リンパ管疾患にはさまざまな病態が含まれるが,リンパ再建手術が適応となる疾患としてリンパ漏・のう胞(LR/LC)とリンパ浮腫(LE)がある。難治性LR/LCでは漏出部を同定し,リンパ管リンパ管吻合(LLA)やリンパ管細静脈吻合(LVA)による再建術を行う。軽症LEではバイパス術を,重症LEではリンパ節移植(LNT)による再建を検討する。軟部組織・リンパ管欠損例では,リンパ管間置移植(LIFT)による再建が望ましい。病態に応じてLLA・LVA・LNT・LIFTなど適切なリンパ再建手術を行うことが肝要である。
症例は45歳男性。CTで上行大動脈に多発囊状瘤を認め早期手術施行となり,手術所見で同部位に突出長が5~25 mmの多発囊状瘤を認め,感染像はなく上行大動脈置換術を施行した。病理所見は真性大動脈瘤で,大動脈壁に内膜,外膜の線維性肥厚と中膜の菲薄化と炎症細胞浸潤と壊死像を認め,高安動脈炎の病理像であった。多発性囊状上行大動脈瘤は非常に稀で,高安動脈炎の病理組織像を呈した報告は検索しうる限りなかった。
川崎病は,主に乳幼児が罹患する中型血管炎を特徴とする全身性の血管炎である。また,冠動脈瘤を形成することによって予後不良となりうる疾患である。症例は心肺停止にて搬送された6カ月,男児。病理解剖の結果,全身の広範な血管炎および冠動脈瘤を認め,川崎病血管炎による突然死と診断した。急激な経過をたどった川崎病血管炎の一剖検例を経験したので報告する。
症例は66歳,男性。左下肢腫脹のため他院を受診。造影CTで左腸骨–大腿静脈型血栓を認め,下大静脈フィルター(以下フィルター)が挿入された。血栓消失後カテーテル的なフィルター回収が試みられたが,下大静脈穿孔が疑われたため,当院搬送となり外科的に回収した。フィルターでは,回収が勧められており,外科的対応が必要となる例も存在する。安全な回収のためにはフィルターの構造の把握と透視下の対応が肝要と考えられた。