末梢動脈疾患患者では高齢ほど死亡リスクは高いが,国民平均に対する死亡の相対リスク比は若年ほど高く,また若年ほど動脈硬化のリスク因子の集積を認めやすい。さらにこうした動脈硬化のリスク因子の集積状況は冠動脈疾患とは大きく異なる。こうした実態は末梢動脈疾患患者の全身管理戦略を考えるうえで重要になろう。また全身管理という観点では,包括的高度慢性下肢虚血発症患者の受療実態にも解決すべき課題が残されているように思われる。
症例は76歳,女性。労作時呼吸困難を認め前医受診し,肺血栓塞栓症の診断で当院転院搬送となった。CTで肺血栓塞栓症,下肢深部静脈血栓症を認め,下大静脈フィルターを留置した。10日後,腰痛出現しCTで後腹膜血腫,腰動脈損傷を疑った。同日緊急で血管造影,腰動脈コイル塞栓術施行し良好な経過を得た。下大静脈フィルターの留置による腰動脈損傷は稀な合併症であるが,常に念頭に置きながら治療に臨むことが重要である。