日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
76 巻, 8 号
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  • カルシウム含有結石に対する食事指導の再発予防成績について
    井口 正典, 江左 篤宣, 永井 信夫, 高田 昌彦, 片岡 喜代徳, 辻橋 宏典, 加藤 良成, 郡 健二郎, 栗田 孝, 八竹 直
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1111-1118
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    上部尿路結石症 (カルシウム含有結石) 患者に対する食事指導の必要性は近年本邦においても指摘されているものの, 食事指導の結石再発予防効果に関する報告は未だみられない. 今回食事指導開始後1年以上 (平均2.5年) 経過を観察できた102症例を対象に食事指導の結石再発予防効果を検討した. 食事指導のみで経過をみた指導前再発結石症例の指導前後の再発率は0.850 stone/year から0.106 stone/year へと著明に減少した (p<0.01). また薬物療法に食事指導を追加した症例の食事指導前後の再発率は1.444 stone/year から0.446 stone/year へと著明に減少した (p<0.01). 食事指導の問題点は患者が指導内容をいかにしっかりと, またどの程度長期に守れるかという点にあるが, 個々の症例の詳細な食生活調査を行った後にそれぞれに適した食事指導を行うことによって, 単にカルシウムや蓚酸などの摂取制限を強いる指導よりはるかに大きな効果が得られた. 結石再発予防の観点から, 薬物療法の限界について述べるとともに, 食事指導に関して総合的な見地から考察した. 今回の検討から, 適切なる食事指導はたとえ薬物療法が必要であると考えられる active stone former であっても同時に行われるべき治療法であると思われた.
  • 稲田 文衛, 八竹 直, 高村 孝夫, 徳中 荘平, 森川 満
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1119-1124
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    最近, 腎盂腫瘍に対する尿管摘除を経尿道的に行う報告がなされている. 今回, 我々も同様の方法にて腎癌7例, 腎盂腫瘍5例に対し尿管摘出を行ったので, 技術的問題点, 合併症につき検討した.
    尿管の摘出方法は Transurethral ureteral pull through (経尿道的尿管引き抜き術) と Transurethral ureteral resection (経尿道的尿管切除術) の2方法である. 多くの場合, 前者で充分と思われるが, 尿管と膀胱壁の間の脱離が容易でない時には後者を行う. 手術時あるいは術後の尿洩れ, 出血などの合併症はほとんど認めなかった. これらの方法は, 従来の尿管摘出術に比べて, 手術時間, 安全性の面で良い方法と考えられた.
  • 武田 克治
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1125-1137
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常前立腺 (NPR), 前立腺肥大症 (BPH) および前立腺癌 (PC) において, 血中, 前立腺組織内の testosterone (T), 5α-dihydrotestosterone (DHT) および5α-androstane-3α, 17βdiol (A-diol) を radioimmunoassay で測定した. 血中の androgen 濃度は3群間で差を認めなかったが, 組織内のTは未治療PCで, DHTはBPHにおいて有意に高値であった. 特に, BPH組織のDHT濃度は全例2.0ng/g.t.w.以上であり,“biochemical differentiated”は組織内DHT濃度2.0ng/g.t.w.以上であると考えられた. また, 前立腺組織内DHT濃度が2.0ng/g.t.w.以上の未治療PCのほぼ全例に antiandrogen 療法が奏効し, 良好な予後を示したが, 2ng未満の例は antiandrogen 療法が無効で予後も不良であることが多く, 組織内DHT濃度測定がPCの androgen dependency の判定および予後の予想に極めて有用であることが判明した. さらに, 再燃PCの組織内DHT濃度は全例2.0ng/g.t.w.以下の低値であったため, PCの再燃現象は androgen 非依存性であり, 副腎性 androgen はPCの再燃現象に関与していないと考えられた.
  • 西尾 恭規, 松本 恵一, 大谷 幹伸, 垣添 忠生
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1138-1147
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1962年より1984年8月までに83例の成人非セミノーマ性睾丸腫瘍を経験した.
    病期別では, Stage I 35例, Stage IIa 4例, Stage IIb 10例, Stage III 34例で, 組織学的分類では, 単一組織型34例 (Embrynal carcinoma 19例, Teratocarcinoma 9例, Choriocarcinoma 6例), 複合組織型49例 (Choriocarcinoma+any other types 20例, Embryonal carcinoma+teratocarcinoma 14例, other combinations 15例) であった.
    各病期別3年実測生存率は, 1978年以前の症例では, Stage I 29例, 49.8%, Stage IIa 2例0%, Stage IIb 8例25%, Stage III 21例4.8%に対し, 1978年以後の症例では, Stage I 6例100%, Stage IIa 2例100%, Stage IIb 2例0%, Stage III 13例25.9%と1978年以降の症例で治療成績の向上がみられた.
    これは, 腫瘍マーカーの検索, CT-scan 超音波断層法の導入による診断技術の向上とCDDPを含む有効な化学療法の出現に由来するものと考えられた.
    しかし, 1978年以降の Stage III症例でも化学療法のみで治癒可能な症例は, 13例中1例 (7.7%) のみで, 予後の向上の為には, 集学的治療, 特に, 残存腫瘍に対する積極的な手術療法が必須であると考えられた.
  • 第12報 誘発筋電図法による球海綿体反射の検討
    朴 英哲, 江左 篤宣, 杉山 高秀, 金子 茂男, 栗田 孝
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1148-1153
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿あるいは性的機能の異常を訴える男子患者69名を対象に, 誘発筋電図法による球海綿体反射 (BCR) の検討を行なった. 内訳は, 神経病巣を認めない群35例, 腰髄以上の病巣群16例, 仙髄・馬尾神経病巣群10例, 末梢神経病巣群5例, 機能的インポテンス3例である. 仙髄・馬尾神経病巣群ではBCR陰性例が多く, 電気刺激知覚域値も高値であった. BCR潜時は, 神経病巣を持たない群 (30.5±4.3SD msec) に比して, 仙髄・馬尾神経病巣群 (41.0±7.8SD msec) で有意な延長を認めたが, 腰髄以上の病巣群 (29.5±3.6SD msec), 末梢神経病巣群 (31.4±3.8SD msec), 機能的インポテンス群 (26.3±3.2SD msec) との間に有意差は認めなかった. 69名中68名に膀胱内圧測定を行なったが, 25名は正常型, 23名は過活動型, 15名は低活動型膀胱, 5名は判定不能型であった. 低活動型膀胱群でBCR陰性例が多く, 刺激知覚域値も高値であった. BCR潜時は, 低活動型膀胱群 (34.8±8.5SD msec) で延長傾向が認められたが, 正常群 (30.9±4.4SD msec), 過活動型膀胱群 (30.2±3.9SD msec), 判定不能群 (27.2±3.6SD msec) との間に有意差は認めなかった. 以上の検討より, 誘発BCR法は, 膀胱内圧測定との組合わせにより, 神経病巣の有無, 部位決定にさらに有力な検査法となり得るものと考えられた.
  • 大西 哲郎, 増田 富士男, 仲田 浄治郎, 鈴木 正泰, 飯塚 典男, 町田 豊平
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1154-1160
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌に対する放射線治療効果を検討する目的で, 放射線治療群, 58例 (第I群) と, 放射線非治療群, 87例 (第II群) に分け, 治療成績を比較したが, 両群間に有意差はみられなかった. また, 第I群のうち化学療法を併用した20例についても効果を検討したが, 化学療法併用に伴う生存率の改善は認められなかった. さらに, 第I群および第II群について, 各 stage 別および grade 別生存率を比較したが, stage 別および grade 別に, 放射線の治療効果はみられなかった. 一方, 第I群のうち, 照射時期, すなわち, 術前照射, 術後照射, 術前術後照射間で生存率を比較したが, 術後照射が他に比較して有意に生存率が良い結果であった. さらに, 術後再発期間, 再発臓器, 再発率について第I群と第II群を比較分析したが, 放射線照射に伴う術後再発に関する影響は認められなかった.
  • 佐藤 一成, 加藤 哲郎, 森 久, 阿部 良悦, 守山 正胤, 鈴木 敏夫
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1161-1170
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    家兎膀胱にV2腫瘍を移植して, 腫瘍, 非腫瘍部膀胱組織ならびに血清を経時的に採取し, 腫瘍の発育に伴う1Hの核磁気共鳴 (NMR) 緩和時間の変化を検討した. 緩和時間はパルスFT-NMR分光計を用いて, T1 (縦緩和時間) は Inversion Recovery 法, T2 (横緩和時間) は Curr-Purcell-Meiboom-Gill 法で測定した. 腫瘍の成長, 動物の体重変化ならびに転移の発生状況から1週から4週までが早期から中期, 5週と6週が末期とした.
    腫瘍T1は病期とともに徐々に延長する傾向をみせた. これに対して非腫瘍部T1は中期まで腫瘍のT1より短かったが, 末期になるとむしろ腫瘍T1より著しく延長した. 一方, 腫瘍T2は病期による変化を示さなかったが, 非腫瘍部T2はT1と同様に, 末期には著明に延長した. 非腫瘍部と対照群の緩和時間の延長は組織の水分含量の増加と平行した変化をみせた. これに対して, 腫瘍の緩和時間と水分含量の間には, 腫瘍成長の全期間を一括してみると有意な相関はなかった. しかし, 各病期ごとにみるとT1と水分含量とはよく相関した. これは腫瘍の緩和時間に影響する因子は水分含量だけでなく, 水と高分子の相互作用, すなわち水の構造化も少なからず関与していることを示唆している.
    血清緩和時間は腫瘍末期に延長した. この変化は血清蛋白濃度の低下と一致しており, 血清緩和時間の変化が腫瘍に特異的現象とは考えられなかった.
  • 今中 香里, 浅野 嘉文, 富樫 正樹, 小柳 知彦
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1171-1178
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和54年1月より昭和59年8月までに65例に対し, 一期的全尿道形成術 (OUPFI~VI法) を施行した.
    年齢は2~33歳で5歳以下が53例 (81.5%) と大半を占め, うち3歳以下が33例 (50.8%) と過半数に達していた. type 別では distal type 62例, proximal type 3例であった.
    術後 follow up 期間は1カ月から5年で初回手術成功例は50例 (77%) で再手術施行及び予定例は15例 (23%) であった. 再手術施行11例中10例に良好な結果を得, 残り1例は計4回の手術の後に良好な経過をとっている.
    要再手術例の合併症で最も多かったのは瘻孔形成10例, 以下, 新尿道後退5例, 亀頭部離開1例, 索変形残存2例であった.
    合併症を分析し, その原因, 予防, 対策につき検討した.
  • 1. 臨床病理学的検討
    島田 憲次, 鹿子木 基二, 岡本 新司, 有馬 正明, 森 義則, 生駒 文彦
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1179-1186
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去12年間に兵庫医大泌尿器科で治療を加えた異形成腎40例40腎を対象に臨床病理学的検討を加えた.
    性別では男女比1対3で, 5歳以下が2/3を占めていた. 全例に何らかの尿路異常を伴い, その内訳は尿管瘤18, 異所開口尿管15, 尿管閉鎖5, VUR1, 後部尿道弁1であった. 所属尿管開口部が正常位置であったのは6例, 尾側偏位32例, 頭側偏位2例であった. 腎機能検査上, 腎シンチグラムでは1腎のみ, enhanced CTでは4腎に描出がみられた. 反対側腎・尿管の異常は43%にみられた.
    対象症例は全例腎摘除術あるいは半腎摘除術を施行された. 摘出腎の肉眼的所見では大小多数の嚢胞よりなる多嚢腎が5例, 腎実質が sac 状となったのは9例で, その他の26例では萎縮性矮小腎であった.
    組織学的には, 診断基準とした primitive duct のほかに, primitive tubule, 異所性軟骨, 大小の嚢胞, 神経線維, 未熟糸球体などが観察された. このような異形成構造は, すべての腎に均等に観察されたのではなく, その分布と密度は症例ごとに大きな差がみられた.
  • 2. 組織学的分類
    島田 憲次, 鹿子木 基二, 岡本 新司, 有馬 正明, 森 義則, 生駒 文彦
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1187-1193
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去12年間に兵庫医大泌尿器科で治療を加えた異形成腎40例40腎を対象に, 異形成腎の組織学的分類を試みた.
    異形成腎では primitive duct を始めとする異形成構造と正常ネフロンがさまざまな割合で分布している. このうちで, 正常ネフロンへの分化がどの程度進んでいるかを基に, 異形成腎を次の4群に分けた.
    異形成I度: 正常皮質髄質>異形成組織.
    異形成II度: 正常皮質髄質<異形成組織.
    異形成III度: すべて異形成組織.
    異形成IV度: 後腎芽組織を認めない.
    疾患別では異所開口尿管に比べ, 尿管瘤の方が異形成度が高かった. 多嚢腎では異形成II度が最も多かった. 腎が中等度の大きさか, 腎盂尿管が拡張し腎実質が袋状のときは, 異形成度は低かった. 画像診断上, 腎の描出が認められた症例には正常ネフロンの分化がみられた. 組織学的には, 異形成III, IV度では髄質の分化がみられなかった. Primitive tubule はほとんどの腎で観察されたが, 異形成I度の5/9腎とIV度の1腎ではこの構造が認められなかった. 異形成I度では軟骨形成がみられなかった.
  • 大西 克実, 渡辺 泱, 大江 宏, 斉藤 雅人
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1194-1200
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    われわれは, 前立腺肥大症において膀胱内突出が排尿障害にどの程度関与しているのか, 経直腸的超音波断層法を用いて, 81症例の膀胱内突出の有無, 仮想円面積比, 残尿量の3つの関係から検討した. また, 別の41症例を対象として, 仮想円面積比, 膀胱内突出の程度, 前立腺推定重量の3つの関係を検討し, 81症例の検討結果と合わせて, 前立腺肥大症の膀胱内突出の成り立ちについて考察した.
    以下に今回得られた知見を述べる.
    1) 仮想円面積比が0.75未満の前立腺肥大症では, ほとんど肥大症の膀胱内突出は存在せず, 0.75以上となってはじめて膀胱内突出が出現することがわかった. 膀胱内突出の存在の有無は, 排尿障害の程度を示すパラメーターとして臨床的意義をもつと考えられたが, 仮想円面積比ほどの直接的なパラメーターになるとは考えられなかった.
    2) 膀胱内突出の存在しない症例の重量の平均値は25.1g, 膀胱内突出が断層像上1断画存在する症例での平均は28.3g, 膀胱内突出が2断面以上存在する症例での平均は54.9gであった. 重量が50g以上あるような前立腺肥大症では, もちろん仮想円面積比も0.75以上と高く, mass としてかなりの膀胱内突出を示す場合が多い. また, 重量が20ないし40gの前立腺肥大症では, 膀胱内突出が存在するためには, 前立腺重量の大小はまったく問題ではなく, 仮想円面積比が0.75以上あることが必要条件であることを確認した.
    3) 膀胱内突出の成り立ちに関しては, まず前立腺水平断面が肥大症の進行とともに丸くなり, 仮想円面積比が0.75以上と高くなってはじめて, 突出の出現する必要条件が満たされる. しかし, たとえ仮想円面積比が0.75以上でも膀胱内突出が出現するかどうかは, 外科的被膜の腺腫に対する成長の度合いや, 腺腫および外科的被膜の弾性率とも深い関係があり, 今後さらにこれらの物理的諸性質を検討することで, この問題が解明されていくものと考えられた.
  • 大岡 啓二, 小田 剛士, 横山 雅好, 越知 憲治, 竹内 正文, 四宮 博人, 内海 爽
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1201-1204
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    最近, Thomsen-Friedenreich antigen (T抗原) が, 種々の癌に現れることが示されつつあり, ヒト膀胱腫瘍においても, T抗原の表現と予後との相関が検討されている. しかし, 担癌患者血清中の抗T抗体価に関しての報告は少ない. そこで, 我々は, 膀胱腫瘍患者血清中の抗T抗体価を酵素免疫定量法 (ELISA法) にて免疫グロブリンの各クラス別 (IgG, IgA, IgM) に測定し以下の結果を得た. 1. 抗TIgM抗体は, 健常成人に比し, 膀胱腫瘍患者では, 減少傾向がみられた. 2. 抗TIgG抗体は, 健常成人に比し, 膀胱腫瘍患者では, 有意に増加していた (p<0.05). 3. 抗TIgA抗体は, 健常成人と膀胱腫瘍患者との間で, 変動はみられなかった.
  • 出村 孝義, 坂下 茂夫, 小杉 雅郎, 後藤 敏明, 中西 正一郎, 平野 哲夫, 丸 彰夫, 小柳 知彦
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1205-1210
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1969年から1983年までの15年間に北大病院泌尿器科を受診した精上皮由来の睾丸腫瘍は85例であり, そのうち血清AFPが正常で組織学的に純粋型セミノーマと診断されたのは23例であった. このうち, stage IIB以上の進行性セミノーマは7例であった.
    7例の進行性セミノーマに対し, 除睾術と放射線療法に加え, 非セミノーマと同様の化学療法および転移性後腹膜腫瘍の debulking を行って治療成績を検討した.
    7例の病期分類は stage IIB 3例, IIIA 3例, IIIC 1例であった. 経過観察期間は12カ月から102カ月で平均36カ月であった. 治療効果の判定は現在治療中である症例 (stage IIIC) を除く6例について行った. 6例中5例にCR, 1例にPRを得た. 後腹膜リンパ節の debulking は4例に行い, 全例で腫瘍の残存は認められなかった. 進行性セミノーマに対しては除睾術と放射線療法のみでは不十分で, 非セミノーマと同様の治療法が必要と考えられた. すなわち, PVB療法をはじめとする強力な化学療法を第1選択とし, 化学療法によってもCRが得られない症例に対しては残存腫瘍の外科的切除を行うべきである. 放射線療法の施行にあたっては化学療法の regimen を阻害しない配慮が必要と考えられた.
  • 和食 正久, 柳沢 温, 平林 直樹, 内山 俊介, 中本 富夫, 小川 秋實
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1211-1214
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前回の調査で長野県内では大北地方膀胱腫瘍罹患率が最も高いことが判明したので, 今回は1974年から1983年の10年間の大北地方における新患々者40名 (男性29名, 女性11名) の年齢, 性, 居住地, 職業, 嗜好品, 腫瘍の悪性度, 深達度について調査した. また1980年の国勢調査による人口動態に基づいて罹患率を求めた.
    この調査により, 以下の結果を得た.
    1) 大北地方の罹患率は6.0と高く, 男性のそれは8.9, 女性のそれは3.2で, 罹患率の男女比は2.8:1であった.
    2) 年齢, 性, 職業, 嗜好, 腫瘍の悪性度および深達度に特別な傾向はなかった.
    3) 7市町村に分けて検討してみると, A村の罹患率が14.7と最も高く, 特に女性のそれは他の市町村と比較し高い値を示した.
    今後さらに長期間の集計を行うと同時に, A村の住民を対象とした疫学的調査を行うことが重要と考えられる.
  • 生化学的ならびにヒト胎児における組織化学的検討
    小杉 雅郎
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1215-1225
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト腎より glutathione S-transferase (EC 2. 5. 1. 18) を, 腎細胞質分画 (105,000G, 60分間遠沈後上清), 硫安分画, DEAEセルロース, GSH-affinity column の順で精製した. 酵素のサブユニット分子量は19,000, 等電点はpH 11.1であった. ウサギに免疫して得られた抗体を用い酵素抗体法 (PAP法) による組織化学的手法で, 主にヒト胎児 (5~12週) の肝・腎・副腎を観察した.
    1) 肝は5週時よりすでに肝細胞全体に, びまん性に存在が認められ, 12週まで同様所見であった.
    2) 後腎は7週まで腎内の局在は認められず, 8週以降, 近位尿細管に局在が認められた.
    3) 副腎は5週時より胎生皮質部に局在を示し, 特に7週以降, 所々核も濃染する細胞が出現した.
    以上の知見の中, 副腎胎生皮質に glutathione S-transferase が局在する事は新知見と言え, 胎生期特有のステロイドホルモン代謝を担う胎生皮質の生理的役割を解明する上でも重要な事と考えられた.
  • 小池 博之, 久保 隆, 大堀 勉, 佐藤 滋, 里舘 良一
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1226-1233
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    nephrogenic adenoma の自験症例2例を報告し, さらにこれまでの報告例61例を集計し考察した.
    nephrogenic adenoma の病因としては urothelium からの化生により生じたと一般的に考えられているが, 確定的ではない. 組織学的には腫瘍を構成する腺管が尿細管に類似していることが特徴的である. 臨床的にも組織学的にも良性病変と受けとめられており, 治療は病変の切除にて充分とされている. しかし, 再発, 重篤な症状を呈する例もしられている.
    自験第1例は男, 34歳で, 左尿管結石介在部に一致して腫瘍が認められ, 第2例は男, 56歳で, 右腎盂にサンゴ状結石とともに, また右尿管結石の介在部の上方約5cmのところの2カ所に腫瘍が認められた.
    自験2例を含め nephrogenic adenoma の発生の男女比は44:17で, 好発年齢は20代と60代であり, 発生部位は膀胱が54例であった.
  • 宮北 英司, 長田 恵弘, 木下 英親, 河村 信夫, 飛田 美穂
    1985 年 76 巻 8 号 p. 1234-1238
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近年, 血漿交換療法は, 血液浄化法の一方法としてあらゆる疾患に応用されてきている. 悪性腫瘍に対しても施行されており, 腫瘍患者に対する免疫抑制因子の除去や免疫促進因子の補充ということが可能なら, 免疫化学療法の一つの治療手段として今後大いに注目されていく考えられる. 今回, 不規則抗体をもった腎細胞癌の症例に血漿交換を施行後手術したので報告する.
    症例は67歳女性で, 主訴は体重減少で来院した. Echo, DIPにて右腎腫瘤を発見し, 血管造影, CTにて右腎細胞癌と診断された. また血中に Anti P1+IgG型の非特異的抗体でクームス法において自己血球を含めてすべてのO型血球を凝集する抗体がみられ, nor-specific な性状を示し, 直接および間接クームスともに陽性であった. 溶血を示唆する所見は血液化学上認められなかった. 抗体価減少目的に血漿交換を施行し, 右腎動脈塞栓術の後, 右腎摘出術を施行した. 出血多量のため洗浄赤血球を輸血し, 術後順調に経過した. 不規則抗体をもつ症例でも管理の方法により安全に手術が行える経験をしたので報告した.
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