日本森林学会誌
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最新号
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論文
  • 渡邉 仁志, 片桐 奈々, 宇敷 京介, 岡本 卓也
    原稿種別: 論文
    2025 年107 巻11-12 号 p. 239-246
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    急傾斜地のヒノキ人工林において,列状間伐とニホンジカによる高い採食圧が,下層植生の動態と表土流亡の抑止に及ぼす影響を,7年間にわたり調査した。52年生林分を2伐4残(または5残)で伐採し,防鹿柵の有無(柵内/柵外)と列の種類(伐列/残列)を組み合わせた4条件で,光条件の変化,下層植生の推移,および伐採後7年目の地表面の状態を評価した。伐採後の林内の相対照度は,すべての調査区で植生発達に十分なレベルにあった。下層植生量は,柵内の伐列および残列の両列では,調査期間内を通じて増加した一方,柵外の両列では,伐採後の2年間は微増したものの,その後は変化量が小さかった。柵外の両列では,採食圧と表土流亡によってシカの不嗜好性種を含む多くの下層植生の定着が妨げられたため,変化量に列間の差異は認められなかった。また,表土流亡の程度を間接的に示す土壌侵食危険度指数は,植被率やリター被覆率が高い傾向にあった柵内伐列においてのみ,有意に低かった。これらの結果から,急傾斜地における列状間伐は,下層植生の回復および表土流亡の抑止に有効であるものの,採食圧が高い場合には,その効果が限定的になる可能性が示唆された。

  • 邱 晨, 陳 碧霞
    原稿種別: 論文
    2025 年107 巻11-12 号 p. 247-255
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    沖縄県の屋敷林・街路樹に用いられている樹木の防火効果の有効性について調べた。近年,沖縄屋那覇島の山火事など,気温の上昇や気候変動を原因とする火災の報道が連日絶えない。そこで,樹木の水分含有量,燃焼熱量,樹葉の容積,樹形の特徴と屋敷林の防火効果の関係について調べた。本研究では沖縄県で古くから屋敷林に利用されてきたフクギ(Garcinia subelliptica),テリハボク(Calophyllum inophyllum),リュウキュウコクタン(Diospyros ferrea),リュウキュウマツ(Pinus luchuensis),イスノキ(Distylium racemosum),イヌマキ(Podocarpus macrophyllus),サンゴジュ(Viburnum odoratissimum),沖縄県内の主要な樹種であるホルトノキ(Elaeocarpus zollingeri var. zollingeri),アマミアラカシ(Quercus glauca),ヤブニッケイ(Cinnamomum yabunikkei),タブノキ(Machilus thunbergii),シマトネリコ(Fraxinus griffithii)の12種類の樹木を対象に選んだ。イヌマキとリュウキュウマツは針葉樹であり,その他の10種類は広葉樹である。枝葉の含水率,燃焼熱量,葉の容量および樹形を比較した結果,リュウキュウコクタンは枝葉の含水率が高く,燃焼熱量が低く,葉の容量が大きく,樹形も密であることから,防火効果が高いことが示された。また,フクギ,イスノキ,テリハボク,ヤブニッケイ,サンゴジュについても,同様に高い含水率や密な樹形などの特性により,防火効果の有効性が認められた。一方,タブノキ,ホルトノキ,シマトネリコ,アマミアラカシ,イヌマキについては,含水率が低い,あるいは燃焼熱量が高いなどの特性から,防火効果の有効性は認められなかった。さらに,針葉樹であるリュウキュウマツは燃焼熱量が高く,含水率も低かったことから,防火効果は低いと考えられる。

短報
  • 渡部 大寛, 竹石 雄高, 上野 真義, 長谷川 陽一, 森口 喜成
    原稿種別: 短報
    2025 年107 巻11-12 号 p. 256-261
    発行日: 2025/11/20
    公開日: 2025/11/20
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    近年,スギ雄性不稔遺伝子MS1の候補遺伝子としてCJt020762が同定され,これまでに2つの雄性不稔対立遺伝子(ms1-1およびms1-2)が発見されている。本研究では,CJt020762のイントロンの一部を含めた全コード配列をPCR増幅して増幅断片の長さの違いを識別するPCRプライマーセット(DNAマーカー)を開発し,日本各地の育種素材1,500個体を対象に,挿入または欠失変異を持つ個体をマーカー選抜した。その結果,岩手県の育種素材で新たにコード配列に4塩基の欠失変異をヘテロ接合型で持つ2個体を選抜し,この対立遺伝子をms1-3と命名した。交配試験の結果,ms1-1およびms1-3をともに保有する個体(ms1-1/ms1-3)は雄性不稔であり,ms1-3が無花粉スギの育種に利用できることが示された。また本研究では,イントロン内に重複変異を生じた個体も認められたが,その個体は雄性不稔とならないことも示された。

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