妊娠中に視野欠損をきたし, そのほぼ全期間bromocriptine療法を行ったprolactinoma合併妊娠の症例を経験したので報告する.
患者は26才の主婦で, 経妊2, 経産0.23才時より無月経となり, 不妊を主訴として来院した. 血中プロラクチン(PRL)値は当初より380ng/mlと高く, 頭部X-Pなどよりprolactinomaが疑われたが, 患者の強い希望によりbromocriptine療法を開始した. しかしbromocriptineの単独あるいはclomidとの併用療法により効果がみられないため治療方針をbromocriptine+HMG-HCG療法に変更した. この療法により卵巣過剰刺激症候群を併発したが妊娠の成立に成功し, bromocriptineの投与はその時点で中止した. ところが妊娠8週の時点より視力障害が出現し, 視野計測では右側の耳側半盲と左側の耳側1/4盲が, CTスキャンでは下垂体のsupraseHar extcnsionが明らかとなり, PRL値は最高で2900ng/mlにまで上昇した, ただちにbromocriptine 5mg/日の投与再開したところ, PRLレベルの下降とともに視力障害は改善し, 腫瘍も次第に縮小した. bromocriptneは分娩まで連続投与したが, 妊娠末期でのPRLレベルは800ng/ml前後にまで上昇した. この間腫瘍の増大傾向は認められなかった. 分娩は正期産で2800gの女児を得たが, 外表的には全く異常はないものの, 時々心室性の期外収縮が認められた. また, 羊水中のPRL値は312ng/mlであったが, 臍帯血のそれは4.8ng/mlと著明な低値を示した. 児の血清PRLレベルはその後漸増し, 3ヵ月目には56.6ng/mlに達し, 以後漸減した.
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