患者は37歳女性,2回経妊,0回経産で,主訴は過多月経.1995年4月23日近医受診時,超音波断層法にて子宮筋層に径2.5cm大の嚢腫を認め,血清CA125の値は41U/m1であった.3ヵ月後,嚢腫径は2倍となり,新たに別の嚢腫も認められた.患者は同年6月20日当科に紹介入院し,MRI画像診断にて病変は子宮前壁に発生した鏡面形成を伴う2つの出血性?胞と考えられた.また,血清CA125値は89U/mlに上昇していた.術前診断を嚢胞性子宮腺筋症とし,同年6月27日開腹術を施行.子宮前壁縦切開により核出した嚢腫内容はチョコレート様の古い血液であった.病理組織所見では嚢腫壁に子宮内膜様間質と上皮を認め,悪性所見はなかった.子宮筋層の?胞性病変に遭遇する機会はまれだが,鑑別すべき疾患は多彩である,?胞性変化を呈した子宮腺筋症の文献的報告例は少なく,その多くは卵巣嚢腫や筋腫の変性を術前診断としており,正確な術前診断を得ることは容易ではない.今回われわれはMRI画像診断により術前に嚢胞性子宮腺筋症と診断できた症例を経験し報告した.〔産婦の進歩49(3);218--221,1997(平成9年5月)〕
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