バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
34 巻 , 1 号
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解説
  • 大島 博, 田中 一成, 向井 千秋
    2010 年 34 巻 1 号 p. 2-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    宇宙航空研究開発機構は,2008年度に国内の研究者の協力を得て,月面滞在ミッションに必要な運動生理学に関する検討を行った.月面滞在ミッションでは,ISSミッションでの0Gと1Gの重力環境への対策に加えて,1/6Gの月面重力環境に対する生理学的対策が必要となる.月面歩行は,地上の歩行と異なるホッピング歩行で,介助要員がないため転倒のリスクが高まる.船外宇宙服を着用すると重心移動して歩行することになり,月面重力環境での最適な運動制御技術が必要である.月面運動生理学分野で期待される日本の技術としてシミュレーション・ロボット技術や,月面重力環境を模擬する地上検証技術などの可能性を紹介する.
  • 玄 相昊, 里宇 明元
    2010 年 34 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    環境適応能力はヒトの運動制御の本質であるため,そのメカニズムを探求しそれを臨床の実際に活かすためには,エビデンスに裏付けられた数理モデルの構築とその継続的な検証作業が欠かせない.宇宙環境・低重力環境はヒトの環境適応能力とそれに付随する運動制御を研究する格好の研究の場を提供しているが,良いモデルを構築するために被験者の運動生理学的データに加えて,ヒトと同じ身体機能を有するロボットの運動力学的データの援用が有効であると考えられる.本稿では,ヒトの筋骨格系を機能的に再現する等身大のヒューマノイドロボットを用いたいくつかの実験を交えながら,ヒトの重力適応能力とその全身運動の制御と学習における意義について議論する.
  • 小川 洋二郎, 岩﨑 賢一
    2010 年 34 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    微小重力環境曝露により生じる中心血液量の変化は循環調節系に影響を及ぼす.この影響は宇宙飛行からの帰還後に生じる起立耐性低下に関与しており,その機序解明および対抗処置の開発は宇宙医学分野において重要な課題である.本稿では,中心血液量の定量的・段階的な増減により体循環調節および脳循環調節が変化することを明らかにした研究報告を紹介し,さらに遠心重力発生装置がこれら循環調節系を維持もしくは増強するための有用な対抗処置となる可能性を述べた.
  • 野村 泰之
    2010 年 34 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    新たな宇宙開発時代にともなって低重力環境など異重力環境への対応が必要な時代となってきた.有史以来,地球上の1G環境で過ごしてきた人類にとって,異重力環境での平衡機能は未知な部分が多い.1G環境でのヒトの平衡バランスは,入力としての3系統への情報が,中枢前庭と高次脳での制御を経て合目的に全身に出力されることで維持されている.しかし異重力環境に突入して内耳前庭への入力情報が変化すると,入出力系統の統合混乱をきたして多様な平衡障害を生じ,宇宙酔いなども生じる.そこで異重力環境への適応をいかに速やかにこなし,平衡障害や空間識失調に陥らずに身体活動のパフォーマンスを保つかが鍵となり,それはひいては地上での平衡障害疾患治療へのフィードバックへもつながることになる.ここでは地上と低重力環境における平衡機能の差異を中心に述べる.
  • 小林 宏
    2010 年 34 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    機械技術の発達は,人間を極度の肉体的負担から解放した.一方で,農林水産業,製造業,建設業,介護など,幅広い分野において,依然として機械化困難な重労働作業が残されている.このような作業の負担を軽減するために,著者は着用型の筋力補助装置:マッスルスーツⓇの開発を行っている.マッスルスーツは,着用しても人間の動きを妨げない外骨格型の構造物の関節を,軽量,安価,高出力のMcKibben型人工筋肉で動かすことにより着用者の動きを補助するものであり,現在までに誰でもすぐに着用して効果を確認できるほどに完成度は上がっている.本稿では,マッスルスーツによる静的な筋力補助効果を示し,筋力を補助したり動作を妨げたりすることで重力シミュレータとして使えることを示す.
  • 田川 善彦, 志波 直人
    2010 年 34 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    宇宙飛行士や長期臥床を余儀なくされる患者には筋骨格系に廃用性の萎縮が起こる.この萎縮への対策は宇宙医学と臨床医学における主要な課題の一つである.そこで筆者らのグループは電気刺激を拮抗筋に印加したときに生じる力を主動筋の運動抵抗に利用する,電気刺激ハイブリッド訓練法を提唱した.これは重力が無くても筋力トレーニングが出来ることを意味する.また同訓練法は刺激モードの変更により運動アシストとなる.これまでハイブリッド訓練,運動アシストの有用性を確認してきた.廃用性委縮をもたらす環境,復帰すべき環境は対極関係にあり人間にとって極限環境と考えられる.ここでは極限環境をのりきる方策を紹介する.
  • ~NIRSによる脳循環の検討~
    弓削 類, 青景 遵之, 中川 慧, 波之平 晃一郎, 田中 英一郎
    2010 年 34 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    モビルスーツ型自立歩行支援ロボットを使って,免荷時のロボット使用時の歩行と通常歩行の健常者における脳活動を比較し,脳機能の視点から月面歩行のシミュレーションとしての可能性を検討した.月面歩行のシミュレーションを歩行と捉えるか,ジャンプと捉えるかでシミュレーションの方法が変わってくるものと考えられる.月面歩行のシミュレーションの技術開発は,ニューロリハビリテーションやスポーツ医学等の隣接学術領域にも多くの知見を与えるものと思われる.
研究
  • 吉田 武司, 長谷 和徳, 大日方 五郎, 羽田 昌敏
    原稿種別: 研究
    2010 年 34 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    自動車などのステアリング系の設計の現場では,操舵感のような感覚的な特性について解析的な評価をすることが望まれている.本研究では,ステアリング操作中の筋力負担を筋骨格モデルにより精度よく推定し,生体力学的観点からステアリングの反力特性を評価することを目的とした.まず,筋負担を推定するために3次元上肢筋骨格モデルを作成し,その精度を,実験で測定した筋電とモデルを用いた動力学計算で推定した筋負担とを比較することで評価した.次に,ステアリングの反力設計パラメータの変化の特徴が肩関節まわりの筋負担を評価する指標に表れることを示した.これらの結果から,ステアリング反力についての官能評価が筋負担の変化パターンと関連付けられる可能性を示唆した.
  • 高木 斗希夫, 藤井 範久, 小池 関也, 阿江 通良
    2010 年 34 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,打者が予めボール速度がわかっている条件(球速提示あり)とわからない条件(球速提示なし)において,球速の異なるボールに対する打撃動作の特徴および打撃の時間的調節に及ぼす動作の影響を検討することを目的とした.球速の異なるボール(85-87km/h,105-107km/h,125-127km/h)を被験者に打撃させ,3次元自動動作分析システムを用いて動作を計測した.バット速度および打撃の正確性を表す指標を算出するとともに,打撃動作における体幹部の回転運動と身体重心の並進運動についても検討した.その結果,球速提示あり・なしに関わらず,打者はボール速度が大きい場合,身体重心移動距離を小さくし,また体幹の捻りが最大となる時点からインパクトまでの上胴の回転動作範囲を小さくしていた.このことから,打者は球速提示あり・なしに関わらず,ボール速度の判断を行った後にボール速度に応じて打撃動作を調整していることなどが示唆された.また,球速提示なしでは,踏出足接地から下胴部の角速度が最大値を示す時点までの時間を調整することによって異なる速度のボールに対するタイミング調節を図っていることなどが示された.
ショートペーパー
  • 峯岸 由佳, 渡邉 高志, 古瀬 則夫
    2010 年 34 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    In this study, we aimed to realize a simplified method of gait evaluation using a wearable sensor system intended to be used in motor function rehabilitation or daily exercise for healthcare. This paper focused on gait event analysis by using a single gyroscope attached on the instep. Characteristic points such as a turning value or a zero-crossing of the angular velocity waveform measured with the gyroscope were compared with the actual time points of gait events (heel off, toe off, heel contact and foot flat) detected by aluminum electrode sets for normal speed and slow speed walking of three healthy subjects. By using detection rules that could be applied to the offline processing, more than 90% of the gait events were detected within the difference in detection time of 50ms. For the normal speed walking, more than 90% of the gait events were detected within the difference of 42ms by detection rules both in offline and real time processing. These results showed that the characteristic points of the angular velocity waveform corresponded well to the four gait events, allowing to be detected by a single sensor.
  • 久本 誠一, 樋口 雅俊, 田中 均, 藤井 尚子, 合田 真理子, 上津遊 恭平
    2010 年 34 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    The ultrasonic echo method is a simple and useful way of observing cross sections of extremities. However, due to the narrow view through the probe and its incapability to take images behind bones, combining multiple images is necessary in order to capture cross-sectional images of the whole extremity. Therefore, tissue deformation caused by pressing the probe when taking pictures is a problem. In this study, we investigated the conditions under which high-quality images of extremities can be taken, after avoiding the deformation of tissues by using a water bath together with the ultrasonic echo device. As a result, we found that use of a water bath having similar acoustical impedance to that of biological body and keeping the water at about 40 degrees while shooting enabled to obtain high-quality images.
  • 田中 悠也, 江原 義弘, 古川 勝弥, 水澤 一樹
    2010 年 34 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    Muscle forces can be predicted by an optimization method. Researchers use various parameters for this method. This means that the optimization method has not been established yet. The present paper examines how these parameters affect correlation coefficients between predicted muscle forces and electromyogram (EMG) to search a better combination of these parameters. The parameters investigated were (1) two moment-arms, (2) three kinds of denominators of objective function (methods to normalize predicted muscle forces), (3) five kinds of physical cross-sectional areas (PCSA) and (4) three kinds of muscle length and muscle fiber length. Three male subjects walked three times. The model we used had three joints and nine muscles of the lower leg in sagittal plane. Electrodes were placed on gluteus maximus, semitendinosus, rectus femoris, vastus medialis, gastrocnemius, soleus and tibial anterior muscle. Results showed that, in the best combination of the investigated parameters, the correlation coefficients between predicted muscle forces and EMG activities at six muscles except rectus femoris were 0.79 or more. In most cases, the coefficients at rectus femoris were 0.2 or less. Otherwise, the coefficients at rectus femoris were high (r=0.47 or 0.55), and the coefficients at hamstring and vasti muscles were lower.
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