スギおが粉を培地基材としたエノキタケ菌床栽培において,ナメコ廃菌床が培地基材の置換材として利用可能かを二つの栽培試験で検証した。一つ目は,培地基材の全量をスギおが粉とした対照群(以下0%置換),培地基材のスギおが粉の容積率10,20,30,50,70,および100%をナメコ廃菌床で置換した培地を実験群とした。二つ目は,一つ目の実験群に炭酸カルシウムを1供試ビン当たり0.95 g添加した培地を実験群とした。その結果,0%置換に対して有意に子実体の収量が増えた実験群はなかったが,0%置換とほとんどの実験群との収量の差は10 g程度だった。また生育日数はどの実験群も0%置換と明確な差異はみられなかった。したがって,ナメコ廃菌床はエノキタケ菌床栽培において培地基材の置換材として利用できると思われた。
本研究は,林縁部でのニホンジカ(以下,シカ)の往来による物理的な土壌侵食の実態とそれに影響を与える要因を明らかにした。調査地は長野県佐久市望月町にある,望月高原牧場西側の生活道路と接したヒノキ林・カラマツ林の林縁部とした。土壌侵食調査は,露出根の地表面からの垂直の露出高(単位:cm)や方位などを複数地点で計測した。結果としては,林縁部にシカが往来した際に生じた直交方向の侵食跡が顕著に見られた。露出高はヒノキ林区よりもカラマツ林区で,平均値と標準偏差がいずれも高かった。さらに露出高の極座標分布は,法面最急方向での根系露出が多かったがそうではない方向にも一部見られた。傾斜角が急になるほど平均露出高や最大露出高が大きくなるため,林縁部の法面ではシカが往来した際の踏み込みにより平時の土砂剥落に加えて侵食土砂が加算される可能性があると考えられた。