日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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71 巻, 6 号
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  • 酒井 俊助
    1980 年71 巻6 号 p. 527-543
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    上部尿路腫瘍における細胞性免疫能の推移を膀胱腫瘍と良性疾患群を対照にして, PPD反応, T cell およびB cell の比率・絶対数およびマクロファージ遊走阻止試験によつて観察した.
    1) 術前の細胞性免疫能において, 悪性腫瘍群は良性疾患群と比較し低値を示した. 特に腎細胞癌は各マーカーとも低値を示すものが多いが, 浸潤度・悪性度別では差を認めなかつた. これに対して膀胱腫瘍群では浸潤度・悪性度による差が認められた.腎盂尿管腫瘍群は免疫反応の場においても膀胱腫瘍と同様の態度がみられた.
    2) 術直後の細胞性免疫能は上部尿路腫瘍ならびに膀胱腫瘍ともに腫瘍の完全摘出により各マーカーの上昇を認めた.
    3)上部尿路腫瘍の放射線照射後の細胞性免疫能はPPD反応, T cell の比率の低下を認めた症例が多くみられ, 4000~6000 Rad の照射では B cell への影響に比しT cell への影響が大きいが, 照射量の違いによる免疫能への影響はあまり認められない.
    4) それ以後の細胞性免疫能をPPD反応, リンパ球の subpopulation について観察すると照射終了後1~2カ月までは照射の影響が強く免疫能の低下を認めるが, 術後経過の良好な症例はそれ以後免疫能の回復を認めた.
    5) 術前, 術後経過の観察を通じて, T cell の比率はその絶対数より比較的よく担癌状態の免疫能を反映していると思われた. PPD反応も免疫能の指標として有用であるが, マクロファージ遊走阻止試験はPPD反応よりさらに鋭敏であると思われた.
  • 増田 富土男, 陳 瑞昌, 大石 幸彦, 町田 豊平
    1980 年71 巻6 号 p. 544-551
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Computed tomography (CT) による腎静脈および下大静脈腫瘍栓塞の診断を4例に行なつたので, その成績について報告した. 症例は1979年1月から6月までの半年間に慈恵大学病院で診療した4例で, 腎細胞癌3例, 腎盂扁平上皮癌1例であつた. 患側は右側3例, 左側1例で, 右側の3例はいずれも腎静脈から下大静脈におよぶ腫瘍栓塞がみられ, 左側の1例は腎静脈内の腫瘍栓塞であつた. 4例とも腎摘出術を行ない, 手術的にも腎静脈および下大静脈の腫瘍栓塞を確め得た例である.
    4例はすべて, CTにより腎静脈の著明な拡張がみられ, 腎静脈の腫瘍栓塞が診断された。また腫瘍栓塞が下大静脈までおよんでいた3例中2例では, 拡張した腎静脈に連続して軽度に拡張した下大静脈がみとめられ, さらに contrast enhancement 後のCTでは, 1例に下大静脈の充満欠損がみられた. すなわち静脈内の腫瘍栓塞のCTによる所見としては, 腎静脈および下大静脈の拡張がみとめられ, さらに contrast enhancement 後のCTでは静脈内の充満欠損がみられ, 診断上有用であつた.
    今後CTは腎動脈造影, 下大静脈造影, 超音波検査などとともに用いられる価値があるが, とくに腎動脈造影で striated vascular pattern が描出されない例や, 下大静脈造影での充満欠損が, 腫瘍栓塞によるものか, あるいは腫瘍による圧排によるものか不明確な例に有用であろう.
  • 武本 征人, 小出 卓生, 板谷 宏彬, 八竹 直, 木下 勝博, 高羽 津
    1980 年71 巻6 号 p. 552-561
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿石症の治療方針を探究する目的で, 1965年1月から1978年12月迄の14年間に当科に訪れた患者につき, 統計的に再検討を加えた.
    本研究の概容は次のとおりである.
    1)上部尿石症を有する患者数の, 全外来患者に対する比率は1965年から1971年迄は8.2%であつたが, 1972年から1978年迄は10.4%に増加した.
    2)本症患者数は1965年から1971年迄は20歳代~30歳代に最も多く, 1972年から1978年迄は30歳代~40歳代に最も多かつた.
    3) 再発性上部尿石症症例の全上部尿石症症例に対する比率は約20%であつた.
    4) 上部尿石症の結石成分のうち, 最も頻度の高いものは男子では蓚酸カルシウム (76.0%), 女子ではリン酸塩 (49.8%) であつた.
    5) 上部尿石症の約40%に何らかの原因が認められた. その主なものは男子ではカルシウムや尿酸の代謝異常, 女子では尿路感染症であつた.
  • 第3報 ヒト前立腺酸性フォスファターゼに対する特異的抗体の作製
    森下 直由
    1980 年71 巻6 号 p. 562-566
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精漿から前立腺酸性フォスファターゼを約130倍にこ精製し, ウサギに免疫し抗血清を作製した. この抗血清をIgG分画とした後, 正常女性血清をカップリングした affinity chromatography にて精製した. この抗体は Ouchterlony 法では精漿, 前立腺抽出液, 前立腺癌患者血清のほかに前立腺癌患者の肝抽出液との間に完全に一致する沈降線を認めた. 免疫電気泳動上, 肝抽出液では陰極側に単一の酵素活性を有する蛋白沈降線を認めるのに対し, 他のものでは陽極側に見られた. ウサギ抗 PAP IgG を用いた間接蛍光抗体法では, 前立腺組織のみが反応し, 肝, 脾, 腎, 膵では陰性であつた.
  • 第4報 前立腺酸性フォスファターゼの免疫化学的測定
    森下 直由
    1980 年71 巻6 号 p. 567-571
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    抗前立腺酸性フォスファターゼウサギ血清を用いて, 交差免疫電気泳動法と免疫化学的測定法により血清と骨髄血の前立腺酸性フォスファターゼ活性を測定した. 交差免疫電気泳動法では, 前立腺癌患者血清で stage B (未治療1例, ホルモン療法後2例) 0%, stage C (ホルモン療法後) 12.5%, stage D未治療群75.0%, stage Dホルモン療法群20.0%の陽性率であり, 骨髄血では stage Dホルモン療法群0%以外は血清と同様であつた. 正常例, 前立腺肥大症例では陰性であつた. 免疫化学的測定法では正常例で性差がみられず, stage D未治療群を除く前立腺癌患者の血清と骨髄血の前立腺酸性フォスファターゼ活性は正常例と有意差がなかつた. stage D未治療群では血清と骨髄血の前立腺酸性フォスファターゼ活性は正常より高く, 骨髄血の活性が血清より高い傾向を示した. 前立腺酸性フォスファターゼ活性が0.22 Sigma unit/ml をこえる異常値は CIEP 陽性例と正常52例中3例にみられた.
  • 河野 南雄
    1980 年71 巻6 号 p. 572-579
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は血液透析中の慢性腎不全33例 (男子23例, 女子10例; 平均年齢42.7歳; 平均透析期間23.8カ月; S-crea 平均13.14mg/dl) の血小板特異タンパクの一つであるβ-Thromboglobulin (β-T. G.) をRIA kit を用いて測定した. 血漿β-T. G. の平均値は122.52ng/ml (56.3~250ng/ml) で健康対照11例の29.03ng/ml (7.3~62.1ng/ml) よりも有意に高く, 血小板機能異常が示唆された. β-T. G. 値は S-crea. と相関傾向にあつたが, BUN, 尿量, 血小板・赤血球・白血球数, Hb, Ht, 血清のNa, K, Caとは関連がなく, 透析を開始してからの期間と有意に相関していた.
    透析前後のβ-T. G. をみると, 水ヒキのなかつた1例では透析後に減少したが, その他は体重に対する水ヒキが大きい程透析後に増量傾向を示したし, 透析前のβ-T. G. も実験前3カ月の透析による平均水ヒキ量の理想体重に対する比率と有意に相関していた. 透析は大なり小なり hypovolemic shock を伴うし, 透析患者の水分制限を強調したい.
    合併症のある5症例のβ-T. G. 値は高く, 透析前のβ-T. G. 値は各症例の臨床状態と有意に相関しており, 透析患者の血漿β-T. G. 値は各症例の臨床状態評価の一指標となりうる.
  • 正常および腎細胞癌組織内における estrogen receptor について
    中野 悦次, 松田 稔, 長船 匡男, 園田 孝夫, 佐藤 文三, 古武 敏彦
    1980 年71 巻6 号 p. 580-588
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    hamster に estrogen を投与することにより腎癌が発生するという動物実験から, ヒト腎細胞癌もホルモン依存性であると考えられている. このため臨床的に内分泌療法が行なわれ, ある程度の効果があることは認められている.
    しかし, 現在ではどのような腫瘍がホルモン依存性かは明確でない. この問題を解決するため, 25例の腎細胞癌組織と8例の正常腎組織の cytosol 内の estrogen receptor (ER) について検討をおこなつた.
    dextran coated charcoal 法を用いて estradil に特異的な結合分子はショ糖密度勾配遠心法により, 沈降係数7~8sの分子であつた. またこの結合能は testosterone あるいは dihydrotestosterone によつて競合阻害をうけていない. このような理由から, この特異的結合蛋白は sex hormone binding globulin (SRBG) ではなく, ERであると考えた.
    得られた結果は次の通りである.
    1) 8例の正常腎のうち5例 (62.5%) にERを認めた. 3例の陰性例はすべて50歳以下と若年者であり, ERはすでに内因性 estradiol と結合しているものと考えられた. 陽性例の5例は, すべて胆癌腎の正常部位であつた.
    2) 25例の腎細胞癌のうち5例 (20.0%) にERを認めた. ERの存在と症例の性別あるいは病理組織学的な cell type とは特に関係はないが, 病理組織学的悪性度が低い腫瘍の方が, 高い腫瘍よりもER検出率は高かつた.
    3) 6例において, 正常組織と癌組織内のERについて比較したところ, 1例では両者とも検出できず, 3例は正常部の方が高く, 2例は癌組織の方が高かつた.
  • 腎性血尿との関連性についての検討
    広川 信, 岩本 晃明, 藤井 浩, 松下 和彦, 朝倉 茂夫
    1980 年71 巻6 号 p. 589-596
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精索静脈瘤の78症例の観察のなかで, 原因不明の無症候性腎性血尿を示した14例に遭遇した. これら血尿を示す一部症例に, 腎性血尿と精索静脈瘤との関連性が考えられた. 手術時, 精索血管の高位結紮部位の内精索静脈から順行性に造影をおこない腎静脈流の状態を検討した. 対象は25例で, そのうち8症例は腎性血尿を示している.
    実例をあげて, いろいろな静脈像の7例について述べた.腎内の静脈系へ逆流を示さないもの16%で, 多くの精索静脈瘤が逆流現象を示した. とくに血尿の群で, 高度の逆流をみる場合が多いことが判明した.
    腎内の静脈系へ逆流を示すことは, 腎静脈流の障害を意味する. 高度な逆流を示す場合, 腎静脈圧の上昇・うつ血・腎内の微小循環異常などを生じて, 血尿が発現しても不思議でないと推論した.
  • 鎌田 日出男, 白神 健志
    1980 年71 巻6 号 p. 597-606
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1970年より1979年に至る10年間に当科では重複腫瘍12症例を経験した. 12症例は男11例, 女1例で第2腫瘍診断時の年齢は60歳より81歳に分布し平均72.3歳であつた. 同時性症例3, 異時性症例9で, 異時性症例の発生間隔は1年1カ月より26年に及び平均10年1カ月であつた.
    泌尿性器系臓器は膀胱5, 前立腺5, 腎盂尿管3であり, 他臓器は胃3, 結腸直腸4, 胆道系2であつた. 膀胱癌と免疫芽球性リンパ節症, 胃細網肉腫と前立腺癌という極めて稀な重複症例がみられた. 癌の家族歴の明らかなものはなかつた. 転帰としては生存7例, 死亡5例でうち3例に剖検を施行.
    本邦文献より重複腫瘍を蒐集し, 集計検討を加えた.
  • 移植前血清と予後について
    絹川 常郎, 小野 佳成, 梅田 俊一, 松浦 治, 平林 聡, 竹内 宣久, 小川 洋史, 大島 伸一, 藤田 民夫, 浅野 晴好, 名出 ...
    1980 年71 巻6 号 p. 607-613
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    38例の生体腎移植症例で, 移植前血清の抗B及び抗Tリンパ球抗体を4℃と37℃の温度条件で検索した. 抗リンパ球抗体陽性を示した血清は, 37℃で15%以上のパネルT cell と反応するものを T-warm pattem, 37℃で15%以上のパネル B cell と反応し, T cell とは反応しないものを B-warm pattern, 4℃で15%以上のパネル B cell と反応し, 他の条件では反応しないものを B-cold pattern に分類した. 移植患者はこの血清の分類方法に基づいて, T-warm群, B-warm群, B-cold群, No antibody 群の4群に分類された. これら4群に, さらにこ輸血歴も考慮して移植腎の予後を比較検討すると, 輸血歴のある B-cold 群は, 拒絶反応も mild で生着率が最も良好であつた. これに対し, 輸血歴のない B-cold 群, B-warm 群は良好な生着率は示さなかつた. このように, 同じ抗Bリンパ球抗体でも, その種類により移植腎に与える影響には差があり, 結論としては, 輸血によつて産生された B-cold 抗体が, 移植腎に対していわゆる enhancing 効果を有しているように思われた.
  • 第1報 cyclic AMP の基礎的検討
    郡 健二郎, 八竹 直, 栗田 孝
    1980 年71 巻6 号 p. 614-625
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石症の成因を調べる上に, 結石症の大半がカルシウム (以下Caと略す) を主成分とすることから, Ca代謝を把握する目的で, Ca代謝と深い関係がある副甲状腺ホルモンの媒介物質と考えられている cyclic AMPの基礎的検討をした. 今回測定に使用したYAMASA kit と従来からの Hoechst kit との間には良い相関がみられた. 但, 前者は超微量 (fmole/tube) まで測定可能であつた. 回収率は血漿および尿において共に良く, 再現性も同時および日差再現性の変動係数も各々3.4~9.1%, 1.8~9.6%と満足すべき結果であつた. cyclic AMPの尿中排泄量は3.10±1.83μmole/g, Cr (平均±S.D.), 3.01±2.01μmole/day, 1.98±1.43μmole/g, Cr/m2体表面積で性差はなかつた. 日内変動はμmole/g, Crで表現した時はほぼ一定で, 一方単位尿量当りでは早期は高濃度で, 昼間は低濃度と日内変動がみられた. 日差変動は一部症例を除き, 大半の症例で一定であつた. 年齢差は20歳から70歳までは有意差はなく, 幼児では高値で70歳以上では低値であつた. 採血時にはEDTAの添加が必要であつたが, 採尿にはヒビテン水, トルエン, EDTAの添加剤を加えても, 無添加の時と差異はなく, 血尿・蛋白尿・細菌尿・膿尿と正常尿の値にも有意差はなかつた. 採尿後凍結, 冷蔵, 室温の3様にて48時間まで保存したが, これらの間に差異はなく, 数ヵ月間の凍結保存でも失活することなかつたが, それ以降は失活する傾向がみられた. 食事の影響は無視できる範囲であつた.
  • 第II報 原発性上皮小体機能亢進症における cyclic AMPの動態について
    郡 健二郎, 八竹 直, 栗田 孝
    1980 年71 巻6 号 p. 626-637
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    原発性上皮小体機能亢進症における cyclic AMP の動態を検討し次の結果を得た. (1) 13症例, 48検体の平均値は9.51±7.21μmoles/g. Crで平均人より有意に高く, 男女差はなかつた. (2) 日差および日内変動は正常人と比べ大きい変動がみられた. (3) 血漿 cyclic AMPの平均値は26.95±8.50p mole/mlで正常人と差はなかつた. (4) 尿中 cyclic AMPと血清CaおよびCa++との間には正の相関が有り (p<0.01, p<0.05), 尿中CaおよびP排泄量とも正の相関をみた (各々p<0.01, p<0.05). (5) 尿中 cyclic AMP とPTHとは強い正の相関がみられた (p<0.01). (6) 尿中 cyclic AMP やPTHより指標として有効とされる腎性 cyclic AMPは一部の症例に負の値をみ, 腎尿細管での cyclic AMPの再吸収も考えられた. (7) 上皮小体腺腫摘除後は, 先ず尿中 cyclic AMPが2時間に低下し, 次いで血清CaおよびCa++が4~5時間後に有意に低下した. 尿中 cyclic AMP は4~5時間後一定なのに対し, 血清Caはさらに24時間後まで低下した. 尿中Pは最も遅く8時間後に有意に低下をみた. 尿中Caは特異な経過をたどり, 摘除後徐々に上昇し4~5時間後に有意の増加をみ, その後漸減して24時間後には正常値近くまでになつた. (8) 上皮小体腺腫の cyclic AMP 量は, PTH濃度と同様高値であつた. (9) 以上の諸検査結果から尿中 cyclic AMP は上皮小体機能を表わす指標となり得ることがわかつた.
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