多含水炭素食と多脂肪食とのビタミンB_1(B_1)消費量の相異に就いては, 其間に差異を認めたとするEvans Lepkousky, Westenbrink等の説とKemmer, Steenbook, 米地等の反對説があり, 決定的な結論が得られてゐないが, 何れも動物の飼養試驗に依るものであり, 食質とB_1需要量の相異に就いての人體實驗は少ない。B_1ピロ燐酸鹽が含水炭素の代謝過程に於て經過する焦性葡萄酸を分解する働きを有するが故に, 焦性葡萄酸を經過する事の少ない脂肪食が含水炭素食に比べてB_1消費量が少いのが當然と考へられるが, 實際に吾々の日常食に於て, 生理的に許され得る限界を越えぬ極度の多脂肪食と多含水炭素食とが, 果してB_1の需要量にどの程度の影響を及ぼすか, 即ち多含水炭素食と多脂肪食とのB_1需要量の相異に就いて人體實驗を行つた結果, 一定量のB_1攝取にも拘はらず, 多脂肪食(總カロリーに對する脂肪カロリー30〜31.5%其約85%は椰子油を使用)に於ては多含水炭素食(總カロリーに對する含水炭素カロリー80〜89%)に於けるよりも, 尿中に排泄せられるB_1量が多かつた故多脂肪食に於ては多含水炭素食よりも需要量が少くてすむと考へられる結果を得た。以下本論並びに實驗の部に於て詳細に報告する。
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