日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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55 巻, 6 号
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  • 前谷 俊三, 高木 弘
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1345-1349
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 中野 博重, 中島 祥介
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1350-1357
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 尾浦 正二, 櫻井 武雄, 吉村 吾郎, 玉置 剛司, 梅村 定司, 内藤 泰顕
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1358-1364
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本邦における乳頭および乳房温存療法は,早期乳癌に限られている場合がほとんどでリンパ節転移陽性症例に乳頭温存術式を施行した場合の遠隔成績の報告はいまだ見られない.そこでリンパ節転移陽性乳癌に対し乳頭温存術式(Glt+Ax)を施行した86例(n1α 53例, n1β 21例, n2, 3 12例)の治療成績を乳房切除術式を施行した123例(n1α 49例, n1β 44例, n2, 3 30例)と生存率,健存率および局所健存率について比較検討した. n1αおよびn1β症例では,乳頭温存術式施行症例と乳房切除術式施行症例の生存率,健存率および局所健存率は,すべて同等の成績であった. n2, 3症例では,有意差はないものの乳頭温存術式で治療成績が不良な成績であったが,この結果は症例数の少なさに起因するものと思われた.従って乳頭温存術式は,リンパ節転移陽性症例でも安全に施行し得る有用な術式であると考えられた.
  • 桧垣 健二, 塩崎 滋弘, 神原 健, 軸原 温, 井上 秀樹, 石川 隆, 大野 聡, 岡信 孝治, 池田 俊行, 小林 直広, 岡村 進 ...
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1365-1371
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1988年1月より1993年6月までに当科で,肉眼的に完全に主病巣を切除した後に根治術を行った原発性乳癌症例は295例であった.これらの切除標本を組織学的に検討することにより,主病巣切除後の癌の遺残の状態を調べるとともに,生検からえられた情報により縮小手術の可能性をより明確にすることができるかを検討した.
    その結果,生検術創周囲の癌の遺残は58.3%, 多発巣は10.7%に,リンパ節転移は29.6%に認められた.このことから, Lumpectomyでは癌遺残の可能性が高いため,当科での縮小手術の標準術式をQuadrantectomy+Ax (+再建)とした.しかし,今回の検討で本術式の適応を生検時の腫瘤径が2.0cm以下で,浸潤性小葉癌・Paget病・E領域症例を除いた症例としても13.3%の症例に癌遺残の可能性がでてくることから,われわれは適応および完全な切除の限界を認識し,縮小手術実施に際しては十分なinformedconsentが必要であると思われた.
  • 福田 直人, 杉山 貢, 山本 俊郎
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1372-1376
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    横浜市立大学救命救急センターおよび第2外科における1972年から1991年までの消化性潰瘍手術例教は464件であった.これらをH2受容体拮抗剤 (H2RA) 導入前の前期 (1972~1981) と導入後の後期 (1982~1991) に分け,手術適応,選択術式などにつき比較検討した.手術例数は前期329例に対して後期135例と前期の41.0%に著しく減少していた.手術適応別では難治例,狭窄例がそれぞれ前期の21.2%, 20.8%と著明に減少したのに比べ,出血例は75.6%と軽度減少にとどまり穿孔例は128.2%とむしろ増加していた.選択術式に関しては,胃潰瘍に対する術式として前期において胃切除術が多用されていたが,後期では胃を温存する術式(迷切術,潰瘍部切除)が主流となっていた.十二指腸潰瘍の場合は,前・後期を通じて迷切術を選択する機会が圧倒的に多かったが,選近迷切術後の再発率 (9.9%) が比較的高く,再検討の必要があると考えられた.
  • 味木 徹夫, 小野山 裕彦, 神垣 隆, 宮崎 直之, 山本 正博, 斎藤 洋一
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1377-1384
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    21年間に教室で切除しえた乳頭部癌は35例,下部胆管癌は16例であった.これらの予後因子解析のため進展様式の臨床病理項目につき検討を行った.その結果,長期生存の条件として,乳頭部癌ではpanc1a以下, n0, d0が,下部胆管癌ではpanc0, n0が必要と考えられた.従来pancが重要な予後規定因子とされているが,自験例でもpanc (+) 例は乳頭部癌でd, ly, v陽性率が高く,下部胆管癌では n, ly, v陽性率が高かった. panc1b以上, d, n陽性の乳頭部癌, panc, d陽性の下部胆管癌に対しては,拡大手術や積極的な集学的治療も考慮する必要があると思われた.さらに肉眼的進行度と組織学的進行度の比較では乳頭部癌の十二指腸浸潤に最も不一致例が多く,膵浸潤は乳頭部下部胆管癌とも一致率6割前後であった.このことから, Panc, D, N陰性と術中判断した症例に対しても,縮小手術の適応を慎重に考え迅速診断等の積極的な利用が重要である.
  • 出江 洋介, 川崎 恒雄, 丸山 祥司, 佐藤 栄吾, 青井 東呉, 野坂 俊壽, 上江田 芳明, 岡部 聡, 遠藤 光夫, 岡本 浩平, ...
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1385-1391
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1971年から1991年までの当院および関連施設における大腸癌手術例1,976例の中から低分化腺癌37例,粘液癌21例,印環細胞癌9例,未分化癌3例の計70例について,大腸癌取扱規約にのっとり,臨床病理学的検討を加えた.
    低分化型癌(低分化腺癌,粘液癌,印環細胞癌ならびに未分化癌)はやや男性に多く (58.6%), 局在はやや右側大腸に多かった (60%). 早期癌は1例もなく,高度のリンパ節転移 (40%) と腹膜播種 (27.5%) を示すものが多かった.肝転移は左側の低分化腺癌で多く認められた.肉眼型では浸潤型を示すものが多く (42.9%), 特に印環細胞癌9例中6例が4型だったのが特徴的であった.
    さらに進行度は Stage IV 以上が多く予後不良で,中でも印環細胞癌の2年生存率はわずか11.4%だった.これに対して粘液癌は症例により予後良好なものがあり,その亜分類が必要と思えた.
    治療は,早期発見,広範なリンパ節郭清,腹膜播種を念頭においた術中,術後の化学療法が重要と思われた.
  • 小林 孝一郎, 橘川 弘勝, 平野 誠, 村上 望, 花立 史香, 矢崎 潮
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1392-1396
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    約6年間に当院で経験した大腸癌手術症例402例のうちの肝転移症例37例 (9.2%) を検討した.同時性肝転移29例 (7.2%) 中肝切除した11例の3年生存率は43%, 肝非切除例は同13%であった.異時性肝転移8例 (2.0%) 中肝切除した7例の5年生存率は80%であった.また,同時性肝転移切除後の残肝再発率は75%と高率であるが,術後one shot肝動注化学療法を行っている3例には再発を認めていない.
    大腸癌肝転移非切除例に比して切除例の予後は良好で,肝転移の完全切除が可能であれば, H2症例であっても積極的に肝転移切除を行うべきである.また,残肝再発率の高い同時性肝転移症例において,残肝再発予防としての肝切除後のone shot肝動注化学療法の有用性につき検討すべく,現在症例を重ねている.
  • 高坂 一, 佐々木 一晃, 八木橋 厚仁, 小出 真二, 平田 公一
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1397-1401
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    教室での1978年から1990年までのm癌73例, sm癌46例の早期直腸癌症例を対象に縮小手術の適応を検討する目的で臨床病理学的検討を行った. sm癌については深達度別,すなわち, sm1,2,3に分け検討した. m癌, sm癌共に,下部直腸に存在するものが過半数を占めた.肉眼型ではm癌はI型に多いのに対し, II型では減少し,陥凹を伴う型では認めなかった.リンパ管侵襲は広基性および陥凹型で,また深達度が増すに伴って陽性率が増したが,リンパ節転移を認めた症例はなかった.従って,有茎性もしくは亜有茎性の早期癌の大部分は内視鏡的治療が可能であると考えられた.表面型病変で陥凹を伴うものは大半がsm2,3でリンパ節転移を伴う可能性が高く,病変が上部直腸にあれば自律神経温存低位前方切除術をすべきである.しかし,下部直腸では術後のquality of lifeを考慮し,直腸周囲リンパ節腫大のないものには局所切除を含む括約筋温存手術が可能であると考えられた.
  • 柿沼 臣一, 関根 毅, 須田 雍夫, 上原 敏敬
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1402-1407
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸早期癌,とくに下部直腸早期癌23例について臨床病理学的成績を検討し,治療方針について考察を加えた.直腸早期癌は直腸癌手術症例の9.5%で,このうち下部直腸早期癌は63.9%であった.肉眼型ではIIa, IIa+IIcが多く,組織型では高分化腺癌が82.6%と大部分を占めていた.リンパ節転移はm癌, sm癌のいずれでも認められなかった.脈管侵襲はm癌ではみられなかったが, sm癌では ly(+)は27.3%, v(+)は36.4%に認められ, sm浸潤度はすべてsm1c以上であった.以上の成績から,下部直腸早期癌と思われる症例には,できるだけポリープ摘除や局所切除術を施行し病理組織学的検索を行い, sm癌の根治手術の適応の決定には, sm浸潤度も指標となりうることが示唆された.今後さらに症例を重ね検討したい.
  • 石川 哲郎, 曽和 融生, 長山 正義, 西口 幸雄, 山本 陽子
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1408-1413
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢者に対する腹腔鏡下胆摘術 (LC) の影響と安全性を検討する目的で,胆嚢結石症例に対するLC 86例について65歳以上の高齢群 (22例)とそれ未満の非高齢群 (64例)に分けて臨床所見および手術成績を比較検討した.また開腹下胆摘術 (OC) 27例も検討に加えた.高齢群では術前急性胆嚢炎の既往,併存疾患の合併例が多かった.手術成績では,手術時間はLC高齢群で155分と非高齢群 (140分)に比べやや延長する傾向がみられた.気腹開始前後の血圧はLCではOCに比べ上昇傾向が強く,とくに高齢群で変動幅が大きかった.また気腹中の尿量もLC高齢群で減少が認められたが,術後腎機能検査値への影響はなかった.術後経過はLCでは両群とも痔痛,発熱頻度,絶食期間などOCと比べ有意に軽減,短縮し,また末梢血,肝機能検査なども差はなかった.以上,高齢者に対するLCは気腹による血圧や尿量の変動に注意を要するものの,侵襲および術後のQOLの面からも有用な術式であると考えられた.
  • 鷲澤 尚宏, 小林 一雄, 松本 浩, 佐藤 行彦, 加瀬 肇, 後藤 友彦, 本田 亮一, 大谷 忠久, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1414-1419
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去5年間に経験した胃手術後の早期急性胆嚢炎8例について,その成因,特徴を臨床的に検討した.術後3日以内に発症した症例では血行障害との関連が示唆された.胆嚢炎発症までの日数が比較的長い症例では,迷走神経切離やNo.12リンパ節郭清などの影響により,胆嚢炎準備状態が作られ,そこに外因性の感染が加わったため発症したと考えられた.また,予防的胆嚢摘出術を行った胃切症例の内, 1年以上経過を追跡し得た37例では合併症を起こしたものはなかった.従って,術後急性胆嚢炎の危険性があると考えられる場合は,胆嚢摘出術を積極的に考慮する必要がある.
  • 手術適期についての考察
    上野 滋, 添田 仁一, 田島 知郎, 三富 利夫
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1420-1424
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳児期に発症した鼠径ヘルニア症例に対し,嵌頓例あるいは嵌頓の危険が大きい症例には早期手術を行い,そうでない例では1歳まで定期的に経過観察し,症状の残る症例にのみ根治手術を行うという方針で治療した.これらの症例について,手術時期・嵌頓の有無・ヘルニア消失の有無などにつき検討した結果,自然治癒を期待される症例が 12% 生じたが,手術を待期して経過を見るうち嵌頓する症例が15%あった.経過観察中の嵌頓は,乳児早期に発症した症例に多く,嵌頓時期は8ヵ月以後に多かったことから,乳児鼠径ヘルニアを最も少ない危険度で治療するには,自然治癒期待例の存在を考慮しつつ嵌頓率の高くなる8カ月以前に手術するのが妥当であると考察した.
  • ジアゼパムシロップとブロマゼパム坐剤を対比して
    山下 年成, 伊藤 寛, 全並 秀司, 近藤 薫, 江口 武史, 成田 清, 本多 英邦, 堀内 格, 津田 喬子
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1425-1429
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小児外科領域における麻酔前投薬は経口投与法が主流となってきている.しかし経口投与法では投与の不確実性の問題があることから坐薬による投与法が試みられてきている.
    今回,われわれは2ヵ月から13歳のASA (アメリカ麻酔学会)術前状態分類 risk 1 (器質的生理的,あるいは精神科的な異常がない.手術の対象となる疾患は局在的であって全身的な傷害をひき起こさないもの)の小児100人を対象に術前前投薬としてブロマゼパム坐剤を用いた群(43例)とジアゼパムシロップを用いた群(36例)及び対照群(21例)の3群で手術室入室時の鎮静度,導入の円滑さ,覚醒の速やかさ,手術室退室時の鎮静度の4項目について比較・検討した.
    ブロマゼパム坐剤群は手術室入退室時の鎮静度でジアゼパムシロップ群,対照群と比べ有効な傾向がみられ,導入の円滑さでは5%の危険率をもって有意に円滑であった.また覚醒の速やかさで3群間に差がみられなかった.
    ブロマゼパム坐剤を用いた症例で,重篤な合併症もみられなかったことから小児麻酔前投薬として有用と思われた.
  • 宗像 周二, 南村 哲司, 饗場 松年, 大西 雄太郎
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1430-1433
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性. 1991年9月2日右悸肋部痛を主訴に受診した.血液生化学検査で白血球数10,200/mm3, CRP 4+の他,超音波検査, CT検査,胃内視鏡検査でも診断蛭る所見は得られなかった, 9月4日の内視鏡検査終了後に腹部の激痛を訴え,入院となった. 9月8日性器出血があり産婦人科を受診し,クラミジア感染による右付属器炎を指摘された.抗生剤をM1N0に変更し保存療法を継続したが,右背部痛と腹膜炎症状も出現し,画像診断で骨盤内膿瘍,右水腎症を認め, 9月13日開腹ドレナージ術を行った.クラミジアザイム法陽性,抗クラミジアIgG抗体128倍,肝と周囲組織の繊維性癒着,右付属器炎から,クラミジア感染によるFitz-Hugh Curtis Syndromeと診断した.本例は早期に的確な診断をし,有効な抗生剤を投与する必要があったと考える.右上腹部痛を訴える女性の急性腹症では,本症候群も念頭におく疾患のひとつと考え報告した.
  • 林 英一, 本多 祐, 小林 薫, 原 宏, 森 透
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1434-1439
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは, Cushing症候群と原発性上皮小体機能充進症,および腺腫様甲状腺腫を同時に発見された37歳女性症例を経験した.手術は左副腎腫瘍摘出術,左下上皮小体摘出術,および甲状腺左葉部分切除術を施行したが,摘出標本の病理組織学的診断はそれぞれ,副腎皮質腺腫,上皮小体腺腫,腺腫様甲状腺腫であった.術後の経過は良好で,血中カルシウム, PTH, cortisolは全て正常化している.
    内分泌疾患の家族歴を有さず,しかも上皮小体が腺腫であったことは,本症例が多内分泌腺腫症1型 (MEN typeI) に属するとする根拠には乏しいが,検索された上皮小体が1腺のみであることと,その病理組織診断における腺腫と過形成の鑑別が困難であることを考慮すれば,今後とも血中カルシウムの推移を中心とした定期的な観察および家族構成員のスクリーニングが重要であると考えられる.
  • 一本杉 聡, 福田 雅之, 菅 記博, 荒木 るり子, 高木 博美, 池田 いずみ, 古賀 稔啓, 掛川 暉夫, 渡辺 次郎, 自見 厚郎
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1440-1444
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    41歳,男性の多発性内分泌腺腫症2B型の1例を報告した.患者は粘膜神経腫,肥厚した口唇,マルファン様体型,巨大結腸症,褐色細胞腫,甲状腺髄様癌を合併した.血液および尿中のカテコールアミンは上昇し,血中カルシトニン (CT) とCEAは各々12,778pg/mlおよび112ng/mlであった. 1991年8月に副腎全摘術, 1992年9月に甲状腺全摘術および両側頸部郭清術を行った.組織学的に両側副腎は良性褐色細胞腫であり,甲状腺髄様癌はリンパ節転移は陰性であったが周囲結合織内に癌細胞が認められた.術後6カ月経過したが未だ血中CTは12,600pg/mlおよびCEAは95.4ng/mlである.現在まで臨床的に転移は認められない.なお,この症例は遺伝的に散発性発生と考えられた.
  • 鈴木 成治, 清水 一雄, 坂本 俊樹, 笠井 源吾, 渋谷 哲男, 庄司 佑
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1445-1449
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術後再発性バセドウ病に対し,再手術を施行して良好な経過をとった症例を経験したので報告する.症例は50歳男性で, 17歳時にバセドウ病の診断にて甲状腺亜全摘術を受けた.その後,経過良好であったが, 35歳頃より頸部腫瘤が出現しはじめ, 38歳頃より機能亢進症状が著名となった.バセドウ病の術後再発と診断され,抗甲状線薬の内服を開始するも離脱出来ず,甲状腺が大きく,一部結節状を呈していたため,再手術を施行した.総切除量は72.5g, 残置量は5.2gであった.術後合併症もなく経過良好にて10日後に退院に至った.治療導入後の再発の指標になると報告されているTSHレセプター抗体は術前53.8%と高値であったが,術後2カ月には17.8%と低下した.一般に,バセドウ病の術後再発例に対しては, 131I療法が第一選択となり,手術は施行されないが,甲状腺腫が大きく,内科的治療に抵抗し,経過が長い症例は外科治療を考慮してもよいと考えられる.
  • 関根 幹男, 関口 令安, 鳥屋 城男, 袴田 安彦, 有輪 六朗, 木村 幸三郎, 小柳 泰久, 青木 達哉, 日馬 幹弘
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1450-1453
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性増大した授乳性腺腫を経験したので報告する.症例は28歳女性.妊娠12週頃より右乳房腫瘤の増大を認め,表皮変色をきたしたため当院を受診した.種々検査施行するも悪性を完全に否定できず,患者の希望もあり切除術施行.摘出標本は, 14×9cmの被膜に覆われた極めて大きな授乳性腺腫と診断された.
  • 福地 稔, 長町 幸雄, 加藤 広行, 竹之下 誠一, 桜井 信司, 佐野 孝昭, 中島 孝
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1454-1459
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性.昭和63年12月より頸部挙上困難を主訴に近医に受診し,重症筋無力症と診断され治療開始.経過観察中,胸部単純X線写真,胸部CTにて縦隔腫瘍を認めた,平成4年4月縦隔腫瘍の増大および著明な貧血が出現し,手術目的で当科に入院.入院時,重症筋無力症の分類はOsserman IIa型で,抗Ch-E剤の内服による寛解期であった. CT上,腫瘍は前縦隔に存在し,鶏卵大で内部に石灰化を伴い,左肺への浸潤が疑われた.手術所見では胸腺左葉下極に胸腺腫を認め,左胸膜,左肺に浸潤しており,これらの部位を含めて広範囲胸腺全摘術を施行した.病理組織学的診断は浸潤性胸腺腫であり,術後に放射線治療を施行した.本症例は自己免疫疾患に悪性胸腺腫を合併した稀な症例であり,文献的考察を加えて報告する.
  • とくに肺分画症との関連について
    志摩 泰生, 折田 洋二郎, 石井 辰明, 吉鷹 知也, 中井 肇, 原藤 和泉, 笠原 潤治
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1460-1464
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.乾性咳蹴,発熱で発症し,左下葉の異常陰影を指摘されていた.血管造影にて,第10胸椎レベルより,大動脈より直接分岐し,左肺底区に分布する異常動脈を認め,同部の肺動脈は欠如していた.気管支造影で分岐異常は認めなかった.
    われわれは,肺分画症を正常組織と分離された肺組織が大循環系の動脈の血流を受けている病態と理解し,本症例を肺分画症の範疇に入れないで報告し,いわゆるPryce分類について考察した.ついで,本症例では CEA が高値を示しており,その病態につき,若干の文献的考察を行った.
  • 青木 洋, 羽生 信義, 成瀬 勝, 大平 洋一, 水崎 馨, 二村 浩史, 西川 勝則, 時田 威, 梁井 真一郎, 金 哲宇, 阿部 貞 ...
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1465-1469
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.十二指腸潰瘍穿孔性腹膜炎手術後,逆流性食道炎にてfollow upされていたが,進行性の経過をたどり食道狭窄を合併した.バルーン拡張術を施行したが食道穿孔をおこしたため,食道穿孔部を閉鎖し,アカラシアの手術に準じた術式を施行した.術後経過は順調であり,経口摂取状態も良好である.本症例は,逆流性食道炎による食道狭窄の合併が食道・下部食道括約筋機能などの防御因子の低下ぼかりでなく,攻撃因子の過剰によってもおこりうることを示している.また食道裂孔ヘルニアを有さず食道狭窄を合併した逆流性食道炎の手術には,アカラシアに準じた噴門形成術が有用なことがあると思われた.
  • 阿部 幹, 遠藤 幸男, 森山 厚, 木村 卓也, 小野 友久, 井上 仁, 元木 良一, 本多 正久
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1470-1474
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に発症した胃glomus tumorの1例を報告した.症例は59歳,男性.主訴は腹痛.慢性腎不全にて外来血液透析を受けていたが,心窩部痛出現し胃透視,胃内視鏡施行され,胃前庭部前壁に隆起性腫瘤を指摘された.生検にて胃carcinoidと診断され,手術目的に当科入院. 1群リンパ節郭清を伴う胃亜全摘術が施行された.病理組織所見では主病巣が筋層を占めるglomus tumorであった.
  • 野崎 浩, 岡村 慎也, 冨木 裕一, 岡原 由明, 森本 俊雄, 矢吹 清隆, 津村 秀憲, 渡部 洋三, 松本 道男
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1475-1479
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で,健康診断時に,胃の巨大隆起性病変を指摘された.近医を受診し血液検査で著しい貧血を認め,当院を紹介され入院となった.胃内視鏡検査にて巨大胃腺腫が認められ,幽門輪温存胃切除術 (pyrolus preserving gastrectomy: PPG) を施行した.腫瘍は9.0×7.5cm大の有茎性腫瘤で表面は大小多様の乳頭状増殖を示していた.組織学的には管状~乳頭状に上皮の増殖が見られ,上皮は全体的に軽度~中等度の異型性を示していたが,明らかな癌化は認められず,大腸型胃腺腫の中の腺管絨毛状腺腫と診断された.
    大腸型胃腺腫は比較的稀とされており,癌化率は高い.特に2cm以上の病変ほど癌化率は高く前癌病変としての性格が強い.しかし自験例は巨大であるにもかかわらず癌化のみられない珍しい例であった.
  • 藤本 康二, 田中 英夫, 武田 博士
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1480-1483
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性. 1989年1月頃より心窩部鈍痛を自覚していた.同年7月本院受診し,胃透視にて前庭部に腫瘤を指摘された.内視鏡下生検にて腺癌細胞が証明され,開腹術施行した.胃前庭部に7×4cm大の腫瘤を認め,さらに4群までの著明なリンパ節腫大を認めた. S2POHON4(+), Stage IVと診断し,根治性はないが,幽門側胃亜全摘術, R2郭清を施行した.術後の組織学的検索により,本腫瘍は低分化腺癌と絨毛癌の2つの部分から成ることが判明した.術後,強力な化学療法施行するも肝転移を中心とした遠隔転移をきたし,術後5ヵ月目に永眠された.剖検にて,肝,リンパ節,腹膜などの転移病巣の組織型は,殆どが絨毛癌であることが判明した. Flow cytometryによる本腫瘍の核DNA量解析では,腺癌部と絨毛癌部のDNA indexが異なる値を示した.
  • 十束 英志, 須貝 道博, 鈴木 純, 今 充, 土佐 典夫, 馬場 俊明, 佐藤 浩平
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1484-1488
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸走行異常に基づいて発症した上腸間膜動脈症候群の1手術例を経験したので報告する.症例は11歳男子.食後の悪心,嘔吐を主訴に当院来院した.既往歴として,生後4日目に幽門膜様閉鎖にて手術を受けたが,この際は胃・十二指腸球部に特に異常所見を認めなかった.胃,十二指腸空腸造影,腹部CT, 腹部超音波検査にて十二指腸の走行異常と,それに基づく上腸間膜動脈症候群が疑われ,開腹手術を施行した.十二指腸は下行脚より右外側へ反転上行して,そこで後腹膜に固定され膵臓の背側に入り込んでおり,術中内視鏡にて膵背側の大動脈と上腸間膜動脈の間のやや手前に狭窄部を認めた. Roux-en-Y吻合を含む十二指腸-空腸側々吻合術を施行し,術後経過は良好である.
  • 仲宗根 朝紀, 渡部 誠一郎, 原田 嘉英, 奥井 俊治, 関根 一郎
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1489-1493
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.心窩部痛出現し当院内科受診.腹部X線写真でイレウスの診断で入院となる.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部前壁の小隆起性病変を認めた.生検でGroup V, adenocarcinomaの診断であった.原発性十二指腸球部早期癌の診断で胃切除兼十二指腸部分切除術を施行した.摘出標本肉眼所見では十二指腸球部前壁に4.0×3.0mmの微小な隆起+陥凹病変を認め,組織学的には高分化型乳頭状腺癌で深達度はsmであった.自験例は報告例の中でも最も微小であり隆起+陥凹型を呈した十二指腸球部早期癌の報告例は本邦では4例目であった.十二指腸球部早期癌の発見の増加にはルーチンの正確な上部消化管内視鏡検査が重要であると考えられた.
  • 松下 昌弘, 秋山 高儀, 斉藤 人志, 喜多 一郎, 高島 茂樹
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1494-1498
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    空腸原発平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.患者は51歳,男性.平成4年1月初旬より上腹部痛および血便を認め, 1月9日精査目的で入院した.小腸造影では,上部消化管の拡張と,その肛門側端に径3cm大の陰影欠損像を認めた.腹部CT検査では,上腹部の拡張腸管と腫瘤陰影が描出され,腫瘤は腸管内外に向かう連続性発育を示し,造影剤でenhanceされた.上腸間膜動脈造影では,空腸枝の末梢に腫瘍濃染像を認めた.腫瘍はTreitz靱帯より50cmの空腸にあり,管内および管外性に発育する腫瘤で,手術は支配空腸動脈根部までの郭清を伴った空腸切除術を施行した.腫瘍の肉眼所見は最大径3.8cmで,漿膜面は白色,弾性硬で,被膜に包まれ,管内側では腫瘤の中央部先端にdeleが見られた.組織学的には平滑筋細胞の異型,巨核化, mitosis (1~α/10×20 HPF) を示す平滑筋肉腫で,リンパ節転移 (0/15) はなかった.患者は術後1年2カ月経過の現在,健在である.
  • 小川 哲史, 池谷 俊郎, 塩崎 秀郎, 饗場 庄一, 伊藤 秀明, 大和田 進, 森下 靖雄
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1499-1502
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の女性で,約2年間にわたって反復するタール便と貧血を主訴に入院した.上部および下部消化管の内視鏡,消化管造影検査,出血シンチグラフィーや選択的動脈撮影でも出血源を同定できなかった.上部消化管内視鏡で発見した胃癌の術中に,肉眼的な回腸漿膜の異常と,内視鏡検査で同部に異常血管を認めたことから,回腸を切除した,切除標本のmicroangiographyおよび病理組織学的検索で,粘膜下層から漿膜までの全層に,拡張した動静脈の増生と混在を認め,先天性回腸動静脈奇形と診断した.
    動静脈奇形による消化管出血,なかでも,高齢で発症した先天性動静脈奇形は稀で,本症例は本邦報告例中最高齢であることから報告した.
  • 森田 章夫, 望月 衛, 成田 晃一, 阿部 裕, 九里 孝雄, 新井 元順
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1503-1507
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂粘液嚢胞の2例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例1は72歳,女性.主訴は右下腹部痛,症例2は45歳,男性.注腸透視で盲腸に表面平滑な陰影欠損を認め, CT および超音波検査で盲腸に一致して表面平滑な単房性の内部均一な嚢胞性腫瘤を認めた,以上より虫垂粘液嚢胞腺腫の診断にて盲腸部分切除術を施行した.組織像は,ともに, mucin-producing adenomaであった.虫垂粘液嚢胞は比較的稀な疾患であり,術前診断は困難で,本邦報告420余例の中で術前診断が可能であったのは53例にすぎない.今回,われわれは, CT および超音波検査により術前診断し得た2例を経験した.術前に本症を念頭において, CT および超音波検査を施行することが重要であると思われた,
  • 久米 真, 米沢 圭, 東 久弥, 森 茂, 米山 哲司, 二村 学, 山本 秀和, 白子 隆志, 岡本 亮爾, 横尾 直樹
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1508-1512
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の急性虫垂炎に続発した化膿性門脈炎の1例を経験した.腹膜炎,敗血症, pre DIC, 黄疸,肝機能異常を呈し, CTにて門脈,上腸間膜静脈の閉塞を確認した.腸間膜静脈血栓症の診断下緊急開腹,虫垂切除,腹腔ドレナージ,上腸間膜動脈リザーバー留置を施行した.術後経過は良好であり,術後血管造影にて求肝性門脈側副血行路 (cavemous transformation) を確認した.術前に施行した血液培養及び術中に採取した腹水,門脈血栓の培養からEscherichiacoliを検出した.
    化膿性門脈炎は稀な疾患であるが糖尿病等の基礎疾患を有する患者の腹腔内感染症には本症が併発することがあり,注意が必要と考えられた.本例の経験より,感染巣を外科的に切除した後保存的治療を施すことにより救命し得ることが示された.
  • 平尾 素宏, 宮内 啓輔, 青木 太郎, 木村 豊, 島田 守, 請井 敏定, 寺島 毅, 金子 正, 水谷 澄夫, 岡川 和弘
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1513-1517
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性.急性虫垂炎にて手術を行ったが,術後も回盲部痛が持続するためUSG, CTを行い,回盲部の径5cm大の嚢腫性病変を見いだし消化管重複症(嚢腫型)を疑った.開腹所見は,回腸末端部で回腸に接して腸間膜側に嚢腫性病変を認め,回盲部切除術を行った.病理組織学的検索では,嚢腫性病変は回腸と固有筋層を共有し,異所性胃粘膜を有していた.
    重複腸管の定義は, (1) 一層または数層の平滑筋層に包まれ, (2) 内面が消化管上皮に覆われ, (3) 本来の消化管のある部位に隣接し,それと筋層を共有する,とされている.消化管重複症は,本邦では現在までに約400例が報告されており,米国の新生児・胎児剖検例では9,000例中2例にみられたという.あらゆる年齢にみられるが, 70%は新生児・乳児期に発見されている.
    この比較的稀な疾患を文献的考察を加えて報告する.
  • 村重 光哉, 宮原 正樹, 佐藤 浩一, 木下 忠彦, 下田 勝広, 斎藤 貴生, 小林 迪夫
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1518-1522
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸脂肪腫は比較的まれな疾患であるが腸重積合併例が高頻度に見られるのが特徴である.今回われわれは腸重積を伴った下行結腸脂肪腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は41歳の男性.腹痛,血便を主訴に近医を受診した.大腸内視鏡検査にて下行結腸の腫瘤を指摘され精査,治療目的にて当科を紹介され入院した.注腸造影にて下行結腸に径5×4cmの有茎性腫瘤を先進部とする蟹爪様陰影を認め,また,腹部超音波検査, CTにて特徴的な同心円状の多層構造を認め腸重積の診断は容易であった.一方,脂肪腫の診断については,生検では病理組織学的診断は得られなかったが, CT値は-65で脂肪の値を示し診断に有用であった.以上より腸重積を伴った下行結腸脂肪腫と診断し下行結腸部分切除術を施行した.
  • 石神 純也, 夏越 祥次, 才原 哲史, 愛甲 孝, 野村 覚, 萩原 一行
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1523-1526
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    回盲部癌術後の腸重積症を経験したので報告する,症例は93歳女性で腹部膨満感を主訴に来院し,入院後の精査で回盲部腫瘍と診断された.手術は回盲部切除術を施行し,回腸と結腸を端々吻合した.術後経過は良好であったが,術後1カ月目より腹部膨満感,嘔吐が出現した.腹部単純X線検査でニボーが認められたため癒着性腸閉塞と考え,イレウス管を挿入し,保存的に経過観察した.一度は症状が軽快したが,再度イレウス症状を呈したため,腹部CT検査および注腸造影検査を施行した結果,吻合部を先進部とする腸重積症と診断した.高圧洗腸と用手的操作により非観血的に重積部は解除された.回盲部癌切除後の術後の腸重積症は非常に稀であり,術後にイレウスを起こした場合は,本疾患も念頭におく必要があると考えられた.また,術後腸重積症と診断された場合,非観血的整復法はまず試みるべき治療法であると考えられた.
  • 安藤 秀明, 水沢 広和, 三田 重人, 小山 研二
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1527-1530
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸炎は閉塞を伴う大腸癌の約6%に認められるが,その診断は困難で本症の合併により縫合不全などの報告も多い.今回,閉塞性大腸炎3例を経験したのでこれを報告する.
    症例はいずれも腸閉塞にて発症し,術前に本症が診断可能であったのは,1例で, 2例は開腹所見にて診断された.術中所見では,大腸漿膜面より病変の範囲,程度を判断することは困難であり,切除断端粘膜面の観察により2例で追加切除を余儀なくされた.
    以上,閉塞性大腸炎は診断が困難であり,吻合部の潰瘍性病変により縫合不全の危険があるため,閉塞を伴う大腸癌症例では,その口側断端粘膜面を観察し本症の合併の有無を検索し,潰瘍性病変が存在したならぽ追加切除が必要と考えられた.
  • 江口 英利, 冨田 尚裕, 福永 睦, 門田 卓士, 島野 高志, 森 武貞, 福田 春樹
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1531-1534
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    壊死型虚血性腸炎の1例を報告する.症例は48歳の女性でPolysurgeryの既往があった. 5日間の便秘の後,腹膜刺激症状を伴った腹痛,下痢,血便を認めた. CTにて著明な腸管の肥厚を認め,炎症所見も改善傾向を示さなかったため,左半結腸切除術を施行した.本疾患は死亡率が高いが,本症例では早期手術によって救命し得た.このように壊死型虚血性腸炎は早期診断,早期手術が重要と考えられた.
  • 両側内腸骨動脈固定法
    谷川 精一, 浜武 義征
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1535-1539
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸脱は比較的稀な疾患であり,その手術法は,はなはだ多数存在し,到達経路により,腹式手術,会陰式手術およびこれらの併用手術がある.また術式によっては術後再発も認められる.われわれは77歳女性の直腸脱にたいし従来の腹会陰式手術における腹腔内直腸固定に両側内腸骨動脈の分枝を用い,術後1年6カ月の現在再発なく排便機能も良好に保持されている症例を経験したので報告する.われわれの考案した腹会陰式術式は, 1) 可及的に直腸前後壁を骨盤底まで剥離し, 2) 直腸の肥厚部または腹膜肥厚部を利用して直腸壁を絹糸を用い両側内腸骨動脈の分枝に固定, 3) 腹膜切開部を直腸壁に縫合固定, 4) 脱出部粘膜を皮膚粘膜移行部から剥離して切除し露出筋層と粘膜を全周にわたり縫合閉鎖するもので,再発を防止し術後の排便機能も良好に保持することが可能であり,開腹術の可能な症例に応用し好結果を期待できる一法であると考える.
  • 増子 洋, 鈴木 修一郎, 斉藤 素子, 田内 克典, 長田 拓哉
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1540-1544
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌の初期発生を探求するうえで,免疫組織染色の有用性が示唆された1例を経験したので報告する.
    症例は58歳の男性で本人の希望で近医にて大腸内視鏡を施行された.下行結腸に中心がやや陥凹した隆起病変を認めた.生検で高分化腺癌であったため当院内科受診,大腸内視鏡再検にて同部の生検より高分化腺癌が認められたため,当科紹介入院となった.下行結腸部分切除術を施行した.病変は3×4mmのIIa+IIc型の病変で粘膜内に限局する高分化腺癌であった. CEAによる免疫組織染色にて腺腫成分は認めずde novo癌と思われた.
  • 亀岡 信悟, 朝比奈 完, 中島 清隆, 進藤 廣成, 三橋 牧, 板橋 道朗, 大石 英人, 河 一京, 四條 隆幸, 鈴木 啓子, 浜野 ...
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1545-1549
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近われわれは,発症より22年目の全結腸炎型・潰瘍性大腸炎の直腸に小隆起性病変を認め癌化を疑い,手術を施行したところ,病理学的には壁深達度pm, リンパ節転移陽性で,術後8カ月めに異時性多発肝転移を認めた症例を経験した.
    潰瘍性大腸炎に対する外科治療法の確立とともに,外科適応は拡大され,最近では難治性症例に対しても,早い時期に手術を行う傾向にある.この症例の経験から,癌化リスクを考慮すれば,いたずらに手術を遷延することなく,さらに早い時期での手術適応が検討されねばならない,と同時に,手術時期決定のための癌化survaillanceの重要性を強調した.
  • 粟野 友太, 奥山 和明, 小出 義雄, 木下 弘寿, 舟波 裕, 松下 一之, 浦島 哲郎, 磯野 可一
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1550-1554
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸癌局所再発の術後に確認された再々発に対し,治癒切除が可能であった症例を経験したので報告する.
    症例1.60歳女性. 9年前Raの直腸癌にて低位前方切除を受けている. 1年8カ月後,吻合部再発をきたしMiles'opeを施行した. 5年6カ月後仙骨側方に再発巣が出現し,後方切除兼第3仙骨以下合併切除を行った. 9カ月後仙骨断端に再発し,残骨盤内臓器全摘兼第2仙骨合併切除を加えた.術後肺転移を見たが局所に再発は認めていない.
    症例2.63歳男性. 3年前Rbの直腸癌にてMiles'opeを受けている. 1年後,前立腺後面に再発をきたし,骨盤内臓器全摘術兼第3仙骨以下合併切除を施行した. 10カ月後啓筋内に再発を認め腫瘍摘出術を行った.術後4カ月目の現在再発の徴なく健在である.
  • 溝渕 昇, 土屋 雅宏, 菅野 勉, 鈴木 正明, 榊原 宣
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1555-1559
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後に極めてまれな孤立性脾転移を認めた症例を経験したので報告する.症例は65歳,男性, 1987年2月,直腸癌にて直腸切断・人口肛門造設術施行 (a1, n1(+), P0, H0, stage III, muc). 外来通院中,腹部CT検査にて異常を認め, 1990年5月当科入院となった.腹部CT検査で脾上極に約7cmの low density area を認めた.腹部超音波検査では同部位に境界明瞭でモザイク状パターンを示す円形のエコーを認めた.血管造影では同部位にhypovascular massとして描出された.以上より,転移性脾腫瘍または脾原発悪性リンパ腫を疑い脾摘術を施行した.病理組織学的には直腸癌と同じ病理組織像を示し,他に癌の再発を認めなかったことより,直腸癌術後の孤立性脾転移と診断した.文献上,孤立性脾転移例の脾摘後の予後は比較的良好であり,自験例も脾摘出後3年5カ月経過しているが,健在である.早期発見のために腹部CT, 腹部超音波による定期的な経過観察が重要と考えられた.
  • 坂田 好史, 岡村 光雄, 栗本 博史, 尾野 光市, 上西 幹洋
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1560-1564
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    極めてまれな肛門周囲Paget病を伴う肛門癌の1例に対し,保存的治療が有効であったので報告する.
    症例は86歳の男性で,主訴は肛門出血であった.近医で肛門癌と診断され,当科へ紹介された.
    本来ならば腹会陰式直腸切断術の適応であるが,高齢で痴呆症の合併があるため,保存的治療を行った. doxifluridine 800mgを4週間連日経口投与し,局所には5-FU軟膏を塗布し,放射線1日2Gyを20回,合計40Gyを照射したところ,治療開始から4週後には肛門癌およびその周囲のPaget病変部は完全に消失し, 8週後には,肛門周囲のびらんも改善した.
    以上より,肛門癌の治療に関し,肛門機能を温存できる化学療法と放射線療法併用を,より積極的に選択し得ると考える.
  • 加治 正英, 小西 孝司, 辻 政彦, 横山 義信, 仲井 培雄, 角谷 直孝, 谷屋 隆雄, 藪下 和久, 黒田 吉隆, 三輪 淳夫, 出 ...
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1565-1570
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸および膵頭部に浸潤したStage IV胃癌の肝転移に対し膵頭十二指腸切除術後, 5-FU持続動注を施行し肝転移巣が消失した1例を経験した.症例は65歳男性で心窩部痛認め,胃内視鏡にて前庭部のBorrmann 2型胃癌と診断され,術前腹部CT検査では肝両葉にわたり10個以上のSOLを認め胃癌の多発性肝転移と考えられた.手術所見では,肝転移巣は両葉にわたり多数散在,原発巣は幽門輪直上にあり十二指腸,膵頭部への直接浸潤認め進行胃癌H3P0S3 (panc) N3~Stage IVと診断した.膵頭部への直接浸潤のため膵頭十二指腸切除術(上腸間膜静脈合併切除)施行した.胃十二指腸動脈より動注tubeを挿入し, 5-FUを連日24時間(250mg/day)持続的に動注した.術後1カ月目のCTでは肝転移巣の数の減少,大きさの縮小がみられ, 3カ月後では画像上肝転移巣は消失した.また肝転移巣の消失とともにCEAも53ng/mlから1.5ng/mlへと正常化し元気に社会復帰している.
  • 高田 譲二, 佐治 裕, 倉内 宣明, 数井 啓蔵, 有里 仁志, 内野 純一, 野島 孝之
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1571-1574
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    無石胆嚢炎に発見された膵・胆管合流異常の1例を報告した.症例は40歳女性,主訴は上腹部痛.超音波検査 (us) にて胆嚢壁の肥厚,内視鏡的逆行性膵胆管造影 (ERCP) にて膵管型の合流異常があり,胆嚢摘出術及び肝外胆管亜全摘術を施行した.病理所見は壁の肥厚と軽度の慢性炎症像を見たが異形成は認められなかった.本症例は,若い女性で,肝外胆管の軽度の拡張があり,胆石を合併しない合流異常例であり,胆嚢癌のhigh risk groupと思われた.
  • 塩見 尚礼, 谷 徹, 鈴木 雅之, 柴田 純祐, 小玉 正智
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1575-1579
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸間膜嚢胞は比較的まれな疾患とされ,特異的な臨床症状および所見に乏しく術前診断は困難である.その中でも乳びを内容とする乳び嚢胞は本邦ではさらにまれな疾患とされ文献上検索しえたかぎりでは本症例を含め39例に過ぎない.今回,術前に診断し得た腹腔内全体を占める巨大な腸間膜乳び嚢胞の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は18歳の男性.数ヵ月間の間に徐々に増大する腹部膨隆を主訴に近医受診,腹部腫瘤を指摘され,当院受診となった.腹部超音波検査,腹部Computed Tomography (CT), Magnetic Resonance Image (MRI), 腹部血管造影にて背側胃間膜から後腹膜の中に発生した腸間膜乳び嚢胞と診断を下し,開腹手術を行った.嚢胞は横行結腸間膜より発生しており,腹腔内全体を占め他の臓器を強く圧排していたが,腸管との交通はなく完全に摘出された.術後約1年を経過した現在,再発を認めていない.
  • 首藤 裕, 芹澤 博美, 日野 宏, 石丸 新, 古川 欽一
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1580-1583
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で,右腰背部痛,黄疸を主訴として来院した.右上腹部に腫瘤を触知し,腹部エコー, CTにて胆嚢内結石,総胆管結石に加え,肝下面に8×7×4cmの腫瘍が認められた.消化管造影検査,内視鏡検査では腫瘍と関連する所見はなく,腹部血管造影で胃十二指腸動脈より腫瘍への流入血管が認められた.胆嚢摘出術,総胆管切開術と併せ,同腫瘍の摘出術を施行した.腫瘍は大網内に存在し,充実性で被膜に包まれており,比較的容易に摘出し得た.病理組織学的に検査にてparagangliomaと診断した.
    Extra-adrenal-paragangliomaは縦隔内や後腹膜腔発生の報告が散見される稀な腫瘍であるが,大網内に発生したparagangliomaの報告は,著者が調べ得た限り本邦初めてであり,さらに稀なものと考えられるため,文献的考察を加え報告する.
  • 小林 匡, 滝沢 隆雄, 吉行 俊郎, 菊池 俊雄, 井出 裕雄, 恩田 昌彦
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1584-1587
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸結核による穿孔性腹膜炎の1例を経験したので報告する.症例は76歳の男性で,食欲不振を主訴に精査目的にて当院入院.入院後11日目に腹痛が出現し, 13日目には筋性防御を伴うようになった.急性腹症の診断で同日緊急開腹術を施行した.腹腔内に少量の膿性腹水がみられ,回盲末端部より約30cm口側で全周性潰瘍を認め,同部位が穿孔していた.また腸間膜リンパ節腫脹を散在性に認め,さらに下腹部壁側腹膜を中心に径約5mm大の多発性結節を認めた.以上より小腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,穿孔部腸管を切除し端々吻合した.病理組織学的所見ではLanghans型巨細胞,類上皮細胞,リンパ球よりなる結核結節であった.また腹水の細菌学的検査でも結核菌が認められた.術後より肺炎を併発し,第3病日には大量下血し出血傾向がみられ,播種性血管内凝固症の状態となり第12病日に死亡した.
  • 久我 貴之, 野間 史仁, 山下 勝之
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1588-1592
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    成人女性に発生した稀なretroperitoneal fibromatosisの1例を経験した.症例は51歳女性.左下腹部腫瘤で当院を受診した.消化管透視, DIP, CTおよびMRI検査で腫瘤は左後腹膜腸骨筋の右前方に位置し,消化管および尿路系と無関係であった.血管造影検査で明らかな腫瘍血管および濃染像は認められなかった.左後腹膜腫瘍の診断で腫瘍摘出術を行った.腫瘍は10×9.5×5cm大で,病理組織学的にfibromatosisであった.本疾患は稀な疾患であり,悪性ではないものの再発率の高い疾患である.最近SAIDSとの関連も報告され,その病因および治療方針について検討されている.
  • 坪野 俊広, 塚田 一博, 畠山 勝義
    1994 年 55 巻 6 号 p. 1593-1595
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ヘルニオグラフィーにて確定診断し,恥骨上切開法による腹膜外手術を行った両側閉鎖孔ヘルニアの1症例を経験した.症例は75歳,女性.約3年前より左右の大腿部痛にて鎮痛剤の投与などを受けていた.外科初診時には痔痛は認めなかったが病歴よりHowship-Romberg徴候が疑われたため,ヘルニオグラフィーを行い両側閉鎖孔ヘルニアの診断が得られた.腰椎麻酔下に恥骨上切開法による腹膜外到達経路での手術を行ったところ,両側閉鎖孔にはヘルニア嚢のみが認められた.恥骨骨膜と閉鎖膜を直接縫合することによりヘルニア門の縫縮を行った.閉鎖孔ヘルニア非嵌頓例の術前診断にはヘルニオグラフィーが必須であると考えられた,最近,両側閉鎖孔ヘルニアの報告例が増加しているが,恥骨上切開法による腹膜外手術は同一の切開創から両側の閉鎖孔を確認できるため閉鎖孔ヘルニアに対する理想的な手術法であると考えられた.
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