脈管学
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56 巻, 8 号
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原著
  • 駒井 宏好, 深山 紀幸, 坂下 英樹, 山本 暢子, 進藤 俊哉, 荻野 均
    2016 年 56 巻 8 号 p. 103-108
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル オープンアクセス

    骨格筋代謝に関与するカルニチンの血中濃度を閉塞性動脈硬化症患者130例で測定した。アシルカルニチンと遊離カルニチンの比をカルニチン比とすると間歇性跛行群は0.26±0.13,重症下肢虚血群では0.42±0.22,透析例を除いてもそれぞれ0.24±0.10,0.31±0.14と有意に重症下肢虚血群で高値(それぞれp<0.01, 0.05)を示した。性別,糖尿病,脂質異常症,慢性維持透析,重症下肢虚血を説明変数として多変量解析を行ったところカルニチン比は慢性維持透析(p<0.001)と重症下肢虚血(p<0.01)で有意な因子と判明した。カルニチン比は閉塞性動脈硬化症の下肢虚血の程度を示す可能性があり,重症化判定のバイオマーカーとなりうることが示唆された。

  • 嵯峨根 正展, 千葉 清, 杵渕 聡志, 北 翔太, 盧 大潤, 古川 浩, 北中 陽介, 土居 正知, 高木 正之, 宮入 剛
    2016 年 56 巻 8 号 p. 109-115
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル オープンアクセス

    エダラボン®の大動脈遮断直前投与の脊髄保護効果について検討した。ウサギをシャム群(S群:大動脈を遮断しない群),生食投与群(N群:大動脈を25分間遮断した群),エダラボン投与群(E群:大動脈遮断直前にエダラボンを投与し大動脈を25分間遮断した群)に分け評価した。神経学的所見はS群とE群に有意差を認めなかった。病理所見では,E群ではN群と比較し,脊髄神経細胞の障害が軽度であった。

症例報告
  • 宮﨑 卓也, 南淵 明宏, 奥山 浩, 遠藤 真弘, 金村 賦之
    2016 年 56 巻 8 号 p. 117-122
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル オープンアクセス

    腹部大動脈瘤に馬蹄腎を合併することは稀であり,外科治療で前方からのアプローチにおいて問題となるのは馬蹄腎が大動脈前面に位置し,大動脈または腸骨動脈から馬蹄腎に分岐する異所性腎動脈の存在である。その際アプローチ法や展開方法,腎組織の温存などの考慮が必要である。馬蹄腎は大部分が大動脈,または腸骨動脈から分岐する異所性腎動脈が存在する。われわれは2例の馬蹄腎を合併した腹部大動脈を経験し,2例ともに異所性腎動脈を再建せずに,1例はステントグラフト挿入術,1例は開腹人工血管置換術を施行した。術前検査として腹部造影CT検査を施行し異所性腎動脈分岐数,位置を確認し,腎機能が正常でなおかつ異所性腎動脈分枝が3 mm以下で細く,腎動脈本幹の血管径5 mm以上と血流が良好であったため,異所性腎動脈は再建せずにステントグラフト内挿術,開腹人工血管置換術を施行することができた。術後造影CT検査では腎虚血と思われる馬蹄腎峡部の一部血流低下を伴う造影不良部位が見られたが,長期的に観察し腎機能の低下,その他合併症なく経過した。馬蹄腎を合併した腹部大動脈瘤に術前造影CT検査で動脈瘤と腎峡部の位置関係,異所性腎動脈の分岐形態や分枝数を確認し,血管径が3 mm以下では腎機能が正常であれば閉鎖処理が可能なことが多いと考えられた。

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