慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者において,線溶系阻害蛋白TAFI(thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor)の一塩基多型を発見し,血漿中の活性型TAFI上昇を認めた。さらに,TAFIの過剰発現マウスでは,CTEPH患者同様の肺動脈狭窄や途絶像,肺高血圧悪化を示し,低酸素環境3週間で40%が突然死した。創薬スクリーニングで見出した活性化TAFI阻害薬やフィブラート系薬剤は,TAFI過剰発現マウスの血漿中TAFIを減らし,肺動脈途絶像を減少させ,生存率を著しく改善した。
孤立性上腸間膜動脈解離は比較的まれな疾患であり,治療法に関して一定の見解は得られていない。今回われわれは2014年1月から2018年6月までに経験した10症例の臨床像について換討した。男性8例女性2例で,平均年齢は49歳であった。6例が高血圧を有していた。診断は造影CTでなされ,偽腔閉塞型が6例であった。全例内科的に治療され経過は良好で死亡例はなかった。若年男性の急性腹症の診断においてSMA解離の鑑別は必須である。その予後は良好で保存的治療が優先される。