胆道
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25 巻, 2 号
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原著
  • 矢野 公一, 千々岩 一男, 近藤 千博, 甲斐 真弘, 藤井 義郎, 大谷 和広, 大内田 次郎, 旭吉 雅秀, 永野 元章, 今村 直哉
    2011 年 25 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:混合型肝癌(CHC)は稀な原発性肝癌であり,その特徴は未だ十分解明されていない.CHCの外科切除例6例の臨床病理学的特徴と予後を検討し,肝細胞癌(HCC)切除377例と胆管細胞癌(CCC)切除36例と比較した.
    CHCは,全例男性で,83%の症例で,ウイルス肝炎マーカーが陽性で慢性肝炎や肝硬変を有し,組織学的血管浸潤を認めた.全例stage III以上であり,1年,2年生存率はそれぞれ66%,16%と予後不良であった.CHCは,CCCと比べると60歳以下,男性,慢性肝疾患例が多かったが,HCCと比べこれらの因子に差は無かった.CHCは,HCCに比べCEA陽性率が,CCCに比べPIVKA-II陽性率が高かった.CHCの術後再発部位はリンパ節,腹膜がHCCより有意に多く,その予後はHCCよりも有意に不良で,CCCと比べて不良であるが有意差は認めなかった.
    CHCは,患者背景因子はHCCと類似しているが,予後や再発形式はCCCに類似していた.
  • 廣川 文鋭, 林 道廣, 宮本 好晴, 朝隈 光弘, 米田 浩二, 井上 善博, 有坂 好史, 増田 大介, 谷川 允彦
    2011 年 25 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:近年,単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下SPC)が脚光を浴びている.しかし,従来の腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下CLC)と比較し低侵襲性ならび整容性に優れているものの,手術操作が独特であり,普及したとは言い難い.SPCが胆嚢良性疾患の標準手術になり得るためには,安全性が十分に担保される必要があり,そのためには手術手技の定型化が必須である.我々は,2009年6月よりSPCを導入し,2010年12月まで75例に施行した.手術時間を定型化の指標と考え,手術手技が確立する初期の14例をA早期群(A群),その後同一術者による41例をA後期群(B群),定型化の後に新たな3名の術者が施行した10例をExtra群(C群)とし比較した.Extra群(C群)の手術時間は90±17分とA後期群(B群)の94±32分と差を認めず,A早期群(A群)116±23分に比べ有意に短かく,また術中胆嚢損傷や術後合併症も認めず,術式を定型化することにより,SPCは標準手術となり得ると考えられた.
  • 松本 隆祐, 比佐 岳史, 大久保 浩毅
    2011 年 25 巻 2 号 p. 175-182
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:目的:高齢者総胆管結石に対する内視鏡治療の効果と安全性を検討すること.
    方法:80歳以上の初回総胆管結石128例を対象に治療経過,偶発症を検討した.
    結果:胆管挿管に成功した118例の76%が結石完全除去,24%が胆管ステント長期留置となった.ステント留置例は結石完全除去例と比較し,有意に結石径が大きく結石数が多かった.結石完全除去例の14.4%に結石再発による胆管炎を認めた.ステント留置例の28.6%に胆管炎を認めたがステント交換で改善し,胆管炎に起因する死亡例はなかった.結石完全除去例とステント留置例において,胆管炎再発時の入院期間・入院費用に有意差はなかった.2例が術後脳梗塞を発症し,抗凝固薬,抗血小板薬の長期休薬例であった.
    結語:高齢者総胆管結石治療において,結石完全除去に複数回の治療が必要な場合,抗凝固薬・抗血小板薬の長期休薬が脳梗塞を引き起こす可能性があり,胆管ステント長期留置は一選択肢になりうる.
総説
  • 山下 裕一, 木村 泰三, 山内 靖
    2011 年 25 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:現在,急性胆管炎のない胆嚢結石合併胆管結石症例に対する治療法は,「内視鏡外科診療ガイドライン」と「胆石症診療ガイドライン」に推奨治療法が記載されている.前者のガイドラインでは胆嚢摘出と総胆管切石を同時に施行する腹腔鏡下総胆管結石手術が推奨され,後者では内視鏡的胆管結石摘出術と腹腔鏡下胆嚢摘出術を組み合わせる治療法が推奨されている.両術式は専門性の高い手技であるが,現時点で共に科学的根拠のある文献に裏付けられている.1990年よりの日本内視鏡外科学会の隔年アンケート結果では,内視鏡的胆管結石摘出術と腹腔鏡下胆嚢摘出術を組み合わせる治療法が増加している.一方,2009年度のアンケート調査では全例開腹下手術で行うとする施設は42%に及び,この術式は臨床上重要である.以上より,急性胆管炎のない胆嚢結石合併胆管結石の治療法は,ガイドラインで推奨される専門性の高い2種類の治療法と開腹下手術の3術式が現在の標準術式である.
  • 滝川 一
    2011 年 25 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:胆汁酸は胆汁生成に重要であるとともに,ミセルを形成して胆汁中でのコレステロールの溶存や小腸内での脂質の消化,吸収にも重要な役割を果たしている.胆汁酸は肝でコレステロールから生合成され胆汁中に排泄され,その約95%が腸管上皮から吸収され門脈を経て肝に至り,肝で効率よく取込まれ再び胆汁中に排泄されるという腸肝循環を行っている.この腸肝循環には回腸末端および肝での効率の良い胆汁酸の輸送系が重要な役割を果たしている.肝細胞から毛細胆管へのコレステロールとリン脂質の排泄は各々,ABCG5/G7とMDR3により行われ,両者は単層の小胞を形成し,これにBSEPで排泄された胆汁酸が加わり物理化学的に安定なミセルを形成する.胆汁酸をリガンドとする核内レセプターであるFXRは,CYP7A1とNTCPを抑制しBSEPを活性化することにより,肝細胞内に蓄積した胆汁酸を低下させる.また,胆汁酸の細胞膜受容体TGR5も胆管胆汁の分泌を制御していると考えられている.
症例報告
  • 肱岡 範, 原 和生, 水野 伸匡, 高木 忠之, 小倉 健, 羽場 真, 千田 嘉毅, 佐野 力, 清水 泰博, 細田 和貴, 谷田部 恭 ...
    2011 年 25 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:十二指腸乳頭部腫瘍の術前病理診断は時として困難である.症例は67歳男性.肝障害を主訴に来院され,腹部CTおよびEUSにて非露出腫瘤型乳頭部癌が疑われた.ERC下のブラシ細胞診,生検では軽度異型上皮を認めたが,乳頭炎との鑑別は困難であった.確定診断を得るためにEUS-FNAを施行し腺癌の診断を得た.膵頭十二指腸切除術を施行し胆道癌取り扱い規約で高分化型腺癌,8×8 mm,panc0,du1,T2N0M0, stage IIの非露出腫瘤型乳頭部癌であった.乳頭部病変に対するEUS-FNAはERC下の生検法にて診断不能時に有用であると考え報告した.
  • 村田 泰洋, 田端 正己, 信岡 祐, 安積 良紀, 岸和田 昌之, 濱田 賢司, 水野 修吾, 臼井 正信, 伊佐地 秀司
    2011 年 25 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:ジェムザール(GEM)/S1併用による術前化学療法が著効を示した進行肝門部胆管癌の1切除例を報告する.症例は67才,男性.胃部不快感,尿濃染を主訴に前医を受診.外側前枝および前下区域枝からのPTBDの後,Bismuth IV型肝門部胆管癌と診断され,当科を紹介された.CTでは腫瘍は肝門部から門脈左枝に沿って肝内に浸潤しており,8番リンパ節が腫大していた.腫瘍マーカーはDUPAN-2が1600 U/ml 以上と高値であった.S1先行投与によるGem/S1併用化学療法(S1 80 mg/日,第1-21日,GEM 1000 mg,第8,22日)を2コース施行したところ,DUPAN-2は450 U/ml に低下し,治療開始前に認められたFDG-PETの腫瘍への集積が消失した.化学療法後19日後,尾状葉合併左葉切除を施行.治癒切除が可能で,術後DUPAN-2も正常化した.
  • 猪熊 孝実, 黒木 保, 足立 智彦, 兼松 隆之
    2011 年 25 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:消化器病領域において消化管出血は頻回に遭遇する疾患であるが,出血源が不明なこともしばしば経験する.今回,肝内胆管に穿破し,消化管出血を呈した肝動脈瘤の1例を経験した.症例は78歳女性.7年前,膵管内乳頭粘液性腫瘍に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行された.2009年3月中旬,新鮮血の吐下血を認め,近医へ救急搬送された.前医入院後も吐下血が持続し,4月上旬に当院へ転院となった.上部消化管内視鏡検査で胆管空腸吻合部を観察すると,肝内胆管より血液の流出を認めた.腹部造影CT検査では肝A4に動脈瘤を認め,肝内胆管への肝動脈瘤の穿破と診断した.肝動脈塞栓術を行い止血し,その後の経過は良好であった.
    肝動脈瘤胆管穿破はまれな病態であり,診断も困難と思われる.消化管内視鏡検査で消化管に出血源を同定できない症例においては肝動脈瘤胆管穿破による胆道出血も念頭におく必要がある.
  • 荒木 政人, 七島 篤志, 飛永 修一, 角田 順久, 中島 正洋, 永安 武
    2011 年 25 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は72歳の女性.腹痛・全身倦怠感を主訴に,急性膵炎および急性胆嚢炎の診断にて前医入院となった.急性胆嚢炎に対してPTGBDを施行したところ,胆汁細胞診にてclass IVの診断にて当院紹介となった.CT検査にて,胆嚢壁の軽度肥厚と内部に2 cm大の不整形隆起性病変を認め,胆嚢癌の術前診断にて,胆嚢床切除術およびD2リンパ節郭清術を施行した.病理組織学的には,ポリープ様隆起性病変は一部軟骨様分化を示し,肉腫様を呈していた.周囲には広範に粘膜内の異型腺管が認められ,高分化腺癌に相当する像であった.肉腫成分において紡錘形細胞には上皮系マーカー陰性,間葉系マーカーは陽性であり,癌腫成分において間葉系マーカーは陰性であった.以上より,真の胆嚢癌肉腫と診断された.一般に胆嚢癌肉腫の予後はきわめて不良と言われている.今回我々は,術後3年経過し再発の兆候を認めていない症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 七島 篤志, 阿保 貴章, 森崎 智仁, 植原 亮平, 三嶋 亮介, 大仁田 賢, 磯本 一
    2011 年 25 巻 2 号 p. 220-227
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:光線力学的療法(PDT)はポルフィリン関連化合物を用いた特殊なレーザ治療である.フォトフリンを用いたPDTでは体内への薬剤停滞により遮光期間が長い点や晩期皮膚炎の問題があったが,より薬物代謝が早い新規光感受性薬剤Npe6(レザフィリン)を用いたPDTを3例の胆管癌に施行した.2例は高度進行癌の非切除症例で,1例は外科的切除後の胆管断端癌遺残症例であった.非切除症例では内視鏡下経乳頭経路で胆管内病変に対し,切除症例では空腸瘻経路で胆管空腸吻合部にレーザ照射を行った.術後一過性に肝機能障害を認めたが速やかに軽快し,重篤な合併症は認めなかった.投与後遮光期間は2週間で,1例に軽度の日焼け様皮膚炎を認めた.今回の検討ではレザフィリン-PDTの安全性は確認できたが,症例を増やして皮膚炎や他の副作用の検討することに加え,腫瘍に対する局所効果も注意深くフォローする必要があるものと考える.
  • 林部 章
    2011 年 25 巻 2 号 p. 228-233
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:術後難治性良性胆道狭窄に対する治療は,保存的治療が優先されることは言うまでもない.即ち,直接胆道造影を施行し吻合部へのガイドワイヤーの通過が可能な症例に対しては,原則としてIVR治療を選択する.ガイドワイヤーの通過が困難であると判断される場合には,一般的ではないが磁石圧迫吻合などが奏功する場合もある.しかしながら,ガイドワイヤーの通過が困難であり,磁石圧迫吻合など保存的治療がすべて不成功となった場合には外科的治療を考慮せざるを得ない.外科的治療としては胆管空腸吻合などの胆道再建術が適応になるが,本来炎症性瘢痕組織による狭窄であり,高度の癒着を認めることが多く,肝門部グリソン系脈管の同定は容易ではない.今回我々は肝S4a部分切除によって肝門部胆管を露出させ,安全に胆管空腸吻合を施行し得た2例を経験したので,文献的考察を加えて報告した.
  • 伊藤 康博
    2011 年 25 巻 2 号 p. 234-238
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:逸脱した胆管ステントの大腸穿孔症例は,胆道系疾患に対する内視鏡的処置の合併症としては非常にまれである.我々は胆管ステントによるS状結腸憩室穿孔に対し手術を施行した症例を報告する.症例は85歳の男性,腹部CT検査にて逸脱した胆管ステントの一部がS状結腸壁から腹腔内に突出しており穿孔の可能性を考え手術を施行した.手術所見にて憩室穿孔部位に一致して胆管ステントが存在していた.局所切除を行い経過良好にて第8病日に退院された.憩室,傍ストマヘルニア,癒着,腹壁ヘルニアのある症例では脱落した胆管ステントによる穿孔の危険性がある.そのため,慎重な経過観察が必要である.
胆道専門医講座(5)先天性胆道拡張症・膵胆管合流異常
第2回 発生
  • 安藤 久實
    2011 年 25 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管,膵および十二指腸の発生や,膵胆管合流異常の形態的特徴を基にして膵胆管合流異常の発生を推論した.十二指腸の発生段階における再開通時において,胆管は十二指腸との間において2カ所と交通し,この2本の導管周辺は十二指腸閉鎖や狭窄の好発部位となっている.これと同様に,胆管と主膵管ならびに膵管分枝との間に癒合が生じると,胆管と膵管とは2カ所で交通することになる.この2カ所の間の胆管が再開通しなかった場合には,胆管は離断された状態となり,主膵管ならびに膵管分枝は閉鎖した胆管断端にそれぞれ開口し,膵胆管合流異常となる.他方,主膵管のみの癒合で空胞化が不十分となった場合には,胆管は狭窄して主膵管は狭窄部近傍に開口し,胆管の拡張程度の少ない膵胆管合流異常となる.他方,胆管と主膵管との癒合は生じたものの,胆管の再開通に障害をもたらさなかった場合には,胆管非拡張型膵胆管合流異常となる.
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