カテーテル手技の進歩によりハイリスク群への適応が拡大したがそれゆえに穿刺部感染例の治療に苦慮する症例も散見する。今回,形成外科医による皮膚軟部組織再建術を必要とした穿刺部感染例について検討を加えた。止血デバイス感染例の中に血管縫合糸からの再感染例を認め,血行再建は吻合部を汚染創から離せるバイパス術が良いと思われた。CLTI例では穿刺部血腫も遠隔感染のリスクとなる。低侵襲の裏に潜むリスクの啓蒙を外科医が行うことは重要と考える。
症例は48歳男性。急性A型大動脈解離に対してフローズンエレファントトランク(frozen elephant trunk: FET)併用弓部置換術が行われたがFETが偽腔誤留置となった。その後下行大動脈が拡大傾向を示したためカテーテル的開窓術とステントグラフト内挿術を行い,下行大動脈偽腔の良好な血栓化が得られた。FET偽腔誤留置に対するカテーテル的開窓術とステントグラフト内挿術は有用であった。
急性B型大動脈解離は,発症から治療途中にさまざまな合併症を伴う疾患である。われわれは,急性B型大動脈解離を発症し,間質性肺炎の急性増悪からARDSを発症した症例を経験したので報告する。80歳男性。主訴は背部痛。急性B型大動脈解離を認め,安静降圧管理を開始した。入院後3日目に呼吸苦を認め,酸素化不良でCTを施行したところ,特発性間質性肺炎の急性増悪および,それに伴うARDSの診断で,BiPAPとメチルプレドニゾロンを開始し軽快した。
症例は74歳男性。左浅大腿動脈閉塞に対して以前に人工血管(GORE PROPATEN 8 mm)による左総大腿動脈–膝窩動脈バイパス術(FP bypass術)を施行した。術後1年10カ月後に間欠性跛行症状の再発を認めた。computed tomography angiogramを施行したところ,FP bypassグラフトの末梢側吻合部に75~90%狭窄を認めた。同部位に対してVIABAHNを用いて経皮的血管内治療を施行した。術後ABI値は正常化し下肢症状も消失した。術後23カ月経過した現在でも間欠性跛行症状なく安定して経過している。