正常妊婦(N=92)の妊娠経過中の母体末梢血好中球の殺菌能の推移とその意義を明らかにするために,妊娠各時期にルミノール依存性のchemiluminescence(CL)を測定した.妊娠中の好中球CLでは評価因子のpeak値とintegral値との間には正の相関(R2=0 .995)がみられた.妊娠初期から妊娠34週頃まで妊娠経過とともにCLは緩慢な低下を示し,妊娠末期,とくに分娩前1週間時に著しく低下した.また分娩前のCLではプール血清より自己血清でオプソニン化したほうがより低値を示した.妊娠末期のC3,CH50,IgGおよびestradiolの推移は妊娠の経過とともにCH50は低下し,estradiolは上昇した.C且50はCLとの問に正の相関傾向が,またestradiolとの間に負の相関傾向がみられた.以上より,妊娠経過における好中球CLの緩徐な低下は妊娠継続のための免疫あるいはホルモン動態に連動した好中球機能の変動を意味すると考えられた.一方,妊娠末期の一時期の著しい低下は,分娩前の易感染状態を惹起し,さらにその後のCLの再上昇は分娩時の感染防御機能の回復を示唆するが,またこの現象は,今後の陣痛発来への予知因子になりうると考えられた.〔産婦の進歩49(6);623~628,1997(平成9年11月)〕
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