日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
76 巻, 10 号
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  • 食生活が尿中クエン酸排泄量に及ぼす影響について
    井口 正典, 江左 篤宣, 永井 信夫, 高田 昌彦, 片岡 喜代徳, 加藤 良成, 郡 健二郎, 栗田 孝, 八竹 直
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1429-1438
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石症患者の尿中クエン酸排泄量 (Cit) を測定し, Cit に及ぼす食事の影響を臨床ならびに動物実験で検討した. 早朝第1尿で検討した結石患者の Cit は, 男子結石患者では同年齢層の男子対照群に比して著明に減少していたが, 女子結石患者では対照群と差を認めなかった. しかし再発・多発結石患者の Cit は著明に減少していた. 男子健康成人による各種食事を急性負荷し, 食事の種類による Cit の差を検討したが, 食後6時間目までの Cit に差は認められなかった. 各種食事負荷による Cit の動きは尿pHの変動とよく一致し, また食事前後の Cit と尿pHの間には有意な正の相関が認められた. 食事負荷による結石患者の Cit と尿pHは対照群より低値を示すものの, 対照群と同様の変動を示した. Wistar 系ラットを蛋白質含有量の違う飼料で飼育すると, 高蛋白質食を与えた群では標準食を与えた群に比べて有意な低クエン酸尿症, 高Ca尿症, 尿pHの低下を認めたが, 同時に1%重炭酸ソーダ水を与えることによりこれらの状態は是正された. 尿中蓚酸排泄量は差を認めなかった. 以上の結果から, 結石患者にみられる低クエン酸尿症は動物性蛋白質に代表される酸性食品の慢性的な摂取過多に起因すると考えた. すなわち結石患者には慢性の“sucblinical metabolic acidosis”とでもいうような状態が存在し, これが高Ca尿症や低クエン酸尿症を引き起こす大きな要因になると考えた.
  • 投与の腎毒性の電顕的観察
    木村 茂三, 中薗 昌明, 田崎 寛
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1439-1453
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Cis-Diamminedichloroplatinum (II) (CDDP) 投与による重要な副作用は腎毒性であり尿細管障害の形で起るが, その機序についてはまだ充分明らかでない.
    今回CDDP投与による腎障害の発生機序を解明するため動物実験を行い主に病理形態学の面から検討したので報告する.
    実験は体重200~250gの約80匹の Wistar 系ラットを使用した. CDDP投与時の腎尿細管上皮, 特に近位尿細管上皮の直部を中心にその障害および回復過程について光学および電子顕微鏡にて観察, また生化学的検査, 血清 Platinum 値測定, X線元素分析法も施行した.実験動物はCDDPを, 2, 3, 4, 6, 10mg/kg/day 1回のみと隔日2回腹腔内注射と2群に分けて実験をした. また腎の初期変化を観察するため6, 12, 24時間目に, 極期および回復過程の観察のため2日目から3週間にわたり隔日に2匹ずつ屠殺した.
    本実験の電子顕微鏡所見および水銀投与の文献的考察から白金が近位尿細管上皮管腔側からの再吸収
    および間質の周囲血管から基底膜を通して上皮細胞内へ移行する二つの経路があると考えられた. 再呼収された白金は細胞膜および細胞小器官の膜のSH基と結びついて主にミトコンドリアの機能障害を及ぼすことが腎障害の主因と考えられ, また投与初期の刷子縁の変化などから虚血性腎障害も存在することが考えられた.
  • 生化学的, 形熊学的検討
    阿曽 佳郎, 田島 惇, 鈴木 和雄, 大田原 佳久, 太田 信隆, 畑 昌宏, 塚田 隆
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1454-1459
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    サイクロスポリン (Cs) 腎毒性の解明のため, 10週齢の Wistar 系ラットを用い以下の実験を行った. ラットをCs群 (サイクロスポリン100mg/kg/日, 9日間連日経口投与), GM群 (ゲンタマイシン20mg/kg/日, 9日間連日皮下注), および対照群の3群にわけた. 各群とも実験開始後10日目に屠殺し, BUN, 腎組織中N-acetyl-β-D-glucosaminidase (NAG) 値, alanine aminopeptidase (AAP) 値, 過酸化脂質 (LPO) 値の測定と, 光顕的, 電顕的に腎の組織学的検討を行った. その結果, Cs群ではBUNが対照群と比べ明らかに上昇した. 同様にCs群では, 組織中NAG値, LPO値の有意な上昇が認められた. Cs群の組織像では, 近位尿細管細胞の空胞変性が観察された. 一方GM群ではAAPが明らかに増加し, 組織では刷子縁の脱落とミエリン様構造の出現がみられた. Cs群において, 近位尿細管細胞ライソゾーム由来である組織中NAG値および, 細胞膜崩壊の指標と考えられる組織中LPO値の上昇がみられた. この事実からCsが血行を介して近位尿細管上皮細胞を直接障害することが推測された。一方, GM群においては刷子縁由来の酵素である組織中AAP値が増加することから, 本剤が近位尿細管管腔, 刷子縁を介して尿細管細胞の障害をひきおこす可能性が考えられた。このことはCs腎毒性診断において, 血中, 尿中のNAG値, LPO値の測定が有用である可能性を示唆するものであろう。
  • 新島 端夫, 岩動 孝一郎, 梅田 隆, 岸 洋一, 東原 英二, 赤座 英之, 富永 登志, 藤目 真, 原 徹, 木村 明, 平野 美和 ...
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1460-1467
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年12月より1985年2月にかけて, 体外衝撃波腎結石砕石機 (Extracorporeal Shock Wave Lithotripter, 以下ESWL) の臨床治験をおこなったので, その結果を報告した. 対象は, 上部尿路結石の30名55結石で, ESWL術後4週目のレントゲン撮影で結石陰影を認めない者21名 (70%), 5mm以下の小結石を認める者2名 (7%), 5mm以上の残存結石を認める者7名 (23%) であった. 1回の治療でほぼ満足のいく結果を得られた者は24名 (80%) で, 残り6名は2回目のESWLかあるいは何らかの方法を講じる必要があった. 実際には4名に再度のESWL, 1名に尿管口切開, 2名は尿管結石の自排を期待して経過観察中 (重複例もあるので合計6名) である. 血液生化学上の変化は, 治療後にいくつかの項目で変化が認められたが, 主として筋, 腎, 肝, 血球成分などの破壊による一過性の変化と考えられた. ESWLの治療によって問題となるような副作用や合併症もなく, 従来の手術的治療法に比して適応が正しければ, 優れた治療法であることが確認できた.
  • 青木 正治, 熊本 悦明, 毛利 和富, 大野 一典
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1468-1477
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    夜間睡眠時勃起現象 (noctumal penile tumescence NPT) の記録は器質的インポテンスと機能的インポテンスの鑑別診断に有望な検査法と考えられている. そこで我々は正常者およびインポテンス患者に対しNPT測定を行い. その臨床的有用性および判定基準について検討を行った.
    1. 正常者13例にNPT測定を行ったところ全例一晩に3~7回のNPTが認められ, 陰茎の最大周径増加は16~35mm (平均24.0±5.8mm) であった. 勃起の平均持続時間は14.0~34.2分 (平均23.9±6.0分) であり, 全勃起時間は睡眠時間の平均26.4%を占めていた.
    2. インポテンス患者31例 (器質的要因を有する者17例, 器質的要因を有しない者14例) に対してNPT測定を行ったところ, 器質的要因を有しない例では全例ほぼ正常なNPTを認めた. 一方, 器質的要因を有する例では正常なNPTが4例に認められたが他の症例では陰茎周径増加が明らかに少なかった.
    3. 陰茎周径増加の程度とNPTの平均持続時間との関係を検討した結果, 陰茎周径増加が10mm未満, あるいは平均持続時間が10分以下の場合は器質的インポテンスが強く疑われる. しかし周径増加が10mm以上かつ持続時間が10分以上ある場合は, NPT測定のみでは鑑別が難しく他の検査と合わせて総合的に検討することが必要である.
  • 毛利 和富, 熊本 悦明, 大野 一典, 青木 正治
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1478-1485
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    夜間睡眠時勃起現象 (Nocturnal penile tumescence) を利用して, インポテンスの鑑別診断が行われている.
    Morales らは, 簡単なNPT測定方法として erectometer を報告している. これは, band を終夜陰茎に巻き, 夜間陰茎周の増加を実測するものである.
    我々は, 日本人のサイズにあつた erectometer を作製し, インポテンス症例23例と, 正常男子6例に対してNPTを測定した.
    そこで, 従来より行っている Mercury strain gauge によるNPTモニターの結果と, erectometer による検査結果を比較し, erectometer の診断上の有用性を検討した.
    つぎに, インポテンス症例5例, 高齢男子13例 (67歳以上) を対象として erectometer と stamp technique の検査結果を比較検討した. Stamp technique は Barry らが考案した, 簡単なNPTの有無を知る検査法で, 器質的インポテンスを鑑別する目的で使用されている.
    以下に述べる結果を得た.
    (1) インポテンス症例23例中21例 (91%) で, erectometer と strain gauge による鑑別診断が一致した.
    (2) 18例中2例 (11%) において erectometer で3晩ともに反応が得られなかったにもかかわらず, stamp technique では stamp の断裂を認めた.
    以上のことから, erectometer は, インポテンスの鑑別診断に利用でき, しかもNPTの定量的検査方法という点で, stamp technique よりも信頼性のある検査方法と思われる.
  • 大野 一典, 熊本 悦明, 毛利 和富, 青木 正治, 豊島 真, 杉山 善朗
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1486-1492
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    機能的 (心因性) インポテンスにおいて, そのパーソナリティーを十分に把握することが本症の診断治療に役立つものと考え, 投影法による心理検査を行った. この場合対照として正常人のみならず, 性染色体異常症である Klinefelter 症候群, 低 androgen 状態である類臣官症についても同様の検討を加えた.
    機能的インポテンス患者では, 男性としての性的役割, 性的同一視が Klinefelter 症候群, 類宦官症に比較して確立している傾向にあるにもかかわらず aggressiveness が乏しく, 内向的で感情の抑制が強いと言う結果であった. このことから, 機能的インポテンスの治療を行う場合心理学的アプローチにより, aggressiveness 低下という点を改善する必要があると思われた.
  • 五島 明彦, 公平 昭男
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1493-1498
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    睾丸回転症15例の対側睾丸造精機能につき, (1) 患側睾丸手術時の対側睾丸組織像 (4例), (2) 回転解除数年後の精液所見 (3例) および, (3) 患側睾丸摘除数年後の精液所見あるいは, 残存睾丸組織像 (9例) (但し, (1) の群と1例は共通) を検討した.
    発症時対側睾丸は, 4例中2例に萎縮像を示し, 回転解除後3年以上経て, 3例中1例が10×106/ml以下の精子濃度であり, 患側睾丸摘除例では, 1年以上経た後に9例中4例で, 10×106/ml以下の精子濃度あるいは, 残存睾丸組織の変性像を認めた. 結局, 15例中6例 (1例は, 発症時および発症後共に障害がみられた) に, 明らかな対側睾丸の造精機能障害を認めた. これらのうち, 対側睾丸の下降不全あるいは, 回転症のあった4例を除くと, 11例中3例 (27%) に原因不明の対側睾丸の造精機能低下を認めたことになる. このような例の存在について, 今後検討する必要があると考えられる.
  • 徳中 荘平, 岡村 廉晴, 宮田 昌伸, 橋本 博, 八竹 直, 村上 梅司
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1499-1503
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雄家兎外尿道括約筋よりグリセリン筋を作成し, O'Farrell の2次元電気泳動法を行なった. 外尿道括約筋のミオシン軽鎖は, その大部分が速筋型ミオシン軽鎖で, 遅筋型ミオシン軽鎖は殆どみられなかった. また家兎外尿道括約筋, psoas および soleus より粗ミオシンを調製し, これよりミオシン重鎖を分離, S. aureus V8 protease, papain を用いてペプチドマップを作成した. 外尿道括約筋ミオシン重鎖のペプチドマップは, 典型的速筋である psoas のそれと類似しており, 典型的遅筋である soleus とは異なっていた. したがって, 家兎外尿道括約筋のミオシンはその軽鎖, 重鎖とも速筋型と考えられた.
  • 渡辺 学
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1504-1515
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    99mTc-DMSA腎 uptake の分腎機能検査法としての意義を検討する目的で以下の研究を行った. 1.99mTc-DMSA腎 uptake と分腎クリアランス法, および腎静脈カテーテル法との比較検討を行った. 99mTc-DMSA腎 uptake は静注2時間後に, 投与量の何%が腎に取り込まれたかを測定した. 2. 組織の得られた症例で, 腎皮質における尿細管占有率を測定し, これと99mTc-DMSA腎 uptake との比較検討を行った. 3. 99mTc-DMSA腎 uptake と静脈性腎盂造影法 (IVP, DIP) の5分像との比較検討を行った. その結果, 1. 99mTc-DMSA腎 uptake と単腎者, 尿管皮膚痩者, 腎痩者での分腎尿採取から得られた腎クリアランス値との間には, 非常に良い正の相関が得られた (CpAHでr=0.89, n=37, Cthioでr=0.90, n=37). 2. 99mTc-DMSA腎 uptake と腎静脈カテーテル法との間では, EpAH, CpAHで良い相関が認められた (EPAHでr=0.63, n=43, CPAHでr=0.72, n=23). また, 腎静脈血流量 (局所熱稀釈法) との間にも良い相関が得られた (r=0.57, n=25). 3. 99mTc-DMSA腎 uptake と尿細管占有率との間に, 良い相関が認められた (r=0.82, n=22). 4. 以上より, 99mTc-DMSA腎 uptake は腎皮質機能を正確に示すものであり, その手技の容易さ, 侵襲の少なさから, 理想的な分腎機能検査法であると考えられた. 5. IVP (104腎) およびDIP (53腎) を5分像から, 排泄良好群, 中間群, 不良群の3群に分けると, これらと99mTc-DMSA腎 uptake の間には, 良い相関が認められた.
  • I. 蛋白尿を伴う膀胱尿管逆流症の予後
    秋山 隆弘, 国方 聖司, 郡 健二郎, 栗田 孝, 八竹 直
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1516-1523
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    reflux nephropathy の概念, 病態について現在定説はない. 一般には蛋白尿, 腎の瘢痕性変化, 腎機能低下と reflux nephropathy には密接な関連が推測されている. われわれはVUR自験375症例の内蛋白尿を呈した症例を対象として非蛋白尿症例と比較しつつ治療予後をIVP, RI, 腎機能の推移から retrospective に検討した. その結果, 蛋白尿症例では逆流防止手術を行った11例中腎機能正常の小児2例を除いた9例で予後不良で, 一方保存的療法の6例全例で予後不良であった. 蛋白尿を呈した両側性VUR 15例中3例が腎不全に陥った. この事から蛋白尿症例は治療法の如何に拘らず予後不良であることが判明した. また非蛋白尿症例で腎の癩痕性変化を有する症例では必ずしも予後は不良とは限らなかった. 以上より蛋白尿の有無はVURの予後を大きく左右する因子と考えた.
    なお, 非蛋白尿症例での検討で, 逆流防止手術症例の方が保存的療法症例に比して予後良好で, 保存的療法により腎機能の増悪した症例も逆流防止手術により改善傾向をみたことも併せ, VURの治療方針決定の際逆流防止手術に対する積極性が望ましいとの提言を行った.
  • 和志田 裕人, 津ケ谷 正行, 平尾 憲昭, 阪上 洋, 岩瀬 豊
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1524-1529
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍に対する経尿道的レーザー手術のための接触型導光路 (レーザー・マイクロ・ロッド) を研究・麟し実用化に成功した. レーザー・マイクロ・ロッドは底部の直径2.0mm, 長さ5.0mm, 先端直径は0.1mmであるニューセラミックス製の細い針であり, これを石英の導光路の先端に接続し, 検査用膀胱鏡, あるいは灌流式切除鏡を用いて, 直視下に腫瘍内にレーザー・マイクロ・ロッドを打ち込み, 15W前後にてレーザー照射を開始する. 開始直後より腫瘍は灰白色の壊死物になり剥離していくのでレーザー・マイクロ・ロッドを動かして腫瘍が消失するまで続ける.
    25名の膀胱腫瘍症例に接触型導光路を使用した経尿導的レーザー手術 (TULD) を施行しその成績は満足するものであり, 非接触型導光路によるレーザー手術あるいはTUR-Btと比較して, 多くの利点が認められ, 膀胱腫瘍にたいする新しい治療法と成り得ると考えられた.
  • グラスキャピラリーカラムガスクロマトグラフィを用いた多種同時測定法による検討
    簑和田 滋
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1530-1541
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    グラスキャピラリーカラムガスクロマトグラフィによる尿中ステロイド多種同時測定法を用いて, 正常者19例, 副腎腫瘍患者14例, 先天性副腎皮質過形成9例について, その尿中ステロイド17種の分析を行なった. 正常者 (男子14例, 女子5例) における結果では, 女子で5β/5αステロイド比が有意に高値を示した. 14例の副腎腫瘍患者における分析では, クッシンク症候群で5β-Hおよび11β-OHステロイド優位の代謝様式が認められた. また3例の全ての副腎癌において tetrahydro-11-deoxycortisol およびΔ5-pregnenetriol の著しい高値が認められた. これは 11β-hydroxylase および3β-OH steroid dehydrogenase 活性の相対的障害によるもので, こうした著しい酵素不均衡の所見は強く癌を示唆するが, 一方で同様の所見が男性化腺腫の1例でも認められた. 癌の1例においてACTH刺激に反応する所見が認められた. 9例の先天性副腎皮質過形成 (21水酸化酵素障害) 患者のうち, 未治療の4例では11β-hydroxyandrosterone, pregnanetriol, pregnanetriolone の著しい高値が特徴的で, この特徴は治療例5例でも認められた. またクッシング症候群とは逆に5α-H優位の代謝を示す所見も認められた. 性ステロイドを主体とした血中ステロイドの種々の状態による肝における5β/5α reductase 活性が変化する可能性が示唆された.
  • 堀江 正宣, 篠田 育男, 藤本 佳則, 長谷川 義和, 藤広 茂, 竹内 敏視, 兼松 稔, 栗山 学, 坂 義人, 西浦 常雄
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1542-1549
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    岐阜大学泌尿器科において, 1974年から1983年までの過去10年間に67例の前立腺癌患者を経験し, このうち14症例 (21%) に会陰式前立腺全摘除術を施行した. 手術時の平均年齢は60.3歳, 経過観察期間は6カ月から105カ月 (平均26.3カ月) であつた. 14例全てが, 再発を認めず生存中である. 術前の臨床的 stage 診断は, B1: 10例, B2: 4例であったが, 術後 stage Cを1例認めた. 手術対象の前立腺は, 尿道造影上40mm以下で, 摘出重量も27.3gと比較的小さかった. 平均手術時間, 出血量は, 各々248分, 912mlであった. 術後カテーテル留置期間は, 平均16日間で, カテーテル抜去後9日目には, 正常排尿状態に復していた. 勃起不全は, 12例に認めた. また, 術後の膀胱尿道機能検査では, 正常値を下まわっていたが, 日常の排尿には支障をきたしていない. 以上より, 限局性前立腺癌には, 本法を含む前立腺全摘除術を積極的に行なう意義を認めたが, 術前の stage 診断には困難な問題があり, 文献的考察を加え検討した.
  • 尿輸送能に対する重力の影響
    大矢 晃
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1550-1560
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    倒立位で尿量および重力負荷を加えた場合の尿管機能を明らかにする目的で, 脱水下に倒立位とした犬12頭に対し腎盂内注入法を使用して尿管筋電図と腎盂内圧を記録し, 同様の操作を加えた仰臥位群8頭と比較して次の結論を得た.
    1. 放電間隔は乏尿状態で腎盂内注入量の増加に応じて両群共に有意に短縮した.
    2. 放電伝播速度は腎盂内注入量の増加に応じて両群共に遅延し, 仰臥位群では0.2ml/minで25.8±2.5mm/sec (Mean±S. D.), 5.0ml/minで17.6±1.5mm/secとなり, 倒立位群では0.2ml/minで26.5±4.5mm/sec, 5.0ml/minで17.3±2.2mm/secとなり, いずれの腎盂内注入量でも両群間に有意差が認められなかった.
    3. 腎盂内圧は腎盂内注入量の増加に応じて両群共に上昇し, 仰臥位群では0.2ml/minで3.9±0.9cmH2O (Mean±S. D), 5.0ml/minで12.1±2.3cmH2Oとなり, 倒立位群では0.2ml/minで4.3±1.8cmH2O, 5.0ml/minで24.4±3.4cmH2Oとなったが, 0.75ml/min以下の腎盂内注入では両群間に推計学的な有意差が認められなかった.
    4. 腎盂内圧と放電間隔, 放電伝播速度と放電間隔の関係等も考慮すると, 重力負荷が最大となる倒立位においても, 0.75ml/min前後の成犬においては正常尿量に相当する尿量では, 尿管は蠕動運動により円滑に尿を腎盂から膀胱へ輸送していると考えられる.
  • 福井 準之助, 山口 建二, 仲間 三雄, 富田 康敬, 原田 勝弘, 小俣 和一郎
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1561-1566
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    71歳, 16歳, 23歳女性に生じた3例の心因性尿閉を報告する. 全症例共, 神経学的検査で異常なく, 器質的下部尿路閉塞も認められなかった. 2症例で尿閉は“emotional stress”の後に生じた. 症例1では両側VURと軽度の肉柱形成膀胱を認めたが, 症例2と症例3では通常の泌尿器科検査では異常がなかった. 全症例で膀胱容量は500ml以上で尿流動態検査にて排尿中の外括約筋の action potential の増大を認めた. 精神科的考察では, 症例1は depression の1つの型であり, 抗うつ剤の投与で尿路症状の改善をみた. 症例2はヒステリーであり, 精神安定剤と自律神経訓練法により尿路症状の改善をみた. 症例3は神経分裂病によるもので, 種々の治療に対し抵抗性であった. 結婚と共に症状の消失をみたが, その後離婚し, 再び残尿の増大を認められた. 心因性尿閉の治療は, 泌尿器科医と精神科医との協力の下でなされるべきである.
  • 病因, 病態, 診断, 治療について
    山西 友典, 五十嵐 辰男, 高原 正信, 村上 信乃, 村山 直人, 山城 豊, 安田 耕作, 島崎 淳, 服部 孝道
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1567-1572
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    心因性尿閉の4例を報告した. 症例はすべて女性であり, 年齢は42歳~57歳, 平均49.5歳であった. 全例神経学的に異常なく, 尿流動態検査を含めた泌尿器科学的検査では, 尿閉となる器質的疾患は認められなかった. 全例家族内における葛藤が心因と考えられた. 治療は全例に精神療法を行い, さらに2例に一時的な自己導尿, 1例にジアゼパム投与, 1例に抗うつ剤投与を施行し, その結果, 排尿障害は全例改善した.
  • 仙賀 裕, 里見 佳昭, 福田 百邦, 三杉 和章
    1985 年 76 巻 10 号 p. 1573-1579
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は4歳7カ月女児で, 1カ月前よりの無症候性血尿を主訴とした. レントゲン検査にて左腎茎部リンパ節転移を伴った左腎腫瘍と診断され, 根治的左腎摘出術が施行された. 病理組織学的には乳頭状配列を呈した淡明細胞及び顆粒細胞よりなり, 腎細胞癌と診断された. 術後インターフェロンを予防投与し1年経過したが, 現在再発はみられていない.
    自験例も含め内外の文献から過去における10歳以下の腎細胞癌47例を集計し, 小児腎細胞癌の臨床症状, 病理組織所見, 鑑別診断, 治療, 予後について若干の考察を行った.
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