今世紀に入り「バイオ燃料」ブームの到来とともに,石油危機後に続き再び注目を浴びるようになったバイオマス資源の利活用策について,そのあるべき姿を追究した結果を述べる。「バイオマス・ブーム」が主にバイオ燃料を中心とするエネルギー利用に関連することから,エネルギー源としてのバイオマスが環境問題に貢献するかどうかに考察の力点をおく。バイオマスを評価する視点として,まず単位面積・単位投入量当りなどの「質的」視点からの評価例をいくつか示した。エネルギー産出・投入比とともに,バイオ燃料の「カーボンニュートラル」性の評価指標として,CO
2削減比率νを提案した。また,太陽エネルギーからの電力供給手段としてのエネルギー生産密度,同じバイオマスをエネルギー源として自動車を走らせる場合のエネルギー利用効率等の評価例も示した。次いで「量的」な評価視点として,バイオマスの供給可能量と需要量の比較を試みた。次に,次世代のバイオ燃料資源として注目されている「ヤトロファ」について,フィリピン・インドネシア等での現地調査に基づいて行った実用可能性評価の結果をまとめた。
これらの評価結果より,バイオマスをエネルギー利用するのであれば、石油代替をめざす液体燃料化ではなく,木質系バイオマスを中心とした直接燃焼による地産地消型の利用システムが望ましいことが明らかになった。また,国内バイオマス資源の大半を占める木質系バイオマスの有効利用を図るための方策について検討し,提言をまとめた。
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