Drug Delivery System
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28 巻, 4 号
9月
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集“脳をターゲットとするDDSの基礎と臨床” 編集:武田真莉子
  • 立川 正憲, 内田 康雄, 寺崎 哲也
    2013 年 28 巻 4 号 p. 270-278
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル フリー
    良好な脳移行性を持った中枢疾患治療薬を開発する上で、ヒト血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)の薬物輸送機能を解明することは必須の課題である。私達の研究室が確立した標的絶対定量プロテオミクス(Quantitative Targeted Absolute Proteomics, QTAP)の手法は、中枢疾患治療薬創薬のボトムネックであった、薬物のBBB透過性におけるin vitroin vivoの違い、ヒトと動物の違い、正常と疾患の違いを定量的に解明することが可能である。さらに、in vitro輸送解析データと単離毛細血管におけるトランスポーターの絶対発現量に基づき、in vivo BBBの輸送活性を再構築できることを実証し、ヒトin vivo BBB輸送機能の予測に突破口を開いた。
  • 岩本 典子, 古瀬 幹夫
    2013 年 28 巻 4 号 p. 279-286
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル フリー
    上皮組織は体内の恒常性を保つために、外界と体内環境を厳密に区分している。上皮細胞の細胞間接着装置であるタイトジャンクション(tight junctions: TJ)は、傍細胞経路での物質の透過を制御して上皮細胞シートのバリア機能を司る。TJの主要な構成分子は4回膜貫通タンパク質のクローディンであり、遺伝子ファミリーを形成している。血液脳関門(Blood-brain barrier: BBB)は中枢神経系のホメオスタシスを保つために重要な役割を果たしており、脳毛細血管の内皮細胞に存在するTJがそのバリア機能の要である。現在多くの神経疾患や病態においてBBBの破綻が関与することが示唆されている。さらに中枢神経系へのドラッグデリバリーの観点からBBBのTJをターゲットとして創薬につなげる試みもなされており、今後の進展が期待される。
  • 亀井 敬泰, 武田 真莉子
    2013 年 28 巻 4 号 p. 287-299
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病に代表される中枢疾患は、依然として治療満足度・薬剤貢献度の低い疾患群に分類されている。そのため、これら疾患に対して有用性の高い薬物治療法の確立が現在強く求められている。近年、中枢疾患治療として、内因性の脳内活性タンパク質や、治療部位をターゲットとするモノクローナル抗体などのバイオ薬物の利用に期待が集まっている。しかし、従来の投与法を介してバイオ薬物の脳内活性を得るためには、脳薬物移行性における最大の障壁である血液脳関門の透過性を著しく改善する、もしくは回避するストラテジーを確立する必要がある。本稿では、バイオ薬物の効率的脳内デリバリーを達成するためのさまざまなストラテジーについて、近年の研究例を紹介する。
  • 竹ノ谷 文子, 平子 哲史, 影山 晴秋, 野中 直子, 塩田 清二
    2013 年 28 巻 4 号 p. 300-309
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル フリー
    ガラニン様ペプチド(GALP)は1999年にブタの視床下部より同定された60アミノ酸からなるペプチドである。GALPの脳室内投与により摂食量と体重の低下がみられ、さらに体温上昇とエネルギー代謝の亢進がみられる。したがってGALPは抗肥満治療薬として将来臨床応用が可能と考えられている。本稿では、GALPの摂食抑制作用とエネルギー代謝亢進についての生理作用を解説する。GALPの点鼻投与はその効果を脳に及ぼすためにきわめて有効な手段であると考えられる。我々は動物を用いたGALPの点鼻投与実験により、とくに肥満動物においてこの投与が摂食と体重減少を生じることをみている。今後、GALPがヒトへ臨床応用されて抗肥満および生活習慣病の予防薬となることを期待している。
  • 東田 陽博
    2013 年 28 巻 4 号 p. 310-317
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル フリー
    オキシトシンは脳内に放出され、扁桃体をはじめとする「社会脳」領域を介して社会性行動、特に信頼を基礎とするあらゆる人間相互間活動に影響を与える。オキシトシン遺伝子や受容体、オキシトシンの脳内分泌を制御するCD38などがそれらの機能を司る。オキシトシンの鼻腔単回投与により健常人、自閉症スペクトラム障害者ともに、目を見るなどの対人関係行動の改善や促進があり、連続投与により、社会性障害症状の改善が報告されている。オキシトシンの末梢投与により、オキシトシンは脳脊髄液中や脳内へ移行すると思われるが、まだ十分な証拠はなく、移行の分子メカニズムを含めて、今後の研究が待たれる。
  • 金沢 貴憲, 高島 由季
    2013 年 28 巻 4 号 p. 318-327
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル フリー
    経鼻投与は、血液脳関門(BBB)を介すことなく脳内に薬物を非侵襲的に送達する新たな投与経路として期待されている。これには、鼻粘膜透過性や脳への移行性を高めるDDSキャリアが必要である。本稿では、細胞透過性ペプチド修飾高分子ミセルの経鼻投与用キャリアとしての有用性について、脳内への薬物および核酸の送達性、ならびに脳腫瘍モデルラットにおける治療効果など、我々の持つ知見をもとに紹介する。
  • 金山 洋介, 新垣 友隆, 尾上 浩隆, 渡辺 恭良
    2013 年 28 巻 4 号 p. 328-334
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/12/26
    ジャーナル フリー
    生体分子イメージング技術は、薬剤開発における重要な技術となってきている。特にPET(Positron Emission Tomography)は高い感度と定量性、プローブの多様性から、病態の分子医学的把握による疾患診断、薬効評価を可能にし、合理的な薬物送達システム(DDS)の評価を行うことに役立つ。脳は高度な機能と複雑な構造を有し、薬剤や毒物の移行を制限する血液脳関門によって恒常性が保たれている。脳を標的とした薬剤の開発においては、非侵襲的に薬剤の脳内分布を解析可能な分子イメージング技術の必要性が高い。本稿ではPETを用いた血液脳関門における薬剤トランスポーター機能の解析、薬剤の脳内移行の視覚化と薬効評価の例を通して分子イメージングの有効性について概説する。
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