産婦人科の進歩
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70 巻, 2 号
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研究
原著
  • 竹原 幹雄, 川口 浩史, 岩橋 晶子, 森田 奈津子, 大橋 寛嗣
    2018 年 70 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    子宮頸部細胞診におけるASC-Hの判定は,HSILとの鑑別が困難な場合が少なくない.ASC-Hの組織診は非腫瘍性変化から高度扁平上皮内病変以上を含むため,非腫瘍性変化の診断後の対応に注意が必要である.今回われわれは,当院で2012年7月から2016年3月の期間に直接塗抹法で作成された子宮頸部細胞診6644検体を対象とし,ASC-Hの頻度,判定に注意を要した細胞所見,生検組織診におけるASC-USとの比較,閉経の有無の影響および非腫瘍性変化診断後の経過について後方視的に検討した.ASC-USは204検体,ASC-Hは82検体認められ,ASCにおけるASC-Hの占める割合は28.7%であった.ASC-Hの細胞所見で濃染核を有する不規則重積細胞集塊を認め,これら集塊に核の大小不同,核形不整を伴う場合,HSILとの鑑別が困難であった.ASC-H全例(31例)に生検組織診が実施され,HSIL(CIN2/3)が15例(48.4%),非腫瘍性変化が6例(19.4%)を占め,HSIL(CIN2/3)の割合はASC-US例よりも有意に高かった(p<0.01).ASC-H例を閉経前後で比較すると両群でHSIL(CIN2/3)の割合が最も高かったが(45.8%,57.1%),HSIL(CIN2/3)および非腫瘍性変化の割合に有意差を認めなかった.ASC-H例の11例(35.5%)にハイリスクHPV検査あるいはHPVタイピング検査が実施され,8例(72.7%)が陽性だった.ASC-H例で非腫瘍性変化の診断28カ月後,1例(16.7%)がHSIL(CIN2)となり,引き続き実施したハイリスクHPV検査は陽性であった.ASC-H例ではHSIL(CIN2/3)に罹患している可能性が高い.非腫瘍性変化診断後も継続的な監視が必要である.〔産婦の進歩70(2):69-74,2018(平成30年5月)〕

症例報告
  • 藤川 恵理, 直居 裕和, 三村 真由子, 金尾 世里加, 竹田 満寿美, 三好 愛, 長松 正章, 横井 猛
    2018 年 70 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    腺肉腫は,そのほとんどが子宮内腔に発生するが,少数ながら腺肉腫が子宮外の付属器や腹膜などで発生したという報告もある.今回われわれは,術前診断に難渋し,術後病理組織検査の結果,子宮漿膜から発生した腺肉腫の診断に至った1例を経験したので報告する.症例は35歳,不正性器出血を主訴に前医受診し,子宮底部腫瘤および腫瘍マーカーの上昇(CA125 928U/ml)を認めたため,子宮筋腫あるいは子宮体癌の疑いにて当院へ紹介受診となった.術前MRI検査では子宮体部前壁から外向性に突出した8cm大の強く造影される充実性腫瘤を認め,腹膜癌を含めた悪性腫瘍の可能性を強く疑い,単純子宮全摘出術を含む手術療法を施行した.術後の病理組織検査にて,腫瘍は子宮漿膜面の子宮内膜症から発生した腺肉腫との結果であり,付属器・リンパ節転移や大網播種は認めなかったため,子宮腺肉腫pT2aN0M0, stage IIAと診断した.子宮外発生の腺肉腫ではあるが,肉眼的に残存病変はなく病理組織検査にて高悪性所見(sarcomatous overgrowthの存在,脈管浸潤等)は認められなかったため,術後補助療法は施行せずに経過観察とする方針となり,術後2カ月経過した現在,再発は認めていない.〔産婦の進歩70(2):75-81,2018(平成30年5月)〕

  • 野坂 舞子, カロンゴス ジャンニーナ, 伊藤 善啓, 半田 雅文, 伊田 昌功, 辻 芳之
    2018 年 70 巻 2 号 p. 82-88
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    子宮卵管造影検査(hysterosalpingography;HSG)は,不妊症に対するスクリーニング検査として広く施行されている.今回,HSG後に骨盤内膿瘍を発症し,経腟穿刺ドレナージによって良好な経過をたどった症例を経験したため報告する.症例は35歳,2妊2産で再婚後のパートナーとの間の挙児を希望して当院を初診した.不妊症スクリーニングとして施行したHSGで両側卵管疎通性は良好であったが造影剤の卵管周囲への貯留を認め,両側卵管周囲癒着が疑われた.検査同日の夜に発熱および腹痛を発症し,経腟超音波検査などにより,卵管周囲の造影剤貯留部位に膿瘍を形成した骨盤腹膜炎と診断し,入院管理とした.抗菌薬を投与したが,発熱が続き,その後さらにイレウスを発症した.抗菌薬投与継続と絶食補液にて保存的加療を行うも症状改善を認めず,膿瘍は縮小しなかった.また,MRI検査では膿瘍の被包化を認め,膿瘍のドレナージが必要であると考えられた.しかし,HSGの所見およびイレウスの合併から,骨盤内癒着だけでなく腸管浮腫も予想され,開腹や腹腔鏡手術による膿瘍ドレナージは容易ではないと考えられた.超音波検査では,膿瘍は,腟壁から腸管を挟まずに安全にアプローチ可能な位置にあると判断された.そこで超音波ガイド下の経腟穿刺による膿瘍ドレナージを施行した.ドレナージ後には発熱・腹痛とイレウス症状は改善し,術後14日目に退院した.現在外来管理中であるが,骨盤腹膜炎の再燃徴候は認めていない.骨盤内膿瘍は開腹や腹腔鏡手術によってドレナージされることが多いが,経腟アプローチが可能な症例では経腟穿刺ドレナージも選択肢の1つになると考えられた.〔産婦の進歩70(2):82-88,2018(平成30年5月)〕

  • 田中 サキ, 藤原 聡枝, 田中 良道, 田中 智人, 恒遠 啓示, 佐々木 浩, 寺井 義人, 大道 正英
    2018 年 70 巻 2 号 p. 89-96
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    妊娠中に発見される卵巣癌の頻度は,全妊娠のうち1/50,000と報告される.その管理方針として明確な指針は示されていない.今回卵巣悪性腫瘍合併妊娠の1例を経験したので文献的考察も踏まえて報告する.症例は38歳,未妊で,妊娠12週時に経腟超音波検査で5cm大の右卵巣腫瘍を認め,内部に充実部位を認めたため精査目的に当院紹介受診となった.MRI画像検査から卵巣悪性腫瘍が疑われたことから妊娠16週時に手術の方針とし,MRI画像上よりは卵巣癌IA期であり,また開腹時の所見よりは腫瘍の自然破綻があったため少なくともIC期と診断し腹式右付属器摘出術,大網部分切除術を施行し,病理診断はserous carcinoma, FIGO IC3期(pT1cNXM0)であった.Second trimesterよりTC(パクリタキセル,カルボプラチン)4コース施行し,妊娠37週時に選択的帝王切開術およびstaging laparotomyを施行した.児は男児で出生体重は2282g,Apgar score 1分値9点(色-1)/5分値10点であり,明らかな外表奇形は認めなかった.摘出標本の病理診断では,肉眼的に病変は不明瞭であったが,左卵巣に右卵巣同様の腺癌の残存がみられ,最終病理診断はserous carcinoma, ypT1bN0M0であった.術後化学療法を再開するにあたり,術直後より授乳は行わなかった.術後TC 3コース施行し,現在再発所見を認めず,児の発育も良好である.〔産婦の進歩70(2):89-96,2018(平成30年5月)〕

  • 山西 歩, 大西 香蓮, 古板 規子, 中村 光佐子
    2018 年 70 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    クッシング症候群は月経不順や不妊症の原因となることが知られているが,無月経を主訴に受診する患者のなかでクッシング症候群が占める割合は非常に稀である.続発性無月経を機に副腎腫瘍によるクッシング症候群と診断した症例を経験したので報告する.33歳0妊で,12歳の初経以来月経は順調であったがとくに誘因なく無月経となり,プロゲステロンテスト,エストロゲン・プロゲステロンテストでも消退出血を認めなかった.テストステロン高値を契機にクッシング症候群を疑い精査を行ったところ,DHEA-S(dehydroepiandrosterone sulfate)高値と造影CT検査で副腎に直径8cmの巨大腫瘍を認め,デキサメタゾン抑制試験で抑制を認めず,副腎腫瘍によるクッシング症候群と診断した。右副腎摘出術を施行され,腫瘍はadrenal cortical adenomaで良性の最終診断であり,術後1カ月で自然に月経が再開した.本症例では子宮体部筋層が著明に萎縮しており,子宮頸部と卵巣には萎縮を認めなかった.これらの所見が高テストステロン血症により女性生殖器に惹起された変化であるか考察する.またPCOS(polycystic ovary syndrome)とクッシング症候群の鑑別について考察する.副腎腫瘍によるクッシング症候群は続発性無月経の原因としては非常に稀であるが,鑑別を要する機会は多い.身体所見とともに血清学的な検索を行い,鑑別を進める必要がある.〔産婦の進歩70(2):97-104,2018(平成30年5月)〕

  • 杉本 麻帆, 丸尾 伸之, 石原 あゆみ, 柴田 綾子, 中野 瑛理, 三上 千尋, 陌間 亮一, 伊熊 健一郎
    2018 年 70 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    異所性妊娠には,典型的な症状や検査・画像所見は存在するものの,おのおの子宮内妊娠とのオーバーラップがあり,とくに妊娠部位の破裂を的確に診断することは必ずしも容易でない.血中hCG値や超音波検査,MRI検査では確定診断に至らないこともある.われわれはダイナミックCTを行うことによって破裂した卵管からの持続する腹腔内出血を特定し,緊急腹腔鏡下卵管切除術を行った卵管妊娠破裂の症例を経験したので報告する.症例は34歳,3妊2産.左下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した.腟鏡診にて暗赤色出血を少量認め,血液検査では血中hCG 1667mIU/mlであった.最終月経より起算すると妊娠6週6日であった.経腟超音波断層法では,ダグラス窩に腹水貯留像を認めるものの子宮内には胎嚢を確認できなかった.骨盤部単純MRIではダグラス窩と膀胱周囲に血性腹水を認めるものの妊娠および出血部位の同定ができなかった.異所性妊娠を疑ったが,血中hCGもそう高くなく腹腔内出血も少量で,強い貧血も認めないことから,保存的治療も考慮した.血中hCG 1500mIU/ml以上にもかかわらず子宮内に胎嚢を確認できなかったため,正常妊娠の可能性は限りなく低いと考え,判断材料の1つとしてダイナミックCTを撮影した.出血は左横隔膜下まで拡大しており,左卵巣腹側に線状造影効果を認めた.出血部位と考えられたため同日緊急腹腔鏡下卵管切除術を施行した.多量出血が予想されたためCell Saver 5を使用し,術中に自己血215gの返血を行った.同種血輸血は行わなかった.超音波断層法やMRIで妊娠および出血部位同定ができない場合,ダイナミックCTが有用である可能性がある.〔産婦の進歩70(2):105-112,2018(平成30年5月)〕

  • 卜部 優子, 卜部 諭, 青木 孝之, 鳥井 裕子, 藤城 直宣, 伊藤 良治
    2018 年 70 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    今回われわれは23歳の非交通性副角子宮に対し,腹腔鏡および子宮鏡を併用し手術を行った症例を経験した.症例は23歳の未婚,0妊0産である.18歳の時に副角子宮留血腫に対し,経腟的にドレナージ術を行っている.今回1週間前より持続する不正出血および下腹部痛,腰痛を主訴に当院受診した.初診時超音波により正常形態をした右子宮と,左子宮腔内のエコーフリースペースを認めた.腹部CTおよび骨盤部MRIから,左副角子宮留血腫,左卵管留水腫と診断し手術を施行した.腹腔鏡による観察では,炎症性の癒着が強く,左卵管は腫大し,左副角子宮後壁に癒着していた.また,直腸が左卵管と強固に癒着していたため,左卵巣は確認できなかった.まず,癒着剥離と左卵管切除を行い,左副角子宮を確認した.次に子宮鏡による子宮内観察では,内子宮口より右側に右単角子宮内腔を確認し,左側に前回ドレナージを行ったと思われる左副角子宮への狭い開口部を認めた.再度腹腔鏡を行い,左副角子宮と左卵巣を摘出した.術後下腹部痛・不正出血は軽快し,外来にて経過観察を行っていたが,しだいに月経痛が増強し,術後2年7カ月目より鎮痛剤を処方.経腟超音波と骨盤部MRIにより右単角子宮の子宮筋層の肥厚を認め,子宮腺筋症と診断されたため鎮痛剤に加え,ジエノゲストを処方し,現在月経痛は改善している.〔産婦の進歩70(2):113-119,2018(平成30年5月)〕

  • 黄 彩実, 峯川 亮子, 船内 雅史, 細見 麻衣, 貫井 李沙, 土田 充, 濱田 真一, 村田 雄二
    2018 年 70 巻 2 号 p. 120-125
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    近年腹腔鏡下手術の普及に伴い子宮マニピュレーターの使用も増加している.マニピュレーターによる子宮穿孔既往が原因で,妊娠時に子宮破裂をきたした報告はこれまでになく,今回当院で経験したので報告する.症例は37歳1妊0産,35歳時他院で腹腔鏡下両側卵巣嚢腫摘出術を施行した際,マニピュレーターによる子宮底部穿孔があった.その後排卵誘発・人工授精にて単胎妊娠成立し,前医での妊娠管理を開始した.妊娠糖尿病に対する食事療法以外に特記すべきエピソードはなかった.妊娠32週1日子宮収縮の自覚増強および頸管長短縮のため当院へ母体搬送となった.来院時4分ごとの子宮収縮を認め,経腟超音波検査で子宮頸管長は13mmと短縮していたが,内診上子宮口は閉鎖しており,血液検査で感染徴候は認められなかった.胎児心拍数陣痛図モニタリング cardiotocogram(CTG)で胎児well-beingを確認し,ステロイド母体投与と同時に硫酸マグネシウムによる子宮収縮抑制を開始した.妊娠32週5日腹痛の訴えがあり,触診上子宮底部に子宮収縮とは関連しない強い圧痛を認めた.子宮口は未開大で性器出血はなく,CTGで一過性頻脈消失,細変動減少,頻回の遅発性一過性徐脈の異常所見を認めた.経腹超音波検査で羊水を子宮底部のみに認め,子宮破裂を疑い緊急帝王切開を決定した.開腹時腹腔内に約800mlの凝血塊を含む血液貯留があり,子宮底部に4cmの破裂創があり同部より胎胞が視認できた.破裂部位より胎児,胎盤を娩出し,児は女児1926g,Apgar socre 6/8(1分/5分)でNICU管理となった.母体は破裂部を縫合修復し閉腹,術後赤血球濃厚液輸血を行い,経過良好で術後7日目に退院した.本症例から,低侵襲手術の普及に際し,適切なトレーニングによる安全性の追及が重要であることが改めて認識されるとともに,穿孔既往のある症例では定期的に筋層の菲薄化の評価をするなど,より慎重な妊娠管理が必要であると考えられた.〔産婦の進歩70(2):120-125,2018(平成30年5月)〕

  • 障子 章大, 山田 隆, 大原 雅代, 山田 愛, 岡村 篤夫, 太田 岳人, 房 正規
    2018 年 70 巻 2 号 p. 126-133
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    発作性夜間血色素尿症(PNH)は補体依存性に溶血をきたす疾患である.妊娠中は,補体活性が上昇するため血栓症を誘発しやすく,母体死亡,胎児死亡,流早産,胎児発育遅延などのリスクが上昇する.近年開発されたエクリズマブ(Ecullizumab)は,血栓症発生リスクを軽減すると報告されている.今回われわれは,同一患者において,従来の抗凝固療法で妊娠を管理した症例(第1子,第2子)と,エクリズマブを投与して管理した症例(第3子)を経験した.第1子の妊娠は30歳で,前医にて妊娠25週より切迫早産の診断で入院加療となった.妊娠31週5日当院紹介となり,入院後の各種検査によりPNHと診断した.血栓対策として妊娠33週2日より未分画ヘパリンの投与を開始し,妊娠37週0日に自然経腟分娩に至った.第2子の妊娠は34歳で,妊娠28週4日より子宮頸管長が短縮し入院加療となった.未分画ヘパリンの投与を開始して経過をみたが,妊娠30週4日に子宮内胎児死亡を確認した.第3子の妊娠は36歳で,妊娠27週4日よりLDHが上昇したため入院加療となった.溶血所見の増悪を認め,妊娠28週0日よりエクリズマブの投与を開始した.有害事象なく経過し,妊娠30週4日にNRFSの所見を認めたため分娩誘発を行い,経腟分娩に至った.出生児は早産による低出生体重児だったためNICU入院となったが,出生後46日目に退院となり,1歳現在(修正10カ月),順調な発達を認めている.本症例を通じて,PNH合併妊娠の管理においてエクリズマブ投与は有用である可能性が示唆された.一方で,3回の妊娠でいずれにおいても3rdトリメスターにおける溶血発作の増悪を確認し,PNH合併妊娠においてはより慎重に妊娠管理をする必要性を確認した.エクリズマブを今後さらに有用に活用し,安全な周産期管理を行うためにも使用症例の増加が期待される.〔産婦の進歩70(2):126-133,2018(平成30年5月)〕

  • 表 摩耶, 脇本 裕, 亀井 秀剛, 浮田 祐司, 原田 佳世子, 福井 淳史, 田中 宏幸, 柴原 浩章
    2018 年 70 巻 2 号 p. 134-142
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル 認証あり

    慢性早剥羊水過少症候群(chronic abruption oligohydramnios sequence;CAOS)は,一般に周産期予後は不良で初回出血の週数が早いほど予後が悪いとされている.今回,われわれは異なる経過をたどり,CAOSの予後規定因子について示唆に富む2症例を経験したので報告する.症例1は妊娠14週4日より性器出血と絨毛膜下血腫(sub-chorionic hematoma;SCH)を認め,妊娠23週4日に腹痛と多量の性器出血により当院に救急搬送され入院管理となった.入院後も性器出血は持続し,妊娠24週1日で羊水過少を認めCAOSと診断した.妊娠31週6日に陣痛が発来し経腟分娩となり健児を得た.胎盤病理は絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis;CAM)を認めなかった.症例2は妊娠15週4日に性器出血を認め当院に受診し,SCHを認めた.妊娠16週1日より持続する性器出血と子宮収縮を認め入院管理とした.同時期より羊水過少を認めCAOSと診断した.妊娠21週3日より子宮内胎児発育停止を認め,妊娠24週1日で子宮内胎児死亡となり,妊娠24週6日に経腟分娩した.胎盤病理はCAM III度であった.2例の経過を比較すると,CAOSにおいてもCAMという炎症の長期持続が児の予後不良因子であった可能性が示唆された.SCHに羊水過少を認めた場合はCAOSを念頭に,児の関連合併症に注目するとNICU併設の高次医療機関での周産期管理が推奨できる.〔産婦の進歩70(2):134-142, 2018(平成30年5月)〕

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第137回近畿産科婦人科学会学術集会周産期シンポジウム記録
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