四肢は動静脈奇形の好発部位であり,血管内治療の果たす役割は大きい。その理由として,表在(皮下)病変,深部(筋・骨)病変のいずれにも経動脈的,経静脈的あるいは直接穿刺によるアプローチが比較的容易であることがあげられる。また,硬化療法を併用する場合,硬化剤の中枢静脈への流出を防止し,標的血管内に長時間停滞させることがポイントとなるが,そのための血流コントロールを確実に行うことが可能である。病変の解剖,血流動態を正確に評価し,症例に応じた適切な治療方法を選択することが,治療効果の向上と合併症の予防に重要である。
75歳男性。食欲不振を主訴に受診。採血にて肝腎機能低下,単純CTにて腹部大動脈瘤を認めた。入院後透析施行するも腎機能の改善は不良であった。造影CTにて下大静脈との瘻を認めたため手術目的に当科紹介。瘻孔閉鎖+Yグラフト置換術を施行し,術後速やかに腎機能は改善した。腹部大動脈瘤に合併する右心不全症状や急性の肝腎機能低下を認めた場合は腹部大動脈瘤–下大静脈瘻も鑑別診断に入れる必要がある。