インフォームド・コンセントという言葉は,新聞などマスコミでもしばしば取り上げられ,一般にも広く知られるようになってきている.しかし,この言葉の意味するものや解釈については,われわれ医療者においてもまだ十分に確立した概念とはいえない.ましてや医療者ではない一般の人々にとってはまだまだ十分に浸透した概念とはいえない.今回,患者側がインフォームド・コンセントをどのようにとらえ,また医療者側がそれを実践していくうえで患者側がどのようなことを望んでいるかを知るために,産婦人科を受診した患者を対象としたアンケート調査を行った.
近畿6府県の計18産婦人科医療施設を受診した1246名の患者から得られたアンケートの回答を解析した.インフォームド・コンセントという言葉の認知度に関しては,「知っている」が33.5%,「聞いたことがない」が38.8%であった.病状や検査結果などに関する医師からの説明については,89.7%が詳しく知りたいと回答し,検査・治療の合併症についても67.9%が小さな合併症まですべて知りたいと回答した.がんの告知に関しても87.4%が告知を希望するという回答であった.治療方針の決定に関しては,「医師の判断にまかせる」が44.8%,「自分で判断する」が33.0%であったが,「他の医療機関の判断も聞いてみたい」といういわゆるセカンドオピニオンを求める回答も16.7%みられた.また,これまでに医師からの説明が不十分だと感じた経験があるかとの質問に対しては,52.5%があると回答した.産婦人科診療に求めるものはとの質問に対しては,プライバシーの保護,詳しい説明,コミュニケーションを求める声が多かった.
インフォームド・コンセントは完全ではないが少しずつ一般に浸透している.また実際の診療現場において,患者は医療者に対して詳しい説明,コミュニケーション,プライバシーの保持などのインフォームド・コンセントに関連したさまざまの配慮を強く求めている.私たち医療者はこれらの要求に真摯に応える努力を続けることが必要である.〔産婦の進歩57(4):345-353,2005(平成17年10月)〕
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