日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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57 巻, 7 号
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  • 菊地 充, 遠藤 重厚, 葛西 猛
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1529-1534
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹膜炎症例におけるbacterial translocationについて検討した.腹膜炎症例17例を対象として手術前後に末梢血を採取し,エンドトキシン(以下Et)およびβ-グルカン(以下G)を測定した.なお,測定はエンドスペシー,トキシカラー(ともに生化学工業)を用いた.術前のEtは3.3±2.0(pg/ml,平均±標準偏差)でその後もほぼ一定の値で経過し,陽性となった症例は認められなかった. G値は第1病日にやや上昇するもののその後まもなく術前値に復した.次に,消化管穿孔症例14例の術後第1, 3病日における腹水および末梢血中Etを比較検討した.腹水中Etは第1病日514.4±251.3,第3病日158.0±210.5と第1病日で有意(p<0.05)に高値を示したが,一方,末梢血中Etは1.8±2.1, 2.0±2.1にとどまった.以上の結果,腹腔内に数百pg/mlのEtが認められる腹膜炎の状態でも末梢血には影響しないことが示され,術後第7病日まではbacterial translocationの存在は否定的であった.
  • 野並 芳樹, 浅野 宗一, 佐藤 幸治, 西森 秀明, 福冨 敬, 山本 彰, 山城 敏行, 小越 章平
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1535-1538
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去14年間に高位腹部大動脈閉塞症の10例を経験し急性例1例を含む5例にanatomical bypass術を,急性例1例を含む5例にextra-anatomical bypass術を施行した.急性2例はmyonephropathic metabolic syndrome発症のため救命出来なかった.待機手術例の術前からの嗜好・手術前臓器機能低下,術前後の腎機能の推移,手術法,手術後合併症,予後,併せて重篤な病態である急性2例の臨床像を提示し,その問題点を検討した.
  • 陥凹性病変31症例の検討より
    南出 純二, 小泉 博義, 青山 法夫, 徳永 誠, 森脇 良太, 挾間田 伸介, 亀田 陽一, 玉井 拙夫, 深野 史靖, 小沢 幸弘, ...
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1539-1543
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道癌neoadjuvant chemotherapy施行例から,病理組織学的効果に対応した化学療法後の肉眼型分類を検討した. 1991年9月から1993年8月までにcisplatin, 5-fluorouracil併用療法によるneoadjuvant chemotherapyを施行した進行食道癌33例中,陥凹性病変の31例を対象とした.
    切除標本から残存腫瘍断面を4型に形態分類した. I.ほぼ原型を保つもの, II.周堤の高さは減じているが陥凹面を認めるもの, III.周堤は消失し陥凹面を認めないもの, IV.小癌胞巣に分割されたもの,として病理組織学的効果と比較するとよく一致した. III型において, A.隆起性病変となるもの, B.平坦型となるもの, C.粘膜下腫瘍型となるもの,の3型に亜分類されること,また周堤が高さを減ずるにしたがい周堤と共に挙上されていた粘膜が腫瘍表面を覆うこと,に留意して上記の6型を判別すれば,病理組織学的効果に対応した肉眼型分類とすることが出来た.
  • 平島 得路, 橋本 肇, 野呂 俊夫, 高橋 忠雄, 日野 恭徳, 黒岩 厚二郎
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1544-1550
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃食道逆流(以下GER)と術後誤嚥性肺炎との関連性を明らかにする目的にて, 1994年3月から12月までの胃癌症例,全48例(平均年齢, 75.6歳)を対象とし,術前に栄養状態,咽頭反射の評価と, 34例に食道シンチグラフィを使用したGER検査を施行し,これらの結果と術後誤嚥性肺炎発生との関連について検討を加えた.誤嚥性肺炎は3例に認め,いずれも非肺炎例に比して術前の栄養状態が有意に不良であった. GERは経鼻胃管留置にて有意な増加を示したが,肺炎発生との関連をみると,肺炎例はいずれも術前に,経鼻胃管非留置状態でもGERを認めた4例中の3例であり,術前胃管留置に関係なく恒常的なGERを認めた例と,術後誤嚥性肺炎発生との間に,有意(p<0.001)な関連を示していた.さらに,誤嚥性肺炎例では,咽頭反射の消失を認める頻度が高く,術前に低栄養状態を合併した場合は,誤嚥性肺炎の発生が有意に高くなっていた.
  • 北川 雄一, 田近 徹也, 亀岡 伸樹, 神田 侑幸, 渡邊 智仁, 三浦 敦, 寺本 誉男, 政井 治
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1551-1555
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹会陰式直腸切断術(APR)の,高齢者への影響を検討した.最近5年間に当院で根治術を施行した直腸温59例のうち29例・49.2%にAPRを施行した.このうち入院中に脳外科手術を受けた1例を除く28例にっき, 70歳以上の高齢群15例と70歳未満の若年群13例に分け比較した.術前の合併症の平均存在数は,高齢群2.5/若年群1.0(以下高齢群/若年群)であった. Physiological and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity (POSSUM)のphysiological scoreは24.3/14.8点, total scoreは41.1/33.5点であった.手術の術式や進行度は両群に差はなかった.術後合併症数は3.5/1.5術後在院日数は66.1/51.7日であった.高齢群を, physiological score 22点で2群に分け検討すると,高値の群では合併症の発生が多く,在院期間が長かった.高齢者で術前合併症を有する症例では,適応および術中術後管理に十分注意する必要があると考えられた.
  • 山城 一弘, 佐々木 一晃, 平田 公一, 江副 英理, 亀嶋 秀和, 高坂 一, 桂巻 正, 向谷 充宏, 木村 弘通, 伝野 隆一
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1556-1560
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当科で経験した大腸癌肝転移切除症例28例につき検討を加えた.肝切除の術式は切除縁を最低1cm確保可能であるならばより合理的かつ低侵襲と考えられる術式を選択した.術後補助療法として5-FUの持続動注(250mg/day)を可能な限り施行した. H1症例の3生率は45%, 5生率28%であり, H2症例では3年以上経過した症例は無かった. H1症例中の再発例は43%に認め,うち9割は残肝再発であった.同時性・異時性間および男女間では予後に有意な差を認めなかった.系統的・非系統的術式別では系統的切除で予後が良好な傾向を認めた.術後持続肝動注施行症候群の5生率は33%であり,非施行群に比べ良好な傾向にあった.大腸癌肝転移症例の予後向上のためには,系統的肝切除による確実な切除に加え,術後持続肝動注を主体とする補助療法の強化と工夫が重要と考えられた.
  • 前場 隆志, 若林 久男, 岡田 節雄, 濱本 勲, 前田 肇
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1561-1565
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    慢性肝炎(CH)を合併する肝細胞癌切除例23例の病理組織学的特性と遠隔成績を,肝硬変(LC)合併肝細胞癌81例と比較検討した.
    CH群はLC群に比して有意に大型肝癌の占める割合が高いこと以外には,病理組織学的な差は認められなかった.またCH群の術前肝機能(ICGR15,プロトロンビン時間)は良好なものが多く, LC群に比し肝二区域以上の肝切除例が有意に多かった. CH群の累積5年生存率は81.8%,累積5年再発率は25.5%であり, LC群の42.1%, 82.4%と比較して良好な遠隔成績であった.この理由として, CH群は広範囲肝切除例が多く手術根治性に優れていること,およびCH群は単中心性発生の可能性が高いことに対し, LC群には遺残再発例に加え,異時性多中心性発癌による再発例が含まれることが考えられた.
    CH合併肝細胞癌は切除によって良好な遠隔成績が期待できるため,可能な限り広範囲の肝切除術を適用すべきと思われた.
  • 田中 雅彦, 前川 武男, 渡部 洋三
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1566-1570
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    イレウスに対する治療成績は,近年向上しているが,一部の症例で手術適応の判定の困難さから不幸な転機をとる例もあり,さらに検討を重ねる必要がある.本研究の目的は,イレウス症例傾向を検討し,手術症例に対し重症度判定基準“APACHE II score”でretrospectiveに検討し,正確・迅速な治療を行うことにある.対象は, 2次性イレウス症例を除く174症例である.その結果,入院時の腹部理学的所見で腹膜刺激症状のある症例は,全例手術となり腸管の血行障害が認められた.死亡例のAPACHE II scoreはほとんどが11以上で,動脈血pHは有意に低く,血清creatinine値は有意に高かった.以上より,診断に際し腹部理学的所見が重要であり, APACHE II scoreも含めたその他の検査所見から総合的に判断すべきである. APACHE II scoreは,重症度判定基準として信頼性があり有用であったが,動脈血pHと血清creatinine値も簡易の重症度判定としては有用であると考えられた.
  • 田村 和彦, 日馬 幹弘, 小柳 泰久, 青木 達哉, 海瀬 博史, 宮下 智之, 渡辺 省五, 一色 淳, 松永 忠東, 中村 祐子
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1571-1575
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは乳癌術後6日目に突然の高熱を発し,翌日よりショック症状を来した症例を経験した.本症例は,通常の非定型的乳房切断術が施行され,抗癌剤等の薬剤は投与されていなかった.全身の感染巣を検索したが,いずれの部位にも認められなかった.ステロイド,昇圧剤,吸着透析等により全身状態は改善したが,自覚症状と検査値の異常は約2週間持続した.常在菌等の弱毒菌によるエンドトキシンショックが発生したためと考えられたが,乳癌手術は体表の手術のため,手術侵襲は軽度であり,このような合併症を生じることは極めて稀であると考えられた.
  • 春日井 貴雄, 木村 昌弘, 小林 学, 堀田 哲夫
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1576-1579
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    ガス壊疽は発症後迅速な処置を要し,高齢者,体幹に発生した症例は予後が悪いことが知られている.今回われわれは殿部から直腸周囲骨盤腔に広がったガス壊疽の救命症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例: 78歳男性,主訴:熱発,合併疾患:昭和60年から前立腺肥大,現病歴:平成3年3月22日40度の熱発にて近医受診,全身状態の改善認められず3月26日当院に紹介入院となった.熱発源の検索中3月31日より左殿部に発赤,硬結がみられ疼痛が出現した.急速に皮膚の壊死自潰と悪臭をともなう膿汁の排泄を認めた. X線, CT像にて殿部から直腸周囲にガス像が認められ,ガス壊疽と診断し4月4日手術を行った.人工肛門を造設し,壊死組織を可及的に切除し開放創とした.術後はオキシドールによる洗浄を行い良好な結果を得た.
  • 迫 裕孝, 阿部 元, 小玉 正智, 沖野 功次, 中根 佳宏
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1580-1584
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌の肺転移巣から過剰の甲状腺ホルモン分泌を来たした症例を経験したので報告する.
    症例は77歳,女性. 1991年4月に甲状腺左葉に低分化型乳頭癌を合併したバセドウ病に対して,残存甲状腺4gの亜全摘と左側のmodified neck dissectionを施行した.乳頭癌は5.0×3.8×3.5cmで,左内頸静脈と左胸骨甲状筋に浸潤しており,両者を合併切除した.術後経過順調であったが, 1994年5月より,残存甲状腺の腫大と甲状腺機能亢進を来たすようになった. 1995年5月には,肺転移巣も認めるようになったため,バセドウ病の再発と乳頭癌の肺転移と診断し, 131I療法に備え,抗甲状腺剤でeuthyroid状態になった6月に残存甲状腺全摘を施行した.しかし, 7月には再び機能亢進状態になったため,肺転移巣から過剰のホルモンを分泌を来していると判断した. 9月に75mCiの131Iを投与したところ, 10月には肺転移巣の縮小と甲状腺機能の正常化を認めた.
  • 大塚 康吉, 池田 英二, 内藤 稔, 小西 寿一郎, 大西 洋一, 山田 真人, 森山 重治, 辻 尚志, 古谷 四郎, 川上 俊爾, 小 ...
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1585-1588
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    甲状舌管遺残に発生した濾胞癌の1例を経験したので,本邦報告例の集計を加え報告する.
    症例は75歳の女性で,前頸部腫瘤を主訴として入院,正中頸嚢胞の診断で, Sistrunk手術を施行した.病理組織診断は濾胞癌であった.術後6年,肺転移のため死亡した.
    性別頻度は女:男=25:13,年齢別頻度は40歳代が9例と最も多く次いで30歳代の8例である.最年少例は11歳女性で,最高齢者は75歳の女性である.組織型別頻度は乳頭癌が29例と最も多く,濾胞癌は3例にすぎない.乳頭癌の予後は良好であるが,濾胞癌は本症例のごとく肺転移による死亡があり長期観察が必要である.
  • 近石 登喜雄, 山田 育子, 加藤 禎洋, 日下部 光彦, 山森 積雄, 古市 信明, 三沢 恵一, 大橋 広文, 須原 邦和, 笹岡 郁乎
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1589-1591
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 63歳の女性で, 21年前に当科にて左乳癌の診断で大,小胸筋温存,非定型的乳房切除術を施行,その後再発なく経過していたが,左前胸部手術創内側のしこりに気づき来院した.局所麻酔下に,切除生検を施行,癌細胞が認められ局所再発として入院し,全身麻酔下に局所切除術を行った.病理組織所見で,前回は乳頭腺管癌であるのに対し,今回は硬癌の所見であること,今回の組織中に正常乳腺構造を認めることより,前回の手術時に残存した正常乳腺より新たに新生乳癌が発生したものと考えられた.
    乳腺遺残の原因として,内側の胸骨付近の皮弁の作成が不十分であったと考えられた.
  • 塩見 尚礼, 近藤 雄二, 小道 広隆, 片野 智子, 宮沢 一博, 原田 佐智夫, 稲葉 征四郎, 上田 泰章, 今井 俊介
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1592-1596
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    豊胸術後に発生した稀な乳癌の3例を経験した.症例1は43歳の女性.豊胸術後11年目に外傷にてシリコンバッグ破裂.以来乳腺腫瘤の生検を繰り返され, 3年後に乳癌と診断され,左Brp+Ax,広背筋皮弁移植を行った.症例2は56歳の女性,豊胸術後24年目に右腋窩リンパ節腫脹を認め,自潰してきたため当院受診.多発性骨転移を認める進行例であった.術前化学療法を行った後両側Brt-Axを施行した.症例3は66歳の女性.豊胸術後28年目に左乳房緊張感を主訴に受診.腫瘍摘出術にて乳癌と診断されBrt+Axを施行した.豊胸術後の乳癌は本邦では1970年以来37例の論文報告をみるに過ぎず.稀な疾患である.自験例3例を含め,文献的考察を加えて報告した.
  • 中口 和則, 能浦 真吾, 中塚 義裕, 山田 良宏, 大間知 祥孝, 古川 順康, 岡島 志郎, 畠中 秀雄, 陶 文暁, 吉原 渡
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1597-1601
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 49歳の女性.約4年前に子宮頸癌(IIb期)にて,広汎性子宮全摘術,および術後放射線療法を受けた.術後3年5カ月後,外陰部,腔壁に再発し,レーザー蒸散術,化学療法が施行された.その後,下腹部を中心に皮膚転移し,同時期に右乳房腫瘤を指摘された.右E領域に径9cmの弾性硬の腫瘤を認め,マンモグラフィー,超音波,細胞診検査を施行したが,原発性か転移性か確定診断できず,初回手術後4年目に非定型的乳房切除術を施行した.術後,病理組織学的検査で子宮頸癌の転移と診断された.外来にて経過観察中,下肢・体幹の皮膚に転移再発し,左乳房にも転移した.左下肢の腫脹と疼痛で再入院し,乳腺の手術後3カ月目に胸膜炎で死亡した.文献上14例の報告があるが,ほとんどが1年以内に原病死しており,予後は極めて不良である.過大な侵襲を加えることなく加療することが肝要であると考えられた.
  • 牛谷 義秀, 長手 基義, 牛谷 宏子, 瀬下 明良, 小林 愼雄
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1602-1607
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小腸転移による腸重積症状が先行した小細胞性肺癌の1症例を経験したので報告する.
    肺癌は比較的早期に他臓器に遠隔転移をきたしやすいものの,小腸転移の報告は少なく,さらに外科的切除を施行した症例は稀である.腹痛,腹満を主訴として紹介入院となった本症例は小腸造影検査で小腸の閉塞性病変が疑われたが,腹部症状が軽快しないため緊急手術を施行,小腸腫瘍による回腸-回腸型の腸重積と判明し,回腸部分切除術を施行した.病理学的,免疫組織学的検索にて小細胞性肺癌の小腸転移と判明した.胸部X線検査, CT検査など経時的ないずれの検査でも肺原発巣の同定が困難なT0症例で6カ月後の気管支鏡で認めた気管の腫瘤性病変の細胞診で転移巣の組織所見と一致した.肺癌もしくは肺癌を疑う症例の臨床経過中腹部症状の悪化を訴えた場合,とくに小腸転移による腸重積の発症を念頭においた経過観察と入念な全身検索が重要と考えられた.
  • 堀口 淳, 小川 哲史, 澤田 富男, 池谷 俊郎, 塩崎 秀郎, 饗場 庄一, 横江 隆夫, 大和田 進, 飯野 佑一, 森下 靖雄
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1608-1611
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当院で経験した外傷性横隔膜ヘルニアの5例について報告する.受傷外力別では介達外力によるのも4例,直達外力によるもの1例であった.手術は開胸2例,開腹3例で,開胸・開腹の両者を要する症例はなかった.横隔膜破裂部は全例が左側筋性部分であった.脱出臓器は胃,大網,脾臓,横行結腸および小腸で,ヘルニア嚢を有する症例はなかった.脱出臓器の腹腔内への還納は容易で,腹腔内臓器の損傷もなかった.横隔膜破裂部の修復は,非吸収性の縫合糸で結節縫合を行った.介達外力例では,全例他臓器の合併損傷を有した.合併損傷は脳挫傷が多く,その他は,骨盤骨折,肋骨骨折などであった.
  • 丸山 憲太郎, 塩崎 均, 田村 茂行, 井上 雅智, 五福 淳二, 高山 卓也, 木村 豊, 山本 真, 門田 守人
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1612-1616
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    逆流性食道炎に併存した食道表在癌の1例を経験した.症例は67歳の男性で,中咽頭癌の診断で当院耳鼻科にて外科的治療を受けた.術後2カ月目に貧血の精査目的で上部消化管内視鏡検査を行ったところ,食道胃接合部直上に逆流性食道炎が見られた.生検の一部に癌が疑われ再検を要したが,その後誤嚥による遷延性肺炎を起こしたため経過観察できていなかった. 2年4カ月経過後に施行した内視鏡検査では,食道胃接合部直上に径20mm大のO-IIc型表在癌が認められた.外科的に切除し検索したところ,深達度m3の中分化型扁平上皮癌であった.おそらく逆流性食道炎に併存して診断困難であった小癌病変が, 2年4カ月経過後に明らかになったものと考えられた.本症例のような頭頸部癌担癌患者等の食道癌high risk群の場合,逆流性食道炎の治療を行うとともに,厳重な食道癌合併の検索が必要であると思われた.
  • 井上 慎吾, 角田 元, 松川 哲之助, 芦沢 一喜
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1617-1621
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道癌肉腫は食道癌の中でも稀な疾患である.今回この1例を経験したので若干の考察を加え報告する.症例は69歳男性で,嚥下困難を主訴に来院した.食道造影では胸部中部食道において, 2.3cmの鋸歯状変化と,それに近接して3.5×7.0cmの境界明瞭な卵型腫瘤像を認めた.食道内視鏡でも同部位に不整潰瘍と表面平滑な隆起を認めた.食道亜全摘術を施行した.病理組織学的検査では,潰瘍部は中分化型扁平上皮癌であり,隆起部は肉腫様変化と診断された.転移陽性リンパ節は肉腫様変化を示す組織ではなく,扁平上皮癌であった.潰瘍部と隆起部との組織学的移行像は認められなかった.また隆起部の鍍銀染色では上皮性の形態をとらず,免疫染色では種々のkeratin, EMAに対し陰性, vimentin, α1-ACTに対し陽性であったことより,“偽肉腫”と考えられた.
  • 井上 康一, 畝村 泰樹, 土肥 直樹, 竹村 隆夫
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1622-1625
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Barrett食道より発生したAFP産生性食道腺癌の1症例を経験した.症例は53歳男性,吐血を主訴に近医を受診し,内視鏡にて胸部食道に腫瘤を認められたため,当科へ紹介された.上部消化管内視鏡検査で,食道胃粘膜接合部の上昇と,胸部下部食道に腫瘤が認められ,生検にて低~中分化型腺癌と診断した.血清AFP値は103ng/mlと,高値を示した.他の腫瘍マーカーには異常はみられなかった.手術は右開胸開腹による食道亜全摘,胃管による再建を行った.切除標本のAFP染色は陽性で, AFP産生性食道腺癌と診断した.術後血清AFPは3.9ng/mlと正常値となり,現在術後約3年を経過するが,再発の徴候はみられない. AFP産生性食道癌は本邦報告例は1例のみであるため,極めて稀な症例と考え,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 野崎 功雄, 栗田 啓, 高嶋 成光
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1626-1630
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌術後2年目に腹部CT検査で,著しい石灰化を伴ったリンパ節転移にて再発した1例を経験したので報告する.
    症例は65歳の男性,発熱を主訴に来院.胃前庭部に1型胃癌を発見され,幽門側切除D2を行った.病理組織検査ではtub1, 1-t3 (se), P0, H0, n2, stage IIIbであり,主病巣腺管内にpsammomatous bodyを伴う石灰化を認めた.術後2年目に石灰化を伴った肝門部の4.8×3.0cmのリンパ節と石灰化を伴わない肝転移巣が上腹部CTと腹部超音波検査にて発見され,術後4年3カ月後死亡に至ったが,最終的には同リンパ節は8×5cmまで発達し,肝転移巣も石灰化を伴っていた.胃癌術後のリンパ節再発に画像上の石灰化が認められれることは極めて稀であり,本症例の石灰化の機序としてontogenic calcificationに加えてdystrophic calcificationが考えられた.
  • 酒向 猛, 関 幸雄, 武内 有城, 太田 竜夫, 滝本 一, 伊藤 信孝
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1631-1634
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は35歳の女性で妊娠9カ月の時,吐血を主訴に来院し胃内視鏡検査で胃癌と診断された.この症例に対して帝王切開と胃全摘術を同時に施行し,術後経過は母児とも順調であった.帝王切開と胃切除術を同時に行ったとの報告は極めて少なく,同時に行うことは手術侵襲が大きいため避けたほうが良いとする見解もある.しかし本例の経験よりわれわれは出血傾向をきたすような合併症がなければ,帝王切開と胃癌根治術を同時に行っても安全性には問題は無いとの結論に達した.
  • 池永 誠, 西 八嗣, 立石 晋, 榎本 拓茂, 荒井 義孝, 高野 康雄, 比企 能樹, 柿田 章
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1635-1640
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.既往歴: 1984年3月, S状結腸癌と診断されS状結腸切除, D3を受けている.現病歴: 1994年5月初旬より心窩部痛出現.上部消化管内視鏡検査を受け,十二指腸上曲から下行部にかけて巨大な潰瘍性病変を認めた.潰瘍底は凹凸不整が著明で,白苔も不均一,辺縁は堤防状に隆起を伴っていた.レントゲン,内視鏡像からは原発性なのか転移性十二指腸癌なのかの診断は困難であった. 1994年6月30日,肝転移,腹膜播種はなく,明らかなリンパ節転移も認めなかったため,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見として,大小の不整形の異型腺管が漿膜から粘膜下層にかけて多数みられ高分化型腺癌の組織像を示していた.これらの組織像は十二指腸原発の癌とは考えにくく,大腸癌の十二指腸転移として矛盾しない組織像であった.大腸癌には十二指腸への遠隔転移があるとの注意を喚気するため報告した.
  • 白水 玄山, 橋本 謙, 平木 幹久, 秋吉 恵介, 渡辺 次郎, 神代 正道
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1641-1645
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 70歳の女性で,腹痛と腹部膨満を主訴とし,腸閉塞の診断で入院した.保存的治療を行うも症状改善されず,右下腹部に小児頭大の腫瘤を認めるようになった.イレウスtubeよりの小腸造影および腹部CT検査で腸重積と診断し緊急開腹手術を施行した.術中所見では,回盲部腸重積症で,用手整復が困難なために回盲部切除と端端吻合術を施行した.切除標本では,回腸末端から約40cm口側の回腸腸管膜側に2.8×2.8×2.5cmの亜有茎性の腫瘤を認め,これが重積先進部となっていた.病理組織学的にIFPと診断された.小腸IFPの本邦報告例は43例であり,その殆どが腸重積にて発症している.本症例を検討しIFPの文献的考察を含めて報告する.
  • 平野 誠, 村上 望, 長尾 信, 荒能 義彦, 黒川 勝, 橘川 弘勝
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1646-1649
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の女性である.既往歴として5年前に腸型Behçet病で右半結腸切除(回腸25cm)を受けた.平成6年7月7日難治性腸瘻にて来院した.眼所見はないが口内アフタを認めた.腸型Behçet病再発と診断し,ステロイドを4カ月間投与したが軽快せず,同年11月30日再手術を行った.前回吻合部口側に径2cm大の腸瘻を認めたため,同部を含め回腸20cmを切除した.腸型Behçet病の手術に際しては,回腸側の十分な切除が再発予防のために必要であるとともに,早期発見を目的とした慎重な経過観察が肝要と思われた.
  • 田島 秀浩, 磯部 次正, 佐久間 寛, 今堀 努, 中 文彦, 上田 博, 井田 正博, 松原 藤継
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1650-1653
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性. 30年前に回盲部切除(詳細不明), 29年前に子宮癌にて子宮全摘および術後放射線療法を施行された既往がある.今回イレウス症状を認め,当科外来受診.イレウスは保存的に軽快したが, CTにて回結腸吻合部付近に殻状の石灰化像を呈する異物を認め,連続腸透視にて回結腸吻合部の著明な狭窄と回腸側に円形の可動性のある透亮像が認められた.また,患者が約1カ月前に梅干しの種を誤嚥したことを記憶しており,その種が放射線障害によって狭窄をきたした回結腸吻合部に嵌頓したことによるイレウスと診断し,狭窄部の切除と異物の摘出を行った.術後経過は良好であるが,本例は他にも尿路の通過障害や,皮膚腫瘍,直腸腺腫など放射線晩期障害との関連が示唆される疾患を認めており,二次性発癌の可能性も考慮した定期的な経過観察が必要であると思われた.
  • 都築 尚生, 玉内 登志雄, 岡本 哲也, 山村 等, 小路 毅, 小山 芳雄
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1654-1657
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は19歳の男性で, Crohn病の診断下に近医通院中であったが,右下腹部痛,右大腿部痛を主訴に入院した.入院時,右下腹部に手挙大の腫瘤を触知し,圧痛,筋性防御を認め,右腸腰筋徴候陽性であった.腹部CTで回盲部に直径約6cmの内部構造不均一な腫瘤と右腸腰筋内にガス像を伴ったlow density lesionを認め, Crohn病による右腸腰筋膿瘍と診断し,回盲部切除,右腸腰筋ドレナージ術を施行した.欧米では腸腰筋膿瘍はCrohn病の2.7~10%に合併するといわれているが,本邦では腸腰筋膿瘍の合併頻度は極めて低く,自験例を含めて2例と非常に稀であった.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 田中 俊行, 大和田 進, 星野 和男, 仲村 匡也, 小林 純哉, 草場 輝雄, 森下 靖雄
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1658-1662
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    空・回腸癌の頻度は全消化管癌の0.1~0.3%と少なく,発症年齢も50代を中心として若年・高齢に少ない.最近5年間の報告でみると,空・回腸癌97例中若年者は8例(8%)で, 80歳以上は3例(3%)であった.今回著者らは, 30歳の空腸癌と83歳の回腸癌の2例を経験した.いずれも輪状狭窄病変でイレウス症状を呈し,小腸造影や腹部CT検査で小腸癌と術前診断し根治切除が可能であった.空・回腸癌の術前診断は困難であり,その予後も不良である.開腹歴のないイレウス症状を呈する症例には,積極的な小腸造影や腹部CT検査が有用である.
  • 長谷川 久美, 植竹 宏之, 深山 泰永, 家城 和男, 松崎 淳, 仁瓶 善郎, 三島 好雄
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1663-1667
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    虫垂癌は術前診断が困難で,開腹時かなり進行した状態で診断される症例も多い.今回われわれは原発性虫垂癌の2例を経験したので報告する.症例1は84歳女性.主訴は右下腹部痛,発熱.術前検査で,盲腸下端より上行結腸にかけ3つの不整な隆起性病変を認め,その肛門側の2病変より中分化腺癌の診断を得た.開腹すると,後腹膜に穿破し膿瘍を形成した虫垂癌であり,術前の3病変は全て虫垂癌の浸潤によるものだった.
    症例2は69歳女性,腹満と嘔吐を主訴に来院.術前検査で盲腸下端に隆起性病変を認めるも,生検では悪性所見を認めなかった.腸閉塞を併発した回盲部腫瘍の診断で手術を施行すると,腹膜播種による回腸の全周性狭窄を伴う虫垂癌で,術前隆起性病変と観察されたのは浮腫状の回盲弁であった.
    また集計し得た最近の原発性虫垂癌本邦報告例262例について,若干の考察を加えた.
  • 穂坂 則臣, 杉田 昭, 深沢 信悟, 小泉 泰裕, 木内 幸之介, 那珂 端和
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1668-1671
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性で, 1994年8月,食後に腹痛があり, 9月になり腹部腫瘤を自覚したため近医受診した.腹部CT検査で腹腔内腫瘤を指摘され精査目的で当院入院となった.入院時には臍左側に径8cmの圧痛を伴う表面平滑,弾性硬の腫瘤を触知した.血液検査では白血球, CRPの上昇を認め,腹部CT, 超音波検査では,腹腔内に突出する内部不均一で,内腔に直線状の石灰化を伴う腫瘤を認め,腹腔内炎症性腫瘤の診断で開腹術を施行した.腫瘤は横行結腸に強固に癒着しており大網に被覆され,左腹直筋直下で腹膜に接していた.摘出した腫瘤は黄白色充実性で一部膿汁を含み,長径4cmの魚骨と思われる異物を認めた.本症例では魚骨が横行結腸を穿通し,腹腔内に膿瘍を形成したと考えられた.原因不明の腹腔内腫瘤では腸管内異物による穿通の可能性も考えて診断,治療を行う必要があるといえる.
  • 下村 誠, 五嶋 博道, 勝峰 康夫, 加藤 弘幸
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1672-1676
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は88歳女性,腹部腫瘤を主訴に来院した.来院時38.3°Cの発熱を伴い,腹部は平坦,軟であったが,濟左側に発赤,圧痛を伴った小児頭大の腫瘤を認めた.腹部超音波およびCT検査にて腹壁内膿瘍とそれに連続する腹腔内腫瘤を認め,結腸癌穿孔による腹壁内膿瘍を疑い,同日腹壁内膿瘍の切開排膿術を施行.皮下脂肪より便嗅を伴った膿汁の排出を認めた.切開術後の注腸透視にて横行結腸にapple core signを認め,手術を施行.腹壁内膿瘍を含めspindleに横切開し開腹するに,癌は横行結腸より前腹壁に強固に浸潤固定しており腹壁合併拡大右半結腸切除術を施行した.摘出標本所見では腫瘍は腹壁筋層まで浸潤し,皮下脂肪層内に膿瘍を認め,病理学的に膿瘍壁直下までの浸潤を認めた.本症では腹壁膿瘍の位置に応じた臨機応変なアプローチと筋皮弁などの腹壁再建の工夫によって膿瘍を積極的に切除する事でより根治的な切除が可能と考えられた.
  • 小棚木 均, 福岡 岳美, 吉岡 年明, 武藤 理
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1677-1680
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    管外発育を示す直腸癌の1例を報告する.症例は50歳女性で便秘にて発症した.肛門指診や注腸造影検査,腹部CT検査で直腸を圧排する直径10cmの骨盤内腫瘍を認め,血管造影にて主に上直腸動脈から栄養されるhypervascular tumorだったことから直腸平滑筋肉腫疑いとして開腹した.腫瘍は超手拳大で直腸,子宮,左卵巣,尿管,骨盤壁に浸潤していた.このため,浸潤臓器を含めて腫瘍を摘出し, S状結腸直腸吻合術と左尿管皮膚瘻造設術を施行した.腫瘍は組織学的に腺扁平上皮癌を一部に含む低分化腺癌であった.原発臓器として直腸とともに左卵巣の可能性も考えられたが,血管造影所見などから総合的に管外発育型直腸癌と診断された.直腸癌のまれな発育形式であるために報告した.
  • 花崎 和弘, 袖山 治嗣, 宮崎 忠昭, 大塚 満洲雄, 酒井 靖夫, 畠山 勝義
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1681-1685
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    永久人工肛門回避および術後排便機能向上を目的にRbに局在した早期直腸癌2例および限局した進行直腸癌2例に対し,低位前方切除後にJ-pouch作成術を施行した. 1例は結腸嚢肛門吻合術で他の3例は結腸嚢直腸吻合術であった. 2例に一時的横行結腸瘻を造設した.
    術後経過はいずれも合併症なく,順調であった.
    本術式は,根治性および術後quality of lifeを考慮した場合,今後適応範囲が拡大される有効な術式であると考えられた.
  • 大澤 武, 八木 真悟, 宇野 雄祐, 土田 敬, 龍沢 泰彦, 伴登 宏行, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1686-1690
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    重複胆嚢は頻度が0.02~0.03%と推定される珍しい胆嚢奇形である.特にその亜型である二葉性胆嚢は報告が少ない.今回われわれは二葉性胆嚢に総胆管結石を合併した症例に対し腹腔鏡下に胆嚢摘出,総胆管切開切石,一次縫合術を行ったので報告する.症例は54歳,女性.膵炎を合併した胆石胆嚢炎の診断で入院した.術前検査では総胆管結石は認めなかった.術式は腹腔鏡下胆嚢摘出術とした.術中胆道造影で総胆管内に陰影欠損を認め,総胆管を8mm縦切開し結石をフォガティカテーテルで摘出した.切開部は腹腔内で一次縫合した.摘出胆嚢は外形上正常の形態であったが,内腔は底部から頸部にかけて中隔で二分された二葉性胆嚢であった.胆石は胆嚢内両腔に存在し混合石であった.病理所見では二腔は固有の線維筋組織で囲まれていた.二葉性胆嚢は画像上術前に診断をつけることが難しいが,通常の腹腔鏡下手術が可能である.
  • 瀬尾 泰雄, 有地 茂生
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1691-1695
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹部外傷による胆嚢内出血(胆嚢単独損傷)の1例を経験したので,本邦報告8例の臨床的検討を併せ報告する.
    症例は27歳の男性,飲酒後の交通外傷で右上腹部をバイクのハンドルで強打し, 3日後,右季肋部痛を主訴に来院した.超音波検査で,胆嚢内はhyperechoic areaとhypoechoic areaが不均一に混在し, CT検査では,血液と思われるhigh density materialが胆嚢内を占めていた.外傷性胆嚢内出血と診断し緊急手術を行った.胆嚢は腫大し緊満状で,穿刺により暗赤色の血液を確認した.他臓器,術中胆管造影は異常なく,胆嚢摘除術のみ施行した.胆嚢内には暗赤色の血液,凝血塊が充満し,粘膜面は全体的に黒色調壊死状で,組織学的に胆嚢壁の出血,壊死が著明であった.
    本症の診断には超音波, CT検査が有用で,報告例の多くが,飲酒状態での受傷機転から発症していることは興味深い.
  • 花沢 一芳, 谷 徹, 星 寿和, 来見 良誠, 遠藤 善裕, 柴田 純祐, 小玉 正智, 岡部 英俊
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1696-1701
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    グルカゴノーマは,膵ラ氏島α-細胞由来のホルモン産生腫瘍で膵内分泌腫瘍の中でも稀な疾患である.臨床的には高グルカゴン血症の他に壊死性遊走性紅斑と呼ばれる皮疹,口内炎,体重減少,貧血,耐糖能低下や低アミノ酸血症などが見られ,グルカゴノーマ症候群と呼ばれている.今回われわれは,術前に確定診断はつかなかったが,切除後の組織学的および術前よりの凍結保存血漿の内分泌学的検索によって無症候性グルカゴン産生腫瘍と診断され,臨床的,および画像診断的に再発を認めないものの術後3年2カ月の現在もなお,血漿グルカゴン高値が持続している症例を経験したので報告する.
  • 関 仁史, 上田 忠, 粕谷 孝光, 小棚木 均
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1702-1706
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    化膿性尿膜管嚢胞の4例を経験した.いずれも下腹部痛を主訴に発症し, 3例は術前に本症と診断し得た.診断には,腹部超音波検査および腹部CT検査が有用であった. 1例では,嚢胞が腹腔内右側へ突出し,膀胱との位置関係がはっきりしなかったため,骨盤内膿瘍と術前診断した.治療は, 3例に対して,膿瘍のドレナージ後,嚢胞摘出術を行う2期的手術を施行した. 2例では,嚢胞摘出術に際して膀胱部分切除を併施した. 4例とも術後経過は良好であった.
    化膿性尿膜管嚢胞について,文献的考察を加えて報告する.
  • 利野 靖, 城島 標雄, 安部 雅夫, 土田 匡明, 武 浩志, 諸星 利男, 今田 敏夫, 山本 裕司, 天野 富薫, 松本 昭彦
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1707-1712
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    後腹膜腫瘍の診断で切除術を行った腸間膜脂肪肉腫の1症例を経験したので報告する.
    症例は51歳女性で右側腹部腫瘤を主訴に来院.直径約10cmの可動性良好の圧痛を伴わない腫瘤であった.血液検査では特に異常を認めなかった.腹部X線検査では淡い腫瘤陰影を認めた.尿路造影検査では右尿管の圧排,偏位を認めた.注腸造影検査では異常所見はみられず,腸管との関連はみられなかった.超音波検査では壁は平滑で,内部は均一の腫瘤であった.腹部CT検査では腫瘤は内部不均一で,上行結腸,右尿管を圧排していた.以上より後腹膜腫瘍と診断し摘出術を施行した.病理組織学的には腸間膜脂肪肉腫であった.しかし術後約3年で再発,死亡した.
    腸間膜脂肪肉腫はまれな疾患で,完全切除を施行すれば再発もなく治療成績は良好であるが,多発する症例もあり術中の検索を怠らないよう心掛けるべきである.
  • 福島 剛, 中野 詩朗, 米山 重人, 松下 通明, 内野 純一, 斉藤 功, 山田 正一
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1713-1718
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術前血清CEAおよびCA19-9が高値を示した巨大成熟型成人後腹膜奇形腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.症例は20歳の女性,人工妊娠中絶の際に右側腹部の腫瘤を指摘され来院した.入院時血清CEA 59.8ng/dl, CA19-9 166.2U/mlと高値を示した.腫瘍はCT, MRIで後腹膜腔に存在し,脂肪,骨,液状など多彩な嚢胞成分を呈する巨大な多房嚢胞性腫瘤であり,血管造影では乏血性でencasement,腫瘍濃染は認められなかった.後腹膜奇形腫との診断のもとに腫瘍摘出術を施行,摘出標本は大きさ26.5×17.5×9.3cmで重量2,325g,内部は多房嚢胞性で,白色透明な内容液と毛髪の混在した黄色の脂肪組織と思われる粥状成分によって満たされており,内溶液のCEA, CA19-9ともにCEA>10,000ng/dl, CA19-9>10,000U/mlと高値であったが,組織学的には三胚葉成分よりなる成熟型奇形腫であった.摘出術,血清CEAおよびCA19-9は正常化し,術後18カ月経過した現在,再発の徴候はない.
  • 大塚 秋二郎, 小林 健二, 加瀬 建一
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1719-1722
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈破裂による出血に対して,切除手術を行い,後に多発性内臓動脈瘤と判明した1例を経験したので報告する.症例は51歳の男性で,上腹痛にて来院し緊急入院.入院時の血液検査所見上は軽度の貧血を認めたのみであったが,まもなく腹部膨満とともにショックとなり動脈造影にて中結腸動脈からの出血を確認後,手術となった.動脈瘤部約3cmを切除した.組織学的には解離性動脈瘤であった.再度の血管造影で多発性の,すなわち上腸間膜動脈幹部,上行結腸から肝曲部に至る辺縁動脈,さらに左肝動脈起始部に動脈瘤を認めた.本例の場合,上腸間膜動脈幹の動脈瘤部から,多数の腸動脈枝が派生しており,なおかつ瘤自体が多発的に存在しているために,根本的な手術治療には相当の困難が予想され,現在のところは経過観察中である.
  • 林部 章, 十倉 寛治, 竹林 淳
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1723-1728
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例1は, 57歳,男性,安静時右下肢痛を主訴に来院,血管造影によりArteiosclerosis obliterans (以下ASO)による右総腸骨動脈閉塞症例と診断した.重篤な心疾患を合併しており,循環動態への影響を考慮してpercutaneus translumin alangioplasty (以下PTA)および血管ステントによる治療を行ったところ,閉塞部は消失し下肢の血流は改善した.症例2は, 73歳,男性,間欠性跛行および安静時左下肢痛を主訴に来院, IVDSAでASOによる左総腸骨動脈閉塞症例と診断, PTAおよび血管ステント留置術を施行したところ著明に寛解した.動脈系に対するステントは,欧米では骨盤・下肢動脈のASO症例を主な対象として, PTA単独では,治療効果を期待できない症例に試みられており,良好な成績が報告されている.血管ステントの留置術は,今後ASO症例に対する治療の一つとして考慮されるべきものであると考える.
  • 上村 佳央, 宮内 啓輔, 寺島 毅, 金子 正, 水谷 澄夫, 岡川 和弘
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1729-1733
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    透析針による穿刺が原因と考えられた非常に稀な左肘部の巨大仮性動脈瘤を経験した.症例は糖尿病性腎症にて透析を受けていた69歳女性で,左前腕遠位部の内シャント部とは離れた肘部に10×7cmの熱感および圧痛を伴う拍動性腫瘤を触知した.血管造影にて橈骨動脈からの収縮期ジェット像と壁外性に造影剤の貯留(extravasation)を認め仮性動脈瘤と診断した.血行遮断下,仮性動脈瘤を切開し多量の血栓を摘出したところ橈骨動脈壁に約3mmの円形欠損を認め,これを5-0プロリン糸にて縫合閉鎖し,仮性動脈瘤壁は層状に縫合閉鎖した.仮性動脈瘤は損傷した動脈の不適切な止血操作に伴って発症すると考えられるが,肘部では上腕動脈,橈骨動脈,尺骨動脈などが静脈と近接しているため静脈穿刺の際誤って動脈損傷を起こしやすく,本症例のように人工透析患者では穿刺針は太く,抗凝固剤を使用することもその発症に関与したのではないかと考えられた.
  • 米山 哲司, 清水 謙司, 米沢 圭, 東 久称, 森 茂, 二村 学, 白子 隆志, 山口 哲哉, 北角 泰人, 横尾 直樹
    1996 年 57 巻 7 号 p. 1734-1738
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    くすぶり型多発性骨髄腫に,肝細胞癌,胃癌を合併した三重複癌の症例を経験した.
    症例は, 67歳,男性.くすぶり型多発性骨髄腫で14年間加療中であった.イレウスを併発して入院,その加療中に肝細胞癌,胃癌の合併を発見され,各々に対して一期的に切除術を施行し,術後32日目で内科転科となった.
    多発性骨髄腫の予後が化学療法剤の発達により改善が認められるようになるに伴い,重複癌にて外科的治療を余儀なくされる機会の増加が予想される.その際,非常に稀ではあるが,複数臓器に癌が存在する可能性もあることを念頭に置き,診断,治療にあたる必要がある.
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