日本泌尿器科學會雑誌
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最新号
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  • 陰茎海綿体血流変化の観察
    高金 弘
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1909-1918
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    骨盤内動脈の遮断が陰茎海綿体の血流に与える影響を検討するために, 雑種成犬を用い, 骨盤神経非刺激時と電気刺激下の両条件時に, 骨盤内動脈を種々遮断し, その時の陰茎海綿体血流の変動を露出型関電極酸素電極法により測定した.
    骨盤神経非刺激時, 5検体の陰茎海綿体の脱分極電流は, 骨盤内動脈を結紮しても低下を示さなかった.
    骨盤神経刺激時の結紮では, (I) 片側内陰部動脈結紮により, 対側7検体の陰茎海綿体に有意の血流低下を認めた. (II) 片側の骨盤内血管のみを残した状態から, 内陰部動脈, 内腸骨動脈, 大動脈と順に結紮した際の7検体の同側海綿体の血流変化の比はおよそ2:1:4であった. (III) 内腸骨動脈レベルでの7検体の結紮では, 一側で左右海綿体とも約20%, 両側で左右海綿体とも約50%の血流低下を示した. (IV) 内陰部動脈レベルでの7検体の結紮では, 一側で左右海綿体とも約25%, 両側で左右海綿体とも約50%の血流低下を認めた.
    以上の結果より, 両側内陰部動脈の交通枝, 副内陰部動脈等多くの骨盤内側副血行路が存在し, 同時にそれは, 局所動脈病変が陰茎勃起時の血流動態に影響を与えにくい役割を果たしていることが明らかとなった. 従って動脈性インポテンスとは, 動脈の局所病変よりも動脈硬化等血管全体の病変により発症する可能性が強く示唆された.
  • 馬場 志郎, 出口 修宏, 早川 邦弘, 橘 政昭, 実川 正道, 畠 亮, 田崎 寛
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1919-1927
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    体外圧電式衝撃波砕石装置 (ピエゾリス2200) を用いて1987年10月より3カ月間に腎・尿管結石に対する体外衝撃波砕石術 (ESWL) 50例を経験し, 3カ月の経過観察を終了したのでその成績を検討した. 腎結石は43例, 尿管結石7例で, 尿管結石は全例上部尿管であったため砕石治療前に腎盂内に挙上した. 両腎にわたり結石を認めた症例は11例で, 総計61 renal unit の82個の結石を砕石した. 結石の長径は9.9±5.6mm (mean±S. D.), 短径は6.8±3.6mm (mean±S. D.) であり尿酸結石3例, マグネシウム・アンモニウムリン酸結石1例を除く全例がカルシウム結石であった.
    砕石治療は全例無麻酔で施行しえた. 1回の砕石治療で充分であった症例は35例で, 平均1 renal unit あたり1.3回の治療が必要であった. 1回治療群と複数回治療群では後者が前者に比べて, 結石数, 結石サイズおよび嵌頓結石の頻度が大きく, stone load に比例して衝撃波投与総数も多くなる傾向がみられた. 長径が10mm未満の結石は1回の治療に平均3, 348発の衝撃波を必要とし, 74%が完全に排石された. 治療前後で末梢血, 血清化学の検査成績を比較検討したが, 白血球数, BUNが一過性に上昇したがCPKを含めその他の検査値に異常は認められなかった. 治療後3カ月目の完全排石率は68% (34/50) であり, 3mm以下の残石を認めた13例を含めると94%に満足すべき砕石効果が認められた.
  • 井口 厚司
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1928-1936
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    延べ57名の膀胱腫瘍患者に対し, 0.1%メチレン青の膀胱内注入による microscopic chromocys toscopy (MCC) を行った.
    染色された部位は microscopic cystoscope (1~150倍率) で観察される細胞像を核の形態, 大きさ, 配列, および染色の濃淡などから5群 (group X, 0, 1, 2, 3) に分けて判定した. group X は無構造に染色されたため核の判別不能, group 0 は異型のないほとんど正常な核をもつもの, group 1から3は軽度から順に強く核異型の見られるものとした.
    隆起性腫瘍では92腫瘍のうち78腫瘍が染色され, 染色率は grade 2 および3の腫瘍が grade 1の腫瘍に比べて高かった. MCCの判定と組織学的異型度との比較では, grade が高いものほど group と grade はよく一致した.
    平坦な粘膜に関しては125カ所が染色され, このうち53カ所が group 1, 2, 3と判定された. この53カ所のうち47カ所 (88.7%) が上皮内癌 (41カ所), あるいは dysplasia (6カ所) であった. 一方, group 0とした66カ所では6カ所 (9.1%) にのみ上皮内病変が検出された. 非染色部位からも108カ所生検を行ない, 17カ所 (15.7%) に上皮内病変が見付かった.
    この結果からMCCは隆起性腫瘍の異型度推定に有用であるぼかりでなく, 通常の膀胱鏡検査では見付けることの難しい上皮内病変の検出において非常に有用であり, 通常の chromocystoscopy において最大の欠点である false positive を少なくし, より正確な診断が可能であることがわかった.
  • Viable cell assay と蛍光染色法による比較
    梅原 次男, 高木 良雄, 熊本 悦明
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1937-1946
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌のホルモン依存性を検討する目的で, 手術時に得られた新鮮な癌組織における活性化アンドロゲンリセプター (ARa) 及び活性化エストロゲンリセプター (ERa) を Viable cell assay にて測定した. ARa値と従来行われてきたDCC法との比較を行うと共に mibolerone-FITC による蛍光染色法によるAR測定との結果も比較検討した. 結果は以下の如くであった.
    1) 従来行われてきた生化学的方法と Viable cell assay 法との比較をARにつき検討した結果では, cytosol 中のARは生化学的方法では stage, grade 共進行するにつれ, 上昇傾向を認めたが, viable cell assay 方法では逆に stage, grade の進行と共に下降傾向を認めた.
    2) 108例の前立腺癌に於けるARaは stage B, C, D1でそれぞれ266±49 (n=54), 248±51 (n=30), 151±42 (n=24) (fmol/mgDNA, Mean±S.E.以下同様) であった. 又 grade 2, 3, 4の順に239±45(n=47), 235±43(n=56), 210±80(n=5)であった.
    3) 70例の前立腺癌におけるERaは stage B, C, D1の順に1,229±256(n=37), 635±221(n=16), 414±91(n=17) であり, 又 grade 2, 3, 4の値はそれぞれ1,241±285(n=28), 684±175(n=37), 171±140(n=5)であり, stage B, D1間及び grade 2, 4間には有意な差 (p<0.05) を認めた. 以上より前立腺癌組織中のARa, ERaは共に stage や grade が高くなるにつれ, 低下する傾向を認め, それと呼応して癌組織全体のホルモン依存性は低下してゆくものと考えられた.
    4) Viable cell assay 法と染色法との比較では, 26例中17例 (65%) に両者の判定が一致したが, 8例 (31%) は, 染色法で陽性であったが, ARaは陰性であった. これは, 染色法によるARの中には non functional なARが存在している可能性がある為と考えられた.
  • 島田 憲次, 松井 孝之, 荻野 敏弘, 細川 尚三, 生駒 文彦
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1947-1953
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去14年間にわれわれが治療をを加えた小児期の腎後性急性腎不全18例の原因疾患と発生病態, および予後について検討を加えた.
    1) 基礎疾患: 先天性尿路奇形が16例91%を占めており, その内でも後部尿道弁が8例と最も多くみられた. その他, 腎盂尿管移行部狭窄, 膀胱憩室, 尿管瘤などがみられた. 後天性疾患は2例で, 両側尿管結石と悪性腫瘍による尿管閉塞であった.
    2) 臨床症状: 拡張した膀胱や腎腫大による腹部膨隆が11名60%と最も多く, その他, 尿路感染症による高熱, 下痢嘔吐などの消化管症状, 体重増加不良などの非特異的症状がみられた. 症状の発現時期は生後1カ月未満が約70%であった. 生後6ヵ月以後に症状が出現したのは後天性疾患の2例のみであった.
    3) 予後: 有効な尿ドレナージの後には電解質異常は2~3日で正常値に戻り, 血清クレアチニン, BUN値も2週間程度で急激な下降は終わる. 長期予後の面から, 腎機能障害が残存していたのは10例55%で, その内の3名では末期腎不全に移行した. 死亡は2例であった. 長期予後の予測には尿路通過障害解除後2~3週目のFENa, RFIが有用と考えられた.
  • 森本 鎮義, 吉田 全範, 安川 修, 上門 康成, 吉田 利彦, 青枝 秀男, 戎野 庄一, 大川 順正
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1954-1961
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中TPA測定上の問題点ならびにその改良について提起し, 界面活性剤である Tween 40による処理を行った尿中TPA測定の基礎的検討, および膀胱腫瘍例, chemical worker, 他の泌尿器科疾患症例を対象とした臨床的検討を行いその結果を報告した.
    Tween 40処理によってほぼ全ての尿検体でTPA測定値の上昇がみられたが, 回収試験および希釈試験の結果から Tween 40処理の正当性が示された. また, 尿保存の検討においても, 4% Tween 40溶液による希釈保存によって尿中TPA測定値の安定化が得られ, 室温で放置された尿では測定前に Tween 40による処理が必要とされた.
    膀胱腫瘍例での尿中TPA陽性率は, 随時尿で72-7%, 24時間尿で75.0%となり, 本疾患における腫瘍マーカーとしての有用性が示された. しかし, 同時に検討された泌尿器科良性疾患のうち, 膀胱炎および尿路結石症例では高い偽陽性率が認められた. chemical worker 352例の検討では, 尿中TPAの平均値は対照群との間で有意差は得られなかったが, その陽性率は10.2%となり, 対照群の約2倍であった.
  • 中島 洋介, 中村 聡, 木村 哲, 橘 政昭, 田崎 寛
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1962-1968
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の flow cytometric DNA-histogram を組織学的悪性度と比較し, その臨床的有用性について検討した.
    臨床的及び組織学的に診断された前立腺癌26例, 良性対照群18例 (計44例) を対象に経直腸または経会陰的針生検で得られた前立腺組織より, flow cytometric DNA-histogram の解析と組織診断を行った. その結果, 1) DNA-histogram の ploidy 解析で, 対照群は全例 diploid pattern を示したのに対し, 前立腺癌では26例中10例 (38.5%) に aneuploid pattern を認め, これは悪性度と共に増加した. 2) S+G2+M期細胞の割合 Proliferation Index (PI) および Heterogeneity Index Score (HIS) を計算したところ, PIでは対照群6.05±2.15%, 前立腺癌16.51±10.32%, HISでは対照群13.46±5.61, 前立腺癌31.35±19.21であり, 共に前立腺癌で有意に増加していた. また, これらは悪性度と共に増加する傾向を認めた. 3) 前立腺癌再燃例で, 化学療法前に aneuploid pattern (PI=20.5%, HIS=42.614) を示したものが, 治療後 near diploid pattern (PI=13.7%, HIS=39.823) を呈し, 化学療法前後でDNA-histogram に変化が観察された. 4) 組織学的に悪性度が高くないのにもかかわらず, 明瞭な aneuploid pattern を示した例があった. 以上より, flow cytometric DNA-histogram は今後前立腺癌の治療効果の判定および悪性度に対する客観的指標として, 病理診断の補助としての適応が考えられた.
  • 岩田 英信, 飯尾 昭三, 阿部 雄吉, 亀井 修, 西尾 俊治, 松本 充司, 竹内 正文, 若月 晶
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1969-1975
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    複数の尿路結石を有していた14人の患者より摘出した小結石の構築について, 特に結晶と有機マトリックスとの相互関係を中心に観察した. 走査型電子顕微鏡による結石割面の観察では, 結晶成分の違いに無関係にすべての結石は無方向性に凝集した結晶からなる単一または複数の結石核を有していた. これらの結晶の間には自由空間が存在するため結石核は容易に同定された. この結石核は密に詰まった結晶群からなる層状の外層に包まれていた. 外層の層間には時に自由空間が存在したが, この空間には決まって無方向性の結晶群が認められた. 透過型電子顕微鏡による観察では, 結石外層の有機マトリックスはそれ自体が層構造をなしており, 結晶間隙を埋めるような形で存在していた.
    これらの観察結果からふたつの結石成長メカニズムが考えられた. 一番目は別の場所で析出した結晶が結石表面に付着することによるものである. この場合結晶配列は無方向性となるため結晶間隙に自由空間が生じ結石構造は虚弱である. 二番目は結石表面に付着するゲル状態の有機マトリックスの中で結晶が成長することによるものである. この成長メカニズムは真珠の成長メカニズムに酷似している. このメカニズムによる結石成長では結晶間隙に自由空間が生じないため結石構造は強固であり, 結石化の本体はこのような結晶と有機マトリックスの相互関係にあると考えられた.
  • 術前合併疾患と術後合併症を中心に
    澤村 正之, 青 輝昭, 内田 豊昭, 門脇 和臣, 庄司 清志, 神崎 政裕
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1976-1981
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1974年3月から1985年12月までの間に大分泌尿器科病院において施行した997例の経尿道的前立腺切除術について, 術前合併疾患と手術合併症を中心に臨床的検討を加えた. 術前診断は前立腺肥大症 (BPH) 958例, 前立腺癌39例であり, 術前診断がBPHであったもののうち術後病理組織的診断で発見された前立腺偶発癌は31例 (3.4%) であった.
    術前に指摘された主な合併疾患は心血管系疾患 (19%), 低蛋白血症 (8.8%), 腎機能低下 (7.6%), 耐糖能低下 (5.1%) であった.
    術中および術後の主な合併症は, 輸血を必要とした出血 (5.9%), 低Na血症 (2.7%), 発熱 (2.6%), 戻道狭窄 (1.7%), 尿失禁 (0.3%) であり, 多くの場合保存的治療で改善した. 手術死亡例は3例経験し, その死亡原因は急性心不全, 脳出血, 敗血症であった. これら3例のいずれも, 術前に低蛋白血症と腎機能低下が存在しており, この両者の危険因子としての重要性が強調された.
  • 木原 和徳, 福井 巌, 大島 博幸, 田利 清信, 岡 薫
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1982-1990
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    化学療法を併用して後腹膜の限局廓清を行なった睾丸腫瘍患者45症例について, 予後と射精障害を検討した. 限局廓清の範囲は転移のあるリンパ節もしくは転移が疑われるリンパ節および周囲脂肪組織である. 化学療法はcis-diamminedichloroplatinum, vinblastine, bleomycin, peplomycin を用いた. 射精機能は, 術後の射精機能の不明な9例を除く36例で評価した. 腎門部より上部を廓清した1例および腎茎部から下腸間膜動脈起始部まで廓清した24例中23例では, 射精が認められた. 腎茎部から総腸骨動脈まで廓清した7例のうち5例は, dry ejaculation であった. 一方同部を片側廓清した4例全例に射精が認められた. この7例の内4例で逆行性射精の有無を調べ, 3例に認められた. 内尿道口閉鎖に関与する側方線維は両側の交感神経幹から出て大動脈側壁を走り, 上下腹神経叢に合流するが, 逆行性射精を防ぐためには, この側方線維を少なくとも片側は温存すること, emission を保つためには両側交感神経幹を温存することが肝要である. 側方線維の温存には大動脈分岐部で上下腹神経叢の太い神経束を出し, 次いでこれに入る側方線維を剥離する方法が良い. 2年以上経過観察した, リンパ節転移のみ有した18例のうち17例は癌なしで生存している. 化学療法が著明な奏効を示す今日, 廓清範囲をできるだけ縮小するとともに神経の温存を意図した廓清を行ない, 青壮年男子の射精機能保存を図るべきであろう.
  • 武内 巧, 谷口 淳, 星野 嘉伸, 増子 宣雄, 阿曽 佳郎
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1991-1995
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    当科に於て膀胱全摘出術および両側尿管S状結腸吻合術を施行後5年以上経過した10症例に大腸ファイバーを行った. 患者は全例膀胱腫瘍の男性. 尿管S状結腸吻合時の年齢は平均58.7歳. 尿管S状吻合の期間は平均8.8年であった。肛門歯状線より平均17.6cmのところに10名13部位の尿管開口部を確認した. その形態は9名10部位ではポリープ様, 2名3部位では平坦であった. 1名の患者 (10%) に肛門歯状線直上の腺癌と両側尿管吻合部の間の腺腫を発見した. 全例で尿管吻合部周囲の肉眼的に正常な結腸粘膜の生検を行ったが, 組織学的には軽度の炎症所見が見られるのみであった. また3名でポリープ様の尿管吻合部の生検を施行したが肉芽組織および軽度の炎症所見であった.
  • 今井 利一, 郷 秀人, 川上 芳明, 斎藤 稔
    1988 年 79 巻 12 号 p. 1996-2001
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    われわれは昭和55年から昭和60年までに, 33例の腎外傷を経験し, 1例を除いた全例にCTを施行した. 腎外傷の診断が下された29症例のCTの所見を以下の如く分類した.
    Stage 0: 腎に異常を認めないもの, Stage 1: 腎挫傷, Stage 2: 腎実質の断裂の無い腎皮膜下血腫, Stage 3: 腎実質の断裂の無い腎周囲血腫, Stage 4: 腎実質の断裂の有る腎皮膜下血腫, Stage 5: 腎実質の断裂の有る腎周囲血腫, Stage 6: 茎部血管損傷の7段階である. 同分類では, Stageのグレードの高い症例ほど腎外傷に対して手術をおこなっている割合が高くなっており, 手術適応の判断に有用であった.
  • 佐藤 一成, 加藤 哲郎, 守山 正胤, 阿部 良悦, 土田 正義, 千葉 隆一
    1988 年 79 巻 12 号 p. 2002-2011
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1978年1月~1986年12月の9年間にマイクロカプセル化学塞栓療法を施行した膀胱癌患者100例 (T1 16, T2 18, T3 28, T4-M1 38) と, 同期間に本法を施行しなかった膀胱癌患者102例 (対照群: T1 52, T2 13, T3 24, T4-M1 13) の治療成績を比較し, 膀胱癌治療における化学塞栓療法の位置づけを試みた.
    1~3回 (中央値1回) のマイクロカプセル化学塞栓療法後の他覚的腫瘍縮小 (縮小率50%以上) は評価可能79例中43例 (55%) にみられ, 5例では完全消失が認められた. また本法によると考えられる, 重篤な副作用ならびに合併症は認められなかった.
    手術の有無によらない5年生存率はマイクロカプセル群ではT194%, T2-358%, T4-M15%, 対照群ではT183%, T2-337%, T4-M115%で, 有意差はないがT2-3の成績は対照群に比較して良好であった.
    治癒的手術を施行されたT2-3はマイクロカプセル群38例 (T2 18, T3 20), 対照群33例 (T2 12, T3 21) であった. 手術はマイクロカプセル群でTUR 15例, PCX 5例ならびにTCX 18例, 対照群でTUR19例, PCX 2例ならびにTCX 12例であった. これらの5年非再発率と生存率はマイクロカプセル群ではそれぞれ59%, 66%, 対照群では32%, 42%で有意 (p<0.05) にマイクロカプセル群に再発防止効果と延命効果を認めた.
    以上から化学塞栓療法は, 局所浸潤膀胱癌の手術に対する有力な補助療法と考えられた.
  • 安藤 正夫, 寿美 周平, 北原 聡史, 東 四雄, 福井 巌, 大島 博幸, 水尾 敏之, 谷沢 晶子
    1988 年 79 巻 12 号 p. 2012-2020
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺全摘除術後の膀胱・尿道機能の推移を尿流動態検査にて検討した.
    対象は1986年5月から1988年4月までの2年間に根治的恥骨後式前立腺全摘除術を施行した clinical stage A22例, B24例の前立腺癌症例で, 手術時年齢は58~69歳 (平均65歳) である. 術後経過期間は3~23カ月 (平均14カ月) である.
    4例に術後2~3カ月に吻合部狭窄を認めたが, 3例は数回の尿道ブジーで狭窄は改善した. 尿流測定は膀胱尿道吻合部狭窄の早期発見に有用であった. 膀胱内圧測定・外尿道 (肛門) 括約筋EMGは手術前後で著変を認めなかった. 術直後は全例に尿失禁を認めたが時間の経過に伴い尿失禁は改善し, 1例に軽度腹圧性尿失禁が残存した. 術後の尿失禁に関与する因子として, 尿道内圧曲線における最大尿道閉鎖圧の低下, 機能的尿道長の短縮, 膀胱頚部~近位尿道部の伸展性の低下などが考えられた.
  • 岩村 正嗣, 増井 則昭, 西村 清志, 内田 豊昭, 石橋 晃, 小柴 健, 渋谷 宗則
    1988 年 79 巻 12 号 p. 2021-2026
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性. 3カ月前から持続する膀胱刺激症状と肉眼的血尿を主訴に来院した.
    膀胱鏡, 排泄性尿路造影, CTスキャンにて膀胱後壁に巨大な非乳頭状広基性腫瘍を認めた. 諸検査の結果, 明らかな転移は認めなかった.
    膀胱全摘出術及び子宮摘出術を施行し, 病理組織学的に神経分泌顆粒を有する膀胱原発性小細胞癌と診断した.
    術後9カ月を経過した現在, 明らかな転移再発所見は認められていない.
  • 浅野 友彦, 秦野 直, 萩原 正通, 山本 正
    1988 年 79 巻 12 号 p. 2027-2030
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    70歳の男性. 下大静脈壁に浸潤した腫瘍塞栓を伴う右腎細胞癌の患者に対して左腎静脈結紮, 下大静脈壁部分切除, 根治的右腎摘出術を行った. 術後血圧の低下や下肢の浮腫などは起こらなかったが, 術直後から乏尿の状態が続き, 第6病日には血清クレアチニンは12.5mg/dlにまで達した. 腎機能は保存的治療のみで次第に回復し, 第28病日には血清クレアチニンは2.8mg/dlにまで低下し, さらに3年後の現在では1.4mg/dlと術前とほぼ同じ程度にまで回復した. また, 胸部エックス, CTスキャン上も再発の徴候は認めていない.
  • 宇佐美 隆利, 須床 洋, 鈴木 和雄, 志賀 淳治, 上田 大介, 田島 惇, 阿曽 佳郎
    1988 年 79 巻 12 号 p. 2031-2036
    発行日: 1988/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 男. 左側腹部痛と肉眼的血尿を主訴とし受診. 血尿を認める以外諸検査成績に異常はなかった. 排泄性腎盂造影で, 左尿管下部に長さ約10cmに及ぶ辺縁不整な狭窄像と, 左水腎症を認めた. CTスキャンでは左尿管壁の肥厚がみられたが, 明らかな腫瘍像を認めなかった. 左尿管狭窄と診断して手術施行. 約15cmに及ぶ切除尿管の術中迅速病理学的検査で悪性像は認められず, 自家腎移植術を施行した. 術後, 摘出尿管の病理学的診断はアミロイドーシスであった. 術後検査により, 血清蛋白分画正常, 免疫グロブリン定量に異常なく, 尿中 Bence-Jones 蛋白は陰性であることが判明した. 腎および直腸生検ではアミロイド沈着を認めなかった. 以上より限局性尿管アミロイドーシスと診断した. 本症例は我々が集計し得た限りでは, 世界で32例目で自家腎移植術施行例としては3例目であった.
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