産婦人科の進歩
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65 巻, 4 号
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研究
診療
  • 安田 実加, 安川 久吉, 岩井 加奈, 伊東 史学, 永井 景, 赤田 忍, 河原 邦光, 小池 奈月
    2013 年 65 巻 4 号 p. 381-385
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
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    近年,内視鏡下手術の普及は著しい.とりわけ,良性の子宮内病変(粘膜下子宮筋腫,子宮内膜ポリープなど)に対する治療として子宮鏡下手術(hysteroscopic transcervical resection:以下TCR)が一般的になりつつある.2009年1月から2012年5月の間に当センターで施行したTCR症例139例について調査した結果,内膜細胞診が陰性でTCR後の病理組織学的検査で初めて子宮体癌と判明した7例を経験したので報告する.術前診断の内訳は3例が子宮内膜ポリープ,1例が内膜増殖症,3例が異型内膜増殖症であり,7例とも閉経前で病理診断は類内膜腺癌G1であり,術後進行期(日産婦1995)は6例がIa期,残り1例がIb期であった.5例で追加手術を,残り2例で高用量MPA療法を施行した.閉経前であっても子宮内隆起性病変を認めた場合は,TCRを行うことでより早期の段階で子宮体癌の発見が可能となり,妊孕性温存療法を含めた子宮体癌初期症例の診断,治療判定に寄与することが示唆された.〔産婦の進歩65(4):381-385,2013(平成25年11月)〕
症例報告
  • 増田 公美, 三宅 麻子, 山本 香澄, 峯川 亮子, 土田 充, 濱田 真一, 山嵜 正人, 村田 雄二
    2013 年 65 巻 4 号 p. 386-390
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル 認証あり
    Wunderlich症候群は重複子宮,単一腟,片側頸管閉鎖による傍頸部嚢胞,患側腎欠損を合併する比較的まれな疾患である.今回われわれは,MRIでWunderlich症候群と診断した1症例を経験したので報告する.症例は17歳(G0P0)で,月経期以外にも腹痛,骨盤痛を訴えて来院した.近医を受診し,骨盤内腫瘤を認め,内膜症性嚢胞の診断を受けていた.当院でMRIを施行したところ,重複子宮を認め,左側は片側頸管閉鎖のため7.5cm大の子宮留血腫,傍頸部嚢胞,左卵管留血腫・左尿管瘤を呈していた.CTでは左腎欠損を認め,画像所見よりWunderlich症候群と診断した.左子宮留血腫,左傍頸部嚢胞による腹痛が出現していると判断し,経腟的に開窓術,ドレナージを施行した.開窓術後,腹痛は改善した.現在,外来定期通院中であるが,再発なく経過している.Wunderlich症候群はMRIによって術前診断可能なことも多く,低侵襲手術が可能であると考えられる.未治療のままで経過すると,子宮内膜症の悪化,骨盤内癒着,卵管閉塞などを引き起こし,不妊に至る可能性も高いため,早期に本疾患を診断・治療することが有用である.〔産婦の進歩65(4):386-390,2013(平成25年11月)〕
  • 南條 佐輝子, 八木 重孝, 太田 菜美, 馬淵 泰士, 岩橋 正明, 南 佐和子, 井箟 一彦
    2013 年 65 巻 4 号 p. 391-396
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル 認証あり
    放線菌症はActinomyces属によるまれな慢性化膿性肉芽腫性感染症である.骨盤内の発症は少ないが,骨盤放線菌症の罹患女性の多くが子宮内避妊器具(IUD)の長期使用歴があり,骨盤放線菌症の発症にIUDの長期装着との関連が知られている.今回われわれは術前のPET検査で強陽性を示し,悪性腫瘍との鑑別に苦慮した骨盤放線菌症の1症例を経験したので報告する.症例は55歳,2経産,IUD装着歴があった.左下腹部痛ならびに便秘を主訴に近医内科受診し,左下腹部に可動性不良な腫瘤性病変を指摘され,精査加療目的に当科受診となった.MRIでは子宮底左側に造影効果のある骨盤内腫瘍とリンパ節腫大を認め,S状結腸は壁が肥厚し骨盤内腫瘍と一塊となっていた.PET/CTでは腫瘤に一致してFDGの強い集積を認めた.下部消化管内視鏡検査ではS状結腸の腸管狭窄が著明であったが,狭窄部位の生検では悪性所見を認めなかった.血液検査では白血球数の増多,CRPの上昇を認めたが腫瘍マーカーの有意な上昇は認めなかった.骨盤内悪性腫瘍を疑い,腹式単純子宮全摘術,両側付属器摘出術,S状結腸切除術,人工肛門造設術を施行した.術後病理組織診断で左卵巣に放線菌塊を含む膿瘍の形成が認められ,骨盤放線菌症と診断した.ペニシリンによる抗菌薬治療を追加し治癒した.骨盤内に腫瘤があって画像検査で卵巣悪性腫瘍が疑われる場合には,骨盤放線菌症についても念頭に置きIUDの装着歴,あるいはその既往について注意深い問診を施行する必要があると考える.〔産婦の進歩65(4):391-396,2013(平成25年11月)〕
  • 佐々木 高綱, 新納 恵美子, 重光 愛子, 正木 沙耶歌, 山口 永子, 水田 裕久, 山田 嘉彦
    2013 年 65 巻 4 号 p. 397-401
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
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    母児間輸血症候群は母体血中の胎児血(HbF)の存在で診断する.多量の母児間輸血はまれで,出生前診断も困難である.出生前に超音波検査で母児間輸血症候群による胎児貧血を疑った症例を経験したので報告する.患者は38歳女性で,0回経妊,0回経産,特記すべき既往歴なし.当科で妊婦健診施行され異常なく経過した.妊娠40週2日に自然破水のため入院した.分娩1期にvariable decelerationが出現した.羊水過少はなく微弱陣痛であり,oxytocinによる陣痛促進を施行したところ,minimal variability,decelerationが出現した.胎児超音波検査でcardiothoracic area ratio(CTAR)40.0%の上昇,および中大脳動脈収縮期最大血流速度(MCA・PSV)の高値(102cm/s)を認めたため,貧血による心不全と判断し緊急帝王切開術施行した.児は2682gの女児で,Apgar score1分値2点,5分値9点であった.児のHbは6.2g/dlと貧血で,母体血中のHbFは5.7%と上昇し,母児間輸血症候群と診断した.〔産婦の進歩65(4):397-401,2013(平成25年11月)〕
  • 寒河江 悠介, 渡邉 のぞみ, 稲田 収俊, 宮崎 有美子, 横山 玲子, 坂田 晴美, 吉田 隆昭, 中村 光作
    2013 年 65 巻 4 号 p. 402-407
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
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    外陰Pagat病は,皮膚またはその付属器から異型腺細胞が発生した原発性Paget病と,肛門癌,直腸癌,膀胱癌,子宮癌が上皮内に進展した続発性Paget病に分類される.この分類は治療方針を決定する際に重要となる.今回われわれは,隣接臓器に悪性腫瘍を認めなかったために当初原発性外陰Paget病として治療を行ったが,術後の免疫染色(cytokeratin20・GCDFP-15)で続発性外陰Paget病が疑われ,その後に尿道原発癌が明らかとなった1例を経験した.術前に免疫染色を行うことによって続発性外陰Paget病と診断していれば,異なった治療法を選択していた可能性がある.本症例は外陰Paget病の発生起源の検索に免疫染色が有用であったため,文献的考察を交えて報告する.〔産婦の進歩65(4):402-407,2013(平成25年11月)〕
  • 出口 可奈, 谷村 憲司, 園山 綾子, 平久 進也, 森實 真由美, 森田 宏紀, 山崎 峰夫, 山田 秀人
    2013 年 65 巻 4 号 p. 408-413
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル 認証あり
    高安病は大動脈およびその分岐の大・中動脈炎を主徴とする疾患で,若年女性に好発する.今回われわれは高安病合併妊娠の4症例を経験したので報告する.4例とも妊娠前に高安病と診断されており,全例妊娠可能と判断されていた.2例は妊娠前に外科治療の既往があり,1例は,上行大動脈の拡大に対して人工血管置換術,大動脈弁閉鎖不全症(AR)IV°に対して,大動脈弁置換術(生体弁),腹部大動脈の拡大に対して人工血管置換術を施行されていた.もう1例は,AR IV°に対して,大動脈弁置換術(生体弁)を,左鎖骨下動脈の狭窄に対して大動脈左鎖骨下動脈バイパス術を施行されていた.4例とも妊娠前よりプレドニゾロン(PSL)治療が行われており,心エコーでの心機能評価,CT・MRIでの血管病変の評価,採血での炎症反応の評価にて,妊娠前の病状はPSL維持量で安定していた.3例は陣痛による血圧上昇をコントロールする目的で無痛分娩となり,1例は左腕のしびれが出現したことで高安病の悪化を疑われ,帝王切開による分娩となった.産褥期は母児ともに良好に経過した.今回の4症例では,妊娠前からの病態把握,妊娠中の慎重な内科的管理と治療および分娩管理により,良好な周産期帰結となった.〔産婦の進歩65(4):408‐413,2013(平成25年11月)〕
  • 西澤 美嶺, 宇山 圭子, 中西 隆司, 明石 貴子, 斎藤 仁美, 小川 恵, 古妻 康之, 奥 正孝
    2013 年 65 巻 4 号 p. 414-421
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/27
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    乳癌は妊娠に合併する悪性腫瘍としては子宮頸癌に次いで発症頻度が高く,近年の罹患率の増加を考慮すると,日常診療で遭遇する機会は決してまれではない.今回,当院で経験した乳癌合併妊娠5症例の診療経過を検討し,診断や治療上の留意点などに関して考察した.5症例の平均年齢は35.8歳(32-39歳)で,初発症状は4例が乳房腫瘤の自覚,1例が乳頭血性分泌であった.診断確定時期は,2例が妊娠初期,1例が妊娠中期,2例が妊娠後期であった.外科手術は,1例が人工妊娠中絶後,3例は妊娠継続中,残る1例は分娩後に施行した.組織型は,1例が非浸潤性乳管癌,残り4例が浸潤性乳管癌であり,臨床進行期としては,Stage0が1例,StageIが2例,StageIIBが2例であった.Stage0の非浸潤性乳管癌を除く4例で術後補助療法を行い,うち2例に再発を認めた.妊娠合併乳癌の早期診断は決して容易ではなく,早期発見のためには検診体制の充実,セルフチェックなども含めた啓発活動と,患者の訴えを聞き逃すことなく専門医療機関へ紹介する意識が重要である.妊娠期乳癌の治療に際しては,産婦人科と乳腺外科が綿密に連携し,十分な情報を提供したうえで,個々の症例に応じた治療計画を作成していく必要がある.〔産婦の進歩65(4):414-421,2013(平成25年11月)〕
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第127回近畿産科婦人科学会 第98回腫瘍研究部会記録
「卵巣癌(悪性卵巣腫瘍)の診断と治療」
「卵巣がんに対する術前化学療法の是非と適応」
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