日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
74 巻, 9 号
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  • 特に腎形成異常発生との関係
    後藤 敏明
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1493-1508
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿管膀胱接合部異常を伴つた諸疾患について所属腎の機能と形態について検討した. 特に尿管下端の異常と腎形成異常との関連については尿管発生との関連で検討し, いわゆる尿管芽分岐異常説で腎形成異常を説明出来るか否かなどについて検討した.
    単一性異所開口尿管では尿路内開口の4/14, 性路開口の13/13が無機能腎→全て形成異常腎. 前者は高度例多く後者は性差著明 (女≪男). 重複腎では全て尿路へ異所開口, 9/11が無機能腎→形成異常腎8.
    単純性尿管瘤では1/23のみ無機能腎→組織未検, 異所性尿管瘤では10/14が無機能腎→形成異常腎9. 軽度例が多い.
    非逆流性巨大尿管症では8/58が無機能腎→軽度形成異常腎2, 所属尿管は特異な所見あり.
    尿管末端部閉塞では2例共無機能・高度形成異常腎.
    逆流性巨大尿管症では4/49が無機能腎→軽度形成異常腎3. 傍尿管口憩室では単一例2/23, 重複例上半腎2/5, 下半腎3/5が無機能腎→形成異常腎4, 腎欠損2. 下半腎が最も高度.
    単一例・重複例, 瘤の有無. 異所性の方向を問わず異所開口尿管の大半は尿管芽分岐異常説で説明可能だが, 尿逆圧や尿管形成異常による修飾も否定出来ぬ. 非逆流性巨大尿管症では尿管の分化停止を起こした因子が同時に腎をも侵した可能性あり, 尿管末端部閉塞では尿逆圧説を認めざるをえないと考えた.
  • 上門 康成, 小川 隆敏, 平野 敦之, 船岡 信彦, 澤田 佳久, 宮崎 善久, 森 勝志, 戎野 庄一, 新家 俊明, 中村 順, 大川 ...
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1509-1517
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1972年1月1日より1981年12月31日までの10年間に, 和歌山県立医科大学泌尿器科学教室で診断・治療を行なつた膀胱癌症例330例のうち, 膀胱全摘除術を受けた症例は125例であつた. 年齢は24歳から80歳におよび, その平均は62歳であり, 性別では男子が107例, 女子が18例で, 男女比は5.9: 1であつた.
    全体としての5年相対生存率は51.2%であつた. Grade 1および grade 2の low grade 腫瘍の5年生存率は74.2%であり, 一方, grade 3および grade 4の high grade 腫瘍の5年生存率は40.0%にすぎず, 両群間に有意の差が認められた (p<0.05). Stage 別では, pT1およびpT2の low stage 腫瘍の5年生存率が67.0%であるのに対し, pT3およびpT4の high stage 腫瘍の5年生存率は26.2%で, 同様に有意差が認められた (p<0.01).
    癌死は31例でみられ, 全例が全摘除術後5年以内に死亡していた.
    術後合併症は術後死亡7例 (5.6%) を含む51例で発生した. その主なものは創感染, 創移開, 消化管出血, 腸瘻および腸閉塞であつた.
  • リドカイン添加温水灌流法の基礎的検討
    高橋 美郎
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1518-1525
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    抗癌剤加温水灌流法において, 灌流液にリドカインを添加することによつておこる膀胱壁の膜透過性の変化を, 雑種成犬を用いて, 検討した.
    抗癌剤としてブレオマイシン (以下BLMと略す) を使用し, 膀胱内に注入する灌流液中のBLM濃度によつて大きく2群に分け (60μg/ml, 120μg/ml), さらにそれに添加するリドカインの有無によつてそれぞれ2群に細分して実験を行つた.
    1) BLM 60μg/ml, 120μg/ml群とも, BLMの濃度差による血清内BLM濃度に差が認められたが, 各濃度群でリドカイン添加の有無による推計学的な有意差は認められなかつた.
    2) 膀胱壁のBLM濃度は, 膀胱全層, 粘膜層でリドカイン添加群が高値を示しており, 特に粘膜層において著しい差を認め, 推計学的にも有意差が認められた.
    これらの結果は膀胱壁の膜透過性がリドカインにより亢進し, 薬物の組織内 (特に粘膜) 移行がより容易になることを意味している.
  • 第2報 Heat electrical method による bolusmetry と尿管筋電図同時記録法
    原田 忠
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1526-1535
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂, 尿管の機能を評価するため, urine bolus volume と尿管筋電図を同時測定する新しい probe を作成した. heat electrical method に基づいた unit をFr. 4号尿管カテーテルの先端に設置し, 尿流を感知するようにしたい. さらに筋電図用に双極表面電極を先端から約5cmの部位に設置した.
    このカテーテル型プローブを用いて2つの基礎実験を行なつた. 注入ポンプと数種のネラトンカテーテルを用いて腎盂, 尿管モデルを作成し, ネラトン内の潅流量を bolusmetry の出力との関係を検討した. さらに犬を用いて, 尿量を変化させた場合の腎盂, 尿管機能を, 試作 probe により測定検討し, 次のような結果を得た.
    1) ネラトンカテーテル内の灌流量と heat electrical method により測定された voltage depression の間には logarithmic relation を認めた.
    2) 犬尿管の urine bolus volume はモデル実験から導かれた式によつてほぼ正確に算出された.
    3) 利尿剤投与により bolus volume は著しく増加し, 尿管蠕動は一過性に増加したが, 蠕動伝播速度は, ほとんど変らなかつた.
    4) 試作 probe により腎盂, 尿管機能を表わす parameter, 蠕動頻度, 蠕動速度, bolus volume, bolus length, および ureteral width などが測定可能である.
    以上の結果から, 本 probe を用いた urine bolusmetry は, 腎盂, 尿管機能を知るうえで, 基礎的な動物実験ばかりでなく, 臨床的にも有用であることを示唆していた.
  • 第15報 インポテンス症例の血中 adrenaline, noradrenalin, dopamine および serotonin 濃度について
    中山 孝一, 松橋 求, 牧 昭夫, 高波 真佐治, 村上 憲彦, 藤尾 幸司, 三浦 一陽, 白井 将文, 安藤 弘
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1536-1543
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    最近の研究で, 動物とヒトについての性機能は, dopamine により刺激され serotonin により抑制される機構があることが知られている. しかし, インポテンス患者にこれらの薬剤を投与しても臨床上充分な効果を得ることはできない. そこでわれわれは自律神経系のインポテンス発因の関与について知るべく, インポテンス患者67例および正常者10名に血中の adrenaline, noradrenalin, dopamine および serotonin 濃度を測定するとともに, 血中 testosterone や prolactin との相関関係を検討した.
    1. 血中 adrenaline 濃度は, コントロール群では0.015±0.007であつたが機能的インポテンス群 (13例) では0.036±0.031ng/mlと高値であつた (p<0.05).
    2. 血中 noradrenalin 濃度は, 機能的インポテンス群 (13例) では0.223±0.213ng/mlでありコントロール群の0.141±0.137ng/mlより高値であつたが有意差は認められなかつた.
    3. 血中 dopamine 濃度はインポテンス群 (53例) では6.52±10.21ng/mlと高値を示したがコントロール群 (3.75±0.82ng/ml) と有意差を認めなかつた.
    4. 血中 serotonin 濃度はコントロール群では0.012±0.006μg/mlでありインポテンス群では0.044±0.026μg/mlと高値を示した(p<0.001).
    5. 血中アミン類と血中 testosterone および prolactin 濃度との相関々係は認められなかつた.
  • 竹内 敏視, 磯貝 和俊, 吉田 宏, 松尾 定雄, 安田 鋭介, 金森 勇雄, 藤本 佳則, 藤広 茂, 栗山 学, 西浦 常雄
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1544-1549
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    99mTechnetium rhenium colloid を用いた prostatic lymphoscintigraphy を泌尿器疾患15例におこなつた. 前立腺肥大症6例の検討で, 前立腺の所属リンパ節は内腸骨リンパ節, 仙骨前リンパ節, 閉鎖リンパ節と考えられた. 前立腺癌6例および膀胱癌2例では, これらの骨盤内リンパ節の描出の不良のものが多く認められた.
    本法は手技が簡便で, 安全性が高く, 現在のところ他の検査法で描出できない骨盤内リンパ節の術前評価の一助となると考えられる.
  • その1 動物実験による基礎的検討
    森田 隆, 金 信和
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1550-1555
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    現在行われている Urethral Pressure Profile (UPP) は4個の側孔を有する catheter が多く用いられている. その理由は多孔の方が再現性が良いことにある. しかし, まさにそのために現在のUPPは total な面でしか尿道内圧を把えられないという欠点を持つている. 最近尿道の筋構築が前面後面で異なつているという報告もあり, 著者は, UPPの初期に再現性がないために見捨てられた1個の側孔を有する catheter を試作して雄, 雌犬を用いて尿道の前面方向, 後面方向, 左右方向で個別に尿道内圧曲線を記録した. その結果, 膀胱頚部の立ち上がり, UP max を示す位置, UP max の値がその方向によつて異なる事が判明した. この方向を考えたUPP記録は尿道内圧分布を立体的に考える上で特に有効であり, 種々の尿道疾患の検査に応用出来る可能性がある.
  • in vitro および in vivo 実験による薬理学的比較検討
    松尾 重樹
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1556-1574
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿道平滑筋の自律神経系要素を解明するために従来の筋切片を用いた in vitro の実験と, 尿道血管床の影響も同時に観察できる局所潅流下でUPPを用いた in vivo の実験を行い, 尿道に対する自律神経系薬剤, 筋弛緩剤そしてモノアミン薬剤の作用を比較検討した.
    phenylephrine と isoproterenol は in vitro でそれぞれ収縮と弛緩反応, そして in vivo で近位部尿道内圧の有意な上昇と下降反応を示した. phentolamine と propranolol は in vivo でのみ近位部尿道内圧の相反する反応を示した. acetylcholine は in vitro で軽度の収縮反応を示したものの, in vivo では有意な反応は示さず, atropine は in vitro, in vivo 共に全く反応を示さなかつた. serotonin は in vitro で軽度の収縮反応を示したが, in vivo では尿道一様に強力な収縮反応を示した. dopamine は in vitro で軽度の弛緩反応を示したが, in vivo では増量により近位部尿道内圧は上昇反応から下降反応へと変化した. succinylcholine は in vivo で遠位部尿道に限局した内圧下降反応を示した. UPPの反応はすべて一過性に変化した潅流圧が復元した時点でも認められ, 尿道固有の反応と考えられた.
    以上により, 近位部尿道では交感神経系要素が副交感神経系要素に比べて極めて優位であることを確認し, モノアミン薬剤もタイプの異なる神経伝達物質として尿道平滑筋に作用することが推察された.
  • 第6報 腸管カルシウム吸収型高カルシウム尿症の病態について
    郡 健二郎, 片岡 喜代徳, 井口 正典, 八竹 直, 栗田 孝
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1575-1582
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    「腸管Ca吸収型」高Ca尿症 (AH) の成因はビタミンDの保有量が多いためか, ビタミンDに対する腸粘膜の感受性が亢進しているためと考えた. そこで正常Ca尿症 (NC) とAHとの間のビタミン保有量をほぼ同量にする目的で活性型ビタミンDを充分量に投与した状態を設定しCa負荷試験をした. その結果を従来までの検査結果 (第4報, 本誌, 71, 1349, 1980) と比較しながら本症の成因を考察した.
    対象・方法: AH37例, HC22例に対し高Ca含有食の摂品を1週間制限した (その間の平均摂取最は約250mg/日). 検査3日前から連日PM9時に活性型ビタミンDを3μg投与した. Ca負荷試験の要領及び検査項目等は既報と同じである.
    結果・考察: 尿中Ca排泄量, 血清Ca及びCa++値の上昇は従来までの検査では, AHがNCに比べわずかに大きいにすぎなかつたが, 今回の検査ではAHにおける上昇が有意に大きくみられた. 特にAHの約2割の症例では, NCにおける尿中Ca排泄量の増加の最高値である300mg/g. Cr以上も増加した. これらのことから, AHの成因の一つにはビタミンDに対する感受性が他に比べ亢進していることが推察されると共に, AHの病態は2型以上に分類できる可能性が考えられた.
  • 中西 正一郎
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1583-1597
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    37症例 (男27, 女10) のカルシウム系結石患者に Pak らの方法に準じた経口カルシウム負荷試験を施行し尿中カルシウム排泄につき検討し, また主に副甲状腺機能を中心にその背景となるカルシウム代謝につき検討した.
    高カルシウム尿症は37例中, 19例に認め, うち3例は原発性副甲状腺機能亢進症と診断しまた13例は一次的に腸管からのカルシウム吸収亢進による高カルシウム尿症と考えられたが, 他の3例は高カルシウム尿症の成因は不明であつた.
    18例は尿中カルシウム排泄は正常と思われたが, これら症例に低リン血症, 高尿酸血症, 高尿酸尿症を比較的多く認め, 結局37例中何んらかの異常は28例, 75%と高率に認められた.
    カルシウム系結石の成因としての高カルシウム尿症の診断に経口カルシウム負荷試験は有用であると考えられた.
  • 1. High Performance Liquid Anion Exchange Chromatography による尿中蓚酸の測定
    戎野 庄一, 北川 道夫, 森本 鎮義, 宮崎 善久, 南方 茂樹, 安川 修, 大川 順正
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1598-1605
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    水溶性の carbodiimide である 1-ethyl-3 (3-dimethyl aminopropyl) carbodiimide をカップリング試薬とし, o-nitrophenyl-hydrazine を用いた比色反応を高速液体クロマトグラフィーのポストラベル検出系に応用したカルボン酸分析計を改良し, 尿中蓚酸を高感度に測定し得た. 本法における蓚酸の添加回収率は103%, であり, triplicate assay での変動係数は0.7~2.8%と信頼にたるものであつた. 本法によつて測定し得た健康人の24時間尿中蓚酸排泄量は男子329±96μmol/day (n=20) 及び女子282±113μmol/day (n=10) であつた.
    本法は過塩素酸による除蛋白操作のみの前処理で測定でき高感度でしかも誤差の少ない定量法であることから, 日常検査の一つとしての蓚酸の測定に役立つものと考える.
  • 打林 忠雄
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1606-1620
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    in vitro におけるコロニー形成法を用いて, ACNU, bleomycin, cis-platinum, mitomycin C, adriamycin, thio-TEPA, VP-16および carbazilquinone の殺細胞効果を樹立ヒト膀胱癌由来細胞株 (KK-47およびKW-103) およびHeLa細胞株について検討した. その結果得られた濃度依存曲線より抗癌剤を次の2つの型に分類した. 1つは二相性の型であり, bleomycin 処理の場合にみられ, その他の薬剤は全て漸減する型である. 生残率に基づき薬剤の50%および90%発育阻止濃度 (IC50およびIC90) を算出した. 2時間または24時間薬剤接触時のIC50またはIC90値によれば, mitomycin C, adriamycin および carbazilquinone が3細胞株に対して最も強い殺細胞効果を示した. 推計処理分析によれば, VP-16および cis-platinum 以外は3細胞株間に感受性の差が認められた. この濃度依存曲線, IC50およびIC90値は, 膀胱癌治療上有効な薬剤の選択や, 化学療法の regimen を立てる際の1つの指標として用いうる可能性につき, 検討の価値あるものと考えられた.
  • 岡村 廉晴, 高松 恒夫, 小柳 知彦
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1621-1626
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    自・他覚的に排尿障害のある慢性期脊損患者に塩酸プラゾシン: ミニプレスを投与し, 投与前後充分な評価をし得た17例について検討した.
    88%に自覚的排尿障害の改善を認め, 残尿率による他覚的排尿障害の改善度では著効70%, 有効6%, 無効24%であつた. 投与前に6例の膀胱尿管逆流を認めていたが, うち3例は投与開始後1週間で逆流の消失を認めた. autonmous dysrenexia を1例認めていたが, プラゾシン投与により予防し得た. 副作用として胃部不快感1例の他顕著なものはなかつた. 血圧に対する影響では, 高血圧であつたものに降圧作用を認めたが, 正常血圧であつたものにはほとんど影響を認めなかつた.
  • 第1編 ヒト尿中 trypsin inhibitor の精製とその物理化学的特性
    前原 進
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1627-1640
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト尿中 trypsin inhibitor (UTI) を比較的簡単な方法で, 中性付近の溶液を使用することにより高率に精製することに成功した. 得られたUTIは分子量67,000で, trypsin 活性を強く阻害し, kallikrein, α-chymotrypsin 活性に対しても弱いながら阻害能が認められたが, urokinase, plasmin, thrombin に対しては阻害作用を示さなかつた. UTIの起源を追求する目的で抗UTI抗体を作製し, 血中におけるUTIと同一の抗原性を有する inhibitor の存在を検討したところ, 抗UTIウサギ血清と反応する物質の存在を認め, それが既知の種々血中 trypsin inhibitor とは抗原性が異なることより, 新しい物質である可能性が考えられた.
  • 第2編 Radioimmunoassay 法によるヒト尿中 trypsin inhibitor の測定とその基礎的臨床的検討
    前原 進
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1641-1652
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中 trypsin inhibitor (UTI) の測定は従来より酵素法によりなされているが, その測定操作はかなり多様でいまだ統一した方法はない. 著者は精製したUTIとその抗体を使用して radioimmunoassay (RIA) 法を考案し, この方法によるUTIの測定を基礎的ならびに臨床的に検討して以下の結果を得た.
    1. UTIのヨード標識は lactoperoxidase 法により抗原性を失うことなく可能であつた. 二抗体法によるRIAでは, UTI蛋白量として25~200ngの範囲が定量可能であり, 各測定内および各測定間の変動と回収率は良好な成績を示した. 被検尿を採取後に直ちに-70℃に凍結して保存すれば, 約1カ月の保存期間中はUTIの値は安定であつた.
    2. 正常ヒト新鮮尿を凍結乾燥し, それを Sephacryl S-200にかけてゲル濾過を行い, 溶出分画を酵素法およびRIA法で測定したところ, trypsin 阻害活性とRIA活性は分子量67,000の分画に単一の peak として認められた.
    3. 正常ヒト尿中UTIの測定値は酵素法とRIA法との間で正の相関が認められた. 正常ヒト尿中クレアチニン, 蛋白量などとUTIとの間には相関はなく, UTI排泄量は尿量に影響を受けなかつた.
    4. UTIの日内変動では, 男女ともに昼間が高く夜間は低値を示した. いずれの時間帯においても男子が女子より高値を示した.
    5. 妊婦のUTI排泄量は正常女子のそれより有意に高く, また妊娠週が進むにつれて増加傾向にあつた.
  • 第3編 抗尿中 trypsin inhibitor 抗体と反応する血中蛋白についての検討
    前原 進
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1653-1660
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト尿中 trypsin inhibitor (UTI) の起源を追究する目的で抗UTI抗体-sepharose を使用した immunoadsorbent column chromatography 法を利用し, 抗UTI抗体と反応する血中蛋白 (UTI様蛋白) の抽出を試みた. その結果は非吸着分画には抗 inter-α-trypsin inhibitor 抗体と反応する蛋白が認められたが, 吸着分画には抗UTI抗体と反応する蛋白のみが認められて抗 inter-α-trypsin inhibitor 抗体と反応する蛋白は含まれなかつた. このUTIと抗原性を同一にする血中蛋白を polyacrylamide gel disc 電気泳動 (PAGE) で精製することに成功し, 精製された蛋白は sodium dodecyl sulfate-PAGE にて分子量は約90,000で, 免疫電気泳動ではα-領域に泳動されることが明らかとなつた. この蛋白は trypsin を強く阻害するが, chymotrypsin, kallikrein に対しては弱い阻害能が認められるのみであつた.
  • 足木 淳男
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1661-1673
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    手術の侵襲に対する下垂体副腎皮質系の反応および各ホルモン間の関連を検索するために, 弘前大学泌尿器科において手術を施行した20例を対象に, 手術前, 手術当日, 手術後1, 2, 7日目の各ホルモンの日内変動を観察した. 検索項目は下垂体ホルモンとして adorenocorticotropic hormone (ACTH), prolactin (PRL), luteinnizing hormone (LH), follicle stimulating hormone (FSH), 副腎皮質ホルモンとして cortiol (F), dehydroepiandrosterone-sulfate (DHA-S), aldosterone (Ald), および男性ホルモンとしての testosterone (T) であり, 結果は次のごとくであつた.
    1) ACTH-F系は手術侵襲により亢進, その程度は侵襲の大きさ, 持続時間に関連する. しかしACTHとFの推移には明らかな差異が認められた. ACTHよりもFが侵襲の様相をより反映していると思われた.
    2) LH, FSHは手術侵襲に対し異なる反応推移を示す.
    3) PRLはACTHと同様に手術侵襲により増加反応を示すものの, その意義については不明である.
    4) DHA-Sは術後7日目に低下するなど, Fと異なる推移を示すことから, ACTH以外の因子も関係している可能性が考えられた.
    5) Tの低下がLHに先行しており, その低下にはFの増加が関与している可能性がある.
  • 小林 克己
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1674-1686
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路悪性腫瘍患者の circulating immune complexes (CICと略す) を二種類の測定法により検出した. Human erythrocyte assay はヒトO型赤血球がC3bに対する receptor を保有し, 活性化C3の存在下に immune adherence 現象を引き起こすことを利用してCICを定量する方法である. 他方 polyethylene glycol precipitation-complement consumption test (PEG-CC test と略す) はCICをポリエチレングリコールで沈殿させたのち既知力価の補体を反応させ, その溶血反応から補体消費率を求めてCICを定量する方法である. 膀胱癌患者においては Human erythrocyte assay により56例中18例 (32%) が陽性 (CIC値がmean+2SDである11μg/ml以上) を示した. PEG-CC test では37例中13例 (35%) が陽性 (補体消費率が20%以上) であつた. 両測定法による陽性率はほぼ同じで, かつ相関していた (r=0.671). 腫瘍の深達度と組織学的異型度により膀胱癌症例を分類し, CIC値を比較した. high stage 群 (T3+T4) のCIC値は21.6±16.9μg/mlで low stage 群 (T1+T2) のCIC値11.4±12.8μg/mlより有意に上昇していた. high grade 群 (G3) のCIC値は25.3±20μg/mlで low grade 群 (G1+G2) のCIC値10.5±9.8μg/mlより有意に上昇していた. CIC値の陽性膀胱癌患者群の3年生存率は31%であり, 正常値であつた患者群のそれより著明に低く, CIC値は患者の予後を推定する上で有用な指標となり得ることが示唆された. 腎癌患者においては26例中8例 (30%) が陽性であつた. 遠隔転移群のCIC値は22.3±20.7μg/mlで非遠隔転移群のCIC値10±7.3μg/mlに比べ有意に上昇しており, 膀胱癌症例と同様に stage との相関が認められた. 前立腺癌患者では20例中4例 (20%) が陽性を示した. 次にCIC値が陽性を示した膀胱癌患者血清を用いて患者末梢血リンパ球の cell-mediated cytotoxicity に及ぼす影響を調べた. Antibody dependent cell-mediated cytotoxicity 活性に対して患者血清は抑制傾向を示し, Natural killer 活性に対してはその抑制効果は有意であつた. この結果より in vivo においてCICが担癌患者の cell-mediated cytotoxicity に対し抑制的に作用している可能性が推察された.
  • 北村 唯一, 本間 之夫, 小林 克己, 西村 洋司
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1687-1691
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    40歳女性が, 1982年4月13日, 悪心, 嘔吐, 全身浮腫, 下腹部腫瘤を主訴として, 外来を訪れた. 彼女は既に1974年10月に単純子宮全摘と, 右卵管卵巣摘除を受けており, また, 1977年4月には, 骨盤内子宮内膜症により右尿管の外因性閉塞をきたしたために, 右腎尿管摘除を受けていた. 右腎尿管摘除後5年間は健康であつたが, 1982年1月, 悪心嘔吐が出現し, 徐々に進行した.
    逆行性腎盂造影を行なうと, 左尿管下端部の狭窄による水腎水尿管症が認められた. 既往歴より endometriosis と診断され, 1982年5月28日手術を施行した. 左卵巣にはチョコレート色をした, 鳩卵大の嚢腫を認め, 卵巣周囲には, 回腸と尿管下端が一塊となり腫瘤を形成していた. 左卵巣を摘除し, 回腸を遊離し, 左尿管周囲の線維性結合組織を切除し尿管を剥離した. また, 一時的に腎瘻を造設した. 線維性結合組織は病理学的に endometriosis と判明した. 念のため, 術後1,200radsの照射を施行した. 手術5カ月後, 左尿管の尿流が円滑で, 水腎症もみられないので, 腎痩を抜去した. 抜去後11カ月の現在, 患者は全く元気で, 検査値も正常範囲内である.
  • 柳沢 良三, 柄沢 英一, 飯泉 達夫, 富永 登志, 浅野 美智雄
    1983 年 74 巻 9 号 p. 1692-1699
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    下大静脈腫瘍栓塞から Budd-Chiari 症候群をきたした腎癌の1例を報告する.
    症例は50歳男で, 肉眼的血尿を認め, 当院を受診. 左上腹部に手拳大の腫瘤を触知. 排泄性腎盂撮影と動脈撮影にて左腎癌と診断し, 経腹的腎摘除術を施行. 腫瘍は左腎静脈を経て下大静脈内へと浸潤していた. 下大静脈内の腫瘍塞栓摘除は不可能であつた. 組織学的診断は淡明細胞型の腎腺癌であつた. 術後照射を左腎床部に施行し, 退院. 以後4年間に腰痛, 蛋白尿, 下肢の疼痛と浮腫, 高血圧, 血痰等が次々と出現. 腹水の出現をきたし, 最終入院となつたが, 肝および腎の機能障害が進み死亡. 剖検上, 両側総腸骨静脈から右心房にわたり, さらに肝静脈と右腎静脈へ浸潤する下大静脈腫瘍栓塞を認めた. 自験例を含め, 本邦文献上, 腎悪性腫瘍による Buld-Chiari 症候群10例を集計した. 10例中8例は腎癌, 2例は Wilms 腫瘍だつた. 性比では男に, 左右別では右にやや多い. 大部分は初発症状出現後は1年以内に, 腹水出現後は3カ月以内に死亡した. 死因は肝性昏睡が最も多い. 剖検ではほとんどに肝静脈内腫瘍栓塞を認めた. 臨床経過では, 蛋白尿, 下肢浮腫, 静脈怒張などの腫瘍栓塞による下大静脈閉塞症状が先行することが多く, 重要な所見と思われた.
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