日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
最新号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文
  • ―かき起こし人工播種後17年間のダケカンバとの種間競争からの示唆―
    原谷 日菜, 吉田 俊也
    原稿種別: 論文
    2025 年107 巻7 号 p. 149-155
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    かき起こし地でミズナラの成林を図ろうとする際にはカンバ類が主な競合植生となる。種間競争による成長への負の影響を考えるといずれかの時点でカンバ類を除伐することが求められる。一方で,樹形の通直性の維持の観点からは,枝分かれを抑制する高い本数密度が望ましい。そのため,成長と樹形双方への影響のバランスを考慮した除伐の適期の見極めが必要である。そこで本研究では,かき起こし後に堅果を播種し成林した17年生のミズナラ林を対象に,ミズナラの成長過程および樹形について,天然更新したダケカンバとの種間競争の影響を明らかにした。周囲のダケカンバの密度は,解析期間初期(5~11年生)にはミズナラの成長をむしろ促進する効果を示したが,後期(11~17年生)にはミズナラを被圧し,成長を抑制した。ミズナラのサイズは7年生時にダケカンバを下回り,その4~6年後に成長が低下する個体が多かった。一方,ダケカンバの密度は17年生の時点でも樹形の指標に正の影響を示した。除伐は,早期の時点だと成長および樹形に負の影響を示す可能性があり,むしろミズナラのサイズが競合個体を下回った後,成長低下が顕著になる数年の期間が適期と考えられた。

短報
  • 江崎 功二郎, 中村 克典, 前原 紀敏
    原稿種別: 短報
    2025 年107 巻7 号 p. 156-159
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    マツノマダラカミキリの幼虫駆除のために行う伐倒くん蒸処理において,被覆内でメチルイソチオシアネートガス濃度が低下した場合に処理丸太内で幼虫が生存し成虫として脱出する例を確認したので,その脱出時期について報告した。成虫脱出時期は無処理丸太で6月17日~7月11日,くん蒸処理丸太では6月20日~7月17日であったが,後者では脱出ピークの出現が遅く,累積脱出率50%到達日で比較するとくん蒸処理丸太では無処理より18日遅かった。くん蒸処理丸太で生き残り脱出した個体は脱出時期が遅れるため個体群全体としての成虫活動期間の長期化をもたらし,晩夏に発生する衰弱・枯死木を利用して繁殖できることから,マツ材線虫病のさらなる拡大に寄与する可能性がある。

  • 齋藤 央嗣
    原稿種別: 短報
    2025 年107 巻7 号 p. 160-164
    発行日: 2025/07/20
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    ブナ科の大型堅果は長期貯蔵が難しく,苗木生産や遺伝資源保存の課題となっている。本研究では,液体窒素によるブナ堅果の長期貯蔵の可否を明らかにするため,シリカゲル乾燥により4段階の含水率(4.3~13.5%)に調整し,厚手ビニール袋に密閉して液体窒素による超低温で20年間貯蔵した。その結果,貯蔵前後で含水率の有意な変化は認めらなかった。4段階の含水率に調整した堅果は,20年貯蔵後に2.0~26.0%が発芽したが,含水率調整前の76.0%に比べて有意に低下した。また,発芽から5カ月後の実生高および根元直径は,発芽試験前年に採取した堅果由来の実生と有意差がなかった。これらの結果は,ブナ堅果の液体窒素を用いた長期貯蔵の有効性を示すものであり,ブナの遺伝資源保存への活用が期待される。

その他:シンポジウムの記録
feedback
Top