産婦人科の進歩
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60 巻, 2 号
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研究
原著
  • ─正常妊娠と21トリソミー妊娠との比較─
    中西 健太郎, 澤井 英明, 山崎 智彦, 金村 米博, 香山 浩二
    2008 年 60 巻 2 号 p. 55-64
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル 認証あり
    出生前診断の領域では,胎児の染色体異常症や遺伝性疾患などの診断・検査(いわゆる遺伝学的検査)としては,羊水検査が標準的な診断方法として用いられている.しかし羊水検査は確定診断ができる一方で侵襲的検査であり,流産のリスクがあることなどから,胎児が染色体異常症である妊娠の場合に特異的な指標となるバイオマーカーを探索し,これを診断に応用しようという試みがなされている.今回われわれは,近年のプロテオミクス解析で開発された最新のバイオマーカー探索手法であるプロテインチップシステムを用いて,染色体正常妊娠と21トリソミー妊娠で羊水中の発現量に違いのあるタンパク質が存在するかどうかを検討した.プロテインチップシステムを用いて羊水上清(妊娠15~16週の染色体正常妊娠50例と21トリソミー妊娠7例)のタンパク質プロファイル解析を行った.その結果として羊水上清中に発現しているタンパク質の全体量は染色体正常群と21トリソミー群で差はなかった.また発現しているタンパク質の種類は274種類のピークとして検出されたが,これも両群ともに同じ数であった.しかし,個々の発現パターンまで調べると274種類のうち5種類のタンパク質において染色体正常群と21トリソミー群で発現量に有意に差がみられた.すなわち染色体正常群での発現が有意に高値を示すタンパク質が3種類で,21トリソミー群で有意に高値を示すタンパク質が2種類検出された.今回のプロテインチップシステムによる解析ではそれぞれのタンパク質の同定までは至っていないので,今後はこの点が重要であるが,タンパク質の発現のプロファイルだけでも診断に応用することは可能であり,本研究結果の応用はそうした方向での診断も考えられる.また,今回の研究では羊水上清を用いているが,今回検出した羊水中の低分子タンパク質の濃度は母体血中の濃度にも影響を与えると考えられるので,母体血清中の濃度にも有意差がみられれば,採血を行うことで染色体異常妊娠の検索ができる可能性もある.〔産婦の進歩60(2):55-64,2008(平成20年5月)〕
症例報告
  • 馬淵 泰士, 古川 健一, 若狭 朋子
    2008 年 60 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル 認証あり
    卵巣組織が正常卵巣とは別個に同定されることがまれにあり,これを異所性卵巣と呼び,多卵巣と副卵巣からなる.今回,われわれは異所性卵巣から発生したと考えられる成熟嚢胞性奇形腫の1例を経験したので報告する.年齢は38歳,4回経妊,2回経産.便秘を主訴に近医内科を受診し,腹部CT検査を施行したところ,子宮に接した石灰化を伴う腫瘤性病変が認められたため,当科に紹介となった.初診時,子宮右側に鶏卵大の腫瘤を触知した.子宮および左付属器に異常は認めなかった.経腟超音波検査にて,右付属器領域に境界明瞭な44×41×45mmの高エコーの壁をもつ嚢胞性病変を認めた.腹部CTでも,右付属器領域に辺縁high densityで内部low densityの腫瘤を認めた.腹部MRIでは右付属器領域に,T1強調像およびT2強調像ともにhigh intensityを呈し,脂肪抑制像でlow intensityを呈する腫瘤を認めた.左卵巣は正常であった.血液検査にはとくに異常は認められなかった.以上の所見より,術前診断を右卵巣成熟嚢胞性奇形腫の疑いと下し,腹腔鏡下腫瘍摘出術を行った.子宮および右仙骨子宮靭帯の後面に,直径4cm程度の腫瘍を認めた.腫瘍は腹膜に強固に癒着していた.両側卵巣は正常の部位に確認され,外表に異常は認めなかった.これら正常卵巣と腫瘍との間に連続性は認められなかった.腫瘍と腹膜との癒着を剥離し,これを完全に摘出した.その際,出血はきわめて少量で,腫瘍の栄養血管は確認できなかった.腫瘍壁は石灰化を認め全体に硬く,腫瘍内容は毛髪と角化物で石灰化を伴っていた.壁には原始卵胞はみられなかったが,紡錘形の莢膜細胞の増殖が認められた.これらから,多卵巣および異所性卵巣由来の成熟嚢胞性奇形腫と診断した.〔産婦の進歩60(2):65-69,2008(平成20年5月)〕
  • 和田 龍, 鈴來 ひとみ, 青木 美知, 永井 孝尚, 豊田 桃子, 藤本 和也, 山崎 則行, 中川 昌子, 木村 健二郎, 竹内 一浩, ...
    2008 年 60 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル 認証あり
    GIST(Gastrointestinal stromal tumor)は全消化管腫瘍のなかでも頻度の低い疾患であるが,卵巣腫瘍との鑑別が困難であった自己免疫性溶血性貧血(AIHA)合併の小腸GISTを経験したので報告する.症例は72歳女性.他院内科で自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断.同時に骨盤内腫瘍を指摘され卵巣腫瘍を疑い術前検査を施行したところ貧血の悪化を認め,治療目的にて当院内科紹介入院となった.入院後,ステロイド投与によるAIHAの治療を開始し,徐々に貧血は軽快傾向を認めた.腫瘍マーカーはCEA7.2ng/mlと軽度上昇,画像検査では骨盤内に約12×11cmの充実部分を有する多房性の腫瘤を認めた.卵巣癌を疑い開腹したところ,腫瘍は骨盤腔を占拠し回腸より外向性に発生していた.腫瘍摘出,小腸部分切除,子宮および両側付属器に著変は認めなかったが組織診断目的で両側付属器切除を施行した.病理組織検査では免疫組織染色でKIT陽性であり,小腸GISTと診断した.術後,追加化学療法は施行せず経過観察中であり,術後5ヵ月以上経過したが再発徴候は認めていない.また,腫瘍摘出術により貧血は著明に改善傾向を示し,AIHAは小腸GISTに続発したものと考えられた.〔産婦の進歩60(2):70-76,2008(平成20年5月)〕
  • 奈倉 道和, 西村 史朋, 勝矢 聡子, 藤田 一之, 廣瀬 雅哉, 小笹 宏, 宮崎 之男
    2008 年 60 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル 認証あり
    妊娠26週に脳梗塞を発症した前置胎盤妊娠の1例を経験した.症例は31歳の初妊婦で,前医ですでに前置胎盤と診断されていたところ,妊娠26週2日の起床時から左半身のしびれと左上下肢の脱力を自覚し,同医を受診後に脳梗塞の疑いで当院に搬送された.当院神経内科により右視床のラクナ梗塞と診断され,オザグレルナトリウムを11日間投与継続され,その後は帝王切開術の前後の期間を除いて今日に至るまでアスピリンを投与されている.治療開始後には徐々に症状の改善はみられたが,その後に後遺症として左上肢に舞踏病様の不随意運動が生じるようになった.妊娠経過中には子宮出血を認めず,妊娠37週1日に選択的帝王切開術にて健常男児を娩出した.前置胎盤妊娠に脳梗塞を併発する例はまれであるが,脳梗塞急性期治療やその後のアスピリン投与の期間は,前置胎盤からの出血に十分注意を払う必要がある.〔産婦の進歩60(2):77-82,2008(平成20年5月)〕
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