日本泌尿器科學會雑誌
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71 巻, 12 号
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  • 石田 恵一, 山中 信毅
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1423-1431
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    慢性の腎疾患あるいは長期人工透析をうけた患者の重大な合併症の一つに, いわゆる二次性 Oxalosis がある. しかし, この分野にはあまり注意が払われていないようである. この報告の目的は, 腎と心筋組織への蓚酸結晶沈着の程度と, 基礎疾患および透析療法との関係を検討することである. 対象28例の剖検の基礎疾患は, 慢性糸球体腎炎13例, 原発性過蓚酸尿症1例, ネフローゼ加味腎炎1例, Shönlein-Henoch 1例, 腎硬化症1例, 腎結石1例, 心不全1例, 原因不明4例, また10例は透析療法をうけた. 結果は結晶沈着が腎にあるもの15例, 心に6例, 両者にあるもの6例, また人工透析施行例のうち90%が沈着を認めたのに比し, 然らざるものは61%であつた. 臨床との関係でとくに興味深かつたのは, 高カリウム血症, 洞房 block その他の異常所見が透析療法によつて十分に改善したにもかかわらず, 突然死を3例認めたことで, 剖検によつて洞結節, 房室結節や His 束など刺激伝導系に蓚酸の沈着を確かめたことである. 腎臓および心臓への蓚酸塩沈着の頻度は, Fayemi (1979, 2) らの報告と大凡類似している. 二次性 Oxalosis によつて, しばしば組織の局所的な壊死や広範な線維化の誘因となりえよう. 心臓であれば, うつ血性心不全や刺激伝導障害を招来してくる可能性は十分ある. 人工透析や慢性腎疾患の管理に際しては, 常に本疾患を考慮しておく必要があろう.
  • 杉浦 弌, 和志田 裕人, 上田 公介
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1432-1437
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    放射線とBLMとの間には相乗効果があると強調している Phillips の説を信用してわれわれは扁平上皮細胞癌の治療に普遍的に使用され, そして放射線による傷害からの癌細胞の回復を阻害する効果があると云われているBLMの膀胱癌に対する制癌作用を研究した.
    患者の年齢は51歳から81歳, 平均64歳で, 全症例14例, 男子12例, その内訳は新鮮例6 (50.0%), BLM以外の制癌剤や手術 (TUR-Bt) で治療された再発例6例 (50.0%), と女子2例, いずれも新鮮例であつた. 全症例とも移行上皮細胞癌で glade はIからIVであつた. われわれによつて練られた治療方法に従つて, BLM 60mgを滅菌蒸留水40ないし60mlに溶解し膀胱腔内に注入, 30分後に病巣線量100ないし150radの60Coを照射, 照射30分後にBLM 2mgを筋注した, そしてこの治療法の patten を1週間に1ないし3回, 合計10回施行した. BLMと放射線との併用療法は5例 (35.7%) に有効であつた. これらの症例は glade Iから IIIで, いずれも新鮮例であつた. この併用療法によつて腫瘍が完全に消失したのは2例 (18.9%) であつた. 副作用は膀胱刺激症状のみで肺線維症, 肺および肝機能障害や血液生化学的所見の異常は認められなかつた.
    膀胱癌に対する制癌療法はいろいろあるが, BLMは放射線傷害回復阻害効果を有する唯一の制癌剤である. 本剤は放射線療法との併用によつて特異的な位置を占める薬剤である.
  • 島谷 昇, 荒川 創一, 大野 三太郎, 守殿 貞夫, 吉本 祥生, 前田 盛
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1438-1445
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    睾丸腫瘍3例につき睾丸腫瘍摘除前後および後腹膜リンパ節廓清前後に, 血中βHCGおよびAFPをRIA法による二抗体法で, 血中SP1はSRID法により測定した. 睾丸腫瘍摘除および後腹膜リンパ節廓清前後での血中βHCGおよびAFP両 marker の変動は臨床経過とよく一致した. 血中SP1は3例とも検出出来なかつた.
    睾丸腫瘍組織および後腹膜リンパ節転移組織におけるHCGおよびAFP産生細胞の局在を peroxidase antiperoxidase 法を用いて検索し, HCGおよびSP1は syncytiotrophoblastic giant cell, embyonal carcinoma cell の giant cell および嚢腫壁細胞の一部に認めた. AFPの局在は endodermal sinus tumor, embryonal carcinoma cell の一部および嚢腫壁細胞の一部に認めた.
    睾丸腫瘍組織におけるHCGおよびAFP産生細胞の局在は術前の同 marker の血中異常値とひじようによく相関した.
  • 森山 正敏, 窪田 吉信, 執印 太郎, 西村 隆一, 高井 修道
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1446-1455
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は腎癌術前症例について細胞性免疫能を調べると同時に各種治療による免疫能の変化を観察した. 細胞性免疫能の指標として, 末梢血中リンパ球数, PPD皮内反応, mitogen (PHA-MあるいはConA) による末梢血中リンパ球幼若化反応を用いた.
    未治療腎癌症例32例のリンパ球刺激値は正常健康人とほぼ同じレベルを保つていた. 腎癌発育形式別に観察すると, Slow Type 症例ではリンパ球刺激値は正常健康人レベルよりも低値を示し, Rapid Type 症例では正常健康人よりも高値を示した. 一方, PPD皮内反応でみると Slow Type 症例は陽性例が多く, Rapid Type 症例では陰性例が多かつた.
    腎摘除術の影響は観察されなかつた.
    ADM, CCNU, MFCなどの抗癌剤療法を施行するとリンパ球刺激値は低下する傾向を示したが, FT-207 とOK-432を併用を使用した場合はリンパ球刺激値の低下はみられなかつた.
  • 第二報 尿道拡張刺激に対する膀胱収縮反射について薬理学的検討を中心として
    別宮 徹
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1456-1471
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    9~16kgの25頭の雄雑種犬に対し, α-chloralose 麻酔下に膀胱と尿道を膀胱頚部にて完全離断し, この状態下で尿道内バルン拡張刺激を加えることで膀胱収縮を惹起させた. この膀胱収縮反射 (urethrovesical reflex, 以下UVRと略す) は, 排尿の開始及び持続に関与するものと考えられるが, この反射に対し神経生理学的, 薬理学的検討を行なつた所, 以下の結論を得た. 即ち1) UVRは, バルン拡張時及びその解除時に発現するが, 膀胱収縮は解除時の方が強いことより考え, UVRは骨盤底筋群の弛緩時や尿流の減少時により強く発現することが示唆された. 2) UVRは下腹神経の切断後促進されたが, 交感神経作働薬の内α作働薬には一定の効果が認められず, 他方β遮断剤で促進効果を, β刺激剤で抑制効果を認めた. このことより下腹神経 (交感神経) のUVRに対する関与は, 少なくともβ受容体を介してなされているものと考えられた. 3) imipramine 投与にても, UVRの強い抑制効果を認めたが, その作用機序はα受容体刺激作用のみで発現しているものではないことが明らかとなつた. 4) 脱分極性筋弛緩薬である suxamethonium はUVRに対し無影響であつたことより, これは陰部神経の求心路を障害せず, 排尿の開始及び持続にも無影響であると考えるのが妥当と思われた.
  • 越知 憲治
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1472-1483
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    著者はラットを用いて尿管の完全閉塞による水腎症を作製し経時的に腎組織中のsuccinate cytochrome c reductase (SCR) および lactic dehydrogenase (LDH) を測定してこれらの変化と腎の重量変化, 組織学的変化との検討をおこなつた. また膀胱尿管新吻合術を施行することによつて実験的水腎症の原因である尿管の閉塞を解除し, その後一定期間を経て他側の腎摘術をおこないその1週間後に閉塞解除腎を摘出して再びSCRおよびLDHを測定し組織学的変化および血清クレアチニンを指標とする腎機能変化との検討をおこない2, 3の知見を得たので報告した.
  • VIII. 前立腺性酸性フオスフアターゼのRIAおよび酵素法の比較
    石部 知行
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1484-1488
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    組織学的診断のついた前立腺癌56例を含む191例について血清中酸性 phosphatase 値を酵素法 (TAP & PAP) およびRIA (RIA-PAP) 法によつて測定し, 次の成績を得た.
    1. 対照症例におけるRIA-PAPの正常値上限は2.0ng/mlを示し, この値は加齢とともに増大し, 70歳以上の男子では2.2ng/mlが正常値上限となつた.
    2. 前立腺癌例ではTAP, PAP, RIA-PAP値の何れも対照例および前立腺肥大症例のそれに比し統計上有意に高い値を示した.
    3. 病期A-B例についてみるとTAPおよびPAPでは22%で異常高値を示したのに対し, RIA-PAPでは33%に異常高値を示した. しかし両者を同時に測定した場合その診断率は56%となり, 現時点ではPAPとRIA-PAPの両者を同時に測定することが早期前立腺癌の診断率向上のために必要である.
    4. 前立腺肥大症および前立腺癌例ではRIA-PAP値はTAPおよびPAP値と統計上有意の相関を示した.
  • 目時 利林也
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1489-1499
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    水腎症にさいし, 体外に排出されない尿は backflow として体内に吸収される. その吸収経路は明らかでなく, 解明のために rat の尿管を結紮して24時間, 48時間, 72時間, 1週間の水腎を作成し,乳頭および腎盂を走査電子顕微鏡にて観察した.
    観察結果は以下の通りである.
    1) rat は単一乳頭を有し, 腎盂は肉眼的に茶褐色腎盂と白色腎盂に分けられる.
    2) 正常乳頭細胞は short microvill を持つ. 正常茶褐色腎盂細胞は short microvilli, 網目状の microridge, 漣状の fold を持つ. 正常白色腎盂細胞は漣状の fold を持つ.
    3) 乳頭管開口部の開大が24時間水腎よりみられ, 時間の経過とともに著明となつた.
    4) 水腎の進行とともに乳頭上皮細胞の short microvilli の増加と癒合がみられた.
    5) 水腎の進行とともに fomix は開大したが, forniceal rupture は観察されなかつた.
    6) 茶褐色腎盂にて24時間水腎より粘膜下の管状構造を示す粘膜の起伏がみられた.
    7) 茶褐色腎盂細胞では水腎の進行とともに, 網目状に配列する microridge が細胞中央に放射状に集中した. その中央部に環状隆起と microcrater を認めた. また short microvilli が癒合して microridge を形成している像も得られた.
    8) 白色腎盂細胞では漣状の fold の噴火口状集中と中心部に microcrater の形成を認めた.
    9) 腎盂細胞の剥離, 離開像はみられなかつた.
    以上より rat 水腎では forniceal rupture はおこらず, 尿の吸収経路は tubulus を介しておこるものと考えられた.
  • Proteus mirabilis に対するラット腹腔マクロファージの食菌能について
    平野 学
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1500-1514
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラット逆行性腎盂腎炎における防御免疫を明らかにする目的で, in vitro の種々の条件下において Proteus mirabilis (Pm) に対する血清殺菌能ならびに腹腔マクロファージの食菌能を検討した. 逆行性腎盂腎炎はPmを経尿道的に膀胱内へ接種して作成した. 菌接種7日後に心臓穿刺により屠殺, 血清を採取, また腹腔浸出細胞を, 5%CO2存在下で37℃, 1時間培養しマクロファージ monolayer を作成した. 培養マクロファージにPmを添加, 10%ラット血清存在下, あるいは非存在下で食菌させ, 6時間まで経時的に培養液内の残存生菌数を寒天平板希釈法にて測定し, 以下の結果を得た. 1) 熱処理により Pm に対する血清殺菌効果は失活した. すなわち血清殺菌効果は主として血清 Heat-labile factor に依存するものと考えられた. 2) ラット腹腔マクロファージによるPm食菌は Heat-labile factorの存在下では亢進したが, 熱処理血清下では著明に低下した. また免疫血清添加時にはマクロファージの食菌は有意に亢進した. 3) 非熱処理血清存在下では正常および免疫マクロファージの食菌能に差はみられなかつたが, 熱処理血清存在下では培養6時間に至ると免疫マクロファージの食菌能が有意に亢進していた. この免疫マクロファージの食菌能亢進はPm感染におけるマクロファージの活性化を示すものと考えられる.
    以上の結果より, ラットPm逆行性腎盂腎炎においても, 細胞性防御免疫の関与が示唆された.
  • 第V報 カルチトニンの尿および血清電解質に対する影響について
    郡 健二郎, 八竹 直, 栗田 孝
    1980 年 71 巻 12 号 p. 1515-1526
    発行日: 1980/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    第IV報において, 尿路結石症特に高Ca尿症のCa代謝にカルチトニン (以下CT) が関与している可能性を報告した. しかしCTの腎における作用や尿中電解質排泄作用に関する報告は少ない事から, 高Ca血症を呈した悪性腫瘍患者と上皮小体機能亢進症 (PHT), さらに尿路結石症においてCT投与の影響を調べた. また正常および上皮小体摘除 (PTX) ラットを用いCTの作用機序を究明した.
    (1) 先ず始めに, 悪性腫瘍はPHTに比べCT値は有意に高く, 一方尿中cAMPや上皮小体ホルモンは著しく低く, この事は高Ca血症の鑑別診断に役立つものであろう. (2) CT投与にて血清CaやCa++値は投与前値に相関し低下がみられた. (3) CTの1回投与にて尿中Ca, Pi, Mg, Na排泄量及び尿量は各々その変動パターンは多少異なるが, 投与後約24時間目をピークに増加がみられた. (4) CTの長期投与では尿中Caは投与2, 3日目から低下し, 多くの症例で低下がみられた. その低下の程度は投与前値に相関していた. (5) CTにより上皮小体ホルモンや血清CT値の変化は僅かであつた. (6) CTにて尿中cAMPが増加した事から, PTXラットを作成しCTを投与したところ, 正常ラットとほぼ同様に尿中cAMPの上昇をみた. この事からcAMPの上昇は血清Caの低下による上皮小体機能の亢進ではなく, CTがcAMPを介し作用するためと推察された. (7) 尿路結石症では, Ca排泄量が200mg/day以上の群では著明に低下をみた. ECTを用い結石症のCa代謝を詳細に知り得る可能性が考えられた.
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