妊娠後半期の性器出血の原因には, 前置胎盤, 正常位胎盤早期剥離, 胎盤周縁洞出血などが考えられるが, きわめてまれに予想もしないような胎盤の形態異常が出血の原因となることがある. われわれは最近, 妊娠33週で辺縁前置胎盤が疑われ, 厳重な観察のもとに妊娠40週で帝王切開分娩後, 胎盤重量が930gと巨大で, しかも植木鉢様の形状を有する胎盤に遭遇した. 卵膜は子宮底と内子宮口附近でわずかに存在するが, 他の大部分は胎盤実質組織であり, 最も厚い部分は子宮後壁中央部の3.5cmで, 子宮前壁で1.5cmあった. Hinselmannの胎盤の形態分類における被包脱落膜に包ぶ胎盤の形態異常で, 膜様あるいはびまん性胎盤と考えられ, 文献にもまれな胎盤の形態異常と考えられ, 本邦での最初の報告例である.
抄録全体を表示