日本臨床外科医学会雑誌
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57 巻, 4 号
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  • 1996 年 57 巻 4 号 p. 759-774
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 岩瀬 正明, 天野 定雄, 秦 怜志, 滝沢 秀博, 三宅 洋, 秋山 太津男, 柴田 昌彦, 宗像 敬明, 本多 俊伯, 水野 敏彦, 黒 ...
    1996 年 57 巻 4 号 p. 775-781
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1989年2月から1994年7月までに行った乳腺超音波検査施行症例は2,327例であり, 233例(10.0%)が組織学的に診断が確定された.それらのうち乳癌は112例,良性疾患は121例であり,最終的にfalse negative14例, false positive 15例を経験した.超音波検査における乳癌のsensitivityは87.5%, specifcity 87.6%, accuracy 87.6%であった. false negative例では充実腺管癌,乳頭腺管癌が多く, false positive例の多くは線維腺腫,乳腺症であった.また誤診例は腫瘤径が小さい例に多かった.
    超音波検査を用いての乳腺疾患の質的診断には限界があり,疑診例には生検などの組織診断を積極的に行うべきと思われた.
  • 野村 栄治, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 中田 英二, 竹田 幹, 一ノ名 正, 原 均, 藤井 敬三, 泉 信行
    1996 年 57 巻 4 号 p. 782-787
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌転移リンパ節の術前CT像を対比し検討した.対象と方法: D2以上郭清を行いリンパ節転移の認められた68例を対象とした.転移リンパ節は転移癌病巣の形態により,大結節型,小結節型,びまん型,微小型の4型に分類し, CT画像上転移リンパ節が明瞭に描出された35例56部位について,転移リンパ節形態とリンパ節CT像を比較した.結果:病理組織学的リンパ節転移形態は,びまん型の頻度が高かった(51.9%),転移リンパ節の造影CT像はnon-enhanced type(NE)とmottled enhanced type (ME)に二分された. NEは大結節型が83.3%を占めたが, MEは大結節型,びまん型,小結節型が認められた.一方,びまん型で描出されたものはすべてMEであった.結論: CTで描出されたリンパ節は大結節型が多く,造影CT像でNEを呈するものの多くは大結節型であった.びまん型は描出率が低かったが, MEを指標とすれば診断率向上が期待できるものと思われた.
  • 小寺 泰弘, 山村 義孝, 鳥井 彰人, 上坂 克彦, 平井 孝, 安井 健三, 森本 剛史, 加藤 知行, 紀藤 毅
    1996 年 57 巻 4 号 p. 788-793
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌取扱い規約(第12版)のステージ分類および根治度の評価の妥当性を検討する目的で, 1985年から1989年の5年間で経験した初発胃癌976例を規約に従って分類し,ステージごと,根治度ごとの生存曲線を算出し,これらの第11版によるものと比較検討した.第12版により,胃癌のステージは7群に亜分類されたが,各群の生存曲線が相互に有意差をもちつつ均等に分布し,妥当な分類と考えられた.ただし, stage IIに限り,同一stage内での因子別生存率に有意な差を認めた.一方,第12版における根治度の評価では,症例は予後の有意に異なる3群に良好に層別され,第11版と比較して,予後判定上より有用と思われた.
  • 胃癌取扱い規約第12版からみた検討
    和田 哲成, 石川 羊男, 松本 逸平, 前川 陽子, 脇田 和幸, 寒原 芳浩, 佐古田 洋子, 河野 範男, 中谷 正史
    1996 年 57 巻 4 号 p. 794-797
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去20年間に切除した15例の胃原発性悪性リンパ腫症例を,第12版の胃癌取扱い規約に基づいて,その予後規定因子と治療法につき, retrospectiveに検討した.深達度ではmからmpまでの症例,総合的進行程度ではstage IとIIの症例,総合的根治度ではAおよびBの症例の術後5生率はそれぞれ100%と良好であった.しかし,術後補助化学療法の有無は予後にはあまり影響しなかった.手術により転移リンパ節が十分に郭清できた総合的根治度AおよびB症例に対しては,手術のみでも十分な治療効果が期待できたが,遺残があるようなC症例に対しては,予後の上からは手術の意義は少ないと考えられた.
  • 開腹術との比較検討
    福田 直人, 宮島 伸宜, 加納 宣康, 山川 達郎, 杉山 貢
    1996 年 57 巻 4 号 p. 798-803
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1993年1月から1994年12月までの間に, 7例の穿孔性十二指腸潰瘍に対して腹腔鏡下大網被覆術を実施した.同術式の適応は慢性潰瘍所見(瘢痕,変形,狭窄)が著しくないこと,服薬コンプライアンスが良好であること,発症後24時間以内であることを条件としている.結果は手術時間146.9±26.5分,出血量52.9±47.8ml, 術後排ガスまでの時間56.9±13.8時間,入院期間13.9±2.6日であり,全幹迷切兼幽門形成術に比較して手術侵襲が少なく,術後の回復も速やかであった.急性潰瘍例や慢性例でも潰瘍による器質的変化の少ない穿孔性十二指腸潰瘍に対して,腹腔鏡下大網被覆術は有効であると考えられた.
  • 花崎 和弘, 袖山 治嗣, 横山 史朗, 宮澤 正久, 宮崎 忠昭, 大塚 満洲雄
    1996 年 57 巻 4 号 p. 804-809
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術前antithrombin III (AT-III)低下を示す肝硬変合併肝細胞快制除症例の臨床的特徴および術後の播種性血管内凝固症候群(DIC)予防を目的にした術後AT-III製剤投与の意義について検討した.
    1992年9月より1995年3月までに当科で肝切除術を施行した肝硬変合併肝細胞癌13症例を対象とした.そのうち術前血中AT-III値60%以下の6例をAT-III低下群(低下群), 70%以上の他の7例をAT-III非低下群(非低下群)とした.低下群に対しては,術当日より3日間連続してAT-III製剤を投与した.
    低下群は非低下群等比べ,術前のICG 15分値,総ビリルビン値の上昇およびK-ICG値,血小板数の低下を認めた.
    低下群に対する術後のAT-III製剤投与は,血中AT-III濃度を維持する上では有用と考えられたが, 1例は門脈血栓症を契機に術死しており,今後その適応を検討した上での慎重な投与が望まれる.
  • 胃前壁切開を加えた新しい膵胃吻合術
    高野 靖悟, 伊藤 豊, 高橋 知秀, 大石 均, 河野 悟, 川上 新仁郎, 中村 正彦, 横山 武史, 三木 敏生, 及川 卓一, 加茂 ...
    1996 年 57 巻 4 号 p. 810-815
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1993年1月から1995年5月までに膵頭十二指腸切除後の膵消化管吻合に胃前壁切開を加える新しい膵胃吻合を38例に施行した.その方法は胃前壁に長い縦切開を置き,胃内腔より後壁横切開を行い膵断端を胃内腔に引き上げ嵌入させる.膵胃吻合法は胃内腔より胃後壁全層と膵断端から1.5cmの膵実質を結節縫合する.さらに胃粘膜と膵断端部を同じく結節縫合する.膵管チューブを胃前壁より体外へ誘導し,前壁切開創を縫合閉鎖する.肝管空腸吻合,胃または十二指腸空腸吻合をビルロートI法方式で再建を終了する.拡大肝右葉合併切除した2症例を含む38例の膵頭十二指腸切除に本法を施行したが,その縫合不全は1例も認めなかった.膵消化管吻合のなかで本法は最も容易かつ安全な吻合方法のひとつと考えられた.
  • 大木 隆生, 宮本 栄, 平山 茂樹, 立原 啓正, 石井 義縁, 小林 徹也, 織田 豊, 三沢 健之, 中林 幸夫, 吉田 和彦, 養田 ...
    1996 年 57 巻 4 号 p. 816-823
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    97成人鼠径部ヘルニアに対してMarcy法, Lichtenstein法(LT),腹腔鏡下修復術(TAPP), IP tract repair (AITR), McVay法, Bassini法を施行しQOLおよび安全性の観点から各術式の妥当性を検討した.第1, 7病日のつっばり感,屈伸運動等の早期QOL評価ではMarcy, LT, TAPPが他に比して優れていた.術後愁訴の持続期間ではMarcy, LTが各々7±16, 5±1(平均日数±SD)とTAPP, AITR, McVay, Bassiniの97±186, 69±53, 125±147, 59±72比して有意に短かった(p<0.01). TAPPの3例(43%)に鼠径部痛が生じ中期QOLは悪かった.鼠径部法の各術式は安全に施行できたが, TAPPでは癒着性イレウス(開腹術),および陰部大腿神経損傷の各1例を経験した. Nyhus分類のtype IIヘルニアに対するMarcy,その他のtypeに対するLTはQOLと安全性の観点から推奨される術式である. TAPPの有用性は見いだせなかった.
  • 浦山 弘明, 沼田 稔, 三輪 史郎, 窪田 達也, 林 賢
    1996 年 57 巻 4 号 p. 824-828
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下手術の際の気腹操作による合併症として下肢静脈血栓症の発症の危険が懸念される.今回,気腹による下肢静脈還流への影響について,下肢静脈圧と空気脈波を測定し検討したので報告する.
    1993年6月から1994年12月までに腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した32例を対象とした.下肢静脈圧は足背静脈に静脈留置針を挿入し測定した.麻酔導入時8.3±2.3cm H2Oであったが,気腹開始後速やかに上昇し10分で20.6±4.7cm H2Oに達した.しかし気腹解除により11.4±3.4cm H2Oと低下したもののやや高い値を示した.同時期に施行した開腹手術5例を対照群として下肢静脈圧を測定したが7.0~9.5cm H2Oと有意な変化を示さなかった.空気脈波はHADECO; ニューモドップIIを用いて測定した,静脈容量(VC), 最大静脈流出量(MVO)は術前,術中,術後の間で有意差はなかった. MVO/VC比は全経過中80%以上を示し正常であった.基線回復時間は術前4.4±12秒であったが術中4.9~6.2秒と有意差はないものの延長傾向を認めた.しかし術後は4.2±3.1秒とほぼ術前値に回復した.腹腔鏡手術時において,通常の気腹圧と気腹持続期間では下肢静脈還流機能は大きな影響を及ぼさないことが示唆された.
  • 猪股 雅史, 古田 斗志也, 原口 勝, 岩男 裕二郎, 江口 哲, 坪井 貞樹, 宮原 正樹, 北野 正剛, 小林 迪夫
    1996 年 57 巻 4 号 p. 829-834
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳房温存療法施行の際に,温存乳房に多発癌が潜む危険性の高い症例の特徴を明らかにするため,切除標本割面にて2個以上の腫瘤を認めた一側多発乳癌症例を対象に,主,副病巣の組織像および背景組織像を中心に臨床病理学的検討を行った.多発癌の頻度は6/98例(6.1%)であり,副病巣の発生機序は,乳管内進展型が5例(83.3%), 多中心性発生型が1例(16.7%)で,乳腺内転移型は認めなかった.乳管内進展型を示した5例の組織型は,いずれも非浸潤性乳管癌あるいは乳頭腺管癌であり,そのうち2例はcomedo typeであった.癌周囲の背景組織は, 3例(50.0%)に良性疾患が存在し,そのうち2例がatypical hyperplasiaを呈していた.乳房温存療法を行う上で,乳管内進展傾向,組織型, comedoの存在,癌周囲の背景組織の検索は,癌遺残の原因となる多発癌の存在を示唆する手がかりになると考えられた.
  • 迫 裕孝, 阿部 元, 谷 徹, 沖野 功次, 小玉 正智, 中根 佳宏
    1996 年 57 巻 4 号 p. 835-838
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術後12年目の乳癌胸壁再発例を経験したので報告する.
    症例は52歳,女性で, 1982年10月に右乳癌(t2n1βM0 stage II)にて定型的乳房切除術を施行した.組織型は充実腺管癌で,エストロゲン,プロゲステロンレセプターは共に陽性であった. 1984年7月には両側卵巣摘除術を施行した.術後はTegafurとTamoxifenを投与していたが, 1993年3月に再発の徴候を認めないために中止した.しかし, 2年後の1995年1月より右前胸部に出血を伴うびらんを認めるようになり,精査の結果,右第4, 5肋骨を巻き込む胸壁再発と判明した. CAF療法を1クール施行後の4月に,右第3, 4, 5肋骨を15cmにわたり合併切除する胸壁切除を施行した. 15×8cmの胸壁欠損はマーレックスメッシュと広背筋皮弁で再建した.術後経過順調で, CAF療法2クール施行後に退院した. 1995年8月現在, Tegafur, Tamoxifenを投与しているが,再発は認めていない.
  • 館花 明彦, 福間 英祐, 宇井 義典, 加納 宣康, 山川 達郎
    1996 年 57 巻 4 号 p. 839-843
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,まれな疾患とされる乳腺分泌癌(若年性乳癌)の,本邦最高齢を含む2手術例を経験した.
    症例1は25歳,女性で右乳房腫瘤を主訴に来院した.右乳房AC領域に12×12mm大の腫瘤を触知し,生検にて分泌癌と診断され乳房温存術を施行した.
    症例2は85歳,女性で左乳房腫瘤の増大を主訴に来院した.左乳房CDEAB領域に10×9.5cmの腫瘤を認め,同部の生検にて乳頭腺管癌と診断された.術前化学療法後に非定型的乳房切除術を施行したところ,腫瘍の組織像には一部に乳頭腺管癌も認められたが大部分は分泌癌が占め,乳腺分泌癌と診断された.本症例は本邦報告28例のうち最高齢であった.
    乳腺分泌癌につき若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 篠崎 登, 内田 賢, 武山 浩, 須田 健夫, 福永 真治, 野村 浩一, 山下 晃徳, 中野 聡子, 伊坪 喜八郎
    1996 年 57 巻 4 号 p. 844-849
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診(ABC)で左乳腺アポクリン癌(T1N0M0)と診断出来た62歳の女性の1例を経験した.本例を含む50例の本邦報告例からみた特徴は,平均年齢57.5歳,理学的に良性様所見があるためか外科的生検される例が多くみられたが, ABCで診断可能と考えられた.また腫瘍径が大きくても比較的リンパ節転移が少なく予後良好の傾向がうかがわれた.
  • 細村 幹夫, 戸井 雅和, 林 和雄, 冨永 健, 田中 荘一, 坂東 正士, 迫間 隆昭, 小池 盛雄
    1996 年 57 巻 4 号 p. 850-853
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発不明転移性脳腫瘍摘出術4年後に発見された潜在性乳癌の1例を経験した.症例は47歳女性. 43歳時,脳右前頭葉腫瘍の診断下,開頭腫瘍摘出術を施行される.病理組織学的には腺癌であった.転移性腫瘍を疑い,甲状腺,肺,乳腺,消化器,子宮,卵巣を精査するも原発巣は特定できなかった.腫瘍マーカー(CEA, CA15-3, CA125, CA19-9)も正常であった.転移性脳腫瘍摘出術施行4年後,精査目的にて当院を受診したところ右乳房AB領域に4.8×3.0cmの腫瘤を触知.胸部CTにて右前胸壁腫瘤が認められた.精査にて右乳癌,胸骨傍リンパ節転移(T2aN1bM1, stage IV)と診断した.化学療法施行後,定型乳房切除術,胸壁合併切除,腹直筋有茎皮弁による胸壁再建術を施行した.術後の病理組織学的検討より転移性脳腫瘍の原発巣と診断された.脳転移巣が先行した稀な潜在性乳癌の1例を経験したので報告する.
  • 植松 正久, 岡田 昌義
    1996 年 57 巻 4 号 p. 854-858
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性,右頸部拍動性腫瘤を主訴として来院した. CTおよび血管造影検査(IV-DSA)にて,右総頸動脈に発生した頸動脈蛇行症と診断した.さらに超音波検査にて,内腔に血栓を有することが判明し,降圧療法とともに,抗凝固療法が開始された.現在, 3年の歳月が経過しているが,内腔の血栓は消失し,脳神経症状も認めていない.本症における血管内腔の血栓形成の可能性と,抗凝固療法の必要性が確認されたので,文献的考察を加えて報告する.
  • 金沢 成雄, 稲田 洋, 正木 久男, 森田 一郎, 田淵 篤, 石田 敦久, 藤原 巍
    1996 年 57 巻 4 号 p. 859-861
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    右鎖骨下動脈起始異常に伴った弓部大動脈瘤を経験したので報告する.
    症例は67歳,男性.主訴は胸痛.冠動脈造影で, 1枝病変を認め,又,大動脈造影にて右鎖骨下動脈起始異常および弓部嚢状動脈瘤を認めた.冠動脈病変に対し, PTCAを予定していたが,喀血出現したため,弓部大動脈瘤の手術を先行させパッチ形成術を施行した.術中coronary spasmによるショックを併発したが, PCPS, IABPを施行し回復した.本症では外科治療上,弓部大動脈の血行遮断部位と脳虚血に関し問題点が存在する.
    われわれは右大腿動脈-左鎖骨下動脈バイパスを作成し,椎骨脳底動脈の虚血を最小限にし,幸い脳障害は発生しなかった.
  • 織畑 道宏, 畑 真, 長谷 祐治, 中川 浩之, 城所 仂, 山中 修, 佐川 文明
    1996 年 57 巻 4 号 p. 862-866
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の剖検中,心転移は近年増加傾向にあるといわれるが,生前に心転移が診断されることはまれである.われわれは,胃癌の術後2年目に心タンポナーデを発症,心転移が確認された1例を経験した.症例は, 51歳,男性. 1992年5月, CM領域小彎の3型進行胃癌(sig)で胃全摘術を施行(根治度A).
    1994年4月よりCA19-9値の上昇を認めたが,腹部CT,上部消化管内視鏡では再発を認めなかった. 8月23日,上腹部痛と呼吸困難を主訴に入院.心臓超音波検査で心タンポナーデと診断し直ちに心嚢ドレナージを施行した.心嚢液は血性で, Class V, 高いCA19-9値を示していた. 3カ月後,左心房を占める腫瘤により肺水腫をきたし呼吸不全で死亡した.剖検では,胃癌の横隔膜のリンパ管を介したリンパ行性の心転移と考えた.
  • 堀田 圭一, 乗田 浩明, 古川 浩二郎, 須田 久雄, 夏秋 正文, 伊藤 翼
    1996 年 57 巻 4 号 p. 867-871
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    特発性自然気胸の原因とされる気腫性肺嚢胞はしばしば両側肺に認められ,自然気胸は片側に限らず両側に発症する可能性がある.特に若年者では,両側気胸を起こす可能性が高いと報告されている.両側気胸は,両側同時性気胸と両側異時性気胸に分けられ,最近3例の若年者両側気胸を経験した.近年気胸に対する胸腔鏡下手術は,従来の開胸下手術に比べて極めて少ない侵襲で手術可能である.そこで,今回若年者両側気胸に胸腔鏡下一期的両側肺嚢胞手術を施行した.若年者自然気胸の原因は肺尖部限局性のブラやブレブの破裂が多いので,臥位でも視野展開は十分可能で術操作に難渋することはなかった.若年者両側自然気胸に対し一期的肺嚢胞手術を考慮した場合,臥位による胸腔鏡下両側肺嚢胞手術は十分可能であり,術式の選択のひとつになると考えられる.
  • 石田 秀之, 龍田 眞行, 川崎 高俊, 桝谷 誠三, 宮 章博, 木村 文彦, 塩崎 憲, 森本 修邦, 里見 隆
    1996 年 57 巻 4 号 p. 872-876
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性.左肺癌にて左上葉切除術を施行した.術前からの内服を翌日より再開したが,肺合併症のため3日間中断した.再々投与後より原因不明の発熱・発汗・頻脈・唾液分泌過多・嚥下困難・無言無動・意識障害を呈し始めた.この時点で悪性症候群を疑ったところ,精神分裂病のため約40年間ハロペリドールを内服していたことが判った.本症例では早期発見が奏功し,ハロペリドールを中止し対症療法を徹底することで救命し得た.
  • 笹岡 英明, 明石 章則, 大橋 秀一, 余田 洋右, 神野 浩樹, 鄭 一秀, 坂巻 靖, 桂 敏明, 西野 雅行
    1996 年 57 巻 4 号 p. 877-880
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腎癌根治術後に出現した転移性肺腫瘍と転移性胸壁腫瘍に対してインターフェロン(IFN)投与と胸腔鏡下摘出術の利用による集学的治療を行った1例を経験したので報告する.症例は56歳・男性で,腎癌根治術後に出現した転移性肺腫瘍転移性胸壁腫瘍に対してIFN療法を施行した.転移性肺腫瘍は画像上消失したが,転移性胸壁腫瘍の大きさは増大した.その転移性胸壁腫瘍に対し胸腔鏡下外科手術にて完全摘出が可能であった.転移性胸壁腫瘍に対する胸腔鏡下外科手術の目的は, 1)転移部位とその大きさ・数を鏡視下に直接確認すること, 2)胸腔鏡下外科手術で摘出が可能か,もしくは開胸手術に移行すべきかを判定することである.鏡視下手術手技の利点は,創部が小さく,手術侵襲も少なく,最期離床・早期退院が可能なことである.
  • 森 眞二郎, 八塚 宏太, 田中 裕穂, 金澤 昌満, 森永 幸二, 久米川 浩, 大森 康弘, 宮本 安尚, 前川 隆一郎
    1996 年 57 巻 4 号 p. 881-884
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    受傷後4年を経て発症し,肝左葉を内容の一部とした極めて稀な左側外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は49歳,女性.平成2年12月,自殺企図で左前胸部刺傷し保存的に加療を受けた.平成6年9月上腹部痛,嘔吐を主訴に来院し胸部単純X線写真にて左胸水の貯留を認めた.上部消化管造影,胸部CT検査にて左胸腔内に胃体上部の脱出を認めた.既往と検査所見より外傷性横隔膜ヘルニアの診断で手術を行った.アプローチは開腹で,ヘルニア門は約4×4cm大で左横隔膜腱中心の左前方外側部に認められ胃体中部および肝左葉の一部が嵌入していた.脱出していた胃体部は色調良好であったが,肝臓は壊死を来しており切除し,ヘルニア門は一層縫合で閉鎖した.術後経過は良好である.
  • 上原 徹也, 山崎 信保, 八木 草彦, 本田 五郎, 岡上 豊猛, 梶原 伸介, 木下 研一
    1996 年 57 巻 4 号 p. 885-890
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    上腸間膜静脈(SMV)に長径3cmの腫瘍塞栓を形成した胃癌の切除例を経験した.症例は60歳の女性,幽門部大彎側に発生したBorrmann 3型胃癌で術前CT検査にてSMVに腫瘍塞栓を認めた.幽門側胃切除術に加えて, SMVを約4cm合併切除するとともに膵頭十二指腸切除と横行結腸の合併切除を行った.本症例では肝転移はなく,術後2年経過した現在再発の徴候を認めていない.
    近年画像診断の進歩にともない,胃癌による門脈腫瘍塞栓の報告が散見されてきている.肝転移・腹膜播種がなく腫瘍塞栓が肝外門脈にとどまる症例に対しては,門脈合併切除を含む拡大郭清を行うことにより予後が改善される場合があると考える.
  • 高濱 靖, 渡部 高昌, 仲川 昌之, 佐道 三郎, 土井 新也, 中島 仁一, 向川 智英, 池田 直也, 本郷 三郎, 中野 博重
    1996 年 57 巻 4 号 p. 891-895
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    十二指腸脂肪腫の1手術例を経験した.症例は77歳の女性で,貧血の原因精査に上部消化管内視鏡検査を受け,十二指腸に粘膜下腫瘍が発見された.この腫瘍はCTではfatdensityを示した.またMRIでは4×3×2cm大のT1強調画像で高信号, T2強調画像でも高信号,脂肪抑制T1強調画像では低信号を示し,十二指腸下行脚に十二指腸壁と連続性のある高信号の充実性の部分を認め,そこを茎とする有茎性の脂肪腫と診断し摘出術を施行した.腫瘤は術前診断の通り十二指腸下行脚に発生した有茎性の粘膜下腫瘍で4.5×3.0×2.6cmであった.病理組織学的には腫瘤は成熟した脂肪細胞よりなる脂肪腫であった.
    十二指腸脂肪腫本邦報告例は自験例を含めて84例であった.本疾患の特徴,症状,治療法につき検討し文献的考察を加えたので報告する.
  • 坂野 茂, 久保 肇, 中野 正人, 滝 吉郎, 頼 文夫, 冨永 純男
    1996 年 57 巻 4 号 p. 896-899
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は4歳男児.貧血を主訴として来院した.消化管造影で空腸に隆起性病変を認め, CT, USで腫瘤を先進部とした腸重積を認めた.開腹にて30×25×20mm大,表面は凹凸不整な粗大顆粒状,先端に出血を伴った有茎性のポリープを認め,ポリープを含めた空腸部分切除を施行した.病理組織学的に若年性ポリープと診断した.
  • 熊野 公束, 邉見 公雄, 實光 章, 吉田 圭介, 横山 正, 大嶋 眞一, 高原 秀典, 近藤 元洋, 余 みんてつ
    1996 年 57 巻 4 号 p. 900-903
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    下血を契機に発見された小児小腸重複症の1手術例につき報告する.患者は1歳1カ月男児.嘔吐と発熱あり近医受診,浣腸にて大量の黒色便を認めたため,当院紹介となった.来院時顔色不良,無欲様でありHb 4.0g/dl, Ht 13.7%と高度の貧血を認めたため,大量消化管出血に対して緊急開腹術を施行した.回腸末端より90cm口側の小腸腸間膜側に大きさ約1cmの硬結あり,長さ約30cmの管状の重複腸管が,同部にて正常腸管と合流していた.切除標本では重複腸管に異所性胃粘膜,同硬結に一致して筋層におよぶ潰瘍がみられた.
  • 森景 則保, 守田 信義, 江里 健輔, 守田 知明, 松井 則親, 中村 丘, 兼行 俊博
    1996 年 57 巻 4 号 p. 904-907
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌の術後経過中に発生した腹部所見に乏しい腸管壊死症例を経験した.症例は48歳,男性で胃体上部大彎側のBorrmann 2型の胃癌と診断した.胃全摘,膵体尾部・脾臓合併切除術を施行した.術後不安神経症に陥り,経口摂取が不良となり入院治療が延長した.術後54日目早朝より軽度の腹痛を訴え,ショックに陥った.腹部では臍右方に軽度の圧痛を認めるのみで, Blumberg徴候は認められなかった.腹部エコー検査で肝右葉にairと思われる斑状のhigh echoic spotが多数見られ,門脈ガス血症と診断し試験開腹した.回腸はileum endより口側に約2.5mにわたり壊死しており,広範囲腸切除術を施行した.病理組織診断はischemic enteritisであった.術後縫合不全を併発したが,保存的に軽快し,日常生活に復帰している.
  • 本坊 健三, 吉嶺 巡, 福元 祥浩, 中村 好宏, 田中 紘輝, 平 明, 高崎 隆志
    1996 年 57 巻 4 号 p. 908-912
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌は稀な疾患で,術前に診断することは難しい.虫垂炎や回盲部腫瘍として切除後,病理組織学的に虫垂癌と判明する事が多い.
    68歳の女性が右下腹部の手拳大の腫瘤と圧痛を主訴に来院した. 3カ月前の注腸検査では虫垂内腔に一部透亮像を認めるが虫垂は明瞭に描出され回盲部にも異常を認めなかったため急性虫垂炎と診断,開腹した.所見は虫垂周囲膿瘍による腫瘤形成でドレナージにとどめ約1カ月後炎症が鎮静化した後虫垂切除を行った.病理組織学的に原発性虫垂癌と診断され虫垂切除端に癌細胞が陽性であったので更に8日後にリンパ節郭清を含む右半結腸切除術を追加した.切除虫垂の病理組織学的検査は不可欠で,特に腫瘤を形成した回盲部疾患では虫垂悪性腫瘍を念頭に入れておかねばならない.虫垂癌は稀であるがリンパ節郭清を含む右半結腸切除術を要するためその診断,治療に充分な配慮が必要である.
  • 川村 泰一, 小西 孝司, 薮下 和久, 堀川 直樹, 長谷部 健, 津川 浩一郎, 高田 理, 前田 基一, 黒田 吉隆, 辻 政彦, 出 ...
    1996 年 57 巻 4 号 p. 913-917
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.多発性肝転移を伴うS状結腸癌症例である.平成5年6月23日にS状結腸切除術を施行し,術後肝転移巣に対し大量l-leucovorin/5-FU併用療法を行った. 2クール終了時にCEAは術前の1,400ng/mlから39ng/mlに激減し,腹部CT検査にて肝転移巣は著明に縮小した.患者は治療を一時中断したが,平成6年3月に閉塞性黄疸をきたして再来院した. CEAは890g/mlと再上昇し,腹部CT検査にて再び肝両葉を占める転移巣が認められた.さらに4クールのl-LV/5-FU療法を行ったところ,再びCEAは減少し,腫瘍縮小効果も認めた.副作用は皮膚色素沈着,悪心,食欲不振,出血傾向を認めたが,いずれも軽度であった.現在術後21カ月後も外来通院中であり,健存な社会生活を営んでいる.
  • 久光 和則, 牧野 正人, 木村 修, 貝原 信明
    1996 年 57 巻 4 号 p. 918-921
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.多発性肝腫瘍の精査中に,肛門縁より約4cmの直腸後壁に1.5×1.5cmの中央に潰瘍を伴う隆起性病変を発見された.多発性肝転移を伴う直腸癌の術前診断にて低位前方切除術および肝動脈内抗癌剤投与のためのリザーバー留置術が行われた.術後の組織学的検討にて腫瘍細胞内に神経内分泌顆粒が証明され,直腸カルチノイドおよび肝転移と最終診断された.また,直腸所属リンパ節転移も認められた.肝動注療法により肝転移巣は縮小し,患者は術後24カ月の現在も外来通院加療中である.
    肝転移を伴う直腸カルチノイドの治療は,リンパ節郭清を伴う原発巣切除後,肝転移巣に対する抗癌剤の肝動注療法が有効と思われる.
  • 高田 信康, 橋本 壽雄, 前川 憲昭, 浜中 良郎, 橋本 武志, 東野 正幸, 綛野 進, 木下 博明
    1996 年 57 巻 4 号 p. 922-925
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部に発生する悪性黒色腫は比較的稀な疾患であるが,その予後は極めて悪く,しばしば血行性およびリンパ行性の遠隔転移を起こす.患者は65歳の男性,約3カ月前より便に血液の付着があり,平成4年2月当院外科を受診した.大腸内視鏡等の検査の結果,肛門より約7cmのところに一部黒褐色の色素沈着を有する低い隆起性病変を認めた.生検の結果,直腸悪性黒色腫と診断され,当院で手術が施行された.
    本疾患の5年生存率は諸家の報告によると3.8~12.0%と皮膚原発に比べてかなり悪く,本疾患を含めた大腸悪性疾患の早期発見を行うために注腸検査などで異常がなくても便潜血が陽性であればスクリーニング的に大腸内視鏡検査を行うことが極めて有用であると考える.
  • 枝川 篤永, 山本 隆嗣, 三上 慎一, 池田 一雄, 棒谷 智之, 大杉 治司, 東野 正幸, 広橋 一裕, 木下 博明, 桜井 幹己
    1996 年 57 巻 4 号 p. 926-930
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は全身性進行性硬化症(強皮症)の現病歴を持つ44歳女性で,肛門部腫瘤を主訴に来院.指診にて肛門管後壁を中心に膨隆する灰白色の腫瘤を認めた.内痔核もしくは肛門ポリープの術前診断のもと,腫瘍摘出術を施行した.切除標本の病理組織学検査により,悪性黒色腫と診断されたため,腹仙骨式直腸切断術を施行した.術後約1カ月後に左鼠径部リンパ節への転移を認めている.肛門原発の悪性黒色腫は, 1)組織学的に小細胞型が多く, 2)発見される時期が遅く, 3)発生する母地が富脈管性で転移を起こしやすく,予後不良である.局所切除と広範囲切除では統計学的に予後は変わらないが,広範囲切除では5年生存例もみられ,手術術式として直腸切断術と広範囲リンパ節郭清が望ましいと考えられる.肛門部悪性黒色腫は肉眼形態的には正診が困難で,術中もしくは早急な病理組織診断が予後の改善にも不可欠であると考えられる.
  • 須郷 広之, 渡辺 繁, 行方 浩二, 大橋 薫, 大浦 慎祐, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二, 須山 正文, 有山 ...
    1996 年 57 巻 4 号 p. 931-937
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術前肝悪性腫瘍との鑑別が困難であった肝inflammatory pseudotumorの1例を報告するとともに,過去報告58例を集計し文献的考察を加えその臨床像,術前診断について検討した.症例は71歳の男性,主訴は肝機能異常と発熱.入院時37.8°Cの発熱と血液検査で著明な炎症反応を認め超音波検査で肝後区域に直径57mmの腫瘤を認めた.血管造影検査では同部位にtumor stainを認めたが,肝静脈造影検査では右肝静脈の圧排以外,走行,分枝に異常はみられなかった.肝悪性腫瘍を疑い肝右葉切除術,胆嚢摘出術を施行した.腫瘤は黄白色の充実性腫瘍で術後,病理学的検査で肝inflammatory pseudotumorと診断された.過去報告例の検討から,炎症を伴う肝腫瘤の診断では常に本疾患の存在を念頭におくことが重要と考えられた.
  • 杉本 恵洋, 田伏 克惇, 森 一成, 辻 毅, 岡 正巳, 朝野 聡, 尾崎 敬, 平井 久也, 田伏 洋治
    1996 年 57 巻 4 号 p. 938-944
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    肝原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告した.症例は60歳の男性で, C型慢性肝炎の治療のためinterferonを投与された.投与開始6カ月後(総投与量は53,600万単位)超音波検査で肝に腫瘍が認められ,超音波ガイド下針生検を行った.免疫組織染色のLCAとSL-26染色は陽性を,またUCHL-1, MT-1, MB-1染色は陰性を示し,病理組織診断はmalignant lymphoma, diffuse, medium sized or large cell & B cell typeとされた.生検後interferonは中止した.その後,腫瘍は縮小傾向を示したが,生検の42日後,肝亜区域切除した.摘出標本の病理組織検査では腫瘍は壊死に陥っていた.手術1年後,全身および残肝に再発は認めない.
  • 尾関 豊, 立山 健一郎, 片桐 義文
    1996 年 57 巻 4 号 p. 945-951
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の男性. B型肝硬変に併存した塊状型肝細胞癌で,外側区域および後区域の一部を含めた中央二区域切除に,肝動脈内リザーバー留置術を施行した.術後に間欠的肝動注,エタノール注入療法および放射線照射を施行した.初回手術から1年4カ月後に門脈右枝の腫瘍栓が出現し,エタノール注入療法を施行したが無効で,その2カ月後に門脈本幹から左枝にまで腫瘍栓が進展した.肝機能が比較的良好で,患者本人の手術に対する希望が強いため,後区域切除および門脈腫瘍栓除去術を施行した.癒着が高度であるとともに癒着剥離に伴う出血が多く,門脈の剥離が困難であった.術後経過はおおむね順調であったが,腹水および胸水の貯留が持続し,第43病日,初診から1年8カ月後に肺水腫を併発して死亡した.門脈本幹の腫瘍栓に対する肝再切除術の報告はなく,肝再切除時の肝十二指腸間膜処理について考察した.
  • 菅村 健二, 工藤 浩史, 西土井 英昭, 石黒 稔, 村上 敏, 正木 忠夫, 谷口 遥, 前田 宏仁
    1996 年 57 巻 4 号 p. 952-957
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近,われわれは肝転移を伴い腺癌と共存した胆嚢カルチノイドの1例を経験したので報告する.
    症例は63歳の女性で上腹部痛,嘔吐を主訴として来院した.腹部超音波査, ERCP, CT等の術前検査の後,胆石症および肝転移を伴った胆嚢癌の診断にて肝転移巣を含む拡大胆嚢摘出術を施行,固有肝動脈に動注用カテーテルを留置した. 2個のビリルビン系結石と胆嚢体底部に1.5×2.5cmの腫瘤を認め病理組織学的検索により分化型腺癌の共存を伴う胆嚢カルチノイドと診断された.また肝転移巣はカルチノイドの転移であった.術後経過は良好で術後9カ月経過した現在,再発の徴候は見られていない.
    胆嚢カルチノイドの報告は本邦では自験例を含め28例と極めて稀であるが,その予後は決して良好ではなく,悪性腫瘍に準じた治療と十分なfollow upが必要と思われる.
  • 乳井 誠悦, 長内 宏之, 大庭 滋理, 増岡 秀次, 江端 俊彰, 山本 直也
    1996 年 57 巻 4 号 p. 958-962
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    47歳女性で,偶然の機会に発見された,きわめてまれな脾過誤腫の1治験例を報告する.平成6年10月に健診で近医を受診した際に腹部超音波検査, CTにて脾に異常陰影を指摘された.大学病院内科での各種画像検査の結果,脾下極に腫瘤が認められたが,腫瘍マーカーは正常であった.結局,確定診断に至らず,悪性腫瘍との鑑別が困難と判断され,当院にて摘脾術を施行した.摘出標本では,脾下極にほぼ球形で,比較的境界明瞭,灰白色調で中に隔壁で大小しきられた腫瘤を認めた.病理組織学的には,被膜を有せず,正常脾組織の中に拡張した血管,血管内皮細胞の増生,他に脂肪細胞の増生が認められ,脾過誤腫と診断された.
  • 岸本 秀雄, 山田 達治, 織田 誠, 大場 泰洋, 中村 従之, 小川 弘俊, 入谷 勇夫, 矢野 孝
    1996 年 57 巻 4 号 p. 963-966
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    イレオストミー造設術後に妊娠し,帝王切開にて無事出産した29歳の1例を経験した. 26歳の時に再燃寛解型の全結腸型の潰瘍性大腸炎の診断にて,大腸切除,直腸部分切除,回腸瘻造設術をうけた,術後1年5カ月で第1子を妊娠した.全大腸切除の影響,回腸瘻造設の影響,術前に服用していたサラゾスルファピリジン,プレドニゾロンの影響も心配されたが,妊娠の維持および胎児に関して障害は認めなかった.妊娠中の全身的,局所的合併症の発生も特に認めなかった.帝王切開の開腹時に小腸を一部損傷したため縫合術を行った.出産は産科的理由で帝王切開となったが,オストメートにおける正常分娩も十分可能であると思われた.オストメートの妊娠・出産は,本邦において9例の報告例をみるに過ぎない.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 長澤 圭一, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 西尾 秀樹, 村田 透, 亀井 智貴
    1996 年 57 巻 4 号 p. 967-971
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大網裂孔ヘルニアは非常に稀な疾患で,術前診断することは難しい.今回,興味深いCT像を呈した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    症例は66歳,女性.心窩部痛と嘔気にて入院した.入院時,右下腹部に圧痛を認めたが,検査所見には異常を認めなかった.腹部単純X線写真で右上腹部に小腸ガスを認め, US, CTで同部位に拡張腸管と,少量の腹水を認めた. 2日後, 37°C台の熱発とUS, CT上腹水の増加を認め,またCTでは横行結腸の右頭側に拡張した小腸を認めたので,ダグラス窩穿刺を行った.穿刺にて血性腹水を認めたため絞扼性イレウスと判断し,緊急手術を行った.小腸の大網裂孔ヘルニア嵌頓で小腸の血行は保たれていたため,絞扼を解除した後,裂孔を開放して手術を終了した.レトロスベクティブに, CT上の腸管の位置関係から術前診断し得たのではないかと考えた.
  • 佐久本 昇, 金城 治, 伊集 真
    1996 年 57 巻 4 号 p. 972-976
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は90歳の女性で,悪心,嘔吐を主訴に当院に入院した.超音波検査と骨盤部CTにて確定診断し手術を施行した.回腸末端より約100cm口側の回腸が左閉鎖孔に陥頓しているのが認められ,壊死部の回腸切除後,左ヘルニア門を閉鎖し,右側はヘルニア嚢を内反切除し結節閉鎖後卵巣で覆った.閉鎖孔ヘルニアは比較的稀な疾患であり,両側性閉鎖孔ヘルニアの本邦報告例9例について文献的考察を行った.患者はすべて女性で,年齢は72~91歳,平均79.5歳であった.主訴は腹痛が8例であり,術前診断がついたのは5例であった.ヘルニア内容は全例小腸であった.手術は4例に腸切除を施行しているが,発症から手術時間までの期間との関係はなかった.高齢者の原因不明のイレウス症状では常に本症を念頭におく必要があり確定診断のためにはCT, USを行えば,早期診断が可能と思われた.
  • 104例の文献的考察
    亀井 桂太郎, 服部 龍夫, 城所 仁, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 深田 伸二, 湯浅 典博, 久留宮 康浩, 林 祐次
    1996 年 57 巻 4 号 p. 977-980
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    門脈瘤は門脈の動脈瘤様の部分的拡張を意味するが,当院において2例の門脈瘤を経験したので報告する.症例1: 73歳女性.慢性膵炎の経過観察中,腹部超音波検査にて肝門部に腫瘤を認めた.ダイナミックCT,腹部血管造影で肝外門脈に嚢状の拡張を認め門脈瘤と診断した.症例2: 65歳男性.胃カルチノイドの精査中, CTにて肝門部に腫瘤を認めた.腹部超音波検査,造影CT,腹部血管造影にて肝門部門脈の紡錘状の拡張を認め門脈瘤と診断した.門脈圧は10cm H2Oと正常範囲内で,肝生検では肝硬変を認めなかった.
    門脈瘤は比較的稀な疾患とされてきたが,近年CT,超音波検査の進歩と共に報告例が増加しつつある.予後が良好であるため経過観察が基本である.
  • 奥山 正樹, 龍田 眞行, 塩崎 憲, 木村 文彦, 石田 秀之, 桝谷 誠三, 石川 恵一郎, 川崎 高俊, 里見 隆
    1996 年 57 巻 4 号 p. 981-986
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の直腸・胃重複癌の1手術例を経験したので報告する.
    症例は60歳男性.透析導入後4カ月で直腸癌と診断,腹会陰式直腸切断術を施行(高分化型腺癌, stage IIIa).術後1年10カ月で胃癌と診断,幽門側胃切除術を施行(印環細胞癌, stage IVb).両手術とも術後経過は良好であった.胃癌手術後15カ月で再発死したがQOLの向上は得られた.
    血液透析患者は発癌率が高いため,癌に罹患した場合,常に同時性重複癌も念頭において全身検索し,手術適応のある患者には厳重な術前・術中・術後の管理により積極的に手術をすべきである.第1癌術後は異時性重複癌も考慮してfollowすべきであると思われた.
  • 浜田 邦弘, 横森 忠紘, 谷口 棟一郎, 家里 裕, 勅使河原 修, 大和田 進, 森下 靖雄
    1996 年 57 巻 4 号 p. 987-991
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道,胃,直腸に発生した同時性表在型三重複癌を一期的に切除し得たので報告する.患者は72歳の男性で,易疲労感を主訴に来院した.精査の結果,胸部食道に広範な表在型癌,胃体下部にIIc型癌,および直腸RaにIsp型のポリープが発見され,一期的に切除した.病理組織検査で,胃と大腸は深達度mの腺癌で,食道は深達度smの扁平上皮癌であった.食道,胃,大腸の同時性三重複癌報告例は比較的稀であることから,本邦報告例を含めて報告した.
  • 河野 悟, 高野 靖悟, 高橋 知秀, 伊藤 豊, 大石 均, 山崎 猛, 大亀 浩久, 榎本 叡矢, 岩井 重富, 田中 隆, 内田 俊和
    1996 年 57 巻 4 号 p. 992-997
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,早期大腸癌と胆管細胞癌の稀な同時性重複癌を経験したので報告する.
    症例は71歳,男性,糖尿病の治療中,肝機能障害を指摘され,腹部超音波検査で肝右葉に低エコーの腫瘤を認めた.
    精査にて, CT,および腹部血管造影でも肝右葉に約7×5cmの腫瘍を,さらに注腸,内視鏡検査でBauhin弁より肛門側3cmの上行結腸に約2cm径のI型大腸癌を認めた.
    以上より,回盲部切除,および肝拡大右葉切除を施行,術後病理組織診断にて早期大腸癌,胆管細胞癌の同時性重複癌と診断された.
    われわれの経験から早期大腸癌に併存した肝病変で,肝転移に特徴的な画像所見を示さなかった場合,本例でみられた様な重複癌の可能性も考慮し,対処することが肝要であると考えられた.
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