バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
42 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
解説
  • 白谷 智子
    2018 年42 巻4 号 p. 198
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
  • 長谷 公隆
    2018 年42 巻4 号 p. 199-204
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    中枢神経疾患における上位運動ニューロン症候群の陽性徴候(positive symptoms)である痙縮は,腱反射亢進を伴う緊張性伸張反射(tonic stretch reflex)の速度依存性亢進と定義され,運動麻痺症状の増悪や異常肢位,痛みを招いて日常生活に悪影響を及ぼす.伸張反射の受容器である筋紡錘の感受性は錘内筋線維を支配するγ運動ニューロンによって制御される.痙縮筋には自発性運動単位発火がみられ,その頻度は中枢神経損傷後の回復とともに増大する.このα運動ニューロンの興奮性増大を説明する機序として,γ錐内運動システムや脊髄運動ニューロンの内在的特性,シナプス前抑制機構や相反抑制の減弱を含めた脊髄介在ニューロンの変化が考えられている.しかしながら,痙縮に伴う足クローヌスや痙縮の構造特性を含めて,明確な機序は明らかになっておらず,その病態生理の解明が望まれる.
  • 石濱 裕規
    2018 年42 巻4 号 p. 205-210
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    痙縮に対する薬物治療として,2010 年以降ボツリヌス療法が急速に普及し,筋電,神経刺激装置等を併用した投与により,深層筋へのアプローチも可能となった.投与量上限があるため,費用(投与量)対効果の考慮を要し,投与ならびにリハビリテーションでは,評価に基づいた対象筋選定と目標設定が重要である.目標設定に応じたアプローチとして,拮抗筋の随意運動促進や随意運動介助型電気刺激の併用,装具療法,ストレッチ,関節可動域訓練等が挙げられる.痙縮筋により阻害されていた筋活動促通とともに,痙縮筋の粘弾性抵抗を減少させ,筋の機械的性質の変化を防ぐことが,投与後リハビリテーションの重要な役割である.投与後の痙縮低下期間は通常3 ~ 4 カ月とされているため,定期的評価は重要である.痙縮の客観的評価方法の確立と普及が課題である.
  • 武田 湖太郎
    2018 年42 巻4 号 p. 211-218
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    痙縮は運動速度依存的な筋伸張反射の亢進状態であり,リハビリテーションを阻害する要因のひとつとなっている.痙縮の治療として運動療法や物理療法のほか神経ブロックを含む薬物療法が行われており,その効果を検証した報告も多い.痙縮に対する適切なリハビリテーションや治療効果の検証には,客観的で信頼性と妥当性の高い評価尺度が必須であるが,現状ではModified Ashworth Scale などの手技による主観的な評価方法が主流である.生体工学的な評価方法もこれまでに多く報告されてきたが臨床普及には至っていない.本稿では痙縮評価の徒手的手法および生体工学的手法を紹介し,それぞれの特徴と課題について解説する.
  • 竹林 崇
    2018 年42 巻4 号 p. 219-224
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    脳卒中後の上肢麻痺とともに後遺症の一つとして痙縮が挙げられる.痙縮は上肢の運動障害の阻害因子とも考えられており,この症候群に対するアプローチの確立は急務とされている.American Heart Association のガイドラインでは,ボツリヌス毒素 A 型施注や神経筋電気刺激が痙縮の抑制効果においてエビデンスを有している.一方,課題指向型アプローチである Constraint-induced movement therapy(CI 療法)については,エビデンスを確立するには至っていないが,痙縮抑制の効果およびメカニズムを示す論文もある.特にボツリヌス毒素 A 型施注と併用した際には大きな痙縮抑制効果を示すといった論文も認める.本稿では CI 療法の痙縮抑制の疫学的な背景およびメカニズムについて言及するとともに,ボツリヌス毒素 A 型施注との併用療法の効果についても言及する.
  • 白谷 智子
    2018 年42 巻4 号 p. 225-230
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    痙縮筋の特徴として,安静時の短潜時伸張反射は亢進する一方で,歩行能力に関与する中・長潜時伸張反射は減弱することがあげられる.本稿では,近年の研究を参照しつつ,痙縮筋に対する筋力強化について概説した.痙縮筋に対して抵抗運動を行う際には,連合反応を抑制する必要性はなく,また,拮抗筋の過緊張ではなく,主動筋の筋力低下に対するアプローチにより機能向上を図ることの重要性を示した.具体的な事例として,脳性麻痺児・脳卒中後片麻痺患者に対する抵抗運動により筋力強化に効果が示され,歩行能力が高まることを解説した.しかし,麻痺側の随意性がない場合には,直接的に上肢や下肢筋群を収縮させることは難しい.その場合は,遠隔の随意性の高い部位からの抵抗運動による間接的アプローチ法により歩行の改善が可能なことを紹介した.また,抵抗運動により,中・長潜時伸張反射の減弱が改善される生理学的なエビデンスについて十分ではないが,H 波と fMRI による研究を紹介した.
  • 〜上肢装具を中心に〜
    猪狩 もとみ
    2018 年42 巻4 号 p. 231-236
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/11/01
    ジャーナル フリー
    脳卒中後の痙縮は,関節の円滑な運動を妨げ,筋の短縮や関節拘縮,疼痛の原因となり,リハビリテーションの阻害因子となる.麻痺側上肢の痙縮を低減するためには,発症直後からの運動療法と装具療法が重要となる.痙縮に対する上肢装具の目的は,筋の持続伸張による短縮や変形・関節拘縮の改善と,手の機能を代償するために使用される.また装具は,ボツリヌス療法と併用することで,短縮した上肢屈筋群の伸長が容易になるため,手指の随意性の改善に有用である.これによって発症後数年経過した対象者でも装具で筋の短縮を改善し,手の機能を代償する装具の使用によって麻痺側上肢の機能改善を目指すことが可能になってきている.
研究
  • 安川 洵, 増田 正
    2018 年42 巻4 号 p. 237-242
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー
    歩幅を始めとする歩行パラメータは,有疾患者の身体機能としばしば関連する.近年,反射マーカを必要としないモー ションキャプチャ装置Microsoft KinectTM が開発され,これをリハビリテーション分野に応用するための研究が数多く行われてきたが,Kinect の出力する骨格情報(スケルトン)の精度がリハビリテーション評価目的には十分でないことが指摘された.Kinect では,赤外線カメラで撮影した距離画像を基にスケルトンを自動抽出しているが,スケルトンの基になる距離画像を直接解析すれば推定精度を改善できる可能性がある.そこで本研究では,スケルトン(SKL)および距離画像(DEP),反射マーカ式動作計測装置(OptiTrack:OPT)を用いて歩行パラメータを推定し,これらの精度評価を行った.健常成人男性10 名を対象として,トレッドミル上歩行中の歩幅を測定し,基準値としたOPT に対するバイアスと二乗和平均平方根誤差(RMSE)を求めた.得られた歩幅のRMSE は,DEP がSKL よりも有意に小さい数値を示した.これにより,Kinect の距離画像を解析することにより,Kinect のスケルトンよりは精度が高く,かつ,従来の反射マーカ式動作計測装置よりは簡便な歩行計測システムを構成できる可能性が示された.
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