日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
79 巻, 9 号
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  • DMSA腎シンチグラフィーによる長期経過観察
    千葉 裕, 折笠 精一
    1988 年79 巻9 号 p. 1479-1487
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1983年6月より1986年9月までに, 当科でPNLを施行した症例のうち, PNL後1年間の経過観察が可能であった48症例50腎に対して99mTc-DMSA腎シンチグラフィーを行い, DMSA腎摂取率の変化より, PNL後の分腎機能の長期経過について検討を行った.
    DMSA腎摂取率により, PNL後1年間の分腎機能の変化を観察すると, 50腎中38腎 (76%) が経過良好群, 18腎 (18%) が中間群, 3腎 (6%) が経過不良群であった.
    経過不良群3腎は, すべて術後発熱を合併したサンゴ状腎結石であった. 術後発熱を合併したサンゴ状腎結石13腎のPNL後の平均DMSA腎摂取率は, 術後発熱を合併しなかったサンゴ状腎結石12腎の平均DMSA腎摂取率に比較して, 有意に低下していた.
    また, 50腎中21腎で, PNL後の腎シンチグラム上, 腎瘻挿入部に一致した low density or cold area の残存を認めた.
    感染を合併しやすいサンゴ状腎結石においても, PNLを更に腎機能への影響の少ない方法として確立していくためには, 十分な化学療法などにより, 感染を予防することが重要と考えられた.
  • 阿曽 佳郎, 田島 惇, 鈴木 和雄, 大田原 佳久, 大見 嘉郎, 太田 信隆, 畑 昌宏, 牛山 知己, 増田 宏昭, 鈴木 俊秀, 神 ...
    1988 年79 巻9 号 p. 1488-1496
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1) 浜松医科大学泌尿器科では1979年11月から1987年8月までに97症例に生体腎移植56回, 死体腎移植44回 (2次移植4例) を行った.
    2)シクロスポリン (Cs) と術前リンパ球除去 (LA) を併用した生体腎移植の1年生着率は, 93.9%であった. アザチオプリン (Az) を使用した群, ミゾリビン (Mz) とLAを併用した群の1年生着率はそれぞれ55.6%, 79.2%であり, Cs+LA群には有意の差があった.
    3) 死体腎移植のCs投与群{Cs(+)}の1年生存率, 1年生着率は100%, 72.6%, Cs非投与群{Cs
    (-)}の1年生存率, 1年生着率は63.0%, 49.4%で生存率に有意の差がみられた.
    4) 合併症ではCs(+)で肝機能障害が有意に低下, 生体腎でATNが有意に増加した. 一方, 呼吸器感染, 白血球減少, 大腿骨頭壊死は減少したが, 有意の差ではなかった. また急性拒絶反応の回数はCs(+), Cs(-)で差はなかったが, Cs(+)で程度の軽いものが多かった. 顕性ウイルス感染はCs(+)で少なく, 特にサイトメガロウイルス感染が減少した. しかし, 有意の差はなかった. また, Cs腎毒性は生体腎で47.8%, 死体腎で47.1%に出現した.
  • 早川 正道, 秦野 直, 小山 雄三, 増田 毅, 比嘉 功, 大澤 炯
    1988 年79 巻9 号 p. 1497-1503
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は腎癌患者末梢血リンパ球 (PBL) のLAK細胞活性とその誘導の特性について検討を加えた. LAK細胞活性の測定には51Cr放出試験を用い, またLAK細胞とその前駆細胞の表現型の検討には, 各種モンクローナル抗体によるリンパ球障害試験を用いた.
    LAK細胞は, 新鮮な自己腫瘍細胞のみならず, NK細胞活性に非感受性の allo の継代腫瘍細胞も障害しており, LAK細胞の有する障害能は非特異的である. LAK細胞をOKT-3やOKT-8, あるいはLeu-11bと補体で処理することにより, その活性はある程度低下した. 患者PBLをペルコール不連続密度勾配遠心法で分離し, 軽い分画 (LDF) と重い分画 (HDF) に分別した. 両分画をそれぞれrIL-2 (2×106リンパ球/1, 000IU. rIL-2) と培養することにより, LDFから培養1日目にすでに高い活性が誘導されてきた. しかしHDFのLAK活性は培養1日目こそ弱いものの, 以後培養日数と共に明らかに増強しており, このことは両分画において, LAK細胞活性誘導の time kinetics が異なることを示している. さらに, PBLをOKT-3やOKT-8と補体で前処理してからrIL-2で刺激した場合, LAK活性誘導になんら支障が生じないが, Leu-7とLeu-11b+補体で前処理するとLAK活性は明らかに低下した.
    これらの研究結果の示唆するところによれば, LAK細胞は表面抗原や機能面で異なった種々の前駆細胞から誘導されてきており, このことから腎癌に対するLAK療法も, これらLAK活性誘導の特異性に基づいて決定され, 行われるべきであろうと考えられた.
  • 近田 龍一郎, 坂井 清英, 庵谷 尚正, 太田 章三, 池田 成徳, 折笠 精一
    1988 年79 巻9 号 p. 1504-1509
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    小児原発性膀胱尿管逆流症 (VUR) 84名を対象にRIAによる尿 albumin の微量定量を行い, VURに伴う糸球体障害について検討した.
    この結果, VUR例の40%に尿 albumin 高値を認め, VURに伴う腎障害は早期より尿細管のみならず糸球体にも及んでいることが明らかとなった. また, 5歳以降になると著しい尿 albumin の増加を伴う例が認められ, 成長や加齢に伴い糸球体障害が顕在化する可能性が示唆された.
    尿細管障害の指標である尿α1-MGやNAGと尿 albumin との関係をみると, 両者は平行せず, VURにおいては糸球体障害と尿細管障害とは必ずしも並行して進行しないことがわかった. また, VURの grade 毎での尿 albumin をみたところ, VURの grade と糸球体障害の程度とは一致しなかった.
    逆流腎の障害の程度をどれだけ糸球体性蛋白が反映するか, 腎シンチグラムよりみた逆流腎の障害の程度と尿 albumin を比較検討したところ, 尿 albumin は腎皮質の scar を伴う例や一側腎の高度腎機能障害を伴う例に高い値を示すものが多いものの, 血清α1-MGで異常高値を示す総腎機能低下例でも尿 albumin 値で正常を示すものがあり, 逆流腎の障害の程度と糸球体性蛋白の程度とは一致しなかった.
  • 中川 修一, 中尾 昌宏, 豊田 和明, 温井 雅紀, 高田 仁, 戎井 浩二, 渡辺 泱, 小林 徳朗, 前川 幹雄
    1988 年79 巻9 号 p. 1510-1515
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行性尿路上皮癌14例 (膀胱11例, 腎盂2例, 尿管および膀胱1例) に対してM-VAC療法を行った. M-VAC療法は第1日に methotrexate 30mg/m2を投与し, 24時間後 vinblastine 3mg/m2, adriamycin 30mg/m2, cisplatin 70mg/m2を追加し, 以後15日, 22日に同量の vinblastine, methotrexate を投与し, これを毎月くり返した.
    有効率は43% (14例中6例) で, うち2例が完全寛解 (CR) に至った. 部分寛解 (PR) した1例は手術療法を併用してCRとなった. 全体でのCRは21% (14例中3例) であった.
    すべての転移病巣に有効であった. すなわち原発巣6例中5例, リンパ節7例中3例, 肺8例中3例, 肝3例中1例, 骨3例中1例, 脳2例中1例に有効であった.
    副作用としては, 嘔気, 嘔吐78.6%, 腎機能障害21.4%, 貧血 (赤血球250万以下) 21.4%, 白血球減少 (1,000以下) 42.9%, 血小板減少 (10万以下) 57.1%, 脱毛85.7%であった. 重篤な副作用はなかった.
    M-VAC療法は進行性尿路上皮癌に対して有効であり, 結果は満足のいくものであった.
  • 塚本 泰司, 熊本 悦明, 大村 清隆, 宮尾 則臣, 山崎 清二, 岩沢 晶彦, 広瀬 崇興, 札幌医科大学尿路性器癌研究会
    1988 年79 巻9 号 p. 1516-1523
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行性睾丸腫瘍22例に対する導入PVB療法の効果と, これらのうちPVB療法後も転移巣が残存した16例に対する外科的治療の臨床効果を検討した.
    1) 導入PVB療法の奏効率は68.2%であったが, CRの割合は18.2%と低かった. これは全体にいわゆる“poor prognostic feature”を認めた症例の割合が高かったためと思われた.
    2) 導入PVB療法後に残存した転移巣を有する16例に外科的治療 (後腹膜リンパ節廓清, 肺の部分切除, 鎖骨上窩リンパ節廓清, 脳転移巣別除) を施行した. 剔出転移巣の組織像では, 肉芽-線維化組織, 成熟奇型腫, 癌細胞の残存がそれぞれ18.8%, 18.8%, 62.4%の症例に認められた. 癌細胞を認めなかった症例では外科的治療前のAFPあるいはhCG-βはすべての症例でPVB療法により正常化していた. 一方, 癌細胞の残存を認めた症例では, 多くは (80.0%) これらのマーカーのいずれかあるいは両方の異常値を外科的治療時まで持続していた.
    3) 残存転移巣に対する外科的治療により16例中6例 (37.5%) が36カ月以上に亘る長期生存例となった.
    転移巣が残存した症例に対する外科的治療の適応は, 化学療法後のAFP, hGC-βの状態により決定すべきであり, これらのマーカーが正常化していた症例の予後は良好であるが, 非正常化例のそれは不良であった.
    4) 外科治療後の臨床経過は残存転移巣の組織像とも関係し, 長期生存例では癌細胞の残存を認めた例はなかったのに対し, 癌死例はすべて癌細胞の残存を認めた症例であった.
  • 浅川 正純, 安本 亮二, 上水流 雅人, 前川 正信
    1988 年79 巻9 号 p. 1524-1528
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1986年11月から1987年6月末までの7カ月に大阪市立北市民病院泌尿器科にて臨床的に前立腺肥大症と診断された205症例に対して, 血中γ-Sm, prostatic acid phosphatase (PAP) を測定した. γ-sm高値を示した症例は205例中25例 (12.2%) であり, そのうち15例に対して組織学的検索を行なったがすべてBPHであった. またγ-Sm正常例180症例のうち20例に対してtransurethral resection of the prostatic gland (TUR-P) を施行したところ, 3例に偶発前立腺癌が発見された. さらにγ-Sm 高値例25症例 (A群) とTUR-Pを施行したγ-Sm正常例20症例 (B群) の合計45症例に対して経直腸的前立腺エコー (リニア式) を行った結果, 前立腺結石の合併率はA群60%, B群35%であり, 前立腺膿瘍合併率はA群32%, B群10%であった. また前立腺予想重量の平均はA群が30.8g, B群が23.9gであった. 以上のことから, 前立腺結石, 前立腺膿瘍を合併したBPHや重量の大きなBPHではγ-Sm高値を示す傾向があり, γ-Sm高値症例に対しては, 組織学的検索を行うとともに前立腺エコーによる検索も重要と思われた.
  • 鈴木 孝憲, 神保 進, 今井 強一, 山中 英寿, 鈴木 慶二, 高橋 溥朋, 北浦 宏一, 小屋 淳, 柴山 勝太郎
    1988 年79 巻9 号 p. 1529-1534
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症500例および膀胱癌73例における前立腺偶発癌の発生頻度, 年齢分布, 摘出重量, 年度別発生変化について検討した. また関連病院で発見された偶発癌13例を加え, 病理組織学的に検討した.
    1. 前立腺偶発癌の発生頻度は4.4%で, 前立腺被膜下摘除術4.1%, TUR-P7.7%, 膀胱全摘除術4.1%で, TUR-Pによる発見率の上昇が見られた. 平均年齢は肥大症69.5±8.6歳, 偶発癌73.8±6.8歳で, 偶発癌例が有意に高齢であった. 年度別では後半 (1976年以降) に発生率の増加が見られたが, 最近10年間では横ばいであった.
    2. 5mm step section 法およびTUR全切除切片検索により前立腺偶発癌の発見率は5.6%より7.4%に増加した.
    3. 腫瘍の大きさと組織学的分化度に相関関係が見られ, 腫瘍が大きくなると低分化傾向が見られた. 高分化腺癌では腫瘍長径5mmをこえると中および低分化腺癌組織が混在していた. TUR-P例では5chips をこえると中または低分化腺癌であった.
    以上より前立腺癌病期A1は腫瘍長径5mm以内限局性高分化腺癌, または3chips以下高分化腺癌が適当と思われた.
  • 後藤 敏明, 小柳 知彦, 松野 正
    1988 年79 巻9 号 p. 1535-1543
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去16年間に経験した尿管瘤のうち経尿道的瘤切除または切開 (以下TUR) が治療ないしは検査の一環として施行された20症例についてその有用性を検討した. 単純性尿管瘤12例15尿管は全て尿管のドレナージ改善が目的で尿管瘤の虚脱, 外翻のないことを確認後瘤遠位部小切開法を施行した. 軽度VURが3尿管に出現したが1例は自然消失し, 結局全例疼痛や尿路感染症状の消失を認めた他, 3例で結石摘出も成功した. 異所性尿管瘤8例8尿管では排尿障害解除 (5尿管), 尿管のドレナージ改善 (2尿管), 瘤脱処理 (1尿管) などの目的でTURが施行された. 前者では尿失禁などの後遺症の発生もなく, 全例排尿障害の消失を認めた. 特に cecoureterocele には有用であった. 後2者でも3例中2例で有用であり, TURのみで治癒したと考えられる1例も経験した. 腎機能評価にも有用であり, 尿管瘤のTURは適応を選べば極めて有用な治療法と考えられた.
  • 高寺 博史, 宇都宮 正登, 伊東 博, 板谷 宏彬, 吉岡 俊昭, 並木 幹夫
    1988 年79 巻9 号 p. 1544-1549
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎悪性腫瘍に対する腫瘍核出術に於て, その根治性如何は, 大きな問題点であると言えよう. この問題を論ずる為に, 1980年1月から1987年12月まで, 腎腫瘍6例9腫瘍に対し, 腫瘍核出術を行った結果を検討した. 病理組織所見は, 腎細胞癌単独が4例6腫瘍, 腎細胞癌と血管筋脂肪腫の同側合併1例, 腎オンコサイトーマ1例であった. 5腎細胞癌症例の内, 4例は術後腫瘍再発を認めなかったが, 対側腎摘除術を施行した1例は, 癌死した. 現在生存中の3症例は, 術後2カ月から31カ月に渡り腫瘍再発の徴候はない. また腎オンコサイトーマ例も, 術後8カ月間, 再発を認めない.
    腎細胞癌に対する核出術は, 対象を選べば根治性を期待できる術式となり, 特に最近増加傾向にある所謂 small incidental cancer は, 理想的な核出術の対象となり得る可能性があると考える.
  • 中村 宏, 村井 勝, 長倉 和彦, 小田島 邦男, 浅野 友彦, 高尾 雅也, 辻 明, 田付 二郎, 相原 正弘, 松崎 章二
    1988 年79 巻9 号 p. 1550-1554
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎移植患者はステロイドを長期間内服するため, 長期生存者の副腎皮質機能を知ることは重要で, 移植後5~17年の腎移植患者の9名において追跡調査を行った. 移植時の平均年齢は24.3歳 (10~32歳) だった. 免疫抑制剤はすべての患者でステロイドとアザチオプリンを用いた. 移植後2年目で, 腎機能が正常で腎生検所見に変化がない場合にはステロイドの投与を漸減中止した. 副腎機能検査を行う3日前からステロイドの投与を中止し, 検査は1年間隔で毎年施行した.
    血清11-OHCSの平均値は, ステロイドを内服していない3名では23.0±2.3μg/dl, ステロイドを内服している6名では, 6.3±1.8μg/dlで, 後者は有意に低値を示した (p<0.03). 8時間点滴静注法によるACTH刺激試験では, ステロイドを内服していない3名のうち2名が, またステロイドを内服している6名中3名が, 血清11-OHCSが刺激後3倍以上の上昇を示した. GFR 70ml/min以上の腎機能が正常な3名の全例で, 血清コーチゾル, 11-OHCS, 尿中17-OHCS, 17-KSは正常範囲内にあった. しかしGFR70ml/min以下では, 6名中1名のみが血清11-OHCSと尿中17-KSが正常値を示したに過ぎなかった. 以上の結果から, ステロイドを内服していない患者と移植腎機能が正常な患者では副腎皮質機能は正常だが, ステロイドを内服している患者では, 副腎皮質機能は有意に低下していることが判った.
  • 榊原 尚行, 野々村 克也, 富樫 正樹, 小柳 知彦
    1988 年79 巻9 号 p. 1555-1558
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Chordee without hypospadias 11例の治療経験について, 手術所見をもとに本症を Devine-Horton 分類に従い3つの Type に分類し, これに基づいた術式, 手術成績, 合併症などについて検討した. dartos mobilization, urethral mobilization を主体とした術式により大多数が一期的形成術可能であったが, 以上の操作後も索変形の残存する dysplastic urethra では尿道切断が必要なことを強調した. 11例中10例で満足すべき成績を得た.
  • 松岡 啓, 吉武 信行, 野口 正典, 田中 英裕, 野田 進士, 江藤 耕作
    1988 年79 巻9 号 p. 1559-1566
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    久留米大学病院泌尿器科において, 1978年より1987年までの10年間に加療した新鮮前立腺癌症例100例について, 初回治療としての内分泌併用化学療法の有用性について, 内分泌療法と比較して検討した.
    全症例の5年生存率は46.4%で, 8年生存率は24.1%であった.
    治療開始後3カ月における response rate (NPCP-stable 以上) は, 内分泌併用化学療法群で93.3%, 内分泌療法群で92.6%と, 両群ともに良好な成績であった.
    内分泌併用化学療法群の生存率においては, 3年半までは内分泌療法群よりも若干良好な傾向であったが, 全期間を通じて有意差は認められなかった. しかし, 近接効果で progression であった群に比較して, partial response 群 (p<0.01) と stable 群 (p<0.05) では有意に予後が良く, 近接効果は予後に反映されることが示唆された.
    内分泌併用化学療法群において, diethylstilbestrol diphosphate に併用する薬剤としては, estracyt よりも cis-dichlorodiammine platinum, cyclophosphamide, adriamycin 等を使用した方が1~3年で予後が良い傾向にあった.
  • 斎藤 雅昭, 恩村 芳樹, 政木 貴則, 加藤 弘彰
    1988 年79 巻9 号 p. 1567-1573
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    水腎尿中成分が, 閉塞解除後の水腎の機能回復を予測する指標となりうるかを検討した.
    対象は水腎症の128例. 片側水腎症が118例, 両側水腎症7例, 単腎症例は3例であった. IVP15分像での腎盂腎杯の描出速度により水腎の機能を評価した. 次に水腎尿を採取し, 水腎尿中K, Cr, urea-N濃度及びNAG, β2MG活性を測定した. そして水腎機能と尿中成分濃度との関係を検討した. 水腎尿中1568K, Cr, urea-N濃度は水腎機能の低下とともに低下する傾向を示した. 一方水腎尿中NAG及びβ2MG活性は水腎機能の低下とともに上昇する傾向を示した.
    次に閉塞を解除し, IVPを再検して腎盂腎杯の描出速度の改善の有無により, 水腎の機能回復の有無を検討した. 閉塞解除前のIVP 15分で腎杯が描出される症例はすべて閉塞解除にて腎盂腎杯の描出が良好となり, 機能の改善をみた. 一方IVP 15分でも腎杯が描出されない所謂 non-visualizing kidney において, 閉塞解除にて機能回復するものとしないものがあった. 閉塞解除前の水腎尿中K, Cr, urea-N濃度は non-visualizing kidney の回復群と非回復群において有意差を認め, 回復群において高値であった.
    非回復群の各尿中成分の棄却限界 (p<0.05) の上限はK, Cr, urea-Nにおいてそれぞれ11.9mEq/L, 21.3mg/dl, 81.9mg/dlであった. よってこれらの水腎尿中成分が上記の数値より高値を示せば, 水腎は機能回復すると考えられる. 以上より水腎尿中K, Cr, urea-N濃度は, 所謂 non-visualizing kidney の機能回復を予測するのに非常に有効であると考えられる.
  • 秋山 隆弘, 池上 雅久, 今西 正昭, 西岡 伯, 石井 徳味, 植村 匡志, 国方 聖司, 神田 英憲, 松浦 健, 栗田 孝
    1988 年79 巻9 号 p. 1574-1581
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎移植患者15名に対しカラードプラ断層法を用いて移植腎血管の血流動態を観察した. 腎門部血管は1例を除き, 腎内分枝・腎周囲血管は全例でその血流の詳細を本法で描出し把握しえた. 腎動脈の最大血流速 (腎門部またはその第一分枝での測定値) は, 移植腎機能良好群で30.3±12.3cm/sec, 拒絶反応・ATNによる機能低下群で16.5±6.3cm/secと両群間に有意差を認め, 血流速は腎機能を反映する指標であることが示唆された. また, 腎実質エコー内の本法で描出しうる末梢血流の密度は移植腎機能と相関した. 本法は移植腎の腎内血行動態を知る的確で簡便な新世代の技法であることを強調すると共に, 本法により腎血流量を計測するための技術面での諸問題点を論じた.
  • 後藤 俊弘
    1988 年79 巻9 号 p. 1582-1586
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路性器感染症患者から分離された160株の E. coli を対象に, 線毛型, モルモット赤血球に対する hemagglutination titer, hemolysin. 産生を検討した. 160株中151株が type 1 pili を, 47株がP pili ならびに manose-resistant pili を保有していた. P pili 保有株は急性単純性腎盂腎炎または前立腺炎患者の尿から多く分離された. hemagglutination titer は, 腎盂腎炎や慢性複雑性膀胱炎よりも, 前立腺炎または急性単純性膀胱炎患者尿から分離された菌株において高値であった. hemolysin 産生と P pili には関連性が認められるように思われた.
    以上の成績より E. coli の P pili, HL産生は急性単純性腎盂腎炎ならびに前立腺炎においては重要な virulence factor となることが示唆された.
  • Metal Staple を使用しない Intussuscepted Nipple Valve の固定法について
    萩原 正通, 朝倉 博孝, 中薗 昌明, 大東 貴志, 飯ケ谷 知彦, 山本 正, 林 暁, 宍戸 清一郎, 山本 秀伸
    1988 年79 巻9 号 p. 1587-1591
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Intussuscepted nipple valve は, Kock pouch, Mainz pouch などの代表的な continent urinary reservoir (CUR) の尿失禁防止機構であるが, ほとんどの施設は nipple valve の固定に metal staple を使用している. われわれは, metal staple が高価であり, また, 将来, 結石の核となる可能性も否定しえないことから, metal staple を用いない方法により nipple valve の固定を試み, 現時点で極めて良好な成績が得られている. すなわち, 回腸または結腸CURを造設した11例において, (1)重積部腸間膜の完全切離, (2) Dacron mesh collar による重積基部の固定, および(3)nipple valve 外層と pouch 壁の全層縫合により nipple valve の固定を行ったところ, 6~20カ月 (平均12カ月) の術後経過観察期間で, extussusception, prolapse などの合併症をきたした症例はなく, 全例が困難を感じることなく自己導尿を行いながら, 昼夜を問わず continent な状態である.
  • 辻 明, 村井 勝, 中村 宏, 吉井 滋, 玉井 誠一
    1988 年79 巻9 号 p. 1592-1596
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    髄外造血を認める内分泌非活性副腎皮質腺腫の1例を経験したので報告する. 患者は64歳の女性で, 他疾患で精査中に腹部CTで石灰化を伴う右副腎腫瘤陰影を指摘された. 末梢血液像, 血液生化学検査および副腎内分泌検査はすべて正常範囲内であった. 超音波ガイド下に右副腎腫瘤の生検を施行したが, 副腎皮質腺腫の病理診断を得た. 内分泌非活性副腎皮質腺腫の術前診断で右副腎摘出術を施行した. 病理組織学的診断は, 副腎皮質腺腫でその一部に髄外造血の所見を認めた.
    内分泌非活性副腎皮質腺腫の頻度は超音波やCT検査の普及に伴い増加しつつあるが, 自験例のように髄外造血を伴うものは本邦初症例である.
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