NAD^+は,生体内でナイアシンから生合成され,酸化還元酵素の補酵素としての働きが,長年にわたって主たる生理作用と考えられてきた.ところが,モノADPリボシル化反応やポリADPリボシル化反応という代表的な翻訳後修飾反応の特異的な基質として,さらに,シグナル伝達のセカンドメッセンジャーとしてのサイクリックADPリボース生成の基質としての働きが明らかにされるに至り,さまざまな代謝や病態との関連性が示唆され,明らかにされてきている.さらに近年,NAD(H)が遺伝子発現の制御に関わるコファクターとして機能しているとの報告が蓄積されてきた.AdhE(alcohol dehydrogenase E; アルコール醗酵を中心とする多機能酵素をコードする遺伝子)ならびにSir2(silent information regulator 2 ; ヒストン脱アセテル化活性をもつ,転写サイレンシング調節因子)タンパク質については既に本誌のトピックスで紹介してきたが,それらも含めて今回はCtBP(C-terminal binding protein; アデノウイルスE1AのC末端領域に結合する発がんの転写抑制因子)を中心に最近の進展について紹介する.
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