整形外科と災害外科
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62 巻, 3 号
選択された号の論文の56件中1~50を表示しています
  • 黒木 浩史, 猪俣 尚規, 濱中 秀昭, 増田 寛, 森田 雄大, 帖佐 悦男
    2013 年 62 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【緒言】われわれは未成熟な進行性側弯症患者にgrowing rod(GR)法を施行している.今回,治療途上例を含むGR法施行例について検討を行ったので報告する.【対象と方法】平成18年8月以降,当科にてGR法を行った5例21手術(男4例,女1例,平均初回手術時年齢10歳5か月)を対象とした.以上の症例について初回rod挿入時のCobb角の矯正率,space available for the lung(SAL)の変化量,平均手術時間・出血量でみた手術侵襲,合併症について調査した.【結果】初回rod挿入時のCobb角の平均矯正率は38.2%であり,平均SALも8.2%増加していた.手術侵襲は一期的anchor, rod設置挿入術3手術で344分,587ml,anchor設置術単独2手術で313分,177ml,rod挿入術単独2手術で237分,133ml,rod延長術12手術で89分,16mlであった.hookの脱転,移動といった合併症を1例に認めた.【考察】GR法は脊椎の成長を温存できる利点がある一方で合併症が高率に発生する.いつ頃までどの程度の延長が可能かなどいまだ未解決の問題も多いが本法は未成熟な側弯症患者に有用な術式である.
  • 吉兼 浩一, 山口 司, 西井 章裕, 大江 健次郎, 岡田 文, 仲西 知憲, 伊東 孝浩
    2013 年 62 巻 3 号 p. 426-430
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    PED (percutaneous endoscopic discectomy)は椎間板ヘルニアに対する新しい低侵襲手術として,Love法やMEDに劣らぬ臨床成績が報告されている.その低侵襲性は患者への身体的負担のみならず,後療法,入院期間,ひいては経済的負担を軽減できるものと期待される.PED側方アプローチは,傍脊柱筋と脊椎構築にほぼ侵襲を加えずヘルニア部にピンポイントに到達し,8mm径cannulaを通し6mm径内鏡視でヘルニアを摘出,神経の除圧を確認できる,土方式経皮的髄核摘出術(PN: Percutaneous Nucleotomy)から発展した,解剖学的に最も低侵襲なヘルニア摘出術である.腰仙椎部では腸骨翼がアプローチの障害となり,PED後方アプローチ(経椎弓間)の適応となる.脊柱管内脱出移動ヘルニアに対しても側方アプローチの限界があり,部分椎弓切除を併用した経椎弓間アプローチ,あるいは経椎弓アプローチ(PETA)が応用される.ヘルニアの発生高位,脊柱管内あるいは外側,脊柱管内移動の有無等,病態に応じて側方と後方アプローチを使い分けることでほぼ全てのタイプのヘルニアに対応可能である.
  • 白石 浩一
    2013 年 62 巻 3 号 p. 431-435
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    PS型TKAにおいて現在のギャップテクニックを行うようになった経緯,現在の手技に至る変遷,現在の手技における注意点,臨床成績および術中計測結果について報告した.術中計測したコンポーネントギャップは,ギャップ長は完全伸展位のみで約2mm狭いが,屈曲10度,屈曲45度,屈曲90度ではほぼ等長であった.また全ての屈曲角度で良好な軟部組織バランスが得られていた.軟部組織の解離法を工夫することにより,大腿骨コンポーネントの回旋設置位置は以前に比較して上顆軸に近似してきており,膝蓋大腿関節の安定性もより向上していた.ギャップテクニックは,十字靭帯の欠損したPS型TKAにおいては日常生活動作で重要な中間屈曲位の安定性を保持するために有用な手術法である.
  • 広松 聖夫, 井上 明生, 木下 斎, 境野 昌範, 諌山 照刀, 奥野 徹子
    2013 年 62 巻 3 号 p. 436-445
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    「はじめに」変形性股関節症の進行・末期例に対するキアリ骨盤骨切り術においては,術後に関節裂隙の開大が得られないことがある.我々はこのような症例に対してはJiggling(股関節を貧乏ゆすり様に小刻みに動かす運動)を指導している.今回この効果について検討した.「方法」対象は2000年より当院で手術した385股のうち術直後に関節裂隙の開大が見られないか,もしくは経過中に関節裂隙の狭小化が生じた症例92股であり,これらの症例に対し頻回のJigglingを指導した.その結果65股(70%)の症例でX線上関節裂隙の開大を認めた.「考察」関節軟骨修復再生の促進については古くはSalterのCPMの実験が有名であるが,Haradaらはラットの尾骨切断面に機械的摩擦刺激を加えることで硝子様軟骨が生じたことを報告している.変股症の治療成績向上のためには関節構造の改造だけでなく軟骨修復再生の促進という新しい視点も必要であると考える.
  • 志田 義輝, 萩原 博嗣
    2013 年 62 巻 3 号 p. 446-449
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    TKAにおける術中伸展―屈曲gap差(以下gap差)と術後屈曲角度の関係を明らかにするため,2009年4月~2012年7月の当科のTKA161膝を調査した.対象は原発性内側型OA膝,Primary TKA,単一機種,術中内外反balance良好例,術前に顕著な可動域制限がない例に限定した.全38例40膝を,伸展gap>屈曲gap(A群)/伸展gap=屈曲gap(B群)/伸展gap<屈曲gap(C群)の3群に分け術後4週の屈曲角度を比較した.gap差は全体平均+0.69mmでA群22膝:+1.7mm,B群11膝:0mm,C群7膝:-1.5mm,屈曲角度は全体平均125.6°でA~C群それぞれ125.5°,126.1°,125.3°で各群間に有意差はなかった.gap差と屈曲角度のピアソン相関係数は-0.0052であった.今回の範囲内の術中gap差では術後4週の屈曲角度に与える影響は少なかった.
  • 足達 永, 岡崎 賢, 崎村 陸, 水内 秀城, 濵井 敏, 田代 泰隆, 岩本 幸英
    2013 年 62 巻 3 号 p. 450-452
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    今回我々は術前・術後のアライメント変化と脛骨側の骨切り量・インサートサイズとの関連を評価し,骨切除量の術前予測が可能かどうかについて検討した.対象は2005年から2011年までに単顆型人工膝関節置換術(UKA)を行った.37例40膝(男性:8例9膝,女性:29例31膝)を対象とした.平均年齢は70.1歳,疾患は変形性膝関節症25例26膝,大腿骨顆部骨壊死12例14膝であった.FTAの変化量と術後の関節面上昇量には有意差があり,平均5°未満で3.5mm(-3.5mm~4.9mm),5°以上で5.2mm(5.1mm~12.5mm)であった.FTAの矯正量と脛骨関節面の上昇量は有意な相関関係にあり,術中の脛骨骨切除量の予測が可能であると考えられた.
  • 城下 卓也, 本多 一宏, 井本 光次郎, 田村 諭史, 細川 浩, 岡野 博史, 岡村 直樹, 岡田 二郎, 宮本 和彦, 佐久間 克彦, ...
    2013 年 62 巻 3 号 p. 453-456
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】比較的稀である若年者の膝蓋骨下極裂離骨折(sleeve fracture)の2例について報告する.【症例1】11歳男性.バスケットボール試合中,ジャンプした際に受傷した.左膝蓋骨下極裂離骨折を認め,受傷後3日目に手術を行った.遠位骨片と膝蓋腱に糸をかけ,骨孔をあけた膝蓋骨に通して固定し,外側骨片とともに鋼線で周辺締結を行った.術後3週間は屈曲20°でシリンダーキャスト固定を行った後,伸展位荷重,可動域訓練を開始した.術後11か月で抜釘術を行い,術後3年で関節可動域制限を認めなかった.【症例2】12歳男性.走り高跳びの着地の際に受傷した.右膝蓋骨下極裂離骨折を認め,受傷後2日目に症例1と同様に骨接合術を行った.術後2週間外固定を行った後,可動域訓練,伸展位荷重歩行訓練を開始した.術後10か月で抜釘を行い,術後11か月で屈曲制限を認めなかった.【考察】膝蓋骨下極裂離骨折に対する,pull-out法,周辺締結法による固定は,有効な治療法であると考えられた.
  • 秋穂 俊輔, 竹内 直英, 前 隆男, 佛坂 俊輔, 川口 謙一, 佐々木 宏介, 上森 知彦, 籾井 健太, 野口 康男
    2013 年 62 巻 3 号 p. 457-460
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】創外固定を行なった後に二期的に内固定を行った.下肢閉鎖性骨折の治療成績と問題点を検討することである.【症例】2009年1月から2012年7月までに治療した15例(男性9例,女性6例,平均年齢48.9歳)である.脛骨近位端骨折3例,脛骨骨幹部骨折1例,脛骨遠位端骨折8例,足関節骨折3例であった.創外固定から内固定までの期間は平均10.4日(4~20日)で,受傷時の水疱形成を4例に認めた.pin-tract infectionを1例に認めた.創外固定から内固定までの期間に皮膚壊死や神経障害などの発生例はなかった.また,内固定術後の感染や皮膚壊死の症例は認めず,全例で骨癒合が得られた.【考察】軟部組織損傷を認める閉鎖性骨折では,創外固定を用いた二期的治療は有用であると考えられた.
  • 川原 俊夫, 宮原 健次, 金丸 由美子, 島内 誠一郎, 志田 崇之, 田中 奈津美, 光武 聖史, 牧野 佳朗
    2013 年 62 巻 3 号 p. 461-464
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】膝蓋骨骨折に対する遠位端をループ状としたキルシュナー鋼線を用いてのtension band wiring法の手技及びその結果を報告すること【方法】膝蓋骨骨折に対し上記固定法を行った男性2例女性5例,手術時平均年齢54.7歳の結果を評価した.【結果】平均手術時間は96.5分,追加固定はcircumferential wiring 4例,tension band wiring 2例,キルシュナー鋼線1例であった.平均10.4カ月の経過観察期間において変形性関節症合併,リハビリ不能例以外はいずれも伸展0度屈曲130度以上可能で特殊な高度粉砕例以外はキルシュナー鋼線の突出はなく,軟鋼線の逸脱は1例も生じなかった.【結論】膝蓋骨骨折に対するキルシュナー鋼線の遠位端をループ状にしたtension band wiring法は良好な術後成績を安定して得られる有効な手技と考える.
  • 佐田 潔, 西村 誠介, 渡邊 精一郎
    2013 年 62 巻 3 号 p. 465-468
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】脛骨顆間隆起骨折に対し鏡視下に吸収性アンカーを用いて手術を行い良好な結果を得たので報告する.【症例】11歳女児.体育の走り高跳びで着地に失敗し,左膝を捻挫した.その後疼痛,腫脹,歩行難があり,近医を受診しX線で脛骨顆間隆起骨折を認め当科紹介受診となった.X線,CTよりMeyers分類Type IIIの脛骨顆間隆起骨折と診断し,鏡視下に吸収性アンカーを使用し固定を行った.半年後,左膝関節の可動域制限や前方不安定性などはなく骨癒合を認め,スポーツにも完全に復帰した.【考察】本骨折の治療法としてpull-out法やスクリュー固定法等の報告は多いが,渉猟する限り本邦での吸収性アンカーを使用した報告はない.本法は関節内のみの操作で固定が可能であるため,他の方法と比し簡便であることや,若年者の場合は骨端線を貫通しないこと,異物を残存させることがない等の利点があると考えた.
  • 児玉 有弥, 井上 周, 加原 尚明, 小瀬 靖郎, 宮本 正, 長谷井 嬢
    2013 年 62 巻 3 号 p. 469-473
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    内側型変形性膝関節症(内側型OA)や,特発性大腿骨内顆骨壊死(OCN)に対して,保存的治療で改善しない症例においては,一般的には単顆人工膝関節置換術(UKA)や高位脛骨骨切術(HTO)などの適応がある.今回我々はそれらの適応があると考えられた患者のうちで,侵襲の高い手術の同意が得られなかったためArthroscopic debridementを施行した5症例(内側型OA2例:OCN3例 全例女性,平均年齢65.3歳 47~76歳)について検討したので報告する.
  • 伊藤 仁, 鬼木 泰成, 中村 英一, 唐杉 樹, 岡元 信和, 高田 興志, 水田 博志
    2013 年 62 巻 3 号 p. 474-478
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    症例:16歳,男性.左膝前十字靭帯(ACL)損傷および内側半月板損傷に対し再建術と半月板縫合術を施行した.術前のD-dimer値は0.5μg/ml未満であった.術後に静脈血栓塞栓症(VTE)を疑う理学所見は認めなかったが,術後1週の定期血液検査でD-dimer値が10.5μg/mlであったため,造影CT検査を施行したところ,左内腸骨静脈内の浮遊血栓と右肺下葉の肺血栓塞栓症(PTE)を認めた.直ちに抗凝固療法と下大静脈フィルターの留置を施行し,2週間後に血栓の消失を確認し,フィルターを抜去した.術後4ヶ月の現在,特に症状なく経過している.考察:ACL再建術術後におけるPTEの発生頻度は0―0.2%と稀であるものの,死亡例も報告されている.若年者が大半を占めるACL再建術においてもPTEの発症を十分念頭に置いた術前検討と周術期管理が重要である.
  • 前原 史朋, 米倉 暁彦, 岡崎 成弘, 尾﨑 誠
    2013 年 62 巻 3 号 p. 479-483
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    骨端線閉鎖前の若年者に生じた膝前十字靭帯損傷に対しては保存的治療が第一選択であるが,著明な不安定性の持続により保存治療の継続が困難な症例がある.我々はそのような1症例に対し鏡視下再建術を行ったので報告する.症例は10歳男児.ラグビーにてタックルを避けようとして受傷.MRIで前十字靭帯の完全断裂を認めた.膝装具による保存的治療を行ったが,不安定性が持続し,また長期運動制限による精神的影響も考慮し受傷8か月後で半腱様筋腱を用いた関節鏡下1束再建術を行った.骨孔は大腿骨側は骨端線を貫かず関節面に水平に作成し,脛骨側は骨端線を貫く部分を最小限にして作成した.術後6か月で脛骨側の,術後1年で大腿骨側のエンドボタンを抜釘した.術後1年6か月の時点では成長障害を認めず,膝の安定性は良好である.
  • 牛尾 哲郎, 王寺 享弘, 吉本 栄治, 碇 博哉
    2013 年 62 巻 3 号 p. 484-487
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    膝前十字靱帯(ACL)が機能不全であると大腿骨と脛骨のcontact pointは後方に移動することが考えられる.今回主として末期の変形性膝関節症(膝OA)においてACL機能不全がOAの病変に及ぼす影響について検討した.2011年10月から2012年6月までに人工膝関節置換術を行った末期膝OA患者100名を対象とした.術前のMRIでACLを4段階評価し,立位側面像での大腿骨と脛骨のcontact pointと屈曲拘縮(側面骨軸で測定),立位膝外側角等の相関について検討を行った.contact pointは平均39.2%(17-60%)であり,ACL機能不全とcontact pointには相関係数0.2743となだらかではあるが,有意な相関を認めた(p=0.0057).また屈曲拘縮とは有意な相関を認めなかった(p=0.2224).愁訴,受傷歴,手術歴のない健常膝20例でのcontact pointは37.7%とOA膝と有意な差を認めなかった.これに影響する因子としてはOA変化によりrolling,glindingが減少すること,膝関節自体の可動性低下などが考えられる.今後は初期,進行期OAを含めた検討や,陳旧性ACL損傷との比較をすることでその他因子が同定できる可能性がある.
  • 倉員 市郎, 野村 裕, 栁澤 義和, 中野 壯一郎, 田中 孝幸, 高野 祐護, 浦島 太郎, 千住 隆博, 有馬 準一
    2013 年 62 巻 3 号 p. 488-491
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【症例】22歳男性.Th9 Chance型骨折,C7棘突起骨折,Th4,10,11椎体骨折を認め,Chance骨折に対して後方固定術を施行した.術後2週より体幹コルセットを装着し,歩行を開始した.術後12週の単純X線,CTにて良好な骨癒合を認め,コルセットを除去し,その後も良好な経過を辿っている.【考察】Chance型骨折は従来,比較的安定な骨折とも言われ,保存的加療が可能とされてきたが,近年では,早期離床を目的に,外科的治療を行った報告も増えてきている.固定法の選択にはload sharing classification(荷重負担分類)が一つの指標となる.今回我々はChance型骨折に対しては後方固定術を施行し,その他の骨折に対しては体幹コルセットでの保存的治療を行った.外科的治療と保存的治療を組み合わせて良好な結果を得たので報告する.
  • 岡田 二郎, 細川 浩, 田村 諭史, 井本 光次郎, 城下 卓也, 岡野 博史, 岡村 直樹, 宮本 和彦, 本多 一宏, 佐久間 克彦, ...
    2013 年 62 巻 3 号 p. 492-497
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    胸腰椎破裂骨折に対する前方除圧固定術(A群)と後方固定術(P群)の治療成績を比較検討し報告する.対象はA群15例,年齢平均44.1歳,経過観察期間平均29.1カ月,全例金田デバイスを使用した.P群20例,年齢平均40歳,経過観察期間20.2カ月,2above-1below固定とし後方骨移植を行った.検討項目は手術時間,出血量,周術期合併症,神経症状の変化(改良型Frankel分類),最終観察時の疼痛評価(Denis pain scale),局所後彎角の推移である.A群で手術時間は有意に長く出血量は有意に多かった(P<0.0001).周術期合併症はA群に後腹膜膿瘍を1例,P群に下肢静脈血栓症を1例に認めた.神経症状の変化および疼痛評価では有意差を認めなかった.局所後彎矯正損失はA群2.2度,P群4.7度と有意差を認めた(P<0.05).P群はA群よりもやや矯正保持の面で劣るが侵襲がより小さいため後方固定を第1選択とし適宜前方支柱再建を考慮するのが望ましい.
  • 上森 知彦, 川口 謙一, 力丸 俊一, 野口 康男, 佛坂 俊輔, 前 隆男, 佐々木 宏介, 塚本 伸章, 竹内 直英, 籾井 健太, ...
    2013 年 62 巻 3 号 p. 498-501
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【要旨】2004年以降,当院に救急搬送された70歳以上の頸椎頸髄損傷患者33例において,受傷機転,骨傷/非骨傷の割合,損傷高位,合併損傷,治療法,入院時と退院時の麻痺(Frankel分類),治療経過について検討を行った.【結果】受傷機転は転倒が最も多かった.非骨傷例が約2/3を占め,骨傷例ではC2が多かった.合併損傷は24%に認め,特に骨傷例では半数に認めた.入院時の麻痺の程度は,Frankel A:3例,B:3例,C:7例,D:11例,E9例であった.退院時Frankel C以下の8症例では,2例が死亡し,多くの症例が全介助であった.【考察】高齢者では転倒による非骨傷例が多く,また骨傷例においては,軽微な外傷によるC2高位損傷が多く,過去の報告と同様であった.重度麻痺例では全身状態が悪化する症例もあり,慎重な全身管理が必要と思われる.
  • 島袋 全志, 我謝 猛次, 米嵩 理, 大城 義竹, 三好 晋爾, 金谷 文則
    2013 年 62 巻 3 号 p. 502-505
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    脊髄癆によるCharcot spineに対して腰仙椎後方固定術を施行し,良好な結果を得た1例を報告する.症例は51歳,男性.5年前より両下肢筋力低下を自覚し,3年前に症状が増悪したため当科を受診した.X線像でL4,5椎体の骨硬化とMRIで輝度変化を認め,脊椎炎を疑ったが,血液検査にて炎症所見を認めず陳旧性脊椎炎と診断した.その後通院を自己中断したが,両下肢痛と右下肢筋力低下が増悪したため5か月前に当科を再受診した.X線像でL5,S1の骨破壊像およびMRIでL5/S1の椎間板腔に膿瘍を疑わせる像を認め,椎間板穿刺を施行したが培養は陰性であった.血液検査で炎症所見なく血清梅毒反応陽性であることから,脊髄癆によるCharcot spineと診断した.手術は腰仙椎後方固定術(PLIF: L5/S1,PLF: L2-S)を施行した.術後両下肢痛は消失,両下肢筋力低下は改善し,JOAスコア(29点)は14点が19点に改善した.L3からS1の骨癒合が得られ,術後5年経過した現在,杖歩行可能である.
  • 上原 敏則, 粟國 敦男, 金城 健, 我謝 猛次
    2013 年 62 巻 3 号 p. 506-512
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    上位頚髄損傷では四肢麻痺に加え呼吸筋麻痺(respiratory quadriplegia)を伴い急性呼吸不全のため人工呼吸器での呼吸管理が必要となる.当医療センター開設後このような急性呼吸不全を伴う四肢麻痺の症例を8例経験した.来院時に直ちに挿管となったのが4例,そのほかは数時間後また数日後に挿管となった.2例は死亡した.これらの症例の脊髄損傷レベル,脊髄損傷程度(フランケル分類),合併損傷,など予後に影響するとおもわれる因子を調査した.死亡例の1例はC2椎体骨折で椎骨動脈損傷が疑われており,来院時より意識無く挿管となり5日後に死亡した.死亡例のもう1例は後縦靱帯骨化症を伴っており来院時意識呼吸とも安定していたが,2日後に突然心肺停止となり死亡された.環軸椎脱臼の1例は4年後の現在も人工呼吸器からの離脱無く,残りの5例は気管切開後人工呼吸器から離脱できた.これらの損傷レベルはC2/3脱臼以下で,来院時1例を除いてフランケル分類で完全麻痺のAであった.またC5/6脱臼の下位頚椎損傷も1例あった.
  • 吉岩 豊三, 宮崎 正志, 小寺 隆三, 津村 弘
    2013 年 62 巻 3 号 p. 513-516
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    脊椎癒合不全を伴わない脊髄脂肪腫は稀である.今回われわれは,脊髄脂肪腫に対して硬膜形成術を併用した手術的治療を行ったので報告する.症例は,40歳,男性.1年前から両下肢にしびれを自覚するようになり,当科初診2週間前から歩行障害が出現し,精査加療目的にて入院となった.鼠径部以下にしびれ,下肢の筋力低下と深部腱反射の亢進を認め歩行障害を呈していた.単純X線では椎弓根間距離の開大等は認めず,MRIではT10-11椎体レベルに硬膜内髄内から一部馬尾を包み込むように髄外にかけて腫瘍が存在した.T1,2共に高信号を呈しており,脂肪抑制にて抑制され,脊髄脂肪腫が考えられた.脊椎固定術(T9-L1)と椎弓切除術,さらに硬膜内層を温存して外層のみに切開を加えた硬膜形成術を併用した手術を施行した.脊髄脂肪腫に対する手術方法には,椎弓切除術や腫瘍減量術などがあるが,硬膜内層を温存した硬膜形成術の併用は有用であった.
  • 桑野 洋輔, 馬場 秀夫, 田上 敦士, 津田 圭一, 依田 周, 尾﨑 誠
    2013 年 62 巻 3 号 p. 517-523
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】今回,我々は環椎後弓に発生した骨軟骨腫の稀な1例を経験したので報告する.【症例】47歳男性,9ヶ月前より頚部から肩にかけての疼痛が出現し頚椎MRIを撮像.環椎後弓前縁正中より発生した腫瘍が,頚髄を圧迫しており精査加療目的に当科へ紹介となった.外来にて経過観察をしていたが両上肢のしびれが出現したため腫瘍切除術を行った.病理診断は骨軟骨腫であった.【考察】骨軟骨腫は原発性骨腫瘍のうちで最も発生頻度の高い良性腫瘍であり,主として骨幹端に発生し大腿骨遠位骨幹端,脛骨近位骨幹端に好発する.しかしながら脊椎発生例は比較的稀であり,特に環椎発生例は極めて稀である.通常良性腫瘍であり,神経学的異常所見を認めず大きさも変化ない場合は経過観察とすることが多いが,今回の症例では手術を行い術後症状が消失した.
  • 馬場 省次, 生田 光, 村上 剛史, 小宮 紀宏, 北村 貴弘, 仙波 英之, 志田原 哲
    2013 年 62 巻 3 号 p. 524-526
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    我々は脊髄硬膜内髄外腫瘍に対し腫瘍の局在に応じてRecapping T-saw laminoplasty(RTLP)を用いた腫瘍摘出術を選択している.今回その小経験について報告する.【対象】脊髄硬膜内髄外腫瘍に対してRTLPを施行した5例を対象とした.性別は男性3例,女性2例,手術時年齢は49~77歳(平均62.2歳)であった.手術高位はC3・4が1例,L1が2例,L2が1例,L3が1例であった.【結果】全例で術中良好な視野と操作空間が確保できた.摘出した腫瘍の病理組織学的診断は神経鞘腫3例,傍神経節腫1例,血管周皮腫1例であった.血管周皮腫以外の4例では,最終観察時まで良好な成績が維持できていた.術後3ヵ月以上経過観察可能であった4例全てで,還納椎弓は術後1年までに骨癒合が確認され,脊椎後方支持組織はほぼ完全に温存されていた.【考察】術中十分な視野が得られ,脊椎後方支持組織をほぼ完全に温存できるRTLPは脊髄硬膜内髄外腫瘍に対して有用な術式の一つと考えられた.
  • 田中 寿人, 笠原 貴紀, 児玉 香奈子
    2013 年 62 巻 3 号 p. 527-531
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】近年化膿性脊椎炎は増加傾向にあるが診断に苦慮する事がある.化膿性脊椎炎の診断が遅延した1例を報告する.【症例】77才男性.主訴は6週前からの左坐骨神経痛.XP,MRIにて終板に異常なく,L5/Sの脱出ヘルニアとL5/S椎体の骨髄浮腫を認めた.腰椎modic変性と判断し外来加療開始したが3ヶ月でdrop out.初診後6ヶ月に農作業後の腰痛にて再診.MRIでL5/S椎体の骨髄浮腫は消失していたがL5/Sの脱出ヘルニアは残存していた.1ヶ月の入院治療に改善なくMRIでL5/S椎体の骨髄浮腫の再発及び脊柱管内膿瘍を認めた.起炎菌α-Streptococcus同定後にCEZ開始.手術所見は椎間板腔から脊柱管内に脱出する炎症性繊維性肉芽組織が神経根周囲に増生していた.活動性炎症はなかった.【考察】化膿性脊椎炎は早期診断,起炎菌の同定及び早期治療開始が極めて重要であるが,診断に苦慮し診断遅延につながる事もある.早期診断には本症の認識を深めることが大切であった.
  • 森田 雄大, 黒木 浩史, 濱中 秀昭, 猪俣 尚規, 増田 寛, 帖佐 悦男
    2013 年 62 巻 3 号 p. 532-535
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】今回われわれは当初,咽後膿瘍が疑われた石灰沈着性頚長筋炎を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.【症例】39歳,男性,パイロット.頚部痛,咽頭痛を主訴に某医を受診した.頚椎MRIで椎体前面にT1WI低信号,T2WI高信号の領域を認め咽後膿瘍が疑われ当院耳鼻咽喉科紹介受診となった.咽頭穿刺を施行されたが明らかな膿瘍は認められず当科紹介となった.頚部CTで軸椎前方に石灰化像を認め,前医MRI画像と合わせ石灰沈着性頚長筋炎と診断した.NSAIDs内服と頚椎カラー固定で保存的加療を行い,発症後2週で可動域制限なく頚部痛は完全に消失した.【考察】石灰沈着性頚長筋炎は急性頚部痛,咽頭痛を主訴とし,咽後膿瘍などの感染性疾患との鑑別を要する比較的まれな疾患である.本疾患は特徴的な画像所見から診断可能であり,侵襲的処置を避けるために急性頚部痛の鑑別診断の1つとして念頭に入れておく必要がある.
  • ―立位,座位における胸腰椎alignmentを参考にして―
    神保 幸太郎, 下河邉 久雄, 秋吉 寿, 野田 明生, 吉田 史郎, 加藤田 倫宏, 坂井 健介, 田中 憲治, 吉田 健治, 後藤 琢也
    2013 年 62 巻 3 号 p. 536-538
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】胸腰椎固定術をする際にどの角度に固定するのが至適なのかについては明確な答えが無い.一般的な側臥位の正常矢状面アライメントを参考にするが個人差があり,立位,座位などによっても変化する.脱臼骨折による下肢完全対麻痺の症例など車椅子生活が主になる場合は座位生活がしやすい角度に固定するのが良いのではと考えた.正常矢状面アライメント(立位,側臥位,座位)を参考に胸腰椎固定術における至適角度について検討した.【対象】腰痛,下肢痛を主訴に一般外来を受診した15歳~49歳の患者20名のX線を撮影し検討した.脊椎骨折歴,分離症,側弯症などは除外した.【結果】胸腰椎移行部(Th 11-L2)の平均後弯角は臥位0.9°座位1.2°立位0.1°で個人差が大きかった.腰椎(L4-S1)の平均前弯角は臥位22.2°座位11.4°立位26.4°であった.立位前弯角と座位前弯角の差は平均14.9°で,胸腰椎移行部に比べると大きな可動域を認めた.
  • 湯上 正樹, 瀬井 章, 藤本 徹, 谷脇 琢也, 岡田 龍哉, 田畑 聖吾, 興梠 航, 水田 博志
    2013 年 62 巻 3 号 p. 539-542
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    症例:5歳,女児.母親が脊柱の変形に気づき,加療目的に当科初診となった.単純X線上,第1/2腰椎左側に半椎を認め,Cobb角は32°,後弯角は20°であった.先天性後側弯症の診断で,後方進入単独での半椎切除および椎弓根スクリューによる片側矯正固定術を施行した.術後のCobb角は3°,矯正率90%であり,後弯角も3°と良好な矯正が得られ,手術時間は129分,出血量は25mlであった.術後6か月の現在,明らかな矯正損失は認めておらず,その他の術後合併症も認めていない.半椎を伴った先天性後側弯症において,後方進入単独での半椎摘出および片側のみの矯正固定術は低侵襲で従来法と同等の矯正率が得られることから有用な術式である.
  • 川畑 直也, 井尻 幸成, 山元 拓哉, 石堂 康弘, 田邊 史, 棈松 昌彦, 河村 一郎, 小宮 節郎, 米 和徳
    2013 年 62 巻 3 号 p. 543-545
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    胸椎症性脊髄症に対して後方固定術を行ったので,その治療成績について検討した.対象は2007年11月から2012年7月に胸椎症性脊髄症に対し後方固定術を行った9例(男性6例,女性3例),手術時平均年齢は65.1歳であった.後縦靭帯骨化症単独,黄色靭帯骨化症単独,椎間板ヘルニア単独の症例は除外した.固定範囲はC7/T1が1例,T6/7が1例,T10/11が3例,T11/12が3例,T11-L3が1例であった.手術方法はinstrumentを用いた後方固定が7例,後方椎体間固定が2例であった.手術時間は平均211分,出血は平均372g.JOAスコアは術前5.7点が術後6.7点と改善を認め,局所後弯角は術前8.5°が術後5.6°と改善を認めた.【まとめ】胸椎症性脊髄症に対し後方固定を行い,良好な成績を得ることができ,症例によっては椎体間固定術が有効であった.
  • 市村 竜治, 出田 聡志, 三好 康広, 永田 純一, 一宮 邦訓
    2013 年 62 巻 3 号 p. 546-549
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨転子部骨折に対するshort femoral nailの術後成績不良因子となり得るガイドピンのしなりについて検討した.【方法】平成23年12月~平成24年10月までにshort femoral nailで治療した大腿骨転子部骨折のうち,ガイドピンのしなりについて検討することができた32例を対象とした.術中イメージでlag screw,またはブレードのガイドピン挿入時の動画(正面像,軸写像)を撮影し,しなりの出現率,術後整復位に与える影響を検討した.【結果】ガイドピンのしなりが生じたのは27例であった.術中,術後の整復位はしなり(+)群で変化する症例が多かった.【考察】ガイドピンのしなりをそのままにしてドリリングを施行すれば,近位骨片の転位は避けられない.しなりの出現率は意外に高いが,動画でなければ気付かないことが多く,そのまま見過ごされている可能性があるので注意を要する.
  • 塩本 喬平, 萩原 博嗣, 久我 尚之, 花田 麻須大, 水城 安尋, 志田 義輝, 近間 知尚
    2013 年 62 巻 3 号 p. 550-554
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    当院で経験した大腿骨転子部骨折術後にcut outを生じた5例について報告する.2004年4月から2012年4月にγタイプによる骨接合を行った大腿骨転子部骨折症例519例のうち術後cut outを生じた5症例(うち1例は他施設での初回手術症例)を対象とした.術前骨折型はAO分類にて,31-A1.2 1例,31-A2.1 1例,31-A2.2 2例,31-A3.1 1例であった.cut outの原因として整復不良因子が3例でラグスクリュー因子が3例で考えられた.合併症として顕著な骨粗鬆症が4例,糖尿病が1例,RAが1例認められた.cut out予防のために整復位や手術手技はもちろん術前骨折型,顕著な骨粗鬆症などの様々な要因も考慮する必要がある.
  • 中川 憲之, 井原 和彦, 島田 信治, 別府 達也, 竹下 都多夫, 佐藤 陽昨, 保利 俊雄, 石橋 正二郎
    2013 年 62 巻 3 号 p. 555-556
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    大転子骨折単独は稀とされている.初診時の単純X線で大転子のみの骨折であった20例を対象とし評価した.20例のうちMRIを16例に施行し,2例は大転子骨折のみ.14例が大腿骨転子部骨折を認めた.大転子骨折単独の報告はいくつかあるが,MRIを行っていないものが多く,実際は不顕性の大腿骨転子部骨折であった可能性もあるのではないか?
  • ―回旋予防screwを併用した症例について―
    西野 雄一朗, 土井口 祐一, 石井 孝子, 中島 武馬, 野口 智恵子, 杉山 健太郎, 増田 賢一, 宮路 剛史, 田口 勝規
    2013 年 62 巻 3 号 p. 557-561
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】我々は大腿骨転子部骨折に対して回旋予防の2nd screw(2ndS)を併用できるShort femoral nailを併用してきた.今回,2ndSを併用した症例についてX線学的検討を加えたので報告する.【対象・方法】2010年1月から2012年6月まで大腿骨転子部骨折に対してAlexa nailを施行した314股の中で2ndSを併用したのは68股で,そのうち術後6週以上フォローし得た40股を対象とした.平均観察期間は4.6ヵ月であった.検討項目は,Jensen分類,術後1週と最終観察時のLag screw(LS)と2ndSのsliding量,TAD,cut outなど合併症の有無とした.【結果】Jensen分類はII:5股,III:9股,IV:15股,V:11股であった.平均sliding量は術後1週がLS:2.5mm,2ndS:2.1mm,最終観察時がLS:4.5mm,2ndS:3.9mmであった.Jensen分類別sliding量は各群で有意差は認めず,側面像での髄内型と解剖型のsliding量も有意差は認めなかった.TADは平均15.9(8.3~23.1)mmであった.感染した1例にcut outを認めた.【まとめ】転子部骨折に対して2ndSを使用した例では過度のsliding例も少なく,良好な結果が得られた.
  • ―回旋予防screwを使用しなかった症例について―
    中島 武馬, 土井口 祐一, 石井 孝子, 西野 雄一朗, 野口 智恵子, 杉山 健太郎, 増田 賢一, 宮路 剛史, 田口 勝規
    2013 年 62 巻 3 号 p. 562-565
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨転子部骨折に対する治療で,回旋予防screwを用いていない症例の成績を調査すること.【対象と方法】当院にて2010年1月から2012年6月までにアレクサネイルを用いて骨接合術を行った314股のうち,術後6週以上フォローアップした135股を対象とした.Jensen分類による骨折型,lag screwのsliding量,術後TAD,正面および側面の術後整復位,合併症(lag screwの10mm以上のsliding,cut out,偽関節の有無)について検討した.【結果】Lag screwのsliding量は,最終観察時でJensen type I:1.1mm,II:4.8mm,III:5.6mm,IV:4.9mm,V:6.6mmであり,type Iで有意に少なかった.10mm以上のslidingを8股に認め,Jensen type II:2股,III:3股,IV:1股,V:2股であった.【考察】回旋予防screwを使用しない場合は,より正確な解剖学的整復が求められる.10mm以上のslidingは,Jensen type II~Vまで認めており,安定型の骨折にみえても過度のslidingを生じる事がある.type I,IIの明らかな安定例以外は,積極的に2nd screwを用いて回旋を防止した方がよいと考えられた.
  • 川口 耕平, 古市 格, 小河 賢司, 井上 拓馬, 久芳 昭一, 上野 雅也, 池田 倫太郎
    2013 年 62 巻 3 号 p. 566-568
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    当院では麻酔科の協力の下,抗凝固薬,抗血小板薬内服中の大腿骨近位部骨折患者においても,可能な限り腰椎麻酔下に早期手術を行っている.今回,抗凝固薬,抗血小板薬内服中の大腿骨近位部骨折手術例105例について検討を行った.【方法】2007年5月1日~2012年8月31日までに大腿骨近位部骨折で受傷後48時間内に手術を行った抗凝固薬,抗血小板薬内服患者105例と2010年5月~2011年3月31日までに受傷後48時間以内に手術を行った大腿骨近位部骨折患者70例を比較検討した.【結果】麻酔に伴う合併症は認めなかった.術中出血量,輸血量に有意差はなかったが,内服群において術後死亡例が4例あった.【考察】出血量や術後輸血量は明らかな差は認めなかった.ただし抗凝固薬,抗血小板薬内服患者は様々な疾患を合併していることが多いため,適切な周術期管理が必要と考えられるが,腰椎麻酔下の早期手術については今後も検討が必要である.
  • 千住 隆博, 栁澤 義和, 田中 孝幸, 中野 壯一郎, 野村 裕, 高野 祐護, 浦島 太郎, 倉員 市郎, 有馬 準一
    2013 年 62 巻 3 号 p. 569-574
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    概要:近年,高齢化社会が進み,人工股関節全置換術や人工骨頭置換術,髄内釘手術等の大腿骨近位部にインプラントを設置する手術が増加し,それとともにインプラント周囲に骨折を生じた報告が増加している.今回,インプラント周囲骨折の中で,大腿骨近位部にインプラントが設置された大腿骨遠位部骨折に焦点を当て,当科の治療成績について検討した.対象は2008年~2012までの9症例中,長期フォロー可能であった3症例で,全例女性,手術時年齢は平均78歳,受傷起点は全例転倒であった.手術は,Synthes社のLocking Compression Plate-Distal Femur+cable wiring systemにて行った.術後,平均47日で部分荷重より開始し,平均66日で全荷重とした.3例共,骨癒合が得られ,再骨折やプレートの破損等の合併症はなく,有効な治療法の一つと考えられた.
  • 籾井 健太, 竹内 直英, 前 隆男, 佛坂 俊輔, 川口 謙一, 佐々木 宏介, 上森 知彦, 秋穂 俊輔, 野口 康男
    2013 年 62 巻 3 号 p. 575-577
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【目的】long typeの髄内釘を用いて治療した大腿骨転子下骨折でケーブルワイヤー使用の有無による治療成績を検討すること.【対象と方法】2005年7月から2012年5月に手術を行った12症例12肢.男性4例,女性8例で,平均年齢74.7歳,ケーブルワイヤー使用5例,未使用7例であった.Seinsheimer分類はtype IIa 1例,IIb 5例,IIc 1例,IIIa 3例,IIIb 1例,IV1例.検討項目は仮骨出現時期,手術直後の患側頚体角と健側頚体角の差,健側と比較して頚体角差が5度以上の整復不良例の数とした.【結果】仮骨出現時期は30.6日/43.7日,手術直後の患側頚体角と健側頚体角の差は0.75度/4.43度,頚体角差が5度以上の整復不良例は0例/3例(ケーブル使用/未使用)であった.【考察】大腿骨転子下骨折に対しケーブルワイヤーを用いて,骨折部を直視下に整復することで,仮骨出現時期の短縮と良好な整復位を獲得することができた.ケーブルワイヤーの使用は大腿骨転子下骨折の治療において有用であると考える.
  • 岡野 博史, 中島 伸一, 佐久間 克彦, 本多 一宏, 宮本 和彦, 岡田 二郎, 岡村 直樹, 細川 浩, 井本 光次郎, 城下 卓也, ...
    2013 年 62 巻 3 号 p. 578-580
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    当院では外傷初期診療ガイドラインに準じ多発外傷患者の初期診療プロトコルを整備した.当院へ搬入された骨盤骨折合併多発外傷症例を評価し,問題点を検討した.対象期間は2009年8月より2012年7月までの3年間.AIS3以上の外傷が3箇所以上に存在する多発外傷で,骨盤骨折を合併するものを対象とした.症例数は43,平均年齢は53.5歳,ISS平均値は31.4であった.対象全体の死亡率は18.6%,不安定型骨盤骨折を伴う症例が5例,死亡率40%,P=0.026,また,腹部実質臓器損傷を伴う症例が7例,死亡率66.7%,P=0.015と不安定型骨盤骨折,腹部実質臓器損傷を伴う症例で死亡率が有意に高かった.これをもとに循環動態不安定かつFAST陽性であれば開腹手術を最優先し,不安定型骨盤骨折の合併があれば骨盤創外固定を追加し,なお循環動態が不安定であれば動脈塞栓術を追加するアルゴリズムが望ましいとの結論にいたった.
  • 岡崎 啓治, 内田 和宏, 麻生 邦一
    2013 年 62 巻 3 号 p. 581-583
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    Tumoral calcinosis(腫瘍状石灰化症)は大関節周囲に腫瘤形成性の石灰沈着を主症状とする稀な疾患である.今回我々は両殿部に広範囲に生じ,瘻孔から排液を認めた1例を経験したので報告する.症例は79才,女性.42才の頃から両殿部の石灰化を指摘されていた.3年前,左殿部の石灰沈着部の皮膚が自潰し,縫合したが創が閉鎖せず掻爬,吸引ドレーンを留置したが瘻孔を形成し瘻孔の閉鎖に長期間を要した.今回,右殿部の石灰沈着部から同様に瘻孔を形成し排液を認め,腰椎麻酔下に掻爬,石灰化巣切除,ドレーン留置を2度行ったがドレーン抜去後も瘻孔から排液を認め治療に難渋した.治療法は外科的切除が行われるが,不完全な摘出では再燃するとされている.本症例では病変が広範囲であり,全摘出が行えず部分切除に終わり,その後創治癒に長期間を要した.
  • 新井 貴之, 中島 康晴, 山本 卓明, 本村 悟朗, 大石 正信, 濱井 敏, 岩本 幸英
    2013 年 62 巻 3 号 p. 584-588
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    〔目的〕横断面における骨盤回旋は左右の閉鎖孔の形態の変化によって評価されることが多い.今回,骨盤標本を用いて回旋角度と閉鎖孔の形態変化を定量化したので報告する.〔方法〕男女の骨盤標本を用い,両上前腸骨棘と恥骨結合を結ぶ面(APP)を基準とした.骨盤前傾10度,前後傾0度,後傾10度および20度の条件下で,APPを5度ずつ回旋させて正面像を撮影し,左右の閉鎖孔の横径比を算出した.測定は3回繰り返し,その平均値を使用した.〔結果〕閉鎖孔横径比は回旋によって直線的に変化し,前後傾0度の条件では回旋1度あたり平均0.05であり,横径比が半分になる回旋角度は平均10.0度であった.また回旋によって片側閉鎖孔が見えなくなるまでの角度は平均21度であった.骨盤前傾により閉鎖孔は縦横とも小さくなり,上記角度はそれぞれ小さくなった.〔結論〕骨盤回旋のおおよその目安として閉鎖孔横径比が1:2になる角度は10度程度であった.
  • 河野 俊介, 江頭 秀一, 秋山 隆行, 塚本 正紹, 北島 将, 園畑 素樹, 堀川 悦夫, 馬渡 正明
    2013 年 62 巻 3 号 p. 589-591
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    高位脱臼股症例では,股関節の骨性支持が得られず,歩行時動揺性がみられることが多い.今回,当院で2008年以降に両側殿筋内脱臼股に対する大腿骨転子下短縮骨きり術併用人工股関節全置換術を行った15例の手術前後の歩行を3次元動作解析装置を用いて計測し,動揺性を評価した.体幹傾斜角は,術前2.0±2.3°が術後1年で0.3±2.4°と有意に減少していた.骨盤傾斜角は,矢状面が,術前10.9±5.5°が術後1年で7.0±3.9°と有意に減少していたが,冠状面方向では術前2.3±5.6°が術後1年で1.2±4.3°と有意差はなかった.殿筋内脱臼股症例では,手術により股関節の支持性が獲得でき体幹の動揺性が改善していた.また,歩行時の骨頭の上下移動に伴う骨盤前傾が手術により改善すると考えられた.3次元の動作解析により,手術前後の傾斜角,動揺性の評価が定量的に可能であった.今後,長期的な評価を経時的に行うことが必要と考えられた.
  • 岡田 文, 山口 司, 西井 章裕, 吉兼 浩一, 大江 健次郎, 仲西 知憲, 伊東 孝浩
    2013 年 62 巻 3 号 p. 592-595
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    急性発症し,炎症所見を伴う股関節痛は,化膿性関節炎のほか,特に高齢者では大腿骨近位部骨折との鑑別を要し,診断に難渋することがある.2011年9月から2012年8月までの1年間に,股関節周辺痛にて当科を受診し,血液学的に炎症所見を伴った5例(男性1例,女性4例,平均年齢68.6歳)を検討した.うち2例は体動困難にて救急搬送され,全例疼痛のため歩行障害を認めた.基礎疾患として,関節リウマチの合併を3例に認めた.全例にMRI検査を行い,4例に股関節穿刺を行った.股関節穿刺を行った4例のうち,2例にピロリン酸Ca結晶を,1例に尿酸Na結晶を認め,全例関節液培養検査は陰性であった.股関節穿刺とNSAIDs併用により痛みは軽減した.急性炎症性股関節炎の早期診断,治療に股関節穿刺は有用で,股関節には比較的少ないとされる結晶性関節炎も鑑別疾患として念頭に置く必要がある.
  • 富永 康弘, 村松 慶一, 橋本 貴弘, 瀬戸 信一朗, 田口 敏彦
    2013 年 62 巻 3 号 p. 596-598
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    肘関節周辺転移性骨腫瘍による病的骨折はその治療に難渋することが多い.今回,肘周辺病的骨折に対してDiscovery elbow systemを用いて人工肘関節置換術(以下TEA)を行った2例を報告する.症例1:61歳男性.腎癌の肘頭転移例.症例2:79歳女性.肺癌の上腕骨遠位転移例.2例ともに6カ月以上の予後が見込まれTEAを行った.当科では肘関節周辺病的骨折において,コントロール困難な疼痛や強い不安定性があり,予後が3カ月以上見込まれ手術可能な全身状態である患者に限り手術を行っている.以前までは腫瘍切除後の骨欠損に対してアドリアマイシン含有セメントを充填し内固定することで対応していたが,局所再発のため短期成績は不良であった.2010年よりDiscovery elbow systemを用いたTEAを行っており良好な短期成績が得られた.半拘束型人工肘関節は適応を選べば有用な再生手術となり得る.
  • 井上 三四郎, 菊池 直士, 宮崎 幸政, 松田 匡弘, 吉本 憲生, 中川 亮, 阿久根 広宣, 河野 徳明, 山下 清, 栗山 拓郎
    2013 年 62 巻 3 号 p. 599-602
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    要旨【はじめに】骨および軟部組織,いわゆる運動器を主病変とした悪性リンパ腫を検討した。【対象と方法】対象は10例,男性4例女性6例.年齢54~84歳,平均経過観察期間は3~19カ月.患者のカルテを元に臨床的検討を加えた.【結果】主訴は,腰背部痛が3例,麻痺が2例,股関節・大腿部痛が2例,肩痛,膝痛,足痛が各々1例ずつであった.Performance Statusは1,2,3,4の症例が,各々,2例,2例,3例,3例であった.全例に確定診断のため生検が行われていた.治療は,放射線療法が7例に,化学療法が5例に行われていた(重複あり).整形外科的手術は,2例に行われた.【考察と結果】悪性リンパ腫はもちろん血液内科疾患であるが,「運動器を主病変としている腫瘤」として,血液内科医よりも先に整形外科医のもとを訪れることは,決して稀ではない.血液内科と密に連携しながら治療に当たる必要がある.
  • 富田 雅人, 宮田 倫明, 熊谷 謙治, 平野 徹, 尾﨑 誠
    2013 年 62 巻 3 号 p. 603-606
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】当科では,切除が困難な大腿遠位部悪性腫瘍に対してrotationplasty法(以後RP)を行っている.今回その治療成績を調査したので報告する.【症例】1990年から2010年の間にRPを8例に行った.男性6例,女性2例,手術時年齢8~69歳,平均24.4歳であった.RPに至った疾患は骨肉腫6例,悪性末梢神経鞘腫術後再発1例,腫瘍用人工膝関節置換術後感染1例であった.腫瘍学的転帰は,CDF5例,NED1例,DOD2例であった.術後合併症は,骨癒合遅延と皮膚壊死を1例ずつみとめた.術後はRP用の装具を装着し全例歩行可能であった.【考察】RPは耐久性に優れ,感染に強い等の利点を有している.大腿切断と比較して,足底で体重が受けられるため荷重負荷能に優れ,幻肢痛も無く,歩行能力が優れている.一方最大の欠点は外見上の悪さである.患者の受け入れが得られれば本法は非常に優れた術式である.
  • ―オスフェリオンRとスーパーポアRの比較研究―
    瀬戸 信一朗, 村松 慶一, 橋本 貴弘, 富永 康弘, 田口 敏彦
    2013 年 62 巻 3 号 p. 607-611
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】β-TCPは新生骨で置換される人工骨でオスフェリオンRが代表的であるが,2010年より均一な気孔構造を有するスーパーポアRが販売されたので両者の臨床成績を比較検討した.【方法】当科にて手術を行った四肢良性骨腫瘍20例中,骨補填材料としてオスフェリオンRを使用した11例(O群)と,スーパーポアRを使用した9例(S群)を比較した.【結果】アレルギーや局所刺激症状,骨折,感染,再発は認めなかった.S群で踵骨内脂肪腫の1例がCRPSとなり,疼痛消失まで術後10か月を要した.β-TCPの占有面積はO群は平均73.6日で50%となりリモデリング完了は平均160日であった.S群は,平均74.4日で50%となりリモデリング完了は経過観察中の2例を除けば115日であった.【考察】近年発売されたスーパーポアRの臨床成績報告は渉猟しえなかった.両群とも良好な治療成績で検討項目に有意差を認めなかった.
  • 興梠 航, 佐藤 広生, 末吉 貴直, 岡 潔, 薬師寺 俊剛, 水田 博志
    2013 年 62 巻 3 号 p. 612-615
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    骨巨細胞腫と腱鞘巨細胞腫を合併した1例を経験したので報告する.症例は49歳,女性.平成17年10月,右第4趾の腫瘤を主訴に近医を受診し,腫瘍性病変が疑われ当科紹介となった.右第4趾背側に径15×10mmの弾性軟,可動性不良な腫瘤を触知し,MRI検査にて腱鞘巨細胞腫が疑われたため,腫瘍摘出術を施行した.術後病理診断は腱鞘巨細胞腫であった.術後2ヶ月より右膝痛が出現し,画像検査にて右脛骨近位部に骨巨細胞腫が疑われたため,術中迅速病理検査で確認し,掻爬および骨移植術を施行した.術後病理診断も骨巨細胞腫であった.術後2年で骨巨細胞腫の局所再発を認め,再手術を施行した.術後4年で骨巨細胞腫の肺転移を認め,右肺部分切除術を施行した.現在,術後6年が経過し,新たな再発,転移は認めていない.骨巨細胞腫と腱鞘巨細胞腫の合併例は,我々が渉猟しえた限り国内報告の1例のみであり,非常にまれであると考えられた.
  • 原 正光, 田山 尚久, 香月 一朗, 藤田 秀一, 里村 匡敏, 末永 賢也, 田中 孝明, 川本 泰作
    2013 年 62 巻 3 号 p. 616-619
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】色素性絨毛結節性滑膜炎(以下PVS)は稀な疾患である.股関節に巨大結節を形成したPVSの1例を経験したので報告する.【症例】35歳女性.8年前より,特に誘因なく右股関節痛が出現.自宅で経過を見ていたが,1週間前に他医を受診し,単純X線像にて右股関節破壊を認め,当院紹介受診した.MRIで右股関節に多発する腫瘤性病変を認め,右大転子背側には手拳大の巨大な腫瘤性病変を認めた.腫瘤切除+右股人工関節全置換術を施行した.術中に摘出した腫瘤は9×8.6×2.5cm大であり,病理診断では滑膜にヘモジデリン沈着を認め,PVSと診断した.術後3年時点では再発なく経過良好である.【考察】関節破壊が高度であり,関節温存は患者のADLの面からも困難であった.股関節PVSは早期診断が重要であり,原因不明の股関節痛を有する若年者における鑑別診断として股関節PVSを常に念頭に置くことが必要である.
  • 楊 拓也, 岡 潔, 末吉 貴直, 佐藤 広生, 薬師寺 俊剛, 水田 博志
    2013 年 62 巻 3 号 p. 620-622
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    われわれは左環指に多発した腱鞘巨細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は35歳女性である.平成22年5月頃,左環指に腫瘤が出現したため近医を受診し,経過観察されていた.その後,平成24年3月に同指に新たな腫瘤が出現したため当科を紹介された.MRIでは左環指に3カ所,T1強調画像にて低信号,T2強調画像にて低信号~等信号を呈し,Gd造影画像にて増強効果を有する病変を認めた.辺縁切除を施行し,病理組織学的検査では腱鞘巨細胞腫の診断であった.我々が渉猟しえた限りでは,腱鞘巨細胞腫多発例の報告は27例であり,そのうち同指内に非連続性に多発した症例は9例であった.さらに,病変が同指に3箇所以上発生した症例は3例のみであり,本症例は稀な例であると考えられた.
  • 大塚 記史, 坂本 武郎, 関本 朝久, 渡邊 信二, 濱田 浩朗, 榮 建文, 池尻 洋史, 中村 嘉宏, 小牧 亘, 舩元 太郎, 梅崎 ...
    2013 年 62 巻 3 号 p. 623-625
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    血管腫・血管奇形は外科的切除を行っても再発率が高く経過観察されることも多い.そのため治療を要する場合,侵襲の少ない硬化療法を第一選択とすることが増えてきている.今回われわれは小児の足底部に発生した血管奇形に対して硬化療法を行ったあと,症状が残存するために切除術に至った一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は6歳の男児で,主訴は右足底部痛である.4歳頃より跛行が出現し,その数ヶ月後より右足底部の腫瘤を自覚,歩行時の疼痛が出現した.右足底部に軟部腫瘤を認め,精査の結果,血管奇形が疑われた.硬化療法を行ったが歩行時の疼痛が持続したため単純摘出術を施行した.術後,疼痛は消失し歩容の改善を認めた.術後6ヶ月のエコー上,再発は認められなかった.硬化療法は低流量の血管奇形に対する治療法として有用だが,症状によっては切除術が必要となることがある.
  • 野口 幸志, 副島 崇, 金澤 知之進, 田渕 幸祐, 永田 見生, 志波 直人
    2013 年 62 巻 3 号 p. 626-630
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【症例】47歳女性.主訴は左後足部痛.42歳時に三角骨障害に対し,近医でopen法による摘出術を受ける.その後も疼痛残存し,2011年になり疼痛増強.近医で足底板やブロック注射による保存療法を受けるも改善なく,同年6月,当院紹介となった.診察所見は後距踵関節内側に沿った圧痛と踵骨を内外反させると疼痛を認めた.JSSF scaleは57点であった.単純X線像,CT像にて後距踵関節裂隙の狭小化を認めた.保存療法に抵抗したため,後足部内視鏡下に距骨下関節固定術を施行した.術後は4週間のギプス固定後,部分荷重歩行開始し,術後8週で全荷重歩行,術後12週で骨癒合が得られた.術後1年の現在JSSF scaleは86点と改善した.【考察】近年,鏡視下距骨下関節固定術の報告が散見される.従来より行なわれてきた外側アプローチによるopen法と比べ,skin troubleや神経障害,術後の疼痛が少なく,また,骨癒合までの期間が短縮され,かつ癒合率が高い点で優れていると思われた.
  • 渡邉 航之助, 日高 信道, 原 真一郎, 牧野 佳朗
    2013 年 62 巻 3 号 p. 631-635
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/11/26
    ジャーナル フリー
    【はじめに】足関節果部骨折は日常よくみられる外傷であるが,その骨折が偽関節となり歩行困難となるのは稀である.今回我々は,外傷後足関節内果偽関節に距骨圧潰をきたした症例を経験したので報告する.【症例】72歳女性.2010年9月,左足関節を捻り受傷.近医受診し,足関節捻挫の診断で保存的に治療されるも疼痛増悪し,同年12月,他院受診.陳旧性の足関節内果骨折の診断であったが再び保存的治療されていた.その後も疼痛および歩行障害続くため,翌年2月,当院初診.画像所見にて足関節内果偽関節および距骨圧潰を伴う関節破壊を認めたため足関節固定術と強固な補強目的としてイリザロフ創外固定器を併用し治療を行った.術後,足関節の疼痛は消失し,経過良好な結果が得られたので若干の考察を加え報告する.
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