日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
55 巻, 11 号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
  • 安富 正幸
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2721-2725
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 山下 晃徳, 吉本 賢隆, 岩瀬 拓士, 渡辺 進, 霞 富士雄
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2726-2731
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは嚢胞内乳癌の臨床病理学的特徴をあきらかにする目的で,嚢胞内乳癌と嚢胞内乳頭腫の鑑別診断の可能性,嚢胞内乳癌の嚢胞周囲の乳管内進展を含めた病理組織学的特徴について検討した.
    嚢胞内乳癌と嚢胞内乳頭腫との鑑別の可能性は,嚢胞内乳癌31例,嚢胞内乳頭腫23例を年齢,腫瘍径,超音波像などについて比較してみた.嚢胞内乳癌の乳管内進展については, 5mm幅の全割病理組織切片を作成して,癌の広がりをマッピングした.
    嚢胞内乳癌は嚢胞内乳頭腫に比べ高齢者に多く, 60歳以上の嚢胞内腫瘍は癌である場合が多かった.また超音波像での両者の鑑別には,嚢胞内の腫瘤の辺縁の形状が大切で,辺縁の不整なものは癌に多いことが分かった.
    また嚢胞内乳癌は非浸潤癌が多く,腋窩リンパ節への転移も少ないが,乳管内の進展についてみると,約4割の症例が嚢胞壁より2cm以上乳管内を進展していた.
  • 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 四方 裕夫, 三井 法真, 松浦 雄一郎
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2732-2736
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近6年3カ月間に経験した真性弓部大動脈瘤は18例であった.内訳は動脈硬化性17例,梅毒性1例であった. 18例中2例(11%)は破裂瘤であった.手術補助手段として用いたのは遠心ポンプによる左心バイパス法(LHB) 4例,逆行性脳潅流法(RCP) 5例,選択的脳潅流法(SCP) 9例であった. LHBは左鎖骨下動脈を含みそれより遠位側大動脈に瘤が存在する症例に,左総頸動脈との間で大動脈を遮断して用いた.手術死亡例はなかったが,脳梗塞2例を認め,うち1例が入院死した. RCPは限局型の嚢状瘤や破裂緊急例に用いた.遠位弓部例には,循環停止を併用して左開胸のみで,無遮断下に手術を行った. SCPは弓部全体に病変に及んだ症例に用いた. 9例中6例で弓部全置換を行い2例を失った.真性瘤の補助手段を瘤の広がり,緊急性で使い分けたが,現在はSCP法を主に用いるようになった.
  • 松島 伸治, 田中 茂夫, 松山 謙, 家所 良夫, 原口 秀司, 増田 栄, 鈴木 成治, 小泉 潔, 五味渕 誠, 日置 正文, 池下 ...
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2737-2741
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    自然気胸463例について臨床的検討を行った.性別は男性420例,女性43例で男女比は9.8:1,年齢は13歳から92歳までであった.患側の左右別頻度は右側169例,左側236例,両側53例で,左側例に多く発生した.治療法としては手術280例(胸腔鏡下治療24例),ドレナージ144例,胸膜癒着法17例,穿刺脱気7例,経過観察15例であった.自然気胸の初回発症非手術例の1年以内再発率は60.1%と高率で,積極的な外科治療が必要である.開胸術後の再発率は2.5%であった.両側気胸異時発生例の場合, 1側手術後の対側発生率は31.7%であり,両側1期的手術を行うことが望ましい.自然気胸に対する胸腔鏡下手術は今や標準的術式になりつつあり, performance statusの低下した破裂部位の明らかな高齢者気胸例にとっては有用な術式であると考えられる.
  • 奥芝 俊一, 加藤 紘之, 金谷 聡一郎, 下沢 英二, 高橋 利幸, 道家 充
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2742-2748
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1965~1991年の26年間に26例の小児門脈圧亢進症,食道胃静脈瘤を経験し,遠隔予後からみた治療法の評価を試みた.病因の多くは,肝外門脈閉塞症であった.対象となった26例の治療法は,のべ45件施行され,その内訳は脾摘10件,直達手術16件,シャント手術15件,硬化療法3件であった.術後経過をみると,シャント手術は直達術,硬化療法により永続的止血効果の点では優れていた.シャント手術群の遠隔期には門脈血の逸脱に起因する肝障害の発症が懸念されるが, 10~20数年経過した症例でも高度なものは認めなかった.選択的シャント手術の1例は術後経過良好で,小児においても応用可能であり,年齢と病態によっては,今後考慮すべき術式であると考える.
  • 河村 正敏, 新井 一成, 佐藤 徹, 津鳥 秀史, 横川 京児, 福島 元彦, 村上 雅彦, 角田 明良, 石井 博, 草野 満夫, 塩川 ...
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2749-2754
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1956年から1990年までの教室における胃癌手術症例2,169例中単発切除例1,751例を年代別に4期に分け時代的変化を検討した.目立つことは早期癌の増加であり, 9.2%から40.8%に増加していた.宿主要因としては年齢の高齢化がみられ, 35年間で約9歳高齢化していた.形態学的には,占居部位ではC領域,大鸞側の癌が増加し,肉眼型では,早期癌でIIa型, IIc型の増加, III型を伴う形態の減少,進行癌で5型の増加, 4型の微増, 2型の減少がみられ,組織型ではtub2の増加, papの減少がみられた.胃癌の進展程度は早期の方向ヘシフトしていたが, stage IV症例は近年増加の傾向がみられた.治療成績はstage I, II, IIIで向上がみられたが, stage IVではいまだ5年生存率は10%以下と低率であった.治療方法の変遷では,リンパ節郭清はR2手術が標準術式として行われるようになり,合併切除も増加した.今後の課題は,個々の症例に適した治療方法を選択して行うことである.
  • 池田 正孝, 龍田 眞行, 里見 隆, 木村 文彦, 奥山 正樹, 山田 晃正, 石川 恵一郎, 星 脩, 川崎 高俊
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2755-2763
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂炎に対する超音波検査の有用性を検討するため,臨床的に虫垂炎を疑い超音波検査を施行した312例に対し,描出虫垂の筋層に注目した虫垂炎の病期判定基準を定めた.さらに蜂巣炎性,壊疽性虫垂の描出と補助診断項目(腹水,盲腸炎,膿瘍形成疑い,糞石の描出)を加えた手術適応基準を定めprospective studyを行った.その結果虫垂炎に対する超音波診断と病期判定基準のoverall accuracy rateはそれぞれ95.8%, 82.6%であった.手術適応基準のsensitivityは96.3%, specificityは93.5%, overall accuracy rateは94.2%であり,以上より虫垂炎に対する超音波検査の有用性が認められた.術前診断カルタ性4例と原因不明腹膜炎1例に後日手術を要し,その内小児3症例に腹膜炎を合併していたが,成人例では認めなかった.カタル性でも臨床所見,超音波検査の経時的な観察が必要であり,特に小児例においては早期手術の必要な症例があると考えられた.
  • 増子 佳弘, 波江野 力, 東 常視, 高橋 典彦, 後藤田 昭彦, 大江 成博, 高橋 雅俊, 長谷川 紀光, 内野 純一
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2764-2769
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    結腸癌の予後推測因子を解析するために, 1977年から1990年までに切除された結腸単発進行癌を対象として, Kaplan-Meier法による累積5年生存率(5生率)に関与する臨床病理学的因子を比較検討した.臨床的因子として性・年齢・Hb値・CEA値,病理学的因子としては大腸癌取り扱い規約の諸項目を選択した.
    その結果,臨床的因子としてはCEA値(p<0.005),肉眼病理学的因子としては肉眼型, N・S因子およびDukes分類,組織病理学的因子としては癌の深達度, n, v因子がそれぞれ5生率と有意に強く関連していた.また,癌存在部位を左右に分けたところ,左側結腸癌の5生率が有意(p<0.01)に良好であった.
    以上の結果は,結腸癌の予後に癌の浸潤様式や局在部位の相違が深く関係していることを示している.すなわち,診断および癌細胞の生物学的行動に関し解決すべき問題が残されている.
  • 山村 卓也, 及川 博, 松崎 弘明, 菊池 賢治, 花井 彰, 瀬尾 圭亮, 赤石 治, 小笹 貴夫, 山口 晋
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2770-2775
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    55例の大腸癌治癒切除後肝転移再発症例を対象としてCoxの比例ハザードモデルによる多変量解析により,どの臨床病理学的因子が生存期間に強く関係するかを検討した.初回手術時からの生存期間に最も強く影響する因子は無再発期間であった.再発発見時からでは治療法であった.初回手術時および再発発見時からの予後を無再発期間の長さ別に検討すると無再発期間が2年以上の症例が有意に予後良好であった.再発発見時からの予後を治療法別に検討すると肝切除が有意に予後良好であった.また無再発期間が長い症例ほど肝切除率が高かった.初回手術からの無再発期間に最も強く影響する因子は血清CEA値であり,初回手術時からの無再発期間を血清CEA値別に検討すると10ng/ml以上の症例の無再発率が最も不良であった.以上より大腸癌治癒切除後の無再発期間の長さが肝転移再発症例の予後につよく関係すると思われた.
  • 原 均, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 森田 真照, 石橋 孝嗣, 谷村 雅一, 秋元 寛, 仁木 正己, 奥田 準二
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2776-2782
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症例を15歳以上の成人群(22例), 15歳未満の小児群(20例)にわけ,切除術式,再建術式別術後胆管炎の発生頻度さらに空腸間置術後における重症術後胆管炎の発生機序につき検討した.
    1.再建術式は,成人群ではRoux-en-Y法 (45%),空腸間置術 (36%) が多く,小児群では胆管十二指腸吻合術 (75%) が多かった.
    2.術後胆管炎発生率は,成人群 (27.2%) が小児群 (5%) よりも高く,かつ成人例で重症例を認めた.
    3.成人の重症胆管炎例は肝内胆管拡張(戸谷IVA)に対し空腸間置術を施行した2症例であり,このような症例に対する空腸問置術は禁忌と考えられた.
    4.胆道・消化管シンチグラムの検討より,空腸間置術後の術後重症胆管炎の発生機序は肝内胆汁の欝滞と間置空腸脚内における胆汁欝滞の両者が関与するものと考えられた.
  • 正木 久男, 勝村 達喜, 藤原 巍, 土光 荘六, 村上 泰治, 吉田 浩, 田淵 篤, 石田 敦久, 菊川 大樹
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2783-2787
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全に対する透析療法の進歩とともに長期維持透析患者が著しく増加し,それにともない心血管病変に対する手術も散見され始めているが,末梢動脈病変に関する報告は少なく,しかも外科的手技など多くの問題点を有している.当教室で経験した慢性透析患者の下肢の閉塞性動脈硬化症9例の外科治療成績につき検討を加え以下の結果を得た.
    1.本症例は動脈の著明な石灰化を伴うため, A. P. I.は必ずしも下肢の虚血程度を反映しない.
    2.手術に際しては術前造影検査と共に下肢の単純レントゲン写真にて動脈の石灰化の程度を十分に検討し,術式の選択,吻合部位の決定,動脈の遮断方法や縫合の工夫等の対策が重要である.
  • 牧野 信也, 羽鳥 信郎, 吉津 博, 竹村 俊哉, 丸井 努, 川上 務, 芳賀 佳之, 田中 勧, 鈴木 洋司, 竹村 譲, 小林 賢, ...
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2788-2793
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは腹部大動脈Y型人工血管置換術後に発症した輸血後移植片対宿主病(GVHD)の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は, 84歳男性.主訴は,下腹部痛.腹部大動脈瘤切迫破裂と診断し,直ちに腹部大動脈Y型人工血管置換術を施行した.術中出血量は1,487mlで,新鮮血5単位・保存血5単位・新鮮凍結血漿8単位を各々術中に輸血した.術後経過は良好であったが,術後第8日目に発熱・発疹・白血球数低下が出現した.輸血後GVHDと診断したが,諸治療に反応せず,術後第14日目に永眠された.
    現在,輸血後GVHDには有効な治療手段がなく,発症するとほぼ全例が死亡する.その予防には,輸血血液の放射線照射が有効であるため,採血後に放射線照射処理を行うことができる全国的な体制の確立が早急に望まれる.
  • 山口 栄一郎, 南 寛行, 窪田 芙佐雄, 石川 啓, 梶原 啓司, 西田 卓弘, 糸柳 則昭, 中村 譲
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2794-2797
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,高Ca血症による意識障害を主訴とし外科的治療が奏効した原発性上皮小体機能亢進症の1例を経験した.
    症例は68歳女性.意識障害(高Ca血症: 15.1mg/dl)にて発症.症状,高PTH血症より,上皮小体機能亢進症を疑われるもCT, echo等,画像上局在がつかめずわれわれを苦慮させた.保存的にCa洗い出し法を施行するも限界があり,外科的検索に踏み切った.腫瘍は甲状腺内に一部埋没した形で存在し,病理学的には, Chief cell adenomaであった.術後経過は良好にて術後2日目にCaは正常域に復帰し術後21日目に退院した.本症例は原発性上皮小体機能亢進症に対する外科的治療の有用性を改めて示した症例と思われた.
  • 龍田 眞行, 奥山 正樹, 山田 晃正, 木村 文彦, 石田 秀之, 桝谷 誠三, 石川 恵一郎, 川崎 高俊, 里見 隆, 西 敏夫, 川 ...
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2798-2802
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    68歳女性, 30年前に甲状腺腫で右葉切除術を施行.病理組織では濾胞腺腫だった.今回,偶然胸部X線で両側多発性の大結節性の異常陰影を指摘された.頸部に腫大した甲状腺を触知したが,悪性所見を得られず.肺穿刺針生検で甲状腺癌の肺転移を疑ったため残存甲状腺を全摘したが,肉眼的にも病理組織でも濾胞腺腫と診断された.その後,胸骨正中切開および左第IV肋間開胸下に両側肺部分切除術を施行.病理組織検査より高分化型甲状腺濾胞癌の肺転移と診断した.術後経過は良好であった.高齢者の分化型甲状腺癌肺転移の予後は悪く,特に大結節性転移はRI療法もあまり有効でない.本症例は他臓器に遠隔転移がなく,肺転移巣も外科的に切除可能であり,以後のRI療法をさらに有効にする可能性からも肺転移巣切除の意義を認めた.
  • 水沼 和之, 杉野 圭三, 武市 宣雄, 岡本 英樹, 春田 るみ, 平田 雄三, 杉 桂二, 片岡 健, 丸林 誠二, 土肥 雪彦
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2803-2806
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    巨大に発育した甲状腺乳頭癌を2例経験したので報告する.症例1は81歳女性で腫瘍径12×10cm,腫瘍内に約300mlの血液を認め,左内頸静脈,左迷走神経,前頸筋,胸鎖乳突筋に浸潤し発育していた. (JT4, N1, EX2, M0, StageIII).甲状腺左葉切除,リンパ節摘出,左内頸静脈,左迷走神経合併切除施行(R0).症例2は62歳女性,腫瘍は約15cmの大きさで右内頸静脈を圧迫し,右反回神経,前頸筋に浸潤していた(JT4, N3, EX2, M0, StageIII).甲状腺全摘術,リンパ節郭清を行った(R1).甲状腺乳頭癌は徐々に発育するため巨大化するまで放置する例は稀である.年齢, QOLなどを考慮し,手術法を選択する必要があると思われる.
  • 正木 裕児, 佐々木 丈二, 瀬山 厚司, 山本 達人, 長谷川 博康, 宮下 洋, 舘林 欣一郎
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2807-2810
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    葉状腫瘍は乳腺特有の線維上皮性腫瘍で,なかでも悪性葉状腫瘍は稀な疾患である.今回われわれは,病悩期間が30年にわたった悪性葉状腫瘍の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は44歳女性, 30年前より左乳房に腫瘤を認めていたが,最近になり急激に増大してきたため,当院を受診した.穿刺吸引細胞診にて,良悪性境界の葉状腫瘍と診断されたため,単純乳房切断術および腋窩リンパ節郭清術を施行した.病理組織学的に悪性葉状腫瘍の診断を得たので,術後化学療法を施行した.葉状腫瘍は形態学的,組織学的,生物学的多様性を有するため,その診断と治療には慎重な検討が必要である.
  • 上松 俊夫, 北村 宏, 岩瀬 正紀, 中村 光男, 山下 公裕, 小倉 廣之, 小栗 孟
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2811-2814
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に合併した乳癌の1例を経験したので報告する.症例は48歳の女性. 1年前から気づいていた右乳房CDE領域の腫瘤を主訴として来院した.腫瘍の大きさは, 3.5cm×2.5cmで,生検にて乳癌と診断された.術前病期はStage II (T2a, N0, M0) であった.なお全身の皮膚に多発するNeurofibromaとCafe au lait spotsを認めた.手術は非定型的乳房切除術 (Br+Ax) を施行した.病理検査では,腫瘍は乳頭腺管癌でリンパ節転移は認めなかった.皮膚の腫瘍はNeurofibromaで,悪性像は認めなかった.
    von Recklinghausen病には非上皮悪性腫瘍の合併がしばしば認められるが,上皮性悪性腫瘍の合併は少なく,本邦での乳癌合併例の報告は,自験例を含め18例のみであった. Stage Iの症例は少なく, von Recklinghausen病では皮膚病変と間違えられ乳癌の発見が遅れがちなので注意が必要であると考えられた.
  • 木村 豊, 宮内 啓輔, 平尾 素宏, 宮田 博志, 青木 太郎, 請井 敏定, 上村 佳央, 寺島 毅, 金子 正, 水谷 澄夫, 岡川 ...
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2815-2818
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    副乳癌は乳癌の中でも稀な疾患である.今回,右腋窩に発生した副乳癌を経験したので報告する.
    症例は52歳女性で,右腋窩の無痛性腫瘤を近医にて摘出され,乳癌の転移として当院に紹介された.乳腺に腫瘤はなく,近医での摘出標本を検討すると,リンパ構造は認めず正常乳管を認めたため副乳癌と診断した.前回腫瘤摘出部も含めて右腋窩郭清術を行った.病理組織学的所見はscirrhous carcinomaで,リンパ節はIa+Ib群に2個転移を認め,リンパ節転移を併った副乳癌であった.術後5'DFUR, Tamoxifenの投与を行い, 2年8カ月経過し再発は認めていない.
  • 金岡 祐司, 田中 紀章, 小林 元壮, 仁科 拓也, 後藤 精俊, 柏谷 昌昭, 竹内 仁司, 荒田 敦, 小長 英二
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2819-2823
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道アカラジアは食道癌発生の危険因子とされている.以前は進行癌が多く,その予後も不良とされていた.しかし,近年食道アカラジアが食道癌発生の危険因子であることが定説となり,切除例の報告が増加している.今回われわれは食道アカラジア術後に合併した早期食道癌(ep癌)の1例を経験した.症例は62歳,女性で嚥下困難等の症状が出現した20年後に食道アカラジアと診断され粘膜外食道噴門筋切開術をうけた.その後自覚症状は改善されていたが定期的内視鏡検査により術後2年目に不整発赤面を発見され食道癌と診断された.手術は食道亜全摘を行い,胃管を用いて胸骨後経路で再建した.病理ではep, n (-), stage 0であった.術後経過は順調で術後3年9カ月経過し再発等を認めていない.食道アカラジアに合併した早期食道癌は非常に稀であり,食道アカラジア術後の定期的内視鏡検査により早期に発見できたことが良好な転機をとった最大の要因と思われた.
  • 伴登 宏行, 川上 卓久, 横山 浩一, 龍沢 泰彦, 八木 真悟, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2824-2827
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性,下痢,嘔吐,体重減少を主訴に当院に入院した.既往歴では胃潰瘍の診断で抗潰瘍剤を内服したことが2回あった.胃透視検査では,胃角後壁に隆起があり,ここから胃外へ造影剤が漏れ,結腸が造影された.胃内視鏡検査では,結腸粘膜が突出しており,開口部より内視鏡を挿入すると,結腸内腔が観察された.注腸検査では造影剤が横行結腸から胃内へ流入するのが観察された.以上より胃潰瘍が横行結腸に穿通し,胃結腸瘻を形成したと診断し,手術を行った.術中所見では横行結腸間膜は短縮し,横行結腸は拡張した胃の後方に入り込み,胃角後壁で胃と癒着していた.広範囲胃切除,横行結腸部分切除を行った.切除標本では胃角前壁に開放性潰瘍,胃角後壁に突出した結腸粘膜があり,両者を結んで線状潰瘍瘢痕が認められた.胃結腸瘻は悪性腫瘍や胃空腸吻合術後の合併症としての報告は多いが,良性胃潰瘍を原因とした報告は少ない.
  • 木村 哲也, 堀内 哲也, 森岡 浩一, 千葉 幸夫, 村岡 隆介, 今村 好章, 斉藤 孝
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2828-2831
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃原発の神経原性腫瘍はまれであるが,今回,胃壁外性に発育する巨大な悪性神経鞘腫の1例を経験した.患者は72歳女性で,上気道炎症状を主訴に受診した際,巨大な腹部腫瘤を発見された.入院時の血液・生化学検査はCA12-5が110U/mlと軽度の高値をとった以外は正常であった.画像検査では,腹腔内に隔壁を有する低密度部分と高密度部分からなるの巨大な腫瘍を認めたが,確定診断は困難であった.開腹所見では腫瘍は,嚢腫様,表面平滑,小児頭大で胃体部大轡側の漿膜の一部より胃外性に発生しており,胃を模状切除し,腫瘍を摘出した.摘出した腫瘤は,15×12×11cmで950g重で,免疫学組織学的に, S-100蛋白, Vimentinが弱陽性, Desmin染色が陰性で,神経原性腫瘍,とくに悪性神経鞘腫が疑われた.
  • 光定 誠, 迫 順一, 篠原 浩一, 島貫 公義, 宮田 道夫, 山田 茂樹
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2832-2836
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    残胃吻合部のgastritis cystica polyposaによる隆起性病変内に早期胃癌を合併した1症例を経験したので報告する.症例は54歳,男性. 26年前に胃潰瘍にて胃切除術を受けている.貧血を主訴として来院.胃内視鏡にて残胃吻合部の隆起性病変を指摘され,生検により中分化型管状腺癌と診断された.残胃全摘術を施行し術後経過は順調であった.組織学的には隆起性病変の主体はgastritis cystica polyposaからなり,その表層の一部に粘膜内に限局する早期胃癌病変が存在し脈管侵襲,リンパ節転移は認めなかった.
    本邦におけるgastritis cystica polyposaと合併した残胃癌の報告は26例と少なく,これらの臨床病理学的特徴について検討した.
  • 今治 玲助, 石田 数逸, 須田 学, 諸国 眞太郎, 河島 浩二, 三原 康生
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2837-2840
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は29歳男性.血便の精査中,胃透視,内視鏡検査にて胃体部を中心にBorr IV型様病変あり生検にて扁平上皮癌と診断し胃全摘,リンパ節郭清術を施行した.病理組織学的所見では,噴門部の一部を除いて胃底部から体部は異所性扁平上皮組織により占められ,その中に扁平上皮癌が認められた.腺癌組織の混在は認めなかった.胃癌取扱い規約による特殊型の扁平上皮癌は,腺癌が扁平上皮化生したとする説が広く支持されているが,本症例では,胃内異所性扁平上皮組織の癌化と考えられた.
  • 三谷 眞己, 杉浦 正彦, 近藤 薫
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2841-2844
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸重積症の誘因となったS状結腸アニサキス症の1例を経験したので報告する,症例は66歳男性,イカの塩辛を生食後数時間で下腹部疝痛が出現し来院した.透視下ガストログラフィンの注腸にて腸重積を整復後に大腸内視鏡検査を施行したところ, S状結腸に発赤,腫張した粘膜におおわれた隆起性病変と縦走する長さ2cmほどの潰瘍を散在性に認めた.さらに,この付近の粘膜に穿入したアニサキスを認めたので生検鉗子にてこれを採取した.その後,腹部症状は軽快したため3日後に退院となった.以後再発なく, 3週間後に施行した大腸内視鏡検査では,異常所見を認めなかった.
    腸重積症において,詳しく問診することはもとより,大腸内視鏡検査により得られる情報は豊富であり,治療法の選択をするうえでも非常に重要であるとおもわれた.
  • 斉藤 肇, 鈴木 博, 林 征洋, 町田 彰男, 丸森 健司, 三国 和雄, 河村 正敏, 草野 満夫
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2845-2849
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室はそれ自体無症状であるが,臨床的には,何等かの合併症を呈したり,あるいは開腹時偶然発見され,それと診断されることがほとんどで,術前診断がなされるものは少ない.また,合併症の中の異物による穿孔例は少なく,とくに魚骨による穿孔例は本邦では非常に稀とされている.今回われわれは,本症の1例を経験したので,本邦報告例5例とともに若干の考察を加え報告する.症例は69歳の男性で,穿孔性虫垂炎の診断のもとに開腹した.しかし予想に反し,異物によるMeckel憩室穿孔と判明した.異物は長さ1.7cmの魚骨(鯖)で,この鋭利な一端が憩室を穿破していた.手術は憩室の撰状切除を行った.病理組織学的には,憩室は真性憩室で,膵組織の迷入も認められた.
  • 粟野 友太, 奥山 和明, 小出 義雄, 木下 弘寿, 石島 秀紀, 舟波 裕, 松下 一之, 浦島 哲郎, 磯野 可一
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2850-2853
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性びまん浸潤型大腸癌は比較的稀な疾患であり,その予後は極めて不良とされている.最近,病巣部の狭窄が急速に進展した1例を経験したので,これまでの教室例も合わせ,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は55歳,男性.約1カ月間の便秘と肛門部痛を主訴に当科を受診する.注腸造影にて長さ3cmの狭窄を認めびまん浸潤型直腸癌の診断を得たが,大腸鏡を施行した際,10日前には病変部を通過した示指が直腸内に挿入できなかった.術中肉眼所見では絶対治癒切除と判断したが,ミクロではew+であり,絶対的非治癒切除だった.
    術後は5'DFURの投与を続けており, 3カ月目の現在再発の兆候なく健在である.
  • 伏田 幸夫, 菅 敏彦, 秋本 龍一
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2854-2858
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Cronkhite-Canada症候群に胃癌を合併し,胃癌切除後ステロイド投与によりポリポーシスの減少および栄養状態の改善を認めた症例を経験したので報告する.症例は54歳,男性, 1日4, 5回の下痢と脱毛を主訴として来院. Cronkhite-Canada症候群以外にも胃癌を合併しており,胃全摘術を施行した.術後も下痢,低蛋白血症をともなう大腸ポリポーシスが存在し,ステロイド療法を開始した.投与開始後下痢は消失し血清蛋白も徐々に上昇し,大腸ポリポーシスもほとんど消失した.また,同時に存在した高CEA血症も病態の改善とともに減少した.おそらく大腸癌と同様,大腸粘膜の異常によりCEAを管腔へ遊離できないためと考えられた.現在ステロイド投与を中止して半年以上経過しているが再発の兆候は認められない.
  • 自験例および本邦報告45例の検討
    中村 達也, 村尾 佳則, 西村 章, 植田 史朗, 前田 裕仁, 野阪 善雅, 田伏 久之, 宮本 誠司
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2859-2864
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝門脈内ガス血症を呈した広範囲腸管壊死の2例を経験し, 1例を失い, 1例を救命しえた.自験例および本邦報告45例に検討を加えた.
    症例1は, 35歳,男性.腹痛を主訴にショック状態で搬入され,緊急手術を行うが上腸間膜動脈血栓症にて切除,再建は不可能と判断した.第1病日に死亡した.
    症例2は, 44歳,女性.汎発性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.上腸間膜動脈血栓症にて広範囲腸管切除を施行し救命しえた.
    肝門脈内ガス血症は予後不良な病態として知られており,消化管の粘膜障害・消化管の内圧元進・ガス産生菌の感染などが関与するとされている.ショックを伴う重篤な臨床経過を示すことが多く,敗血症徴候の一つとしてとらえることが重要である.救命率の向上には腸管壊死の有無を早期に診断することが重要で,腸管壊死例ではショックといえども手術以外の救命手段はない.
  • 澤井 勉, 宗田 滋夫, 吉川 幸伸, 奥野 慎一郎, 中島 清一, 栗原 陽次郎
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2865-2868
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性腸間膜動脈閉塞症は早期診断が困難であり,手術時に大量腸切除が必要なことが多く,現在でも予後不良な急性腹症の一つである.
    血管造影が確定診断には有用であるが,その症状には特徴的なものはなく早期発見は困難なことが多い.
    症例は66歳男性で高血圧,動脈硬化症,心房細動,狭心症,陳旧性脳梗塞にて近医加療中,下腹部痛にて発症,発症後3日目に来院.イレウス症状を呈し, CPKの異常高値を呈していたため急性腸間膜動脈閉塞症を疑い緊急血管造影を施行.上,下腸間膜動脈と右総腸骨動脈の閉塞を認めたため緊急手術を施行した.大量腸切除と左-右大腿動脈バイパス術を施行し救命することができた.
    若干の文献的考察を加え報告する.
  • 佐伯 悟三, 松田 真佐男, 竹内 宣久, 野尻 修
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2869-2872
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸静脈瘤は,下部消化管出血を来すまれな疾患である.われわれは,先天性肝線維症に伴う直腸静脈瘤出血の1例を経験し,経皮経肝下腸間膜静脈塞栓術および内視鏡的止血術にて治療しえたので報告する.
    症例は20歳,女性. 5歳時,肝生検により先天性肝線維症の診断を受け, 7歳時食道静脈瘤出血に対して,食道離断術を施行された.今回当院泌尿器科にて施行された腎移植術後に新鮮血の大量下血が持続し,大腸内視鏡検査にて直腸静脈瘤出血と診断された.経上腸問膜動脈的門脈造影にて下腸間膜静脈を経た直腸壁への逆行性側副血行路と直腸静脈瘤の所見を得た.側副血行路を遮断する目的で,経門脈的に下腸間膜静脈にコイル5本を挿入し塞栓術を行った.さらに内視鏡的止血術を行い治療しえた.直腸静脈瘤出血に対して,経皮経肝下腸間膜静脈塞栓術によって治療したという報告はまだないが,有効な治療法であると考えられた.
  • 安田 博之, 鬼束 惇義, 宮田 知幸
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2873-2876
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾腫瘍と鑑別が困難であった腹腔内多臓器結核の1例を経験した.症例は68歳,女性.体重減少を主訴に来院した.腹部CTで脾腫とその内部に散在する低吸収域を認め,血管造影の毛細血管相で多発するhypovascularな腫瘍影を認めた.上部,下部消化管検査では異常なく,脾臓悪性腫瘍を疑い手術を施行した.開腹すると,腹膜全体および肝,リンパ節に白色調の小結節が散在し,脾臓は表面凹凸が著明で弾性硬であった.回腸には漿膜に小結節が多発し,数カ所に狭窄を認めた.悪性腫瘍の腹腔内多発転移と診断し,回盲部切除と肝,リンパ節生検を施行した.病理組織検査で,小腸壁の全層,肝,リンパ節に結核結節を認め,臨床症状と合わせ腹腔内多臓器結核と診断し,術後22日目より抗結核剤(3者併用)の投与を開始した.それにより,症状は軽快し,腹部CT,血管造影において脾臓の腫瘍影は消失した.
  • 辻 信彦, 木下 博明, 広橋 一裕, 久保 正二, 岩佐 隆太郎, 藤尾 長久, 首藤 太一, 奥田 豊一, 桜井 幹己
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2877-2880
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性. 7年前より超音波検査で肝左葉内側区域 (S4) に肝嚢胞を指摘され,経過観察されていた.今回嚢胞内腔に隆起性病変が出現したため肝部分切除術が施行された.直径4cmの嚢胞内に乳頭状に突出する部分が認められ,病理組織学的に肝嚢胞腺腫と診断された.肝嚢胞の診断は比較的容易であるが,肝嚢胞腺腫と嚢胞腺癌の鑑別診断は困難である.自験例の様に肝嚢胞の経過観察中に腺腫が発見される症例もあることから,肝嚢胞と診断されても経過観察が必要である.
  • 金村 洙行, 坂崎 庄平, 西森 武雄, 川口 貢, 桜井 幹己
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2881-2885
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.既往歴・家族歴に特記すべき事項なし.脳梗塞・胆嚢炎症状にて入院となる.入院時の血液検査にて高度の炎症所見と血清CA19-9値の異常高値を示した.画像診断にて肝左葉外側区域並びに内側区域の一部に大小不同の多数の嚢胞性病変と胆嚢結石を認めた.明らかな悪性所見はなかったが,炎症消退後も血清CA19-9値の異常高値が遷延し,肝内胆管癌の存在が疑われた.病理組織にて悪性所見はなく, Caroli病と胆石胆嚢炎と診断された.術後経過は良好にて退院したが,その後の血液検査にてCA19-9値の再上昇とCEA値の上昇をきたし,内視鏡検査を施行したところS状結腸に隆起性病変を認め,生検にてgroup Vであった. S状結腸切除術を施行した.術後経過は良好で退院した.現在,血清CA19-9値およびCEA値は正常範囲内に復している.
    Caroli病に大腸癌を合併した報告はわれわれの調べ得た範囲では文献上認めず,極めてまれな症例と思われた.
  • 高原 秀典, 熊野 公束, 金沢 旭宣, 大嶋 眞一, 貝原 聡, 横山 正, 實光 章, 邉見 公雄, 吉田 圭介
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2886-2889
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢および胆管内に結石や胆泥,胆砂が存在しない76歳の男性に発症した胆管内ガス像を伴った急性気腫性胆嚢炎の1例を経験した.患者は筋性防御を伴う右季肋部痛を主訴に来院した.血液検査では高度の炎症性反応および肝機能異常を示し,腹部画像検査では胆嚢内腔と胆管内にガス像を認め,急性気腫性胆嚢炎および気腫性胆管炎と診断した.入院当日に緊急開腹手術を施行したが,胆嚢壁は暗褐色を呈し壊疽性胆嚢炎の所見であった.術中採取した胆汁の培養よりClostridium属菌が検出された.この患者には高血圧,糖尿病,虚血性心疾患などの基礎疾患はなかった.本症の発生機序は胆嚢壁の虚血による組織壊死とそれに伴うガス産生嫌気性菌の感染が考えられている.本症例における胆管内ガス像は胆嚢管を通して胆嚢内ガスが流出したものと考えられた.気腫性胆嚢炎の病理学的主体は壊疽性胆嚢炎であるこが必要であると考えられた.
  • 森屋 秀樹, 青木 明人, 金井 歳雄, 小野 崇典, 鈴木 俊之
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2890-2893
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    遊走胆嚢の不完全捻転症を契機に発見された胆嚢癌の1例を経験したので報告する.症例は82歳の女性.右季肋部痛と胆汁性嘔吐により発症,超音波検査で胆嚢壁の肥厚を認められ,入院精査となる. CT, ERCPにより胆嚢癌を疑い,手術を施行した.胆嚢と胆嚢床との間に約3cmにわたる肥厚した胆嚢間膜を認め,頸部で屈曲していた.胆嚢内は乳頭浸潤型の胆嚢癌であった.本症例の症状発現は,遊走胆嚢の不完全捻転発症によるものと考えられた.
    遊走胆嚢自体は病的意義は少ないが,胆嚢捻転症の基礎疾患として重要である.しかしながら,不完全捻転では,体位変換などにより捻転が容易に解除されるため,その正確な頻度は明らかではない.上腹部不定愁訴のなかに遊走胆嚢の不完全捻転に起因するものが少なからず存在することが示唆される.
  • 佐藤 幸作, 田中 栄一, 西部 俊哉, 平野 聡, 高橋 利幸, 道家 充, 奥芝 俊一, 下沢 英二, 加藤 紘之
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2894-2898
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性.上部胆管癌の診断で入院した. ICGK値が0.123と肝予備能の若干の低下が認められた.計5箇所からの選択的胆管造影で癌の進展は外側区胆管,内側区胆管合流部,前区後区の上下胆管枝合流部まで及んでいた.門脈造影では左門脈が閉塞し,右門脈本幹の壁不整像,後区門脈枝の閉塞を認め,これらが癌浸潤によるものであれば耐術能からみて切除は不可能であったが,後区門脈枝を選択的に造影したところ,末梢は開存しており腫瘍による圧排が疑われた.以上の所見より手術は外側区域,内側下区域切除に加え前区後区胆管枝を各々の合流部まで追及切除,さらに門脈を合併切除し治癒切除となった.また術後は肝不全を回避し得順調に経過した.本症例の術前検索において選択的胆管造影および選択的経皮経肝門脈造影は極めて有用であった.
  • 長谷川 博康, 土生川 光成, 正木 裕児, 瀬山 厚司, 山本 達人, 宮下 洋, 舘林 欣一郎
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2899-2902
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.空腹時腹痛を主訴として来院.当院での胃精査にて前庭部大鷺側に粘膜下腫瘤を認めた.生検は2回行ったが,いずれの生検にてもGroup Iであった.開腹したところ,胃前庭部大轡側前壁に約2cmのやや硬い腫瘤を認め,腫瘤より約1cm離して胃壁部分切除を行った.切除標本では前庭部粘膜に小さな陥凹を認め,この粘膜下に1.8×1.0×0,8cmの硬い割面灰白色の腫瘤を認めた.組織学的には粘膜下層に腺房細胞および導管からなるHeinrich II型の迷入膵組織を認め,この一部に異型性の強い細胞が増殖し周囲に小さな腺腔を形成しながら筋層にまで浸潤していた.迷入膵に由来する腺癌と診断した.後日幽門側胃切除術およびR2リンパ節郭清を行った. 27カ月目の現在,再発の兆候はない.
  • 吉田 雅博, 長島 通, 天野 穂高, 笹川 真一, 浅野 武秀, 磯野 可一
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2903-2907
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾臓紫斑病は稀な疾患であるが,今回われわれは脾臓破裂による腹腔内出血およびDICにより死亡した1例を経験したので報告する.
    症例は55歳の男性.嘔気,背部痛を主訴として近医入院中,腹痛,血圧低下あり腹腔内出血の診断にて当科転院となった.入院時皮膚に出血斑認めず, RBC 281万/mm3, WBC 17,800/Mm3, Plt 1.4万/mm3であり, US, CTにて脾内血腫,腹腔内出血の診断.脾動脈塞栓術,さらに脾臓摘出術を施行したが,全身状態改善せず死亡した.摘出標本では脾臓に大小多数の血腫を認め,病理学的には血腫の辺縁は脾臓実質で覆われており脾臓紫斑病の診断,剖検所見では骨髄に同様の病変を認めた.
    本症例は脾臓および骨髄に多数の血腫が形成されDICが長く続いた状態に脾臓破裂,腹腔内出血が起こり全身状態が急速に悪化したものと考えられた.
  • 横田 俊也, 島貫 公義, 宮崎 国久, 宮田 道夫, 柏井 昭良
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2908-2913
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    繰り返すsealed ruptureによるショックに伴い,血中総ビリルビン値の漸増する稀な経過を示した脾動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は63歳男性で腹痛を主訴として発症した.腹部超音波検査, CT検査,血管造影検査にて脾動脈遠位1/3の部位に脾動脈瘤を認めた.これに対し瘤内と瘤前の脾動脈に経動脈的塞栓術を施行したが,再度破裂を来し,膵尾部および脾摘出を行い脾動脈瘤を摘出した.本症例は,初回破裂後に3度の破裂を繰り返し,同時にショック状態を来たした.大量の血性腹水に伴うビリルピン負荷状態とショックが原因と思われる肝でのビリルビン代謝障害により黄疸を来したものと思われた.
  • 神賀 正博, 佐藤 淳, 緑川 靖彦, 花田 稔, 窪田 幸男, 塚本 長
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2914-2919
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    稀な疾患である副腎血管腫の1例を経験したので報告する.患者は27歳の女性で心窩部痛を主訴に近医を受診し,超音波検査にて左副腎腫瘍を指摘され,当院に紹介された.腹部超音波検査, CT,血管造影検査および内分泌学検査から内分泌非活性副腎腫瘍と診断し,左副腎摘出術を施行した.腫瘍は5×5×4cm,重量55gで被膜に覆われており,割面では変性壊死の部分と出血を認め,病理組織学的に副腎血管腫と診断された.副腎血管腫は本邦ではこれまでに27例が報告されているにすぎない.術前に各種画像診断を駆使してもその質的診断は必ずしも容易ではなく,積極的に摘出する必要があると思われた.
  • 山本 明, 田中 久富, 藤村 昌樹, 平野 正満, 木下 隆, 田野辺 裕二, 森 渥視
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2920-2927
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Cushing症候群3例,原発性アルドステロン症1例, incidentaloma 1例の腹腔鏡下副腎摘出術(左側3例,右側2例)を経験した.副腎が後腹膜深部に存在するにもかかわらず腹腔鏡下の術野は良好で副腎静脈の処理も不安を感じることなく施行できた.
    従来副腎摘出術は安全のためには大切開が必要であり,そのための患者の苦痛は不可避かつ副次的なものとされてきた.腹腔鏡下手術では創は小さく,創痛は少なく,術後の回復は極めて早く,早期退院が可能であった.
    本法はCushing症候群,原発性アルドステロン症, incidentalomaなどがもっとも良い適応疾患と思われ,左側褐色細胞腫は相対的適応であり,悪性腫瘍や右側褐色細胞腫は現時点では禁忌であると思われる.
    本法は腹腔鏡下胆摘術などに習熟した外科医にとって決して煩雑困難な手術手技ではなく,副腎疾患患者の利益のために,普及させる意義のある新しい術式と思われた.
  • 与儀 喜邦, 佐藤 新五, 立野 進, 東 秀史, 郡山 和夫, 長田 幸夫, 瀬戸口 敏明
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2928-2932
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    エタノール注入療法が有効であった巨大腎嚢胞の1例を報告する.
    症例は71歳,男性.腹部膨満感を主訴として来院した.腹部超音波検査にて右上腹部に嚢胞性腫瘤を認めた.腹部CT検査では右腎実質を左方に圧排する巨大な嚢胞がみられ,腎孟造影で右腎孟は左方へ強く偏位していた.腎動脈造影では右腎動脈は左前方へ圧排されていた.以上から巨大な右腎嚢胞と診断した.超音波ガイド下に右腎嚢胞を穿刺し3,250mlの内容液を吸引した後,嚢胞造影を行い嚢胞外への漏出がないことを確認した.造影剤回収後に95%エタノール500mlを20分間注入した.同時に内容液330mlの左腎嚢胞に対しても95%エタノール100mlを注入し治療した.この患者は他に両腎に計2個の小嚢胞があった.
    術後,両側腎嚢胞は縮小した.特に右腎の巨大嚢胞は径5cmと著明に縮小し, 3年間の経過観察でも再発は認められなかったが他病死した.
  • 安原 清司, 草野 佐, 小沢 俊総, 矢川 彰治, 植竹 正樹, 野方 尚, 飯田 龍一, 小俣 好作
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2933-2937
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本症例は, 77歳,女性. 1984年4月,検診の腹部超音波検査にて右腎下極に多房性嚢胞性腎病変を認めた.腹部CT検査施行し,悪性所見は認めず,半年後の再検査においても同様の所見であり,多房性腎嚢胞の診断にて特に症状もない為,放置されていた. 6年7カ月経過後の1990年10月,右腰背部痛が出現したため当院を受診した.腹部超音波検査, CT検査, MRI検査において右腎下極の腫瘍は径が増大し,辺縁部分および隔壁が肥厚し,腹部血管造影検査において広狭不整像を伴う著明な腫瘍血管の増生を認めたことより,多房性嚢胞性腎細胞癌を強く疑い,右腎摘出術を行った.
    多房性嚢胞性腎細胞癌は比較的稀な疾患であり,本症例のような長期観察が可能であった症例は極めて稀であり,その画像上の変化および病理学的検索から成因と多房性嚢胞性腎病変を認めた場合の治療方針について若干の考察を加え報告した.
  • 河内 和宏, 繁本 茂憲, 松浦 雄一郎, 横山 隆
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2938-2942
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな高齢者の子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎症例を経験した.症例は93歳の女性で,腹痛と発熱を主訴として来院,既往歴に婦人科疾患を認めなかった.血圧は低下し,腹部は著明に硬く膨瘤しており筋性防御を認めた.腹部X線像および腹部CT像にて腹水および子宮腔内の液体貯留を認めた.血液生化学的所見ではCRP高値,白血球数の増加,および著明なアシドーシスを認めた.以上より消化管穿孔性汎発性腹膜炎による敗血症性ショックと診断し手術を施行した.術中所見では大量の膿性腹水の貯留と子宮前壁の壊死穿孔を認めた.全身状態不良のため子宮摘出術は行わず子宮壊死部除去,穿孔部縫縮,および腹腔ドレナージを行った.術後に子宮腔洗浄を行い子宮腔からの十分なドレナージ得られるようにした.治療に際しては,本症の存在を認識しておくこと,術後子宮腔からの十分なドレナージを得ることが重要と考えられた.
  • 岩川 和秀, 門多 健, 小林 展章, 大西 五郎
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2943-2947
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    放射線による晩期消化管障害及び膀胱障害は治療に難渋し,瘻孔が生じた場合は外科的治療を要することがある.われわれは,子宮頸癌術後の放射線照射によって生じた小腸-皮膚瘻,膀胱-小腸瘻に対し,瘻孔部腸管を切除,大網による充填を行い,良好な結果を得たので報告する.症例は61歳,女性.主訴は腹痛.平成2年,子宮頸癌に対し円錐切除,放射線照射(約10,000rad)をうけた.その後他院にて,小腸-膀胱瘻及び結腸-膀胱瘻に対する手術をうけたが,今回再び小腸-膀胱瘻及び小腸-皮膚瘻を生じ,当院泌尿器科より紹介された.小腸-皮膚瘻周囲のびらんに対し,持続吸引及び皮膚保護剤貼付により軽快せしめた後,可及的に尿路系を温存し,瘻孔部小腸切除,大網充填及び胆石症に対し胆嚢摘出術を施行した.切除した小腸は組織学的に粘膜の萎縮と粘膜下層の浮腫を認めた.術後1年目の現在,経過順調で瘻孔の再発はない.
  • 中島 博史, 増子 佳弘, 大久保 尚, 斉藤 卓, 山田 俊二, 上林 正昭, 秦 温信, 奥 哲男
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2948-2951
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,von Willebrand病患者の腹腔内異物に対し,腹腔鏡下に大網の一部とともに検出を行い良好な結果を得たので報告する.
    症例は40歳男性,開腹歴はない. 1993年9月頃より腰背部痛を自覚していたが放置していた. 11月の検診時に腹腔内の異物を指摘され,摘出手術目的に12月,当科を紹介される.患者は子供の頃より血が止まりずらかったが特に検査はされていなかった.腹部エックス線,胃及び大腸バリウム,腹部CT検査より腹腔内の縫い針による異物症,血液検査よりvon Willebrand病Type Iと診断した.出血性疾患が背景にあるが摘出手術の適応と考え,血液製剤 (Haemate®P) による止血管理を行い, 1994年1月腹腔鏡下に大網の一部とともに摘出した.患者は術後出血もなく経過良好で術後10日目に退院した.
  • 古田 一徳, 吉田 宗紀, 泉家 久直, 高橋 毅, 大宮 東生, 比企 能樹, 柿田 章
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2952-2957
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性. 10年前に胆石症にて胆嚢摘出術を施行されている.今回,右季肋部痛と熱発を契機に肝腫瘤を指摘され,精査目的に入院した.種々の検査で術後の異物肉芽腫が予測されたが,腫瘍の否定もできず手術となった.病理組織学的にはガーゼに由来すると考えられる腹腔内異物肉芽腫の診断であった.
    本症のような腹腔内異物肉芽腫は医原性の疾患であり,医療従事者の注意によって防ぎうる疾患であるが,これらの症例の報告はいまだ散見されるのが現状である.また,その確定診断は種々の画像もってしても困難となる診断上の問題も残している.今回,われわれは胆嚢摘出後の異物肉芽腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 饗場 松年, 横山 義信, 宗像 周二, 大西 雄太郎
    1994 年 55 巻 11 号 p. 2958-2963
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    陥入爪は外科外来でよく見かける疾患である.ありふれた疾患であるが,中に痛みのため歩行障害をきたし,仕事や色々の活動を困難にすることがある.不適切な治療を受けたために再発を繰り返すものも多い.
    著者らは当院の過去9年間の陥入爪症例108例につき,統計的観察と治療経験について若干の考察を加え報告する.
    症例は全部母趾であるが,中に第2, 3趾を伴う症例が2例あった.性別では男女比1:1.25で女子にやや多い.年齢分布では若年層に集中している.爪の罹患側では外(腓)側が多くみられ,内(脛)側に対して比は1:1.8である.陥入爪との共存疾患では爪白癬,爪外傷があり,脊椎,下肢の疾患が多かった.
    症例108例中60例, 65趾, 85病巣に対して爪母切除を含めた根治手術を行った.術後1例を除いて, 14日までに一期治癒している.
    術後3カ月以上経過した59例, 83病巣に対して追跡した結果再陥入2例,爪棘形成4例で再発率は7.2%であった.
    現今陥入爪の根治術としてlabiomatricectomyが主流であるが, 100%の治癒率を得ていない.更に手術法の改良と手技の精練が要求される.
feedback
Top