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河合 達郎, 寺岡 慧, 淵之上 昌平, 本田 宏, 水口 潤, 中川 芳彦, 中島 一郎, 高橋 公太, 東間 紘, 阿岸 鉄三, 太田 ...
1987 年16 巻2 号 p.
885-888
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
現在, 腎不全患者のアミノ酸輸液としてはRoseの処方に準拠した必須アミノ酸製剤が一般的であるが, これらは健常人のアミノ酸必要量にもとついて処方されたものであり, 必ずしも腎不全の病態に適しているとはいえない。腎不全患者及び腎不全ラットに必須アミノ酸製剤を含めた種々のアミノ酸液を使用へして完全静脈栄養を施行し比較検討した。必須アミノ酸製剤を使用した6人の患者のうち3人に意識障害が発生した。また1人に高アンモニア血症が認められた。腎不全ラットに必須アミノ酸製剤を使用すると, 正常の2倍以上の高アンモニア血症が出現した。また血中Triglycerideは低値だが, 肝組織中のTriglycerideは著明な高値となった。肝病理組織標本上は, 小葉中心型のfineglanular fatty degenrationを呈した。
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桜井 謙次, 高木 豊已, 小川 洋史, 斎藤 明
1987 年16 巻2 号 p.
890-893
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
急性腎不全をはじめ, 多臓器不全など重症患者の電解質管理や水分除去などが, 透析室以外のベッドサイドでも行える緩徐な血液浄化法であるCAVH及びその変法に対し, 輸液量と濾液量を制御し, 安全簡便に治療が行えるポータブルCAVH補助装置TR-510を開発し, 腎不全患者4例に臨床使用した。事前性能確認時の制御精度は, 総濾液量実測値9925.0±78.2ml, 同表示値との誤差2.3±0.2%であった。臨床使用時の制御精度は, 総濾液量実測値117.7l, 同表示値との誤差0.34%の1例をはじめ良い結果を示した。又, 安全装置類も正常に動作し, 本装置により安全に治療が行えた。CAVH及びその変法による治療に対し, 本装置が計画的輸液, 濾液の制御ができ, その治療対象の幅も広がるものと期待される。
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吉田 文直, 前田 憲志, 新里 高弘, 山田 一正, 中根 一憲, 草深 裕光, 河田 一郎, 末岡 明伯
1987 年16 巻2 号 p.
894-897
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ポリスルホン中空糸膜を用いた高性能CAVHフィルター(クラレPSフィルター)を開発し, In vitroによる濾過性能の検討, および臨床応用を行なった。このPSフィルターは, 小膜面積・小血液容積で, 特に低濾過圧領域での高い濾過速度, 中分子量物質の高透過率等, すぐれた濾過特性を示した。また, 透析患者に対しECUMを施行し, 白血球や血小板の経時変化を観察したところ, 一過性減少は軽微であり血液適合性にすぐれていることが分かった。
このPSフィルターを用い, 腎不全, 心不全, ネフローゼ等10例に臨床応用を行ない, 20~156時間, フィルターに起因したトラブルもなく安定した濾過が行なわれた。10例中7例は良好な予後となり, CAVHの有効性が示唆された。
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堀口 幸夫, 平岡 敬介, 奥田 宏史, 青木 正昭
1987 年16 巻2 号 p.
898-901
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
濾過型人工腎の臨床的評価についてはすでに報告を行って来たが今日迄我々が得た成績を総合して分析し、現在我々が腎不全に対して主として行っている血液透析法と比較検討して見た。結果はHemofiltrationは濾過液量を増量すれば優れた臨床効果を示している。これ等から現在の透析による血液浄化の限界を越える方法として濾過型人工腎は非常に優れた手段であり今后の腎不全に対する血液浄化法の方向を示唆していると考える。しかし濾過法は実施に当って問題点が多い。一つは現在の方法では大量の補液を必要としこれを無菌的に扱うのは熟練を要し又煩雑である。改良法としては補液を連続的に供給する方法であろう。濾過液を逆浸透膜を用いて精製し、再利用を計れば小型化、携帯化、連続補液が可能ではないかと考えPrototypeを作り諸特性を調べて見た。
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天野 泉, 稲垣 豊, 武井 浩, 杉本 一郎, 笠原 正孝
1987 年16 巻2 号 p.
902-905
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
我々は, ウイン状変形部の付いた新しいストレート型CAPDカテーテルを作製した。このカテーテルの特徴は, 先端部シリコン内部に金属球が組み込まれて, おもりの効果を引き出すことと, 先端部から約2cm離れた本管部に4ケの縦の割れ目を入れ, それを収縮させて4ケのウイングをつくったのである。
したがって, カテーテル先端部の位置移動防止と大網等の巻き付きを少しでも防止することを目的としている。既に2例の臨床例を短期間であるが経験しており, 現在まで合併症は全くなく, 良好な注排液が得られている。
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寺町 教詞, 吉田 俊彦, 稲垣 豊, 天野 泉
1987 年16 巻2 号 p.
906-910
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
死体腎移植における心停止後のwarm ischemiaを防ぐ為に4種類の動脈内灌流法と2種類の動脈外灌流法を行い冷却効率を比較検討した。single lumen catheterを用いた灌流は体全体を冷やす事になり効率がきわめて悪かった。single baloon catheterを用いた灌流は両側大腿動脈の結紮を加えれば腹腔のみを冷やす事になり冷却効率は向上した。double balloon catheterを用いて両側腎動脈のみ灌流する方法が4種類の動脈内灌流の内では最も効率が良いが30分以上経過すると細胞内浮腫の為balloon間に加わる圧が上昇した。よって一定時間後は下のballoonをdeflateし, 補助冷却を行う事が望ましい。balloon catheterを用いた持続胃冷却は準備も簡単で, 水道水も使用できるので有用な死体腎補助冷却法であると考えられた。臨床応用の為にsilicone rubber製の2-lumen, single balloon catheterを試作した。
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太田 秀男
1987 年16 巻2 号 p.
911
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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―ガラクトサミン肝不全犬による代謝補助システムの機能と安全性の検討―
葛西 眞一, 柿坂 明俊, 水戸 廸郎, 寺田 良蔵, 鈴木 慈郎, 丹沢 宏
1987 年16 巻2 号 p.
912-915
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
肝臓の代謝機能の補助を意図して、遊離肝細胞を代謝のリアクターとしたシステムを検討した。肝細胞は、基本的には、浮遊培養に類似した方法で使用し、この細胞側と患者の血液側とは、分画分子量10万のPMMA膜を介して接触し物質交換を行なう。浮遊液を直接酸素ガスでバブリングするプロトタイプでは、肝細胞のviabilityを長時間維持できなかったので、浮遊液の培地のみを甲空糸膜フィルターで抜き取り、血液と接触させる新しいシステムを考案した。このシステムによると、細胞のviabilityを従来の約2倍の時間維持させることが可能であった。ガラクトサミン肝不全犬との灌流実験では、プロトタイプとほぼ同様の成績を示し、生存犬を得るには至らなかった。免疫学的問題を、犬. 豚間の灌流実験時の血清についてbioassayで調べたところ、犬肝細胞抗原に対する抗体産生が認められ、さらに詳細な検討が必要と判断された。
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斎藤 信也, 阪上 賢一, 宮崎 雅史, 松岡 順治, 塩崎 滋弘, 田辺 高由, 小出 典男, 長島 秀夫, 折田 薫三
1987 年16 巻2 号 p.
916-919
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
培養肝細胞を用いたハイブリッド型人工肝開発の一段階として、d-ガラクトサミン誘発肝不全ラットに対し、腹腔内に、肝細胞外間質物質(Biomatrix)と、肝細胞とを投与し、その生存におよぼす効果について検討した。肝不全ラットを、 (1) コントロール群 (2) Biomatrix単独投与群 (3) 遊離肝細胞単独投与群 (4) Biomatrix-肝細胞同時投与群の4処置群に分けた。d-ガラクトサミン投与後40時間目に、上記処置を行なったところ、処置後4日目の生存率では、第1群;35.0%, 第2群;16.7%, 第3群;34.8%, 第4群;62.5%と第4群において有意な生存率の改善がみられた。また、Biomatrixと同時に投与した肝細胞の腹腔内への生着も確認した。このBiomatrix-肝細胞培養系は、生物学的人工肝におけるbioreactorのプロトタイプとしてきわあて有望であると考えられた。
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Toshihiko AKIMOTO, Kiyohito YAGI, Yoshiharu MIURA
1987 年16 巻2 号 p.
920-923
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Isolated hepatocytes were entrapped within Ca-alginate, and were cultured for 24hr. The entrapped cells were examined on glucose production from various substrates, lactate, alanine, fructose and galactose. By addition of these substrates, amount of produced glucose increased in dose-dependent manner. The ability of gluconeogenesis from lactate was regulated by addition of various hormones, such as glucagon, insulin, and vasopressin, to the culture media, in cultured hepatocytes. Glucagon and vasopressin stimulated gluconeogenesis, and insulin inhibited the glucagon-stimulated gluconeogenesis. Thus, hepatocytes entrapped within Ca-alginate maintained the activities of carbohydrate metabolism, and exhibited responses to hormones.
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小林 明, 赤池 敏宏
1987 年16 巻2 号 p.
928-931
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ハイブリッド型の入工肝臓や肝反応シミュレータを開発するに際し、肝細胞を長期生着させるための基質材料の開発は不可欠である。本研究では天然に存在する肝細胞固定化用基質にかわる合成基質材料を検索し、ガラクトース側鎖を有するポリスチレン誘導体(PVLA)の有効性を見出した。血清添加系において、肝細胞はPVLAに90%に達する高い初期接着率を示した。また接着にはMg
2+を必要としないが、Ca
2+は不可欠であった。PVLAに接着した肝細胞は、0.02% EDTA処理を施すことにより容易にしかも高収率で肝細胞を回収することが可能である。血清添加系においてPVLA上で5日間培養した肝細胞をEDTA処理を施しシャーレ表面より脱離させ、コラーゲンコートシャーレに移植するとコロニーを形成し再接着し、良好な伸展が観察された。
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森岡 恭彦
1987 年16 巻2 号 p.
932
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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宮崎 雅史, 阪上 賢一, 塩崎 滋弘, 斎藤 信也, 松岡 順治, 戸田 耕太郎, 中井 肇, 桧垣 健二, 折田 薫三
1987 年16 巻2 号 p.
933-936
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
人工肝機能補助装置開発の第一段階として、陰イオン交換樹脂BR-601を臨床的に応用してその効果を血漿交換と比較検討した。対象は6例の術後肝不全例で、治療開始時の総ビリルビン瞳は平均15.8mg/dl、昏睡度は1例を除きII正ないしIV度であった。BR-601による血漿灌流および血漿交換のいずれによっても、意識状態の改善効果が認められた。ビリルビン値の上昇は治療期間中は阻止されていたが、消化管出血などの合併症のため救命し得た症例はなかった。総ビリルビン、直接ビリルビンおよび総胆汁酸に対するBR-601の吸着除去率は、それぞれ26.6±6.6%, 29.5±9.5%, 19.8±9.8%であり、血漿交換による除去率の80%以上であった。BR-601はビリルビンをはじめとする蛋白結合物質の除去に有用であるが、より良好な治療効果を得るためには、昏睡II度以下、総ビリルビン値10mg/dl以下といった比較的早期に、積極的に肝補助療法を開始する必要があると考えられた。
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川西 秀樹, 土谷 太郎, 山根 修治, 西亀 正之, 土肥 雪彦, 椙山 雅文
1987 年16 巻2 号 p.
937-940
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
蛋白結合物質及び中~大分子量物質の除去に優れた吸着剤である粉状活性炭シートカラム(UPC, BESPORE
TM)を開発し, それを用いた肝補助システムを考案した。除去療法としてUPC-血漿漢流を行ない, その後血漿交換を除去補充療法として行なうシステムである。これにより通常の血漿交換に必要な血漿製剤を1/2~1/3量まで減らす事が可能となった。臨床におけるUPC-灌流(再循環方式)によってビリルビン, 胆汁酸とも40%の除去量を得た。これは同処理量の血漿交換と比較してビリルビン55%, 胆汁酸70%の能力であった。これまでに, このシステムを3症例に30回用い肝補助システムとして有効であることが確認された。
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平石 守, 井上 昇, 山崎 善弥, 高浜 龍彦, 金井 福栄, 大西 清, 藤森 義蔵, 出月 康夫, 鷹野 重威
1987 年16 巻2 号 p.
941-944
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
経口吸着剤(AST-120)は慢性肝不全及び腎不全の治療を目的として開発された, 直径約0.2-0.4mmの球状の経口用炭素性剤であり, その吸着特性は主として低一中分子量の塩基, 両性物質に対して高く, 消化酵素の吸着は微量である。
実験:雑種成犬15頭を用いて70%肝切除と門脈下大静脈端側吻合を同時に行い, 吸着剤投与群(AST群)と対照群に分けた。吸着剤投与群では, 術直後30-50gの吸着剤を胃管を通じて胃又は空腸内に投与し, 以後1日量5-20gを間欠的に投与した。一方, 対照群では通常の食餌のみ投-与した。これらの犬について, 術後体重変化, 血中アンモニア, 血漿胆汁酸を測定し, 本剤による治療効果を検討するとともに, 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて血中代謝産物の解析を行った。
結果:両群とも術陵体重は著明に滅少し, 術後3ケ月以内に死亡した。血中代謝産物の解析では, 対照群の犬で中分子量域および大分子領域にピークを認め, 中分子量物質を再分画すると分子量数千程度の部分にいくつかのピークを認めた。本吸着剤によってこれらの物質の吸着が行われていることが示唆された。
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中嶋 真, 太田 秀男, 千葉 芳久, 久保田 和義, 渡辺 敢仁, 帆刈 睦男, 小池 正, 石井 浮一
1987 年16 巻2 号 p.
945-948
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
肝不全に対してCHPおよびPPHを施行し, 臨床効果を中心に, 生化学的変動, アミノグラムなどの検査を行い比較検討した。T. Bil. は, CHP後は減少する傾向にあるが, PPH後では有意に減少した。NH
3, NEFAは特に差はなかった。アミノグラムはCHP後ではBCAA, AAAともに減少する傾向にあった。PPH後ではBCAAは増加する傾向にあったが, AAAは減少する傾向にあった。CHP, PPH後においてともにBCAAは正常範囲内で, AAAは正常の約2~3倍で推移した。MRはCHP, PPH施行後にともに有意に改善したが, 正常の約1/2程度であった。CHP, PPHでは中毒物質の除去には十分でなく, またMRも改善されるが不十分と考えられた。肝不全の意識の改善にはCHP, PPHのみでは不十分と考えられ, 残存する肝細胞機能が重要であり, 特殊アミノ酸療法, 肝の再生を促すG-I療法などとの併用が必要であると考えられた。
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松原 修二, 岡部 健二, 大内 清昭, 佐藤 寿雄, 矢島 義昭, 鈴木 勃志
1987 年16 巻2 号 p.
950-953
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
過去8年間で我々は42例の重症肝障害患者に対して334回の血漿交換を中心とした血液浄化療法を行なってきた。患者の内訳は胆汁うっ滞9例、術後肝不全19例、acute on chronic 4例、そして劇症肝炎10例であり、16例は肝硬変を合併していた。生存例は13例(31%)であり、血漿交換単独施行例での救命率は38%となった。肝硬変合併例の生存率は19%と低く非合併例の半分にすぎなかった。主要合併症の併発数と予後をみると、死亡群での不全臓器数は救命群の2倍以上と多かった。疾患別にみると、劇症肝炎では生存例は1例もなぐ、血漿交換のより早期からの導入、置換量の増量の必要性などが痛感された。また術後肝不全では発症の早い症例ほど多臓器不全で失っており、血中エンドトキシンの浄化を含め多面的な治療法の集約が肝要と思われた。
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山本 実
1987 年16 巻2 号 p.
954-957
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
肝不全に基づく肝性昏睡で意識レベルがIII~IVの段階で治療を開始した急性肝不全患者59症例(劇症肝炎46症例, 急性肝炎5症例, 妊娠性急性脂肪肝8症例)に対しcharcoal hemoperfusion, cuprophan membrane hemodialysisおよび血漿交換を併用あるいは血漿交換単独で治療した。劇症肝炎症例の救命し得たのは8症例のみであるが, 妊娠姓急性脂肪肝症例は8症例全例救命し得た。急性肝炎は全症例死亡した。救命し得た症例では1cc中1 Calの経管高栄養1日1,500Calないし2,000Calを摂取した。発症初期より栄養摂取不十分な症例は症状の改善なく救命し得なかった。
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稲葉 英夫, 平澤 博之, 菅井 桂雄, 小高 通夫, 田畑 陽一郎, 添田 耕司, 磯野 可一
1987 年16 巻2 号 p.
958-961
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Osmolality Gap (OG)とは、実測浸透圧値と予測浸透圧値との差と定義され、その増加は通常は測定されない溶質の血清中での増加を意味する。我々は、当集中治療室で各種血液浄化法を施行した28名の重症患者を救命群(S群)17名、非救命群(NS群) 11名の2群に分け、血液透析(HD)、血漿交換(PE)および血液吸着(HA)施行前、直後、24時間後のOGの変化を検討した。血液浄化法施行前のOGは不全臓器数が多いほど高かった。S群では、PE、HA共にOGを有意に減少させたが、HDはOGに変化を与えなかった。一方、NS群では、HD、PE、HA共にOGに有意の変化を一与えなかった。以上より、HA、PEは各種病因物質を含めたunmeasurable soluteの除去に有効だが、OGが高値を呈する重症例では、病因に対する抜本的治療、肝細胞機能の改善といったOGを増加させる病態に対する多面的治療が重要と考えられた。
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本田 宏, 寺岡 慧, 大島 直, 船越 陽一, 淵之上 昌平, 河合 達郎, 中島 一郎, 中川 芳彦, 高橋 公太, 阿岸 鉄三, 太田 ...
1987 年16 巻2 号 p.
962-965
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
血漿交換療法の反復施行によっても意識の回復が認められない重篤な末期肝不全による昏睡の患者(39歳, 男性)に豚肝による異種肝体外灌流を施行した。灌流開始から6時間目で灌流肝の胆汁排泄量が減少したために治療を中止したが, 5時間までの灌流肝による胆汁排泄は良好で(5.5ml/hr), 血清ビリルビンのClearance rateは42.1%であった。昏睡度は灌流前のIV~V度から灌流終了後はIV~III度へと軽快し, その後に血漿交換療法を追加することによって完全覚醒した。患者は本法施行後14日目に食道静脈瘤破裂を併発して死亡した。灌流肝の組織学的検索では超急性拒絶反応が認められたが, 死亡前の患者血清中には抗豚アルブミン抗体は認められなかった。
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大川 敬子, 田村 容子, 大島 宣雄
1987 年16 巻2 号 p.
966-968
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ヒドロゲルによる包埋は, 肝細胞の生存率を著明に向上させるが, ビーズ状のゲルを用いた充填塔型の代謝装置においては, DHPの効率はあまり望ましいものではなかった。そこで, 装置性能の向上を図るために, 肝細胞を含むヒドロゲルを回転円板型代謝装置に組み込んだモジュールを試作し,
in vitroおよび
ex vivoの灌流実験からその性能を評価した。総括物質移動係数の分子量依存性は, ビーズ状のヒドロゲルの場合に比べて少なく, 高分子量物質の透過もあまり制限されなかった。致死速度定数は円板回転数の増加に従って増し, 代謝速度定数についても同様の傾向が認められた。試作したモジュールは急性肝不全ウサギを用いた体外灌流実験においても, 血漿中のアンモニウムの除去に効果を示した。また血液の流れも, 終始良好であり, 明らかな凝血やよどみは見られなかった。
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葛西 眞一
1987 年16 巻2 号 p.
969
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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―組織糖濃度と血糖値の関係―
小島 洋彦, 竹重 言人, 山本 貞博, 池田 章一郎, 伊藤 要
1987 年16 巻2 号 p.
970-973
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
人工膵臓の血糖測定機構を担う小型の組織糖濃度測定グルコースセンサー(TGS)を開発作製した。このセンサーを糖尿病犬の腹壁皮下に埋没して, 組織糖濃度と血糖値の関係を比較検討した。TGSはクラーク電極を応用改良したもので2個の電極―グルコース電極と対照の酸素電極―より構成されている。組織糖濃度測定のための検定はin vitroで, 温度37℃, 溶存酸素濃度5%の生理的食塩水中にセンサーを留置して, 各種糖濃度(0~500mg/dl)に対するセンサー出力を基準値とした。センサーで測定した組織糖濃度の変化は血糖値の変化と同調し, 両者は良い相関を示した(n>0.7)。しかし血糖値の急速で大量の変化に対しては10分以上の応答の遅れを示した。またセンサーと組織との接触状態や, 皮下組織の温度, 酸素濃度, 血流などの局所環境により部位により糖濃度の差異を生じた。
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―皮下型グルコースセンサーの改良―
大倉 国利, 市原 透, 中尾 昭公, 市橋 秀仁, 高木 弘, 近藤 達平, 浅井 薫, 川合 祥一, 古川 正美, 池田 章一郎, 伊藤 ...
1987 年16 巻2 号 p.
974-977
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
植込み型人工膵臓システム実用化に向けての大きな鍵は、植込み可能な小型グルコースセンサーの完成にある。我々はここ数年、従来の人工血管型グルコースセンサーに代わり、より臨床に用い易い、皮下型グルコースセンサーを開発し、検討を加えてきた。前報で示したようにグルコース透過制限膜を、初期のピンホール膜から、酢酸セルロース膜に代え、膜の保存液を25%エタノール水溶液から、生理的食塩水に代えることにより、
in vitro,
in vivoでセンサーがより確実に働くようになった。しかし、
in vivo試験後、まれに高グルコース濃度の識別ができなくなる現象が起こったので、その原因究明を行った。また、グルコース透過制限膜の前に更にもう一枚膜を装着することにより、
in vivoでのセンサーの安定性を高め、また長期間の使用にも耐え得るように改善できた。
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アルギン酸―ポリリジンーアルギン酸三層膜を付加したブドウ糖センサの検
山崎 義光, 上田 信行, 星山 俊潤, 八木 稔人, 七里 元亮, 鎌田 武信
1987 年16 巻2 号 p.
978-981
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
微小針型ブドウ糖センサは皮下組織留置時, 体液成分の膜表面への付着により, センサ活性が低下し3日目毎のセンサの交換が必要である。センサを長寿命化せんとして, 抗血栓性にすぐれたアルギン酸―ポリリジンーアルギン酸三層膜(APA膜)を付加したブドウ糖センサを作成, その特性を従来のポリビニールアルコール(PVA)膜付加センサと検討した。
APA膜センサはPVA膜センサと同様のin vitro特性を示した。新鮮血血糖測定時, APA膜センサの出力は血漿ブドウ糖値と優れた相関を示した。また, 静脈内留置時230分まで安定した出力を認めた。PVA膜センサでは血栓の付着により各センサ間の出力のバラツキが大であった。
以上, APA膜を付加した微小針型ブドウ糖センサは優れた抗血栓性を示し, 極めて有用と考えられた。
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山崎 義光, 星山 俊潤, 上田 信行, 直 克則, 河盛 隆造, 七里 元亮
1987 年16 巻2 号 p.
982-985
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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既に開発したclosed-loop皮下インスリン注入アルゴリズムを用いて糖尿病患者の血糖日内変動の制御を試みた。制御パラメータを食事摂取前後で変更することにより静脈内インスリン注入時と同様の血糖制御を得た。また, 皮下インスリン動態モデルより求めた血漿インスリンは実測値とよく一致した。
皮下インスリンスペースのインスリン動態を検討, 血糖値および血糖の変化率より求めたその理想値と実際の皮下注入率より計算したsimulation値を補正すべくインスリンを注入するアルゴリズムを作成した。このアルゴリズムよりsimulationを行い, 制御パラメータを変更することなく良好な血糖制御を得る皮下インスリン注入を遂行し得ることを認めた。
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原口 義座, 星野 正己, 切田 学
1987 年16 巻2 号 p.
986-989
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
過去約1年間, ICUにおける術後耐糖能低下例に対して, 人工膵臓を用いた栄養管理を施行してきた。今回この内, 特に腹膜炎例の9例を対象とし, その有用性について検討を加えた。検討項目は, カロリー投与量, カロリー摂取量及び摂取率, 血糖値, インスリン投与量, インスリン投与量/カロリー摂取量比などである。カロリー摂取量は, 安静時エネルギー消費量にほぼみあっていた。カロリー摂取率は, 97%以上と良好であった。血糖値は, ほとんどにかいて140-220mg/dlの範囲でコントロールされていた。インスリン投与量は, 1日当たり平均で250mU/kg/hrと多量を要した例もみられた。インスリン投与量/カロリー摂取量比は, 術後日を経るに伴い徐々にではあるが改善しており, 耐糖能の低下の推移の評価に有用なパラメーターと考えられた。全体として, 人工膵臓は術後の特に感染に合併する高度耐糖能低下の栄養管理に安全に使用出来,有用であった。
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山崎 善弥
1987 年16 巻2 号 p.
990
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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龍治 修, 阿岸 鉄三, 早坂 勇太郎, 中沢 速和, 太田 和夫, 佐藤 元昭, 阿部 道夫
1987 年16 巻2 号 p.
991-994
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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recombinant-protein A coatingビーズの正常ヒト血清及びIL-2に対する吸着性を検討した。血清中のIgG, IgM, IgA, C3, C4, クレアチニン, BUN, Na, Kの吸着性は認められなかった。しかし, bioassayによりIL-2の吸着性を検討した結果, その活性は吸着前に比べ有意に上昇した。又, 高速液体クロマトグラフィ及びMLC (mixed lymphocyte culture)を用いた結果, r-pro AはSuppressor Soluble Factorの1つを吸着していることが明らかとなった。
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谷 徹, 遠藤 善裕, 吉岡 豊一, 岡 藤太郎, 花沢 一芳, 松田 孝一, 沼 謙司, 小玉 正智, 寺本 和雄
1987 年16 巻2 号 p.
995-998
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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抗腫瘍効果を持ち、プリーのエンドトキシン投与に代る効果を有するエンドトキシン固定化繊維(LPS-F)を家兎Vx2腫瘍を用い. 治療実験を行った。OK-432をブライミングに使用した。又、血液灌流はブライミング後2週間とした。1群、8羽につきDHPを移植後12日目に行った。2群、5羽に対し14日目に担体繊維によるDHP (sham DHF)を施行した。DHP (一)の群もつくつた。4群10羽にDHPを8~9日目と、早くした。5群7羽に2回のDHPを施行し、対照群にはDHP (一)群を置いた。
OK-432単独による抗腫瘍効果は認められなかつた。DHPはOK-432単独や、sham DHPに比べると施行後1ケ月間、Vx2腫瘍の成長を抑制し得た。また、生存日も38.5±1.6日とOK-432単独34.2±0.4日や、sham DHP群の34.0士0.6日に比し延長した。また2回施行した場合49.1士4.0とより延長し有効性が高くなつた。
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花沢 一芳, 谷 徹, 岡 藤太郎, 吉岡 豊一, 遠藤 善裕, 松田 孝一, 青木 裕彦, 沼 謙司, 国吉 葉子, 小玉 正智
1987 年16 巻2 号 p.
999-1001
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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エンドトキシン(ET)を選択的に解毒吸着する材料として我々は不溶性担体にポリミキシンBを固定化する新しい方法を開発してきた。この新しい材料であるポリミキシンB固定化フアイバー(PMX-F)が充分のETを解毒中和し且つ生体適合性に優れている事は既に報告した。精製ETを雑種成犬に投与したETショツクモデルに対しPMX-FによるET除去の好果を確認したので次いで我々は、よりnativeなETの除去を目的に、大腸菌誘発敗血症犬に対してPMX-FによるDHPを施行した。前回のETシヨツクモデル犬と同様に敗血症犬モデルにおいても生存時間の延長を認めた。
当材料によるDHPは、臨床分野でのETショックや敗血症シヨツク患者に対して有効な手段となり得る可能性が示唆された。
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稲垣 豊, 天野 泉
1987 年16 巻2 号 p.
1002-1006
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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体外式Peritoneo-venous (P-V) shuntは従来の植え込み式P-V shuntと腹水濃縮静注の双方の利点を受け継ぎ, 欠点を改良している。今回は体外式P-V shuntをより広く応用する為に新たに装着型腹水濃縮装置を開発した。この装置は(1) one-way valve付flush bulb (2) polyacrylonitrile (PAN)膜製の濃縮器(3)滅菌貯留パックおよび間を接続するtubeより成り立っている。PAN膜の面積が0.5m
2以上の濃縮器を使用して30分毎にfiberを洗浄すれば100cmの落差のみで十分除水が可能であった。しかし落差だけでは最初の10分で90%ほど除水され後の10分は極めて少量であるので, 効率を上げる為には腹圧を加えるかflushbulbを圧迫する必要があると思われた。この装置を一例の肝硬変に心不全を合併する症例に間欠的に装着して使用したところ10時間で数lの腹水濃縮静注が可能であった。
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船越 陽一, 阿岸 鉄三, 中沢 速和, 本田 宏, 吉岡 宏, 福井 清, 太田 和夫
1987 年16 巻2 号 p.
1007-1010
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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われわれは, 雑種犬を用いた胸管ドレナージ法において, 新たに作製したシリコン製ダブル・ルーメンカテーテルを胸管に挿入し, リンパ球除去にCPC-11FCフィルター, リンパ液静脈内返還にキャリカポンプCP-136, ヘパリン加生食持続注入には自動輸液ポンプSP-10-Tを用いるという新しいシステムを考案し, リンパ液流出量, フィルター前後でのリンパ球数論よび総蛋白量の測定を行った。この結果, リンパ液流出量は40~90ml/hrであった。フィルター前でのリンパ球数は2.0~4.3×10
6/ml, フィルター後ではリンパ球は完全に除去されていた。リンパ液の総蛋白量のフィルター前後での変動はみられなかった。以上の結果は, われわれの方法が, リンパ液流出量, リンパ球除去能において十分有効であることを示し, また, 胸管ドレナージの問題点とされてきた血清蛋白低下を防ぐことが可能な方法であると思われた。
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吉竹 毅
1987 年16 巻2 号 p.
1011
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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飯野 靖彦, 篠田 俊雄, 芝本 隆, 蓮村 靖, 大島 博幸, 吉山 直樹, 岩本 均, 中川 宗一
1987 年16 巻2 号 p.
1012-1015
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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家族性高コレステロール血症のホモ接合体兄妹2例に対し, LDL選択的吸着法を用い治療を行い, その効果を二重膜濾過法と比較検討した。21歳(兄)と16歳(妹)の二重膜濾過法治療中の患者2例に対し, 血漿分離後(polysulfon)にLDL吸着(Dextran-sulfate Cellulose)を行った。二重濾過膜は1次膜としてPVA or CDA膜を, 2次膜としてはEVAL 4Aを用いた。兄例では総コレステロール値が二重濾過膜法では574.3±11.7 (mg/dl)から305.0±8.1 (n=27)へ, LDL吸着では580.7士27.4から265.5±16.3 (n=10)へ低下した。減少率はそれぞれ46.4±1.8%と53.8±3.0%であり, LDL吸着の方が大きかった。LDL吸着によりLDLは兄例で1216.3±31.9(mg/dl)より425.7士35.3へ, 妹例で999.6±34.4から185.1±14.4へ有意に低下した。HDLの変化は認められなかった。LDL吸着法はホモ接合体の家族性高コレステロール血症の治療に有効である。また, 二重濾過膜法に比べ, 同等あるいはそれ以上の効果が期待できる。
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添田 耕司, 小高 通夫, 田畑 陽一郎, 林 春幸, 伊藤 靖, 今関 英男, 磯野 可一
1987 年16 巻2 号 p.
1016-1022
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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LDL吸着システムは, polysulfone中空糸血漿分離器KNS-05にて分離された血漿を, dextran sulfate-cellulose beadを充損したKNA-01に灌流し, LDLの選択的吸着除去を目的としている。今回我々は, 家族性高コレステロール血症患者(49歳, 女性)に, このシステムを用いて,さまざまな検討を行なった。その結果, このシステムは, 安全かつ長期に使えることが判明した。ヘテロ接合体である本症例では, 抗高脂血剤の併用により総コレステロールが正常域でコントロールされ, 臨床症状の改善も認められた。KNA-01のLDL吸着能は, 血漿処理量3lで減少し, LDL吸着推定量は7.7gであった。LDL apheresisによる減少率は, TC, LDL-Cおよびapo Bで60~70%, HDL-Cで15~20%であったがHDL-Cは4時間後には前値に回復していた。1年後の, 吸着後から4時間までの総コレステロールの毎時増加率は, 治療開始時より高く, 組織のLDLプールからの動員の可能性が考えられた。LDL apheresis前後の血小板数, C
3a, C
5aおよびトロンボキサンB
2等の結果から, LDL吸着システムの生体滴合性に特別な問題はないと思われた。
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野村 知秀, 丹羽 利充, 小沢 裕子, 小早川 裕之, 前田 憲志, 柴田 昌雄
1987 年16 巻2 号 p.
1023-1026
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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フェニルアラニンをリガンドとして固定した人工網内系(ARES)の吸着能を高める目的で、Plasma perfusion中に、オンラインで再生する方法を考案し、慢性関節リウマチの治療に臨床応用した。in vitroで種々の溶媒の内、5%ブドウ糖溶液がよぐ、人工網内系に吸着されたリウマトイド因子、免疫グロブリン、補体を溶出することが明らかとなり、これを入工網内系の再生に利用した。1リットルの5%ブドウ糖溶液を用いて1回の治療中2回の再生を試みた。再生後、カラム前後のRAHA値の測定結果から、人工網内系の吸着能は飛躍的に回復することが確かめられた。この再生式人工網内系Regenerative aritificial reticuloendothelial system (RARES)による治療を6回行い、患者の関節痛や手指のこわばりといった自覚症状は著明に改善した。
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山崎 善弥, 高浜 龍彦, 藤森 義蔵, 大西 清, 平石 守, 金井 福栄, 出月 康夫, 井上 昇, 津田 信明, 山脇 直邦, 稲垣 ...
1987 年16 巻2 号 p.
1027-1030
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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選択的に病因関連高分子物質(免疫複合体, リウマチ因子など)を除去するために開発して来た物理化学的免疫吸着剤(IM-PH)療法の対象となる患者の血中に, 治療上存在すると考えられる薬剤と免疫複合体が, 免疫吸着材IM-PHにどのように競合吸着されるか実験的研究を行った。
慢性関節リウマチ患者血漿中ハイドロコーチゾン, プレドニゾロンや抗生剤の混在するものと, 非混在のもの4に対し, IM-PHあるいは活性炭を1の割合で混合し, 37℃にて振盪2時間前後の上血漿の免疫複合体コルチゾールあるいは薬剤の濃度を分析, 比較検討した。
IM-PHは免疫複合体に対し, コルチゾールより強い親和性を持っており, 免疫複合体高濃度の血漿中より, コルチゾールは殆ど吸着しなかった。抗生剤ゲンタマイシン, ケフドール, シオマリンなどには全く親和性を示さなかった。一方活性炭はこれら抗生剤の全量を吸着した。
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―各種活性炭による臨床的検討―
岡 藤太郎, 遠藤 善裕, 谷 徹, 花沢 一芳, 吉岡 豊一, 松田 孝一, 小玉 正智
1987 年16 巻2 号 p.
1031-1035
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
活性炭により血液灌流型人工臓器で産生されたanaphylatoxinを吸着除去し、体内に返血することで、生体の過剰反応を抑制する方法は、第23回日本人工臓器学会で報告したとうりで、本編では活性炭の種類による吸着能や生体反応への影響の差について検討を加えた。国内の4社から、6種の活性炭の供与を受け、in vitroでC5aの吸着能をみた。3mlのカラムにそれぞれの活性炭を充填して5ml/minで血漿灌流を行い。258ng/mlのC5aが非被覆のもので149~90ng/mlまで減少した。p-HENIA被覆活性炭では、若干高値であったが良く吸着した。この内の5種を慢性透折患者5名に応用したところ、非被覆活性炭を併用したものと、p-HEMA被覆活性炭2009を有するカラムを併用した時には、良好な吸着力を示し、C3aは前値と変らず、好中球減少も抑制された。C3a値が前値の2倍以下に抑制されないと好中球数も、前値の25%以上を保てなかった。活性炭によるanaphylatoxinの吸着は、生体適合性の悪い材料の応用時には有効性を持つと考えられる。
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折田 薫三
1987 年16 巻2 号 p.
1036
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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塩崎 滋弘, 阪上 賢一, 宮崎 雅史, 松岡 順治, 西岡 豊, 松永 琢也, 斉藤 信也, 折田 薫三
1987 年16 巻2 号 p.
1037-1040
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
担癌患者血清中の免疫抑制因子を除去し, 免疫化学療法の効果をより高めるため, 我々は二重濾過血漿分離交換法(DFPP)を臨床応用してきた。今回はDFPPでは除去不可能である低分子領域の免疫抑制因子も合わせて除去する目的で多孔性ガラスビーズ吸着体カラムを作成し, DFPPと併用して臨床的に用いた。その結果, IAP, α1-acid glvcoprotein等のalbumin以下の低分子領域血清因子は, 34~56%の除去率で血中より除去された。また, DFPP施行前後, 吸着体カラム前後ともPHAリンパ球幼若化反応に対する抑制活性の減少が明らかに認められた。以上より, ガラスビーズ吸着体カラムを併用することにより, 低分子免疫抑制因子の除去が可能であり, DFPPの効果を増大させることが臨床的に認められた。次に, ハイドロキシアパタイトより成る吸着体が, 低分子領域の血清因子に対し優れた吸着能を有し, 今後ガラスビーズと共に期待される吸着体であることを示した。
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―環構造をもったビニル化合物の応用―
高橋 剛, 佐藤 直人
1987 年16 巻2 号 p.
1041-1044
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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自己免疫疾患である、慢性関節リウマチの患者血中に在存するリウマチ因子の吸着について、検討を行った。
リウマチ因子(以下RF)は、フェニルアラニン, トリプトファンという環構造をもつアミノ酸をリガンドとして用いた場合、選択的な吸着を示すと、以前、報告されている。今回、環構造をもったビニル化合物を用い、RF吸着のモデル合成検討を行った。
結果として、ビニルカルバゾール(以下N-Vc)を用いて、合成した多孔体において、RFの選択的吸着傾向がみられ、生体物質以外において、RF吸着に対するモデルが合成できたと考えられる。
環構造をもったビニル化合物は、免疫関連疾患の治療に、今後、応用できるものと考えられる。
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松田 武久, 新延 道夫, 岩田 博夫
1987 年16 巻2 号 p.
1045-1050
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
補体系は生体防衛機構の一部を担う重要なる生体系であり, 活性型因子やフラグメントは各種細胞系に対して抑制機能やエフェクター機能を発現することが明らかにされつつある。表面性状の異なる材料表面における補体系活性化に古典経路及び第2経路による補体活性化に分離定量し, 一般的な材料性状―活性化能の相関関係を見い出した。疎水性表面は最も不活性であり, 分子運動が束縛凍結された結晶性表面水酸基を有する表面は最も高い活性化能を示した。古典及び第2経路の接触相(C1及びC3)の活性化機構を再構成系を用いて分子レベルで明らかにした。C1の活性化はIgG依存性とIgG非依存性及び両者が併行して進行すること, セルロース等の表面水酸基の分子運動が束縛され, その密度が大きい材料表面での高い補体活性化能はC3の材料表面への直接化学結合による局在化であることを明らかにした。活性化補体成分がNK細胞及びマクロファージに対してエフェクター機能を発現することを明らかにした。
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三浦 純一, 元木 良一, 井上 仁, 薄場 彰, 亀田 俊夫
1987 年16 巻2 号 p.
1051-1054
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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酸素運搬能を持つ血漿増加量剤Perfluorochemical (PFC)乳剤は急性大量出血患者の緊急輸液剤として開発され、臨床に応用されようとしている。しかしPFC乳剤は体内に投与されたのち細網内皮系に一定期間蓄積され、マクロファージ(Mφ)に取りこまれMφのInterleukin-1産生能を抑制することにより免疫抑制作用を発現する。著者はこのPFC乳剤のうちFC-43を免疫抑制剤としてマウスの皮膚移植に応用し以下の成績を得た。1) 無処置マウスの生着日数は12.75±0.89日であった。2) FC-43投与群の生着日数は1725±1.04日で対照群に比し+4.50日生着日数が延長していた。3) Thy-mectomy施行群の生着日数は26.8±12.68日で対照群の約2倍に延長していた。4) Thymectomy+FC-43投与群の生着日数は37.2±3.11日で著明に延長していた。5) FC-43は選択的にMφ機能を抑制するので他の免疫抑制剤と併用しAdjuvant therapyとして移植における免疫抑制剤として応用可能であると考えられた。
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平岡 淳一郎, 赤池 敏宏
1987 年16 巻2 号 p.
1055-1058
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
新しい免疫工学用材料の開発を目的として各種アミノ酸及びジベプチドを側鎖に有するポリメタクリル酸誘導体を合成し、抗体(IgG)分子との相互作用を既報のマイクロスフィアカラム法で解析した。吸着量を測定するのみならず吸着配向性を推定するために、IgGのF(ab')
2、Fc各フラグメントの吸着挙動も検討した。ポリメタクリル酸の-COOH基周辺の親水性、疎水性を種々変化させることにより、IgG分子の吸着量、配向性をいろいろと変化させることができることが判明した。芳香族側鎖を有するアミノ酸の結合により、IgG分子の吸着量や表Fcフラグメント優先の吸着配向性を高あることができた。さらに、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステルの導入により、一段とこの傾向が高まった。IgG分子を多量にかつFcサイドで吸着固定しやすい本材料、イムノセンサ、イムノリアクタ用担体としてすぐれた特性を有するものであることが明らかとなった。
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佐中 孜
1987 年16 巻2 号 p.
1059
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
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吉田 博, 田村 眞, 松田 仁志, 大井 龍司, 伴野 丞計, 池田 博之, 服部 博行
1987 年16 巻2 号 p.
1060-1063
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
ドナー・プラズマフェレーシスを行なう上で単針法はドナーの負担を軽減し有用である。一方、高い採漿効率を得るには中空糸中において血流を安定化し血液再循環による圧変化を最小とする制御を達成する必要がある。
二つの単針法採漿機-(a)50%再循環を行ない、圧制御のみのDP-1SLと、(b)100%再循環を行ない、膜モジュールへの流入をポンプ制御しかっ血漿ポンプにより圧制御を行なうNDP-100-における中空糸中の血漿と細胞の流れの動態を比較検討した。(1)bではaに比し急激な圧変化がなく、Htの上昇に伴う圧変化は緩徐であつた。(2)血液細胞の濃縮度についてHtの中空糸の「出口/入口」比を指標として検討したところ、bではaよりも中空糸中において細胞-血漿の層流が形成されていることが明らかとなった。
以上によりNDP-100では中空糸中の血流動態が安定しており、高効率の採漿が達成できると考えられる。
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田村 眞, 松田 仁志, 吉田 博, 大井 龍司, 池田 博之, 伴野 丞計, 福井 清
1987 年16 巻2 号 p.
1064-1068
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ドナー・プラズマフェレVシス(DP)において, 血漿採取の方法のうち膜法は遠心法に比して採取された血漿中に細胞成分を殆んど含まないなど長所を持っているが, IgMや第VIII因子など大分子の「ふるい率」(Sieving Coefficient)が低値を示す短所があった。
今回NDP-100との組合せで開発された中空糸膜モジュールPEX-25(cellulose-tri-acetate hollow fibers)を更に改良し, PEF-25を開発した。PEFはPEXが持つ0.2~0.4μの孔径を0.4~0.6μとし, 膜厚をやや薄くしたものである。77名のドナーの協力を得て“PEF-NDP-100”を用いDPを行なったところ, (1)遠心法に匹敵する第VIII因子等凝固因子の収量と, (2)PEXよりも良好な生体適合性を持つ成績が得られた。
凝固因子を採取することを主な目的とする膜が開発され, 臨床的にもその有用性が確認された。
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鈴木 克行, 根岸 七雄, 萩原 秀男, 尾碕 俊造, 石井 良幸, 篠原 裕希, 新野 成隆, 前田 英明, 一和多 雅雄, 河野 秀男, ...
1987 年16 巻2 号 p.
1069-1072
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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今厨我々は, 急性動脈閉塞症の重篤な合併症であるMNMSの原因, 治療法を検索するための実験モデルを新たに考案, 作製した。雑種成犬両後肢筋を生食中で融解させ, 抽出液を作製し, 他の成犬に点滴静注した群(Control群)と抽出液にプラズマフィルトレーションを施行した後に点滴静注した群(Filtration群)とを比較, 検討した。Control群の死亡は, 6例中5例, Fittration群は, 6例中1例と, Filtration群に死亡率の低下を認めた。また, GPK, アルドラーゼなどの低下を認め, K, 乳酸, BUNにおいても有意差を認めた。急性動脈閉塞により発生する異常代謝産物の除去に, ブラズマフィルトレーションは有効であると思われ, MNMSの予防および治療に新しい展開を生みだすであろうと思われた。
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飯野 靖彦
1987 年16 巻2 号 p.
1073
発行日: 1987/04/15
公開日: 2011/10/07
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