バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
25 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
解説
  • 今水 寛
    原稿種別: 本文
    2001 年 25 巻 4 号 p. 152-160
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    人間は目や耳を通して外部世界から情報を得て,適切な情報処理を行い,外部世界の対象物に働きかけている.言語や思考など,人間に特有と考えられている高度な脳機能や知性は,氷山の一角で,海面下でそれらを支えているのは,他の動物にも遍く備わる感覚情報処理機能や運動制御機能である.特に感覚と運動を統合する機能は重要であると考えられる.筆者らは,コンピュータ7ウスと対応するカーソルの間に回転変換を入れて,わざと使いにくくしたマウス(回転マウス)の操作を,被験者がどのように学習するかを詳細に調べた.その結果は,感覚運動統合を学習する脳の仕組みと,感覚運動統合を基礎とした高次認知機能を解明する糸口となった.
  • 大須 理英子
    原稿種別: 本文
    2001 年 25 巻 4 号 p. 161-166
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    練習を繰り返すことにより運動技能は向上する.身体の柔軟性はこのときどのように変化しているのだろうか.表面筋電図を用いた方法により,学習に伴い剛性が低下すること,また失敗が直後の試行の剛性に影響を与えることがわかった.これは内部モデルを用いた予測的制御と剛性を用いたフィードバック制御がうまく組み合わされていることを示す.また,不安定な状況では,剛性を予測的,適応的に変化させて対応しており,生体がインピーダンスコントロールを実現していることがわかった.このように,神経系は外界を予測し,巧みに適応している.このような機能に注目したリハビリテーションの可能性を探ることも有用であろう.
  • 鮫島 和行, 銅谷 賢治
    原稿種別: 本文
    2001 年 25 巻 4 号 p. 167-171
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    大脳基底核は大脳皮質と脳幹の間に位置する一連の神経核の集まりの総称である.大脳基底核はその障害によって運動機能の異常が生じることから運動の実行や計画にかかわり,また報酬に依存する神経活動から,目的指向行動を形成するための重要な役割を担うと考えられている.しかし,複雑に絡み合った核群の機能的役割はまだ謎のままである.本解説では,まず報酬をもとにした学習の枠組みである「強化学習」について解説し,次にこれまで調べられてきた大脳基底核にかかわる電気生理学,解剖学からの知見を紹介する.さらにこれらをもとに,我々が提案している大脳基底核の強化学習モデルについて解説する.
  • 春野 雅彦
    原稿種別: 本文
    2001 年 25 巻 4 号 p. 172-176
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    我々は日常の何気ない動作の中で実に巧みに複合的で階層的な運動を行っている.例えば,テニスをするにはボールの回転や着地点といった目的が存在し,その目的を実現するための個々の動作は更に多くの要素運動の複雑な組み合わせで構成されている.本稿ではこのような階層的運動の学習機構の解明を目指し我々が計算論的立場から行っている研究について解説する.特に予測モデルを用いた行動の結果予測と,制御モデルによる実際の制御を組み合わせて学習制御を行うMOSAICアーキテクテャに焦点を絞り,その基本動作原理,シミュレーション,任意の階層構造への拡張等について紹介することとしたい.
  • 道免 和久
    原稿種別: 本文
    2001 年 25 巻 4 号 p. 177-182
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション(以下リハビリ)で重要な運動学習の概念を整理し,脳研究から明らかになった運動学習理論のリハビリ治療への応用を紹介した.古くからリハビリにおける運動学習で重要と言われてきたエングラムの概念は,現代の運動学習理論では,教師あり熟練学習における内部モデルの構築や順序学習の中に見いだすことができる.そのうち,内部モデルの再構築をめざす運動療法をフィードフォワード運動訓練と名付け,大脳錐体路障害の片麻痺患者の患側上肢で実践した.その結果,フィードバック誤差学習の回路が残存する例では,運動課題の繰り返しによって,徐々に運動のなめらかさの指標が向上し,運動学習が成り立つことがわかった.今後,運動学習理論をリハビリ治療の中で再検討することが重要である.
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