本研究の目的は,半側空間の効果が上肢および下肢の刺激-反応(S-R)整合性にどのように影響するのか,さらに,反応時間をPremotor time(PMT)とMotor time(MT)に分けて測定することにより,中枢の情報処理時間と末梢の運動時間に対するS-R整合性の効果が,上肢と下肢でどのように異なるのかを明らかにすることであった.左または右の刺激のどちらか一方と2つの反応効果器が同じ半側空間内に位置するように,頭部を90°回旋させる実験パラダイムを用いた.12人の被験者が2つの実験条件に参加した(左,右半側空間条件).S-Rの割り当ては,一方が整合(左/左,右/右)であり,もう一方が不整合(左/右,右/左)であった.PMTの分析結果は,上肢と下肢におけるS-R整合性の効果を示したが,それらは半側空間の要因から影響されなかった.したがって,上肢と下肢のS-R整合性は,半側空間の効果を受けず,刺激と反応の符号変換処理から強く影響されることが示唆された.また,上肢と下肢のPMTに対するS-R整合性の効果は,有意な差異が認められなかったが,MTに対するS-R整合性の効果は,上肢と下肢で異なることが認められた.つまり,中枢での情報処理時間に対するS-R整合性の効果は,上肢と下肢で同じであるが,末梢の運動制御に対するS-R整合性の効果は,上肢と下肢で異なることが示唆された.
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