産婦人科の進歩
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57 巻, 4 号
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研究
原著
  • ─患者へのアンケート調査結果から─
    井上 卓也, 近畿産科婦人科学会日本産婦人科医会委員会
    2005 年 57 巻 4 号 p. 345-353
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
     インフォームド・コンセントという言葉は,新聞などマスコミでもしばしば取り上げられ,一般にも広く知られるようになってきている.しかし,この言葉の意味するものや解釈については,われわれ医療者においてもまだ十分に確立した概念とはいえない.ましてや医療者ではない一般の人々にとってはまだまだ十分に浸透した概念とはいえない.今回,患者側がインフォームド・コンセントをどのようにとらえ,また医療者側がそれを実践していくうえで患者側がどのようなことを望んでいるかを知るために,産婦人科を受診した患者を対象としたアンケート調査を行った.
     近畿6府県の計18産婦人科医療施設を受診した1246名の患者から得られたアンケートの回答を解析した.インフォームド・コンセントという言葉の認知度に関しては,「知っている」が33.5%,「聞いたことがない」が38.8%であった.病状や検査結果などに関する医師からの説明については,89.7%が詳しく知りたいと回答し,検査・治療の合併症についても67.9%が小さな合併症まですべて知りたいと回答した.がんの告知に関しても87.4%が告知を希望するという回答であった.治療方針の決定に関しては,「医師の判断にまかせる」が44.8%,「自分で判断する」が33.0%であったが,「他の医療機関の判断も聞いてみたい」といういわゆるセカンドオピニオンを求める回答も16.7%みられた.また,これまでに医師からの説明が不十分だと感じた経験があるかとの質問に対しては,52.5%があると回答した.産婦人科診療に求めるものはとの質問に対しては,プライバシーの保護,詳しい説明,コミュニケーションを求める声が多かった.
     インフォームド・コンセントは完全ではないが少しずつ一般に浸透している.また実際の診療現場において,患者は医療者に対して詳しい説明,コミュニケーション,プライバシーの保持などのインフォームド・コンセントに関連したさまざまの配慮を強く求めている.私たち医療者はこれらの要求に真摯に応える努力を続けることが必要である.〔産婦の進歩57(4):345-353,2005(平成17年10月)〕
症例報告
  • 二口 光里, 明瀬 大輔, 植田 政嗣, 植木  實
    2005 年 57 巻 4 号 p. 354-359
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
     タモキシフェン(Tamoxifen : TAM)は,抗エストロゲン剤として乳癌術後療法に広く使用されているが,長期服用により子宮内膜増殖性病変を惹起することが知られている.今回,乳癌術後TAM投与中,細胞診にて長期継続観察後に発症した分化型子宮内膜癌の1例を経験したので報告する.症例は70歳,2経妊2経産,閉経52歳で,平成9年1月左乳癌手術後よりTAM 20mg/dayを服用していた.以後定期的に経過観察していたが,術後5年2ヵ月後より内膜細胞診に異常が出現し,経時的に構造異型や細胞異型が増してきた.術後6年の内膜細胞診で疑陽性,内膜生検で高分化型内膜腺癌が検出され,経腟超音波検査でも内膜厚の増加がみられた.乳癌の再発や他臓器への転移は認められず,術後6年1ヵ月に単純子宮全摘術(腟壁を約3cm長く切除),両側付属器摘出術および骨盤リンパ節郭清術を行った.摘出標本の肉眼所見は年齢に比し子宮内膜は著しく肥厚し,一部襄胞状ないしポリープ様で,その周囲に硬く表面不整な部分が認められた.組織所見は襄胞状ないしポリープ様増殖を示す部分には内膜腺の著しい拡張がみられ,その周囲には異型細胞が腺腔を形成して増殖し,扁平上皮化生が随所にみられた.砂粒体はみられなかった.腹水細胞診は陰性で,筋層浸潤,付属器およびリンパ節転移は認められず子宮内膜癌Ia期(endometrioid adenocarcinoma with squamous differentiation, G1)と診断した.その後再発所見なく経過良好である.TAMにより誘発されたと思われる内膜病変を,細胞診を中心とした管理により遅滞なく診断,治療できた.〔産婦の進歩57(4):354-359 ,2005(平成17年10月)〕
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