バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
27 巻, 4 号
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解説
  • 野村 泰伸
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻4 号 p. 168-172
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    生体システムでは創発的な振動ダイナミクスが機能の発現や病的崩壊に関与することがある. サイクリックな身体運動である歩行も創発的側面をもつ. 一方で, 脳によるヒトの身体運動の生成·制御原理を, 計算論的神経科学の方法論によって明らかにする試みが活発に行われている. ここでは, ヒトの歩行運動制御系において, これら2つのアプローチを統合する目的に関係するトピックスの解説を試みる.
  • 安達 泰治
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻4 号 p. 173-179
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    骨の成長·形成やモデリング, 欠損修復や再生過程は, 常に力学的環境変化の影響を受けることが知られている. これらの現象を理解する上で, 骨の形状や特性の変化と力学状態の変化が相互に影響を及ぼし合うため, 実験的検討だけではなく, 計算機シミュレーションを援用した評価や予測が重要となる. 本報では, 骨の形成·再生の数理モデル化とその計算バイオメカニクスシミュレーションについて検討した例として, 海綿骨に作成された欠損内における海綿骨の骨梁パターン形成シミュレーション, および骨欠損部に対して細胞活動の足場となるポーラスScaffoldを挿入した場合の骨再生シミュレーションについて紹介する.
  • 大日方 五郎, 巌見 武裕, 長谷 和徳
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻4 号 p. 180-185
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    生体の運動機構である筋骨格系には二関節筋に代表されるように筋配置や関節の自由度などに様々な冗長性を有しており, それらを適切に制御することで, 巧みな運動を実現している. このような身体の冗長自由度の運動学的特性は運動インピーダンスの概念を用いることで, 定量的に評価することができる. 本稿では, 身体の冗長自由度系の運動インピーダンス分析手法の基礎と, それを医療福祉分野に応用した例として, FESによる歩行再建を目指した筋の運動機能解析の研究を紹介する. さらに, 車いす駆動の上肢運動特性の運動インピーダンス解析の例についても紹介し, 運動インピーダンスを用いた身体運動機能解析の利点, 留意点について議論する.
  • —次世代シミュレータへの挑戦—
    山海 嘉之
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻4 号 p. 186-191
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    コンピュータシミュレーションは, 単に, 探求したいシステムの特性を調べたり, 理論と実験結果との関係を調べたりする段階を越えて, 設計論の開発や制御の中核的存在になろうとしている. 特に, ここ数年のコンピュータの高速化はスーパーコンピュータクラスの演算能力を身近なものとし, コンピュータシミュレーションは多くの研究者にとって強力な武器となっている. しかし, コンピュータの高性能化がもたらすシミュレーションの高度化は, シミュレーションに用いられるモデルを高次で複雑なものにしようとしている. モデルに含まれるパラメータ数が増加すれば, 現実に対応したシミュレーションは, むしろ困難な状況になってしまうだろう. モデリングに要求される対象システムの次数は, そのモデルをどのように用いるかに依存するが, 実空間を反映するパラメータを得ることができないモデルでは, 単に研究者の発想支援ツール程度に留まってしまう. 本稿では, 単なる発想支援ツールではなく, 実際に役立つシミュレーション技術として, 人間機械系における実空間とシミュレーション空間でのインタラクティブなシミュレーションの役割と有用性について述べる. 特に, ヒューマノイドロボットやロボットスーツ/パワードスーツにおけるモデリングとインタラクティブシミュレーション, さらに, 人工心臓分野におけるモデリングとインタラクティブ生体生理シミュレーションの役割と有用性について, 実例を交えて説明する.
  • 幸村 琢
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻4 号 p. 192-196
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    本稿では, コンピュータグラフィクスの動作生成手法のうちバイオメカニクスや人間工学においても応用可能である時空間制約(spacetime constraints), 逆運動学(inverse kinematics), 実時間反応動作生成について紹介する. また, これらの手法とバイオメカニクス分野で用いられる筋骨格モデルを組み合わせた筆者らの研究も紹介する. コンピュータグラフィクスにおいて人体動作を生成する手法は見た目重視だと考えられがちであるが, 近年は力学シミュレーションやバランス制御を重視した研究が多くなされており, バイオメカニクスや人間工学などへのさまざまな応用が考えられる. 以下では, そのようなトピックスをいくつか取り上げる.
研究
  • 山田 洋, 金子 公宏, 木塚 朝博, 金子 文成, 横井 孝志, 増田 正, 塩崎 知美, 岡田 守彦
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻4 号 p. 197-203
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, Twitch interpolation法と表面筋電図解析を用いて, 最大下筋収縮におけるヒトの筋持久力の評価の妥当性を検討することであった. 被験者は健康な男性14名であった. 7名の男性被験者は, 最大随意収縮(MVC)の20, 40, 60, 80, 100%強度の左手第一背側骨間筋(FDI)の等尺性外転をランダムに行った. 随意収縮と同時に, 経皮的に最大上強度の電気刺激が尺骨神経に加えられた. 得られた随意収縮力と単収縮力の関係に基づいて, 運動単位の動員度を示す随意的動員度が算出された(Twitch interpolation法). 随意的動員度100%を基準として, 心理的要因を除いた生理的MVCを算出した. 3名の被験者については, 従来のMVC(心理的MVC)が生理的MVCより小さく, 運動単位を完全に動員できていなかった. Twitch interpolationによりMVCを補正した被験者(MVC補正群, n=7)と補正しない被験者(コントロール群, n=7)は, 60%MVC被労困憊までの等尺性外転を行った. 疲労課題の持久時間は, 補正群でコントロール群と比較して有意に短かった(p<0.01). 補正群は持久時間のばらつきも小さかった. FDIより導出された表面筋電図中央周波数は, 両群において有意に低下した(p<0.01). 補正群では, 持久時間のばらつきが小さくなったにも関わらず, 筋電図変化のばらつきが大きくなった. このばらつきは個人のもつ絶対的な筋疲労耐性を反映していると考えられた. 本研究の結果は, 生理的MVC, 持久時間および表面筋電図変化パターンから, ヒトの随意収縮時の絶対筋持久力を評価できることを示唆している.
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