リンパ研究の世界と日本の歩みを概説し,日本脈管学会と日本リンパ学会との関係について紹介しました。最近のトピックス,Glymphatic pathwayを取り上げ,解説しました。併せて,私共の最近の研究成果,水分を摂取する事が未病に繋がる医科学的根拠を空腸リンパの機能的特性と合わせて解説しました。併せて,尿の浸透圧変化率からヒト胸管リンパ流量が推定でき,リンパ療法士の実技試験に活用できる事を説明しました。
CEAP分類C4aの下肢静脈瘤に対して,原因血管である大伏在静脈と不全穿通枝に対し,連続焼灼法での伏在静脈の焼灼術とパルスモード法での経皮的不全穿通枝焼灼術を同時施行した。合併症は認めず,術後3カ月の超音波検査で不全穿通枝の閉塞を認めた。波長1470 nmレーザーを用いたパルスモード法による経皮的不全穿通枝焼灼術の報告はなく,若干の文献的考察を加えて報告する。
3日間で30 mmの拡大と無痛性の破裂所見を来した感染性腹部大動脈瘤を経験したので報告する。症例は78歳の女性。下痢と食思不振を主訴に前医に搬送され,感染性腹部大動脈瘤の診断で当院に紹介となった。入院3日目に理学療法士が腹囲の急激な拡大に気づいたため緊急CTを撮影し,瘤径の拡大と破裂所見を認めた。緊急で非解剖学的再建を行い救命し得た。培養からはサルモネラ菌が検出されこれが起因菌と考えられた。
症例は65歳男性。腰痛を主訴に搬送され,造影CTにてStanford B型急性大動脈解離を認めた。下行大動脈真腔の狭小化と腹腔動脈起始部の閉塞が認められたが末梢は造影されていた。緊急で胸部ステントグラフトによるエントリー閉鎖を行った。術後経腸栄養開始後に肝逸脱酵素の上昇を認め,側副路血流の減少による肝臓虚血と判断し大伏在静脈グラフトによるバイパス術を施行した。術後肝虚血所見は消失した。
稀な足背動脈瘤の1例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。症例は55歳男性で半年前から右足背の疼痛と腫脹を自覚し近医を受診した。血管エコーで足背動脈瘤の診断となり当院を紹介され,CTで23 mmの動脈瘤が認められた。瘤を切除し大伏在静脈を用いた血行再建術が行われた。病理所見では,動脈壁の中膜に解離があり,内膜にはプラークを認め,動脈硬化性の足背動脈真性動脈瘤と診断された。
症例は51歳男性。25歳時に慢性腎不全に対し右内腸骨動脈–腎動脈吻合の生体腎移植を施行されている。腎移植後26年目に腹部超音波検査で右腸骨動脈瘤を初めて指摘され,CTで右総腸骨動脈から内腸骨動脈にかけて最大短径31 mmの囊状瘤を認めた。手術はaxillo-femoral artery bypassによる一時バイパスと局所冷却を併用した移植腎保護を行いつつ,人工血管を用いた血行再建を行った。術後経過は良好で,腎機能悪化なく経過し,第15病日に退院となった。
急性A型大動脈解離を発症した腹部大動脈瘤2例に対して急性期に弓部置換術を行い,二期的に腹部大動脈人工血管置換術および残存したentry閉鎖と大動脈のリモデリングを期待して胸部ステントグラフト内挿術を施行した。2例とも術後対麻痺の合併症は認めず,術後CTで良好なリモデリングが得られた。今回施行した術式は安全かつ有用な治療の選択肢の1つとなりうると考えられた。