道に隆起性病変を指摘され,顆粒細胞腫の診断で下部食道胃全摘術を施行した.本症は無症状で検診にて偶然発見される頻度が高い.大きさは,ほとんどが10mm前後の小さいもので,部位は下部食道に多い.肉眼形態を小隆起型,Sweet corn型,大臼歯型の3型に分類すると,大臼歯型が過半数を占め最も多い.治療は,10mm前後の小さいものでは経過観察,またはPolypectomyが選択されているが,30mm以上の大きいものでは手術療法の適応と考えられる.
  • 黒木 輝幸, 楠徳 郎, 中川 一彦, 三浦 正博, 柳 秀憲, 白壁 昌弥, 橋本 直樹, 山村 武平, 櫻井 浩人, 新木 薫, 伊藤 ...
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1255-1260
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    食道平滑筋腫上に併存した上皮内癌のきわめて稀な症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は57歳女性,上部消化管造影で中部食道に小さな隆起性病変があり,内視鏡による生検の結果,食道粘膜上皮に中等度異型細胞を認めたため,食道部分切除を行った.腫瘤の大きさは0.7×1.2cmで病理組織では平滑筋腫およびcarcinoma in situと診断した.食道平滑筋腫と食道癌との因果関係は明らかではないが,慢性の機械的刺激はもちろんのこと,他にも共通する要因があるのではないかと思われる.
  • 吉田 晃治, 野中 道泰, 原口 周一, 杉山 俊治, 鈴木 稔, 戈津 秀樹, 杉原 茂孝, 八木 一之
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1261-1265
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    稀な発育形式である胃外発育型胃癌を経験したので報告し,文献より同疾患の特徴的所見を検討した.症例,76歳,男,左上腹部腫瘤が急速に増大し,食欲不振,上腹部痛,貧血を来し入院.腹部超音波,胃X線造影,CT,血管造影などを行い,胃外発育型腫瘍の診断で手術.腫瘍は前庭部より発育し,内腔を有する10×13×13cm,重量1,000gの巨大な胃外発育型腫瘍であった.腫瘍を含めた胃幽門側切除,横行結腸部分切除により,肉眼的には治癒切除できた組織検査ではundifferentiated carcinoma (solid carcinoma)であった.術後経過は11ヵ月で再発死亡した.本疾患の特徴的所見:腫瘍は急速に増大する.腫瘍占居部位は胃前庭部大弯が多い.他臓器浸潤とくに横行結腸浸潤が多い.腫瘍が大きい割には切除可能例が多い.組織型は未分化型癌が半数以上で,間質量が髄様型の頻度が高率である.遠隔成績は不良で大部分一年以内に死亡している.
  • 切除例と非切除化学療法例との比較
    長谷川 博康, 館林 欣一郎, 年光 昌宏, 宮下 洋, 相川 裕之, 前田 義隆, 小林 哲郎
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1266-1274
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    われわれは1984年1月より1988年12月までの5年間に,胃悪性リンパ腫6例を経験し,このうち2例に胃切除術及び化学療法を施行し,長期生存中であるが,他の4例は化学このうち2例に胃切除術及び化学療法を施行し,長期生存中であるが,他の4例は化学ぬ長期生存の好成績を得たので報告する.
  • 松本 幸三, 小池 明彦, 加藤 健一, 稲村 嘉明, 鈴村 和義, 小島 卓, 金光 泰石, 成瀬 隆吉
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1275-1278
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    十二指腸原発の癌は比較的稀な疾患で,腺扁平上皮癌は極めて稀である.本症例は,45歳,男性.上腹部痛を主訴に来院した.低緊張性十二指腸造影にて,十二指腸下行脚に全周性の狭窄像を認め,内視鏡にて同部の生検を施行,高分化腺癌の病理診断を得た.標準的膵頭十二指腸切除術を施行.摘出後の病理検査の結果,癌組織は,Vater乳頭とは関係なく,周囲の十二指腸粘膜内に迷入膵が認められたことより,この迷入膵より発生した腺扁平上皮癌の可能性もあるが,発生母地に関しては断定し得なかった.なお膵周囲のリンパ節のみに転移が認められた.術後5年経過した現在,再発の所見も認められず健在である.
  • 長尾 二郎, 草地 信也, 武田 明芳, 木下 雅道, 神馬 由宏
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1279-1284
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃切除術(Billroth-II法,Roux-Y法)後の比較的まれな合併症として,急性輸入脚閉塞症がある.
    急激な腹痛と,高アミラーゼ血症が特徴的とされているが,外科的処置が遅れると,輸入脚破裂を起こし,重篤な経過をとることがある.腹部超音波・CTによる拡張した輸入脚の証明で診断することが可能とされている.
    われわれは,Billroth-II法後の急性輸入脚閉塞に伴う輸入破裂の2例を経験したので供覧し,その診断と治療に関して文献的検討を行った.
    供覧し,その診断と治療に関して文献的検討を行った.的な約2Lの飲水により発症.症例2は18歳男性,他院にて胃切除後の既往があり,前日の暴飲暴食にて発症.診断には,検査所見として白血球増加・高アミラーゼ血症がまた,画像診断としてはCT・腹部超音波が有効であったが,何よりも,胃切除術後(B-II法・Roux-Y法)の急性腹症に対しては,本症を念頭に,速やかな診断治療が必要と思われた.
  • 孟 真, 天野 富薫, 赤池 信, 久保 秋夫, 野口 芳一, 後藤 久, 近藤 治郎, 松本 昭彦
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1285-1290
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は67歳女性.約2ヵ月の反復する下血および貧血を主訴として入院した.上部消化管造影,注腸造影,上部下部消化管内視鏡,腹部CT検査で出血源は不明であった.大量下血をきたし緊急に選択的上腸間膜動脈造影を行い回盲部を出血源と診断した.開大量下血をきたし緊急に選択的上腸間膜動脈造影を行い回盲部を出血源と診断した.開り漿膜下層にわたって変形した動静脈の増生が見られ回腸動静脈形成異常と診断した.診断に腹部血管造影が有用であったまれな回腸動静脈形成異常を経験したので報告し診断に腹部血管造影が有用であったまれな回腸動静脈形成異常を経験したので報告した.
  • 岡空 達夫, 豊坂 昭弘, 能勢 勝義, 富本 喜文, 岡本 英三
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1291-1295
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    消化管重複症は消化管のいずれの部位にも発生する先天性疾患で,症例によって多彩な臨床所見を呈するため診断,治療に難渋する症例が多い.教室では6例の小児消化管重複症を経験したので,臨床的に検討して報告する.症例は男児5例に女児1例で,年齢は2ヵ月から2歳,5例は1歳未満であった.4例が腸閉塞症状で発症し,下血,会陰部腫瘤が1例ずつであった.部位は空腸1例,回腸1例,回腸末端3例,直腸1例であった.形状は1例のみ管状と球状の合併例で,5例は球状の単発例であった.組織的にはいずれも立方上皮に覆われた粘膜層と平滑筋を有する固有筋層を認め,3例に異所性の粘膜を認めた.4例で術前に診断が得られず,腸閉塞症の診断で緊急開腹を施行されているが,いずれも予後は良好であった.本症は臨床的に多彩な所見を呈し,術前に診断の得られぬまま緊急手術を施行される症例が多いことから,術中に的確な診断と判断を求められる症例が多い.
  • 岸本 秀雄, 大村 豊, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 小川 弘俊, 大谷 享, 織田 誠, 坂本 英至
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1296-1301
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    空腸に発生したInflammatory fibroid polyp(以下IFP)の1例を報告した.症例は21歳女性で,嘔気,嘔吐,血便を主訴として来院した.小腸造影では不整なバリウム斑を有するポリープ様病変を認めた.上腸間膜動脈造影ではphaseによって変化する造影剤の貯留像を認めた.粘膜下腫瘍の診断にて空腸部分切除を施行した.病理組織学的検剤の貯留像を認めた.粘膜下腫瘍の診断にて空腸部分切除を施行した.病理組織学的検剤の貯留像を認めた.粘膜下腫瘍の診断にて空腸部分切除を施行した.病理組織学的検腸のIFPは比較的稀であり,本邦では41例の報告例をみるのみである.また報告例のほとんどが腸重積による腸閉塞で発症しているのに対し,本症例では出血にて発症しており,病理所見を反映した結果と思われた.また術前の画像診断でも病理所見を反映した所見が得られ,小腸造影,上腸間膜動脈造影の有効性が示唆された.
  • 残存小腸50cm以下の本邦19例の検討
    篠原 洋伸, 岩川 和秀, 鈴木 偉一, 門多 健, 岩橋 寛治, 恒川 謙吾
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1302-1307
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    空・回腸全摘の1例を経験したので,本邦成人残存空・回腸50cm以下6ヵ月以上生存報告症例19例につき検討した成績と共に報告する.
    症例:58歳男性.食道癌切除術の既往があり,上腸間膜動脈閉塞症のため回盲弁切除を伴う空・回腸全摘を余儀なくされた.TPNにて管理したが,胆管炎を伴う肝不全にて術後8ヵ月で死亡した.
    残存空・回腸50cm以下の症例でも,回盲弁が残存した場合は経口摂取のみでの長期管理が可能となる可能性があり,残存腸管の代償作用を考慮した術後長期管理が必要である.また,残存空・回腸50cm以下の症例で,回盲弁合併切除を施行された場合や既往に胃切除術を受けている場合は,予防的または早期胆摘を検討すべきである.
  • 村上 浩一, 田伏 洋治, 柏木 秀夫, 中塚 久仁英, 矢本 秀樹, Kinichi HIRAHATA
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1308-1311
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は,消化管の悪性腫瘍の中では比較的まれであり,イレウスあるいは急性腹症などで開腹手術を受け診断される場合が多い.最近,内腔の狭窄をきたすことなく動脈瘤様の発育形式を呈した原発性小腸癌の1例を経験したので報告する.
    症例は,57歳,男性,発熱と貧血を主訴として来院した.腹部US,腹部CTにて右下腹部に径7cm大の腫瘤を認めた.
    腹腔内膿瘍の診断にて手術施行した.手術所見は,回腸末端より約20cm口側に発生した腫瘍であった.腫瘍は腸管壁全周に浸潤増殖しているが,腸管の内腔は逆に拡張し,腸管の閉塞を来すことなく動脈瘤様に発育していた.病理組織学的には,乳頭腺癌であった.
  • 天野 実, 前田 茂人, 前田 潤平, 中田 剛弘, 宮田 昭海, 森 英昭, 林田 政義
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1312-1315
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    結腸癌で郭清したリンパ節から診断したATLの1例を経験した.57歳女性で便通異常を主訴とするS状結腸癌手術の目的で入院した.術前検査では胆嚢結石と,血清トランスアミナーゼとCA19-9の軽度上昇を認めたが,低蛋白血症や貧血はなく白血球数6,500で一般状態は良好であった.
    1989年1月12日,結腸癌手術R3を行った.5×5cm, circ, 2型の中分化型腺癌でs,ly0, v1, P0, H0, n(-), Stage IIであったが郭清したリンパ節36個のうち,No. 253と242-1の数個にリンパ節構造の消失といびつな核を有する異型リンパ球の浸潤が認められた.術後の検査でHTLV-I抗体が陽性で,末梢血液に異常細胞が12%検出され,さらにHTLV-IプロウイルスDNAのモノクローナルな組み込みを証明したことより,くすぶり型ATLの合併を確認した.腋窩の1cm大のリンパ節生検では異常なく,その他表在リンパ節は触知せず画像診断でもリンパ腫の所見はなかった.
  • 柴田 信博, 篭谷 勝巳, 野口 貞夫
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1316-1321
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    大腸癌の肝・肺同時性転移に対し,転移巣の“切除”を行った2症例を報告する.
    症例1は58歳の男性.下部直腸癌にて腹会陰式直腸切断術施行(高分化型腺癌,stageIII,絶対治癒切除術).術後2年3ヵ月目に肝・肺同時性転移が出現した.肝右葉切除に引き続いて肺部分切除を行い,おのおのの転移巣を摘出した.初回手術から5年3ヵ月,転移巣切除から1年11ヵ月経つ現在,無再発生存中である.症例2は57歳の女性.肝・肺同時性転移を有する上行結腸癌である.初回手術として右半結腸切除術(高分化型腺癌,原発巣は絶対治癒切除術),肝動脈内挿管を行い,術後動注化学療法施行.7ヵ月後,肝・肺の転移巣を切除した.転移巣切除から4ヵ月経つ現在再発を認めない.
    これら2症例の経験から,肝・肺同時性転移巣に対する手術適応について考察した.
  • 炭山 嘉伸, 野中 直道, 鈴木 茂, 宅間 哲雄, 武田 明芳, 木下 雅道, 清水 義金, 野田 良材, 桜井 貞夫, 恩田 昌邦
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1322-1326
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    術前に診断し得た不完全型胆嚢捻転症を経験したので報告する.症例は72歳女性で右上腹部痛,発熱,嘔吐を主訴として来院し,急性胆嚢炎として内科にて保存的治療を行い第5病日にて軽快した.US, CTを施行したところ胆嚢の位置異常及び胆嚢頸部での壁肥厚が認められ,特にCTにてはcontrast enhancementにて腫瘍様の陰影を得,USでの頸部腫瘤陰影と一致した.ERCPでは胆嚢像は描出されず胆嚢管の総胆管側に尖形狭窄像が認められた.以上より不完全型胆嚢捻転症を疑い胆嚢摘出術を施行したところ,術所見はUS, CT, ERCPの所見とよく一致していた.
  • 水谷 純一, 高城 克義, 並川 和男, 庄嶋 健, 土井口 幸, 山口 哲也
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1327-1330
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胆嚢結石症を合併した,膵体尾部欠損症の1例を経験したので報告する.症例は57歳女性で,心窩部痛を主訴として入院した.エコーでは萎縮した胆嚢内に結石像を認め,膵体尾部には膵実質を示すエコー像は得られなかった.CTでは同様に,膵体尾部は描出されなかった.膵管造影では主膵管は頭体移行部で徐々に先細りして終わり,副膵管と思われる分枝を認めた.胆嚢結石症に対し手術を行ったが,術中所見では,膵頭部には色調,硬度とも正常と思われる膵実質が存在したが,体尾部には膵実質を認めなかった.
  • 北郷 邦昭, 大和 幸保, 三島 好雄, 川村 展弘
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1331-1334
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移を主体に発育した無機能性膵島細胞腫瘍の症例を経験したので報告する.
    心窩部痛を主訴とする61歳男性が高CEA血症を指摘され来院した.経過観察中,腹部腫瘤が明らかとなり腹部CT,血管造影などを施行したが確定診断がつかず,開腹し原発巣不明の悪性腫瘍のリンパ節転移と診断された.合併症のため術後31日目に死亡し,剖検にて無機能性膵島細胞腫瘍と診断された.
    無機能性膵島細胞腫瘍は生物学的悪性度が比較的低く,悪性例でも原発巣は圧排性に発育して大きな腫瘤を形成する.本症例のように原発性が非常に小さくリンパ節転移を主体に発育した例はまれと考えられる.
  • 竹内 幸康, 森 匡, 水谷 伸, 小川 法次, 竹中 博昭, 宗田 滋夫
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1335-1339
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    脾嚢胞の診断は各種画像診断の進歩により容易になりつつあるが,嚢胞が巨大な場合,原発臓器の診断が困難なことがある.最近,超音波ガイド下に経皮的に嚢胞を穿刺し,術前診断し得た脾嚢胞の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は,45歳の女性で,1年前に腹部を打撲し,約6ヵ月前より心窩部痛が出現した.胃X線検査で胃壁の圧排像を指摘され,超音波検査の結果,左上腹部に小児頭大の嚢胞が発見された.脾嚢胞が疑われたが,胃,肝および膵嚢胞なども否定できなかった.このため超音波ガイド下に嚢胞を穿刺し,穿刺後の超音波及びCT検査で,嚢胞が脾内に存在することが確認され,脾嚢胞と診断し得た.脾臓摘出術を施行した.病理所見より,脾仮性嚢胞と診断された.原発臓器不明の腹部巨大嚢胞の診断には,嚢胞穿刺後の超音波あるいはCT検査が有用と考えられた.
  • 呉山 泰進, 片岡 誠, 正岡 昭
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1340-1343
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    当教室では昭和45年より昭和63年の過去19年間に10例の血液疾患に対して治療目的で脾摘を行った.これらの症例と最近5年間の脾摘報告例からその有効性について検討を加えた.
    症例の内訳は遺伝性球状赤血球症(HS)4例,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)4例,クームステスト(-)溶血性貧血(HA)1例,慢性骨髄性白血病(CML)1例であった.HS症例は4例全例に,ITP症例のうち3例に脾摘が著効を示し,血球数は正常値に保たれた.ITPのうち1例は部分的改善を示し,HA, CMLは無効であった.
    また過去5年間の内外の報告例によりITP, AIHA, SLEなどの自己免疫疾患に対する脾摘症例の効果を集計すると,血球数が正常域こ保たれた著効例の比率はITPは58%,その他の疾患においても60%以上の高い効果が得られ,脾摘治療の有用性を示すものであった.
  • 林 秀彦, 長濱 徴, 畑 真, 勝浦 康光, 豊田 仁, 石黒 陽
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1344-1348
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    大網原発性平滑筋腫の1例を経験したので報告する.症例:73歳,女性.現病歴:平成元年4月頃より左上腹部痛が出現.近医を受診し腫瘤を指摘され当科入院.既往歴:昭和39年左卵巣嚢腫で左卵巣摘出術.昭和40年虫垂切除術.現症:左上腹部に手拳大の腫瘤が触知された.可動性は良好で圧痛をともなった.検査所見:選択的腹腔動脈造影で右胃大網動脈が左下腹部へ向かい,これより栄養される腫瘍濃染像を認めた.以上より大網腫瘍の診断で6月12日,腫瘍摘出術を施行.病理組織学的検査の結果大網平滑筋腫であった.
    大網原発の充実性腫瘍はまれであり,とくに良性腫瘍の報告は少ない.診断には触診と選択的腹腔動脈造影が重要であると思われた.
  • 中野 昌志, 佐々木 一晃, 筒井 完, 佐藤 誠, 阿部 俊英, 浅石 和昭, 早坂 滉, 若林 淳一, 吉武 英子, 横川 金弥, 石山 ...
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1349-1353
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    前仙骨部腫瘍は非常にまれな疾患である.今回,この中でも頻度の少ない悪性神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
    症例は51歳,男性.排便痛を主訴に来院.直腸指診にて腫瘤を指摘される.CT, MRIなどの画像診断の結果,前仙骨部の脊索腫を最も疑った.腫瘍は巨大で骨盤腔内のほぼ全体を占め,経腹経仙骨的アプローチ法にて腫瘍摘出術を行った.腫瘍は16×10×8cmの被膜を有する充実性の腫瘍であった.病理学的検査にて悪性神経鞘腫と診断され,現在外来にて厳重に経過観察中である.
    前仙骨部腫瘍を経験する頻度は少ないが,その種類は多岐にわたる.現在最も有用な検査法はCTやMRIなどの画像診断であるが,質的診断においては完全とは言い難いのが現実である.また,早期発見のための直腸指診の重要性が再確認された.
  • 上泉 洋, 佐藤 直樹, 三澤 一仁, 川向 裕司, 齋木 功, 内野 純一, 今野 哲朗, 宮田 昭一
    1990 年 51 巻 6 号 p. 1354-1358
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    デスモイドは良性腫瘍であるが,摘出後の局所再発が高率にみられ,悪性化は稀とされる.再発と摘除を繰り返したのち一部が肉腫に変化した骨盤腔内発生の巨大なデスモイドの1例を経験したので報告した.
    症例は61歳男性,右殿部の腫瘤(14.0×7.5×4.0cm, 354gr)を摘出し,fibromatosisと診断された.しかし約1年1ヵ月後にCTスキャンで再発が確認され,開腹的に腫瘤の再摘出を行った.ところがその約7ヵ月後に再々発を来し排便障害を起こすほどに増大した.そこで広範囲な郭清を目的に,直腸切断術を行ったところ,その一部の組織にfibrosarcomaの部分を認めた.
    手術後に,放射線療法と化学療法を行ったが,最終手術後2年を経た現在,再発の徴候はない.
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