大動脈瘤発生要因の一つに血行動態学的要因が存在する。今回われわれは血行動態学的要因改善を目的に,囊状腹部大動脈瘤に対しステントを留置したモデルを作成し血行動態の変化を解析した。ステント留置を行うことで壁面せん断応力,瘤内の平均流速,エネルギー損失,圧力損失係数が低下し,囊状腹部大動脈瘤周囲の血行動態が改善した結果を得た。ステント留置が腹部大動脈瘤に対する新たな治療手段になる可能性が期待できる。
症例は57歳,女性。全身性エリテマトーデスにてステロイドを長期内服中。2015年右総腸骨動脈(CIA)閉塞症に対して右CIAから右外腸骨動脈(EIA)にステントを留置された。2021年9月に左下肢間欠性跛行あり,CTより右CIA瘤,左CIA–EIA閉塞,腹部大動脈拡張と診断した。待機的に腹部正中切開にてステントを抜去後,腎動脈下腹部大動脈と両EIAとをY型人工血管で置換した。