日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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76 巻, 3 号
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  • 食事が尿中排泄物質に及ぼす影響と食事指導について
    井口 正典, 辻橋 宏典, 永井 信夫, 片岡 喜代徳, 加藤 良成, 郡 健二郎, 栗田 孝, 八竹 直
    1985 年 76 巻 3 号 p. 293-302
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    食事が尿中排泄物質 (とくに蓚酸) に及ばす影響について検討した.
    1) 健康成人男子9名に16時間の絶食の後普通食を与えると, Ca排泄量は食後2~4時間目にピークをしめし, 蓚酸は食後4~6時間目にはじめて有意に増加した. 食事負荷による食後6時間の増加分は, Ca 38.4%, 蓚酸11.8%, 尿酸7.1%, Mg 27.8%で, 普通食が尿中蓚酸排泄量に及ぼす影響はCaに比べてはるかに少なかった.
    2) 健康成人男子11名に一定の朝食と, 昼食として標準食, 高蓚酸食 (標準食+ホウレンソウの油イタメ150g), 高蓚酸高蛋白食を負荷した. 高蓚酸食負荷により蓚酸排泄量は標準食の約2倍増加したが, 逆にCa, Mg排泄量は標準食の約半分に減少した. 高蓚酸高蛋白質食を負荷すると, 高蓚酸食負荷時に比べてCa排泄量は有意に増加し, 逆に蓚酸排泄量は有意に減少した.
    3) 上記と同じ高蓚酸高蛋白食を absorptive hypercalciuria と診断した男子結石患者13名に負荷したところ, Ca排泄量は対照群より著明に増加していたが, 蓚酸排泄量には差がなかった.
    以上の結果ならびに既報の結石患者の食生活調査成績 (日本栄養・食糧学会誌37:1~7, 1984) をもとに, 再発予防法としての食事指導の実際について具体的に述べた.
  • (I) 家兎における第4仙骨神経活動電位の測定
    山田 薫
    1985 年 76 巻 3 号 p. 303-311
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿機構に重要な働きがある第2~4仙骨神経と膀胱利尿筋及び外括約筋との関係を明らかにする目的で, 家兎の排尿動態における第4仙骨神経電位及び外括約筋々電図を測定した.
    家兎の排尿動態における第4仙骨神経電位を観血的及び経皮的に測定し検討した結果, 第4仙骨神経の活動は膀胱利尿筋の活動をよく反映するとともに, 第4仙骨神経電位は経皮的に誘導し得ることを明らかにした.
    さらに, ヒト神経因性膀胱のモデルとして, 脊髄上位損傷家兎及び脊髄下位損傷家兎を作製し, 排尿動態における第4仙骨神経電位及び外括約筋々電図を経皮的に, 膀胱三角部筋々電図を観血的に, 膀胱内圧を経尿道的に測定し検討した結果, 第4仙骨神経の活動は膀胱三角部筋の活動及び膀胱内圧と密接に関係し, 各々の神経損傷における神経因性膀胱の特徴をよく反映した.
    以上のことより, 家兎において第4仙骨神経は膀胱利尿筋の支配神経として重要であり, しかも第4仙骨神経の活動は経皮的に容易に測定でき, 神経因性膀胱における神経活動の状態を直接誘導でき, 臨床的にも応用可能と考えられた.
  • (II) 神経因性膀胱症例における第4仙骨神経電位の測定
    山田 薫
    1985 年 76 巻 3 号 p. 312-324
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    第2~4仙骨神経と膀胱利尿筋及び外括約筋の関係は未だ明らかでない. 第I報では, 家兎を使用して排尿動態における第4仙骨神経電位, 外括約筋々電図, 膀胱三角部筋々電図及び膀胱内圧を測定し, 第4仙骨神経の活動は膀胱利尿筋の活動をよく反映していること, また第4仙骨神経電位は経皮的に容易に測定できることを報告した.
    本報では, 臨床症例において排尿動態における第4仙骨神経電位及び外括約筋々電図を経皮的に測定し, 第4仙骨神経の活動と膀胱利尿筋の活動との関係について検討した. 種々の膀胱麻痺を有する8症例の排尿動態における第4仙骨神経電位を測定したが, 各々の症例において, 第4仙骨神経の活動はその膀胱利尿筋の活動をよく反映した.
    この結果よりヒトの第4仙骨神経は膀胱利尿筋の支配神経として重要な神経であると考えられた. また, 容易に行える経皮的第4仙骨神経電位測定は, 神経因性膀胱の診断と治療に重要な情報を与えるものと考えられる.
  • 横山 英二, 古屋 聖児, 熊本 悦明
    1985 年 76 巻 3 号 p. 325-337
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    radioligand binding 法を用いて, ヒト正常前立腺および肥大前立腺組織中に存在するα1・β-交感神経受容体を初めて定量し比較検討した. α1-受容体の測定には3H-prazosin を, β-受容体には3H-DHA (dihydroalprenolol) を使用した. 前立腺組織から作製した粗細胞膜分画と3H-prazosin との binding assay を行ない Scatchard plot を用いた解析によって, 最大結合受容体数 (NBS) と親和恒数 (Kd) を算出した. その結果, 正常前立腺に比べて肥大前立腺組織ではα1-受容体の親和性には差が認められなかったものの単位蛋白質重量当たりのα1-受容体数は有意に増加していることが明らかにされた. すなわち, 前立腺のα1-受容体数は正常前立腺 (8例) では35.7±12.7fmol/mg protein (平均±S. D.)であったのに対し, 前立腺肥大症 (17例) では50.3±14.6fmol/mg protein であった. 前立腺肥大症においては, α-交感神経刺激が前立腺平滑筋の supersensitive な収縮をもたらすことが知られているが, これはα1受容体数の増加によるものと考えられた. さらに, 2つの仮説を設定して前立腺肥大症でα1受容体数が増加している理由を論述した. 一方, 3H-DHAを用いてβ-受容体数の定量を試みた結果, 正常前立腺および肥大前立腺組織間で有意差は認められなかったが後者でβ-受容体数が減少している傾向を認めた. またβ-受容体の親和性は前立腺肥大症で正常よりも低下していた.
  • 植田 秀雄
    1985 年 76 巻 3 号 p. 338-347
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    八竹らの考察した modified Snell & Snell 法により, 上部尿路結石症患者100例 (蓚酸カルシウム結石29例, 蓚酸カルシウム+リン酸カルシウム結石47例, その他の結石24例) と control 群20例の尿中蓚酸排泄量を測定した. 結石群中, 蓚酸カルシウム結石群の蓚酸排泄量は, 44.0±21.0mg/dayであり, control 群30.3±11.6mg/dayに比して有意な増加を認めたが (p<0.01), 他の2つの結石群と control 群の蓚酸排泄量には有意差は認めなかった. 蓚酸カルシウム結石群の蓚酸排泄量の有意な増加は蓚酸濃度の差に起因するものと考えられた.
    各結石群の非再発例, 再発例の蓚酸排泄量には, 再発例が軽度高値であるが有意差は認めなかった.
    蓚酸カルシウム+リン酸カルシウム結石群における結石蓚酸カルシウム含有率と蓚酸排泄量間に有意な相関関係は認めなかった.
    蓚酸カルシウム含有結石入院20例に施行したカルシウム制限負荷試験時の蓚酸排泄量は, 制限時に比し負荷時有意に減少し (p<0.05), 蓚酸の腸管吸収時におけるカルシウムの関与を強く示唆したが, 高カルシウム尿症例17例における蓚酸排泄量とカルシウム排泄量には有意な相関関係は認めなかった.
    以上の結果より, いわゆる純粋な蓚酸カルシウム結石症 (赤外線分光分析法にて蓚酸カルシウム98%以上) においては, 尿中蓚酸の結石形成に対する関与が強く示唆された.
  • 戸塚 一彦, 大場 修司, 徳江 章彦, 米瀬 泰行, 近喰 利光
    1985 年 76 巻 3 号 p. 348-353
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    自然排出された上部尿路結石 (自排石) のうち蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムから成る102結石の熱分析結果を検討した.
    1) 熱分析によって求めた weddellite/weddellite+whewellite とX線分析によって求めた weddellite/weddellite+whewellite にはr=0.954の相関を認めた.
    2) 熱分析によって求めた apatite 含有量と赤外線分光分析によって求めた apatite 含有量にはr=0.807の相関を認めた.
    3) 熱分析によって求めた有機物含有量は, 1.1%から17.2%にわたり, mean±S. D. は3.8±2.2%であった. 有機物含有量は whewellite 含有量とr=0.708の相関を示し, また apatite 含有量とr=0.517の相関を示した.
    次に, 主要構成成分により, 102結石を3群-Weddellite 群 (Weddellite>whewellite, weddellite+whewellite>apatite), whewellite 群 (whewellite>weddellite, Weddellite+whewellite>apatite), apatite 群 (apatite>weddellite+whewellite) に分類した.
    4) weddellite 群の結石重量は whewellite 群の結石重量よりも有意に重く (p<0.01), また apatite 群の結石重量よりも重い傾向を示した.
    5) apatite 含有量と weddellite/weddellite+whewellite は, weddellite 群と whewellite 群ではr=0.528の相関を示し, apatite 群ではr=0.742の相関を示した.
    以上より, weddellite 結石の形成には weddellite と apatite の関係が, また whewellite 結石及び apatite 結石の形成には有機物の存在が重要であることを指摘した.
  • 内田 豊昭, 小林 健一, 本田 直康, 荒川 孝, 小俣 二也, 遠藤 忠雄, 石橋 晃, 小柴 健
    1985 年 76 巻 3 号 p. 354-359
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術後の再発予防策として, 制癌剤による膀胱内注入療法は広く施行されるに至っている.
    しかし通常施行されている制癌剤濃度では, 注入後の膀胱刺激症状がしばしば強度に出現する. 著者らは, 過去5年間に, 表在性膀胱腫瘍に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術に際しての腫瘍細胞の散布および着床による再発の予防や副作用の軽減を主たる目的として, 術後3日間の低濃度制癌剤による持続膀胱内注入療法を施行してきた.
    症例数は81例で, うち30例にMMC, 34例にBLM, 17例にADMによる膀胱内注入療法が施行された. MMC, BLMおよびADMは, それぞれ生理食塩水2,000mlに40mg, 120mg, 100mgの割合で混入し, 術直後から72時間持続的に3-way catheter を使用して膀胱内注入を施行した. その結果, コントロール群 (68例) の4年および5年再発率がそれぞれ56%, 63%であったのに対し, MMC群の4年再発率41%, BLM群の5年再発率25%, ADM群の5年再発率30%と, 各群ともにコントロール群に比較し顕著な再発率の低下が認められた.
    副作用としては, ADM群において術後血尿の増大が認められたため, 膀注療法の中断を要した症例が2例あったのみで, 膀胱刺激症状などの訴えは全例に認めなかった.
    本法は, 膀胱腫瘍に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術後の再発予防法として有用と思われた.
  • 原理および実験的検討
    原田 忠
    1985 年 76 巻 3 号 p. 360-370
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿道コンプライアンスを測定する目的で impedance 法による尿道内圧測定用のプローベを試作し, 基礎的な検討を行った. プローベ構造はFr. 9の2腔カテーテルに2対の impedance 電極とそれを覆うシリコンゴムの balloon とからなり, これを尿道に留置し, balloon 内に食塩水を注入し, 尿道を拡張させる時の圧と, 尿道の広がりを測定できるようになっている. 本法は再現性および精度が高く, 臨床的に尿道コンプライアンス, 尿道閉鎖圧, 尿道最大断面積測定に充分使用できるものと考えられた. 前立腺肥大症術後患者に対し, 本法を施行したところ, 近位尿道は遠位尿道に比べ柔軟性に富んでおり, また外尿道括約筋の収縮を評価することができた.
  • 増田 富士男, 大西 哲郎, 仲田 浄治郎, 鈴木 正泰, 森 義人, 飯塚 典男, 町田 豊平
    1985 年 76 巻 3 号 p. 371-377
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌159例の paraneoplastic syndrome (metabolic, hematological, および biochemical syndrome) について検討した. metabolic syndrome は86例 (54.1%) にみとめられたが, そのうち発熱が最も多く61例 (38.4%), ついで体重減少36例 (22.6%), 全身倦怠感35例 (22.0%), 食思不振30例 (18.9%), 胃腸症状15例 (9.4%), 精索静脈瘤15例 (9.4%) にみとめられた. 発熱は腫瘤触知例に多くみられ, 赤沈亢進, 肝機能障害をともなうことが多く, stage とは相関しなかったが, high grade 例に多くみとめられ, 予後は不良であった. 精索静脈瘤がみられた15例中6例 (40.0%) は肝機能障害をともなっており, 他の metabolic syndrome の多くは high grade, high stage 例に高頻度にみられた. hematological syndrome としては貧血が33例 (20.8%), 赤血球増多症3例 (1.9%), 赤沈亢進が96例 (60.4%) にみとめられた. 貧血は血尿の有無とは関係しなかったが, high grade および high stage 例に多くみられた. 赤沈亢進は high grade, high stage の例に多くみとめられ, 発熱, α2-globulin の増加, 貧血をともなうものが多く, 予後は不良であった. biochemical syndrome としては肝機能障害が21例 (13.2%), α2-globulin 増加が91例 (57.2%), 高カルシウム血症が13例 (8.2%) にみられた. 肝機能障害は腫瘍の grade および stage のいずれとも相関しなかったが, α2-globulin 増加は high grade, high stage の例に多くみられ, 貧血, 赤沈亢進をともなうことが多く, 予後は不良であった.
  • 横川 正之, 福井 巌, 関根 英明, 山田 拓己, 野呂 彰, 根岸 壮治, 細田 和成, 河合 恒雄, 鷲塚 誠, 酒井 邦彦, 斉藤 ...
    1985 年 76 巻 3 号 p. 378-382
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    医歯大病院および関係病院の膀胱腫瘍症例のうち, 1981年末までの1,010例を集めて種々検討した. このシリーズでは, 初回に表在性膀胱腫瘍 (Ta, Tl) と判定し, その後2年以上, 平均3年6カ月追跡し得た515例の中から, 237例の腔内再発と38例の悪性進展例がみられた.
    まず腔内再発例を非再発例と比較しつつ検討したところ, 腔内再発のリスクの高いものは, 初回の腫瘍が, 多発性, 細胞診陽性, 病理学的にG2のものであった. 次に悪性進展例を非進展例と比較しつつ検討したところ, 初回の細胞診が(±)もしくは(+), 腫瘍が病理学的に high grade (G2, G3), 初回治療後も腔内再発を頻発 (1年1回以上) するものが, 悪性進展の risk factor と考えられた. また初回腫瘍の増殖様式 (乳頭状か非乳頭状か), 大きさ, 数は進展と関係があるようにみえるものの, 有意な risk factor とは言えないという成績であった.
    Risk factor をもつ例には厳重な追跡が大切であり, その際, 細胞診が重要な役割を演じうるものと考えられた.
  • 第2報 精細管内 atypical germ cellの電顕像
    佐藤 和宏, 折笠 精一
    1985 年 76 巻 3 号 p. 383-391
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍の組織発生に関する研究の一環として, 2例のヒト精巣腫瘍 (seminoma) の腫瘍周辺組織における精細管内 atypical germ cell (ATGC) の電顕像について述べた.
    ATGCは精細管壁に接して存在し核は円形または卵円形, 辺縁平滑で長径約12μm程度であり細胞質中に偏在している. 核小体は数個の断片として核膜と離れて認められ, その形態はひも状であるが糸まき状は呈さない. 細胞質小器官ではミトコンドリア, 粗面小胞体, リボゾーム等がみられる. リボゾームは細胞質中に広く分布しミトコンドリアは円形で径0.6μm程度であり intermitochondrial cementing substance は認められない. 粗面小胞体はよく発達し時に嚢状に拡張してみられる.
    こうした形態は通常のA, B型精祖細胞の微細構造と明らかに異なっていた.
    ATGCは精巣腫瘍の前駆細胞の可能性があり注目されているが, 今後更に基礎的, 臨床的検討が必要である事を述べた.
  • 当教室における20年間の臨床統計と日本病理剖検輯報の統計的観察
    河野 明, 前林 浩次, 香川 征, 黒川 一男
    1985 年 76 巻 3 号 p. 392-400
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去20年間に当科で経験した原発性陰茎癌32例の臨床的検討を行い, 同年代の過去18年間の日本病理剖検輯報に記載された陰茎腫瘍189例について統計的観察を加えた.
    自験例の平均年齢は58.6歳, 主訴は腫瘤形成が20例63%と最も多く, 包茎の既往例31例97%, 自覚症状発現後1年以上受診の遅れた例は7例22%に認めた. 病理組織学的には全例扁平上皮癌であり, 治療法は手術療法・化学療法・放射線療法の単独または併用療法を施行した. 全症例の予後は, 5年実測生存率73.6%, 10年実測生存率68.5%と好成績であった. リンパ節廓清は18例に施行し7例にリンパ節転移を認めた. この7例の5年実測生存率は80.6%と良好な結果が得られた. Buck 筋膜を境とし浸潤例と非浸潤例に分類したところ, 両考間の生存率には有意差を認め予後を左右する因子として最も重要と考えられた.
    日本病理剖検輯報に記載された189例の陰茎腫瘍のうち扁平上皮癌は153例80.4%であった. 重複癌を除く144例の扁平上皮癌の臓器転移または局所浸潤を有する例は111例77.1%, リンパ節転移を有する例は94例65.3%であった. 臓器転移部位は, 肺・肝・骨の順に多く認め, 局所浸潤部位は膀胱が最も多く, リンパ節転移部位は横隔膜より上部に転移を有する例が最も多かった. 肺線維症は21例・大腿動脈破裂は8例あり, 高い致死率であった.
  • 福岡 洋, 山崎 彰, 北村 創
    1985 年 76 巻 3 号 p. 401-407
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎カルチノイドの1例を報告した. 症例は62歳, 女子. 便秘のため消化器レ線検査に引きつづいて腹部CT検査を受けたところ左腎に環状石灰化を伴う腫瘤が発見された. 消化器系に異常は認められず, 尿所見に異常なく, 血液・生化学所見では慢性肝炎の所見であった. 腹部単純撮影で左側腹部に石灰化を認め, IVPで左腎は石灰化に一致した腫瘤のため腎盂・腎杯が変形を来していた. 腎動脈撮影で左腎内動脈は圧排されるものの病的血管や濃染は認められなかった. 左腎腫瘍と診断し, 1982年2月22日根治的腎摘除術を行った. 摘出標本は197g, 11.5×5.5×5.0cmの大きさで, 腎中央部に8.5×4.0cmの, 被膜に包まれた腫瘍が存在した. 組織学的に腫瘍は腺管構造を示し, 一部に充実性の細胞集塊を作り, 核は小円型で細胞基底部に偏在し, 出血や石灰化も著明であった. Grimelius 染色, Masson-Fontona 染色は陰性であったが細胞配列からカルチノイドと診断し, 電顕にても細胞質内に分泌顆粒を認めた. 後腹膜リンパ節には転移が証明されたが, 術前, 術後共カルチノイド症候群は認められず, 術後2年4カ月を経過して再発, 転移の徴候はなく健在である. 腎原発カルチノイドを文献上9例集録した. 自験例を含めた10例の平均年齢は49.6歳であり, 典型的なカルチノイド症候群を呈したものは1例のみであった. 術前診断は困難なこと多く, 動脈撮影は avascular であり, リンパ節転移は記載の明らかな8例中5例 (62.5%) に認められている.
  • 柴山 太郎, 中村 薫, 仲山 実, 佐々木 光信, 丸茂 健, 柏原 昇, 中薗 昌明, 早川 正道, 大澤 炯, 古謝 景春, 草場 昭
    1985 年 76 巻 3 号 p. 408-414
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    下大静脈腫瘍塞栓を伴う腎細胞癌3例を呈示するとともに, その症状, 治療および転移を伴う例に対する手術適応について検討した. 下大静脈腫瘍塞栓の随伴症状である蛋白尿, 左精索静脈瘤を1例に認めたが, 他の2例には特記すべぎ症状を認めなかった. 下大静脈不完全閉塞例および側副血行にり静脈還流が代償された症例においてはこれらの症候は現われないと考えた. 下大静脈腫瘍塞栓は, その付着部の下大静脈壁とともに切除し, 欠損部は人工血管で補填した. 1例は腫瘍塞栓のみならず, 付着部の下大静脈壁の2分の1以上にわたり腫瘍の浸潤所見を認めたため, 壁を全周にわた一塊にして切除し, 人工血管により下大静脈の再建を行った. 腎細胞癌に対する集学的治療についても言及し, さらに腎臓の静脈還流に対する解剖学的検討を行った. また, 下大静脈腫瘍塞栓とともに肺転移巣をも有する症例の積極的手術適応について考察を加えた.
  • 北原 聡史, 岡 薫, 関根 英明
    1985 年 76 巻 3 号 p. 415-421
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ミューラー管嚢胞は尿道下裂などの性分化異常に伴って見られる場合を除くと極めて稀なものとされ, 本邦ではわずか5例の報告があるにすぎない. しかし, 剖検での発見率は0.7~1.0%と言われてきた.
    我々は過去4年4カ月間に排尿困難などを主訴とする患者660名に対し, 体腔式リニア電子スキャンを用い, 経直腸的前立腺超音波検査を行った. その中で, 前立腺正中後上部の嚢胞 (直径1.5~3.0cm) 所見を7名 (1.1%) に認め, 4例に対して超音波下に経会陰式あるいは経直腸式 (当科で新しく開発した穿刺用探触子などを用いた) に嚢胞部を穿刺し, 内容液吸引後造影を行い, 尿道造影と合せて撮影を行った. これらの所見より4例全例をミューラー管嚢胞と診断し, 1例にTURを施行した.
    ミューラー管嚢胞は超音波画像上, 前立腺正中後上部に洋梨型の嚢胞所見を呈し, 診断には超音波下に嚢胞を穿刺・造影することが極めて有効であった. 超音波検査による本疾患の発見率は剖検における報告とほぼ一致した.
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