この5年間に,当院で経験した卵巣明細胞腺癌4例について検討を加え,以下の結果を得た.初診時年齢は45歳から66歳で,臨床進行期(FIGOstage)は,Ic期2例,IIa期1例,IV期1例であった.予後はIV期症例が初診後5ヵ月で死亡した以外は,現在再発なく健在し,経過観察中である.初診時主訴は下腹部腫瘤感が2例,下腹部腫瘤感と膨満感の両方が1例,下腹部痛が1例であった.術前の画像診断では4例とも悪性が推察された.病理組織診断は腺管嚢胞型2例,充実型1例,乳頭状型1例であった.全例に手術を施行し,術後化学療法(CAP療法2例,EP療法1例,MMC+ActD+CDDP療法1例)を施行した.これらの症例についての検討より,例数は少ないが,主訴,年齢,画像診断,組織型からは予後の推定は困難で,他の上皮性卵巣悪性腫瘍と同様に臨床進行期が予後を決定する因子であると推察された.残存腫瘍なしに手術を遂行し,術後化学療法,放射線療法を行うことが予後を良くするものと推察された.〔産婦の進歩49(1);6・-12,1997(平成9年1月)〕
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