水腎症にさいし, 体外に排出されない尿は backflow として体内に吸収される. その吸収経路は明らかでなく, 解明のために rat の尿管を結紮して24時間, 48時間, 72時間, 1週間の水腎を作成し,乳頭および腎盂を走査電子顕微鏡にて観察した.
観察結果は以下の通りである.
1) rat は単一乳頭を有し, 腎盂は肉眼的に茶褐色腎盂と白色腎盂に分けられる.
2) 正常乳頭細胞は short microvill を持つ. 正常茶褐色腎盂細胞は short microvilli, 網目状の microridge, 漣状の fold を持つ. 正常白色腎盂細胞は漣状の fold を持つ.
3) 乳頭管開口部の開大が24時間水腎よりみられ, 時間の経過とともに著明となつた.
4) 水腎の進行とともに乳頭上皮細胞の short microvilli の増加と癒合がみられた.
5) 水腎の進行とともに fomix は開大したが, forniceal rupture は観察されなかつた.
6) 茶褐色腎盂にて24時間水腎より粘膜下の管状構造を示す粘膜の起伏がみられた.
7) 茶褐色腎盂細胞では水腎の進行とともに, 網目状に配列する microridge が細胞中央に放射状に集中した. その中央部に環状隆起と microcrater を認めた. また short microvilli が癒合して microridge を形成している像も得られた.
8) 白色腎盂細胞では漣状の fold の噴火口状集中と中心部に microcrater の形成を認めた.
9) 腎盂細胞の剥離, 離開像はみられなかつた.
以上より rat 水腎では forniceal rupture はおこらず, 尿の吸収経路は tubulus を介しておこるものと考えられた.
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