静脈性血管瘤(venous aneurysm: 以下VA)は,静脈の延長,蛇行を伴わない限局性の静脈拡張性病変であり,静脈瘤(varicose vein)とは異なり比較的稀な疾患で,とくに上肢発生例の報告は少ない。発生原因は不明であるが,先天的な静脈の脆弱性,外傷や炎症の関与が考えられている。今回われわれは,左尺側皮静脈に発生したVAの症例を経験したので報告する。
43歳男性。急性A型大動脈解離を認め,オープンステントグラフト併用の弓部置換術を施行。術後17日目に正中創部の発赤と腫脹を認め,切開したところ膿性であったため培養に数回提出したが,すべて陰性で白血球のみ検出された。無菌性とのことで,大網充填術を施行した。膠原病内科で,SLE疑いとのことでプレドニゾロン開始。その後問題なく経過し退院となる。人工血管置換術後の無菌性膿瘍で,SLEの診断がついた稀な症例を経験した。
症例は42歳男性。20代後半より右上肢の腫瘤を自覚。経時的に増大し,美容上の問題のため当院を受診。単純3D-CT検査と超音波検査で上肢の多発静脈性血管瘤(venous aneurysm; VA)を認めた。上肢VAは稀な疾患で発生機序が不明であることが多い。われわれは稀な上肢VAの1例を経験したので報告する。
外科的血行再建として(1)バイパス(2)血栓内膜摘除(TEA)がある。このうち総大腿動脈病変(CFA)に対しては,non-stenting zoneに対する治療であることと血行再建成績が良好であることからTEAが第一選択である。下肢閉塞性動脈疾患に対する血行再建としてのハイブリッド手術は血管外科医特有の有効な治療であるが,とくにCFAに対するTEAと血管内治療(EVT)を併施するものはEVTのみ,あるいは外科治療のみと比較し低侵襲で有用性が高い。EVTについては近年浅大腿動脈領域を中心にステントグラフトや薬剤コーティングバルーン,薬剤コーテッドステントなど新規デバイスの出現があり進歩が著しく,以前と比べ治療適応が変化拡大している。本稿では最近のTEAとEVTを併施したハイブリッド手術の現状を当科の早期成績をもとに提示する。引き続き長期成績を示す必要がある。