虚血急性期の心筋において主要なエネルギー基質となる糖利用の促進は,心筋が虚血耐性を獲得するうえで重要なプロセスである。われわれは,心臓組織ではSGLT2ではなく主にSGLT1が発現していることを確認した。高脂肪食負荷マウスモデルを用い,インスリン抵抗性状態下で膜上発現が抑制されているGLUT4を代償して,SGLT1が虚血再灌流急性期の心組織の糖利用を促進しATPを産生することで心保護的に働く,重要な役割を担っていることを報告した。
当院で下肢静脈瘤の手術治療を行った1377例のうち9例に上行性血栓性静脈炎の合併を認めた。全症例に術前抗凝固療法を施行し,初診日より手術までの平均期間は28.8日であった。抗凝固療法により血栓が消失した症例には血管内焼灼術を施行し,残存した症例にはストリッピング手術を選択した。本疾患は定まった治療方針は存在しないが,当院の周術期成績は満足のいくものであり,治療方針は妥当であると考えられた。
今回われわれは12年前に胸部下行大動脈置換術が施行された74歳女性における残存解離性胸腹部大動脈瘤切迫破裂に対し,胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)にてEntry閉鎖を行った後に追加TEVARおよび腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)にてRe-entry閉鎖を行い良好な結果を得た。開胸手術が困難な遺残解離性大動脈瘤切迫破裂に対する治療法としては血管内治療は有用な一つの選択肢と考えられた。しかし,長期成績が不明なため注意深い経過観察が必要である。
症例は45歳,男性。他院より遠位弓部~腹部大動脈に及ぶ急性大動脈解離B型を認め,当院へ救急搬送された。腹部は偽腔が血栓化し,真腔狭窄により急性腎不全を発症していた。ステントグラフト挿入(TEVAR)を施行したが,真腔拡張は得られず,末梢血管用ベアステントを同部位に留置した。Entry閉鎖を行っても高度な真腔狭窄が残存したが,自己拡張型のベアステントを併用し,致命的な腎障害を回避することができた。