慈恵医大泌尿器科で, 1975年1月より1984年12月までの10年間に治療した腎細胞癌182例中, 死亡したのは117例 (64.3%) であった. これら死亡例のうち, 腎摘後癌死した55例について, 1) 死亡時年齢, 性差, および初診時症状についてみると, 死亡時平均年齢は58.7歳と特に高齢ではなかったが, 性差では男子が女子に比較して4倍と, 罹患率に比較して男子が女子に比べて高率に癌死していた. また, 初診時症状では, 尿路症状を呈した例が31例 (56.4%), 尿路外症状を呈した例が24例 (43.6%) であった. 2) 対象症例の臨床的背景をみると, high stage, high grade の症例がそれぞれ67.3%, 74.6%と多く占めたが, 腎摘後癌死するまでの期間, 腎摘後再燃までの期間, および再燃後癌死までの期間いずれも stage および grade に影響されない結果であった. 3) 臨床検査値の変動を中心とした経過を, low stage 症例と high stage 症例に分けて, それぞれについて, 術前, 術後, 死亡前の3臨床病期について分析してみると, 赤沈, CRP,α
2-globulin などの acute phase reactants は, low stage 症例の腎摘後正常化する頻度が, high stage 症例の腎摘後に比較して多くみられたことから, これらの acute phase reactants は, 腎癌患者の病勢を反映しているものと考えられた.
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