バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
37 巻, 4 号
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解説
  • 小河原 慶太
    2013 年37 巻4 号 p. 204
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
  • 田中 彰吾
    2013 年37 巻4 号 p. 205-210
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    現象学的な観点から運動学習について再考する.現象学的身体論の哲学者メルロ=ポンティは,脳損傷により視覚性失認に陥った患者シュナイダーの症状を分析することで,身体図式の観点から運動障害の本質を明らかにしている.本稿では,この分析を手がかりにして,身体運動の記述に必要な三つの概念(身体図式,身体イメージ,指向弓)を析出する.そして,メルロ=ポンティの考察を順序立てて逆方向にたどることで,運動学習の過程を再考する.学習者は,指向弓を発動させて可能的状況を投射し,身体イメージを通じて運動のシミュレーションを行い,新しく創発する運動を経験し,それを身体図式に定着させてゆく.身体運動のコツをつかむことは,身体図式の再編を経験することなのである.
  • -運動と視覚情報処理について-
    小野 誠司
    2013 年37 巻4 号 p. 211-214
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    視覚を通して得られる感覚情報は運動の発現と調節に重要な役割を果たしている.視覚情報に基づくヒトの卓越した運動制御の能力は如何にして実現されているのか.最近の研究から,運動の適応や学習によって,視覚入力を受ける脳神経細胞の受容感度に適応的な変化が起こることが示唆されている.本稿では,運動能力の発達と視覚情報処理に関与する神経メカニズムに注目し,覚醒行動下のサルの眼球運動を対象とした神経生理学的研究から得られた知見について解説する.
  • 吉川 政夫
    2013 年37 巻4 号 p. 215-220
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    オノマトペとは擬音語・擬態語を意味するフランス語である.擬音語・擬態語は五感による感覚印象を言葉で表現する言語活動である.筆者らは運動・スポーツ領域で活用されている擬音語・擬態語をスポーツオノマトペと名付けた.運動・スポーツ領域でオノマトペが使用される場合,運動の「コツ」を表現する際の言葉として使用されることが多い.具体的には,動きのパワー,スピード,持続性,タイミング,リズムを表現する言葉として使われていることが筆者らの調査結果の分析から明らかになった.本稿では,アスリートを対象とした調査から得られた運動・スポーツ領域で使用されているスポーツオノマトペの特性,発声されたスポーツオノマトペの音響分析結果から得られた特性,アスリートと指導者に対する意識調査結果と実験結果に基づくスポーツオノマトペの導入効果,運動のコツを伝えるスポーツオノマトペの可能性について言及した.
  • 小池 関也
    2013 年37 巻4 号 p. 221-226
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    スポーツ動作は,身体各筋の筋張力により生じる関節トルクを主な動力源として発現される高速・高加速な多体系の運動であり,この運動は,多体系としての身体の運動方程式によって支配されている.そこで本稿では,この運動方程式が有する関節トルク入力と身体動作出力との因果関係を利用して,運動の生成に対する,関節トルクの項,重力の項,そして遠心力・コリオリ力からなる運動依存の項などの貢献を定量化する手法について説明するとともに,これら各項の貢献が種目によって大きく異なることを示す.このような定量化は,一見すると複雑な身体運動生成のしくみを簡明に表すこと,そしてパフォーマンス向上に対する力学的な要因を抽出することなどを可能とし,運動のコツを説明することに繋がる.
  • 太田 憲
    2013 年37 巻4 号 p. 227-232
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    スポーツバイオメカニクスやロボティクスの研究によって運動スキルの理解が進んでも,そのスキルをヒトに伝達・伝承することは必ずしも容易ではない.この問題に対応するため,まず運動スキルを数理的に解明することが重要であるが,スポーツのような運動の場合,そのスキルは身体や用具のダイナミクスに強く拘束されるため,ダイナミクスベースで運動スキルを記述した.そして,この運動スキルの数理的な理解に基づいた運動スキルの可視化やその伝達方法の開発を行っているが,その数理をスキル獲得の支援に結びつけるフレームワークをサイバネティック・トレーニングと呼んでいる.ここでは主として投擲運動などのスイング運動のスキル獲得支援システムについて紹介する.
研究
  • 小林 吉之, 青木 慶, 渋沢 英次郎, 持丸 正明
    2013 年37 巻4 号 p. 233-242
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,将来的には誰もが手軽に歩行中のつまずきリスクを評価できるようにするために,ユーザの歩行中の床反力と事前に第三者の歩行データから作製されたモデルを用いて歩行中の最小つま先クリアランス(Minimum Toe Clearance:以下MTC)を推定する手法を提案することを目的とし,同手法によって作製されたモデルの安定性とそのモデルによる推定精度を評価した.はじめに,若年健常者26 名および高齢健常者6 名から,一歩行周期分の床反力とその一歩におけるMTC を計測した.次に,若年者のデータからランダムに20 名分のデータを取りだし,床反力からMTC を推定するモデルを10 通り作製した.提案手法の安定性は,各モデルの寄与率および各モデルに投入された独立変数で評価した.また提案手法の推定精度については,残りの若年者6 名分および高齢者6 名分のデータから得られたMTC の推定値と実測値との誤差(root meansquared error:以下RMSE)および両者の相関係数で評価した.その結果,寄与率は0.67±0.03 となり,各モデルに共通して選択される独立変数が5つあることも確認された.MTC の推定値と実測値とのRMSE は若年者が4.6±0.7[mm],高齢者が6.4±0.5[mm] と,先行研究に近い値を示し,更に推定値と実測値との相関係数は有意であった.以上のことから本研究で提案した手法は,モデルを作製する被験者群に関わらず安定して同質のモデルが作製でき,かつ先行研究の手法と近い精度でMTC を推定できることが確認された.
  • 山田 敦志, 村木 里志, 古達 浩史, 濱中 伸介
    2013 年37 巻4 号 p. 243-248
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究では子どもの全力疾走時の動作特性を理解することを目的とし,8 歳から11 歳までの小学生男子(子ども群:n=20)と20 代の成人男性(大人群:n=10)を対象に全力疾走動作を三次元動作解析により測定し比較を行った.体格の違いを考慮した疾走能力の指数において,子ども群は大人群に比べ特にピッチ指数が低い値を示した.その原因として,足部が前方で接地することと,その後の立脚期中盤に股関節と膝関節が屈曲する疾走動作が示唆された.
  • 巌 和隆, 長野 明紀, 羅 志偉
    2013 年37 巻4 号 p. 249-256
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    本論文では,走行運動について研究している.走行における障害を予防するために,走行運動時の床反力の初期ピーク値と脚部のスティフネスに着目し,視覚フィードバックを用いてこれらの値を調節する可能性について実験研究を行った.具体的には,力センサ内蔵のトレッドミル上を走る際の床反力を計測し,計測結果から床反力の初期ピーク値を計算する.また,質量ばねモデルを用いて脚部のスティフネスを推定する.これらの結果を視覚情報としてリアルタイムに被験者に与えるようバイオフィードバックを行った.その結果,バイオフィードバックが無い場合と比べて,これらの値の絶対値とばらつきをともに小さく調整できた.視覚フィードバックが走行動作に影響を与えることが明らかになり,この成果は今後ランニング障害の予防に活用できると期待される.
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