腹部大動脈瘤,腸骨動脈瘤に対するステントグラフト内挿術において慢性腎臓病を有する患者は少なくない。そのような患者では造影剤腎症のリスクが高いため,造影剤減量を目的とした炭酸ガス造影が有用である。造影剤腎症の見解,炭酸ガス造影の特徴など一般的知識に加え当院における実際の症例提示も含め記述する。
末梢閉塞性動脈疾患の早期診断には足関節上腕血圧比を用いた非侵襲的スクリーニングが重要である。また臨床において早期診断の手がかりを得るためには脈波伝播速度,upstroke time, %mean arterial pressureおよび足趾上腕血圧比を用いることで診断精度を上げることができる。本稿では実際の症例を提示して,これらの指標をいかに用いて診断,病変部,重症度を推測していくかを解説する。
小伏在静脈の血管内焼灼術では,膝窩部の深部は神経損傷回避のため通常は焼灼を行わず,末梢の表在部分に限定されている。しかし,膝窩部の深部静脈合流部周囲は解剖学的変異が多く,抜去術ではその処理が不十分なことによる再発が懸念されていた。そこで,末梢の焼灼に深部静脈合流部周囲の外科的処理を組み合わせる方法を考案した。本方法は膝窩部の外科手技に関連した問題はあるが,焼灼術の根治性を高める可能性が考えられた。
孤立性腸骨動脈瘤は破裂のリスクが高く,破裂した場合は手術死亡率も高い。水腎症を合併した巨大孤立性右総腸骨動脈瘤破裂症例を経験した。患者は78歳,男性。術前ショック状態,右水腎症を合併した孤立性右総腸骨動脈瘤腹腔内破裂を認めた。緊急開腹手術による人工血管置換術を施行し,水腎症は保存的に経過観察した。術後合併症なく経過した。水腎症は超音波検査でフォローし,半年後にCTによる評価でほぼ消失したことを確認した。
超音波ガイド下トロンビン注入療法(Ultrasound-guided thrombin injection: UGTI)により治癒した,外傷性仮性後頭動脈瘤の一例を経験した。96歳女性。転倒し後頭部を打撲した。受傷4日目に外傷性仮性後頭動脈瘤が生じていることを,エコー・CTにより診断した。トロンビン100単位によるUGTIを施行し,動脈瘤の血栓化を得た。合併症・副作用は生じず,動脈瘤は消失した。
症例は,Saddle emboliを伴う感染性心内膜炎に対して手術を施行した43歳の男性。多発脳出血,および両側腎梗塞・脾梗塞を認め,腹部大動脈から両側総腸骨動脈にかけて巨大塞栓を認めた。心臓超音波検査では巨大疣腫を伴う重度僧帽弁閉鎖不全症を認めた。僧帽弁置換術を施行,二期的に腹部大動脈塞栓に対して,人工血管置換術を施行した。感染の再発もなく,経過良好である。