手は,自分自身の移動を強力に支援している.仰臥位からの立ち上がりのほか,乳児における四つ這い,手すりや杖の使用による歩行の支援,転倒時のリカバリ,そして車いすやヨット,自転車などの運転,そのほか航空機や船舶,列車などの道具を使った移動は,手があればこそ実現する.自動車は操舵のほか運転支援システムの操作にも手が関与している.ドローンに至っては立体視ゴーグルを通した視覚情報に基づいて,ヒトとはボディサイズも何もかも異なる機体を,ヒトよりも速い速度で移動させる.ヒトのロコモーションは直立二足歩行に興味が向きがちだが,手で道具を使うことによる移動もまた興味深い.ヒトの移動を支援する道具の設計方法論の一つとして,手による移動支援を俯瞰的にとらえる.
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